ヒーロー事務所であるパラレルフライト社に所属する観測者は、頭を抱えていた。クリスマスイブの夜、自宅にて地獄のようなクリスマス会が始まったからである。  観測者の前にあるコタツ机の上には、コンロで温められた具だくさんの鍋が湯気をあげていた。鍋の近くには、バケツのような容器に入ったチキンの盛り合わせも置いてある。クリスマス会を楽しむには問題ない食事が用意されているといえよう。問題は、クリスマス会の参加者である。  現在、この部屋に存在するのは観測者を除けば二人。一人は、カイブツと融合した狼型の宇宙人であむモノマサ。もう一人は、竜人型の宇宙人であるギアンサルだ。この二人は過去にヴィランとして活動していた時期があったが、現在は更生して観測者と一緒にパラレルフライト社でヒーローとして活動をしている。しかし、モノマサとギアンサルは同僚でありながらも仲が良いとは言い難い状態であった。何故ならば、二人とも観測者に好意を抱いており、お互いにそれを察しているからだ。つまり、互いを恋敵だと思っている状態である。  こんなはずではなかった、と観測者は心の中で呟く。そもそも、このクリスマス会には観測者の幼馴染を含む他の同僚も数人参加する予定だったのだ。だが、その同僚たちは急な仕事が入りクリスマス会に参加できなくなったため、モノマサとギアンサルが無言で睨み合う中で地獄のようなクリスマス会が始まってしまったわけである。  観測者も、この二人が自分に好意を抱いている事は察していた。そして、そのせいで二人の仲が悪い事も理解している。理解していながら、どうする事もできずに今に至るわけだ。 「……程よく煮えたな。これは君が食べるといい」  モノマサは、お玉でよく火が通った肉とスープを器用にすくってお椀に入れた後に、それを観測者に差し出した。観測者は、礼を言ってそれを受け取る。そこまでは良かったのだが…… 「おい。お前、距離感バグりすぎだろ。離れろ」  お椀を観測者に差し出した後、モノマサは観測者の左肩に軽く寄りかかるような形で、ふかふかのカーペットが敷いてある床上に座った。それを見たギアンサルは顔を顰め、モノマサに苦言を呈する。 「そんな事はない。君もそう思うだろう?」  同意を求められた観測者は困惑しつつも、モノマサの言葉を肯定した。 「フン。なら、俺もここで食わせてもらう」  観測者の右肩に軽く寄りかかりながら、骨付きチキンに齧り付くギアンサル。食べ辛いしストレスで胃が痛いと思いながら、観測者も食事を開始する。  観測者を挟んだ状態で互いを睨み合いながら、黙々と食事をするモノマサとギアンサル。  地獄の極致と呼べる状況に陥り、現実逃避のために肉を黙々と食べていた観測者の頭に──突如名案が浮かんだ!  本日はクリスマスイブの夜! そしてこの二人はサンタの姿に変身できるヒーロー! つまり、サンタの姿に変身させればこの地獄のような空気も和らぎ、クリスマス会らしくなって盛り上がる!  思い立ったが吉日の精神で、観測者は端末を取り出して二人をサンタの姿に変身させた! 「……ハッ。似合ってねえな」 「そちらは随分と露出が多くてはしたない格好だな。サンタさんに相応しくない」 「何だと? つーか、お前も下半身は結構露出してんじゃねぇか!」  サンタ衣装に変身した二人が互いの姿を貶し始めたため、観測者はがっくりと肩を落とす。同時に、頭の中に浮かんだのは名案ではなく迷案だったと理解したのであった。  こうなったらもう無心で食事するしかない。そう思った観測者が熱々の肉団子を口に放り込んだ瞬間── 「どうした!?」  モノマサが、心配の色が滲んだ声を上げる。肉団子を口にした観測者が全身を大きく震わせて悶絶したからだ。  熱々の肉団子を咀嚼し、何とか嚥下をした観測者は口の中を火傷した旨をモノマサに伝えた。 「そうか。ならば……」  モノマサは少し頬を赤く染めながら、観測者を抱き寄せる。そしてそのまま、観測者と口付けをして長い舌を口内に侵入させた。 「んなっ……!?」  突然の事に、ギアンサルは目を見開き絶句する。 「ななっ、何してんだお前!」  一瞬放心したギアンサルであったが、すぐに我に帰ると観測者からモノマサを力づくで引き剥がした。 「軽い怪我は舐めれば治るものだろう? 俺はヨシオリからそう教わった」  当然の事をしたと言わんばかりに、そう答えるモノマサ。 「それは普通、指先やらの怪我に対して行うもんだろ! 口ん中の怪我に対して行う奴なんていねぇよ!」  顔を赤くし、ギアンサルは叫ぶ。  予想外のディープキスを体験した観測者は、口をぽかんと開けたままフリーズしている。 「しかし、早めに治るならそれに越した事は無いだろう。どれ、もう一度……」 「や、やめろ! お前にさせるぐらいなら……!」  再び観測者と口付けをしようとしたモノマサをギアンサルが突き飛ばす。その後、ギアンサルは観測者を床に押し倒し、モノマサに負けじと舌を侵入させて口内を掻き回すディープキスを行った。 「……こうなったらもう、無理矢理にでもお前を俺のものに……」  長い口付けの後、顔を真っ赤にしたギアンサルがそう呟く。 「どうやら、先にお前を制圧する必要があるようだな」  モノマサは自身の体に纏っていた黒色の泥を操り、ギアンサルの手足の自由を奪った。 「クソッ! 何しやがる! 離しやがれ!」  四つ這い姿勢のまま拘束されたギアンサルは必死で泥を振り払おうとしたが、それは叶わない。今、この場の主導権はモノマサにあった。 「……すまないな。少し、目を閉じていてくれ。すぐに済ませるから」  モノマサが、観測者に優しく語りかける。 「済ませるって、何を……っ!?」  そこまで言ったところで、ギアンサルは声にならない叫びを上げた。何故ならば、モノマサが乱暴にギアンサルの下衣を破り捨てたからだ。 「先にお前を制圧すると言っただろう。二度と俺の観測者に手を出させないように、屈服させる」  外気に晒されたギアンサルの尻肉を、モノマサは両の手で左右に押し広げた。やや色素が沈着した肛門が、モノマサの視界に入る。モノマサは表情一つ変えずに、泥を触手のように操り、視界に捉えたそこに向けて伸ばした。 「ぐうっ!? やめろ、この変態……!」  触手のように細長い形になった泥が、ギアンサルの尻肉をこじ開ける。ギアンサルは抗議の声を上げたが、モノマサはそれを無視して触手のような泥をさらに奥深くへと侵入させていった。  モノマサを止めなければならないと考え、起きあがろうとする観測者。しかし、観測者の四肢にも泥がまとわりついており、それは叶わない。ギアンサルがモノマサに蹂躙される姿を、ただ見上げる事しかできない状況だ。 「クソッ! 見るな! 頼むから、見るんじゃねえ……!」  ギアンサルは目尻に涙を浮かべて、観測者にそう懇願した。このまま彼の顔をじっくりと眺めたらプライドを傷付けると考えた観測者は、目をぎゅっと閉じる。  触手のような泥がぐちゅり、ぐちゅりと淫靡な音を立て、ギアンサルの中で蠢く。触手のような泥は徐々に太くなり、ギアンサルの肛門をゆっくりと拡張していった。 【続きは来週!】