絶倫ホワイトベア。それが僕のAV男優としての名前だ。  僕の本名は、白崎 雄熊(しらさき おぐま)。今年四十路に突入した白熊獣人で、ただの太ったおじさんだ。  ただの太ったおじさんである僕だけど、取り柄が二つある。  一つ目の取り柄は、AV男優としての名前にも冠しているように絶倫である事だ。  僕のおちんちんはヤンチャで、その気になれば勃起した状態を保ったまま一日に十回以上は射精できる。  二つ目の取り柄は、僕のこの太った体型は同性受けが良いという事だ。  僕は、主にゲイ向けAVのタチ役として活動している。ざっくり言うと、ビデオカメラの前で男性のお尻におちんちんを入れるアナルセックスをするのが僕の主なお仕事なのだ。自分で言うのもなんだけど、太った熊獣人はタチ役としての需要が高いみたい。ありがたい話だよね。 「さあ、今日も頑張ろうかな」  本日は八月十七日。透き通った青空に入道雲がぷかぷかと浮かんでおり、あちこちでセミが大合唱している。夏真っ盛りだ。  時刻は午後二時を過ぎたところで、気温は三十六度を超えている。猛暑日だ。黒い半袖シャツを着て外出したのは失敗だったなあ。日の光を吸収してとても暑い。  僕は首にかけたタオルで汗を拭きながら、昭和の雰囲気を色濃く残した木造の日本家屋に入った。ここが、今日の僕の仕事場だ。 「ふぅー、生き返るー」  家の中は外と比べると涼しかった。冷房が十全に効いている訳では無いが、外の暑さを体感した後だと天国のようだ。 「あっ、ベアさん。今日もよろしくッス」 「うん、よろしくね」  靴を脱いで上り框を乗り越えたタイミングで、タンクトップ姿の狼獣人に声を掛けられた。  細身の青年である彼の名は、灰原 狼毅(はいばら ろうき)。腕の良いカメラマンで、僕はロウくんと呼んでいる。 「まだ機材の準備に時間がかかるので、ベアさんはしばらく部屋でくつろいでいていいッスよ」 「お言葉に甘えるよ」  ロウくんは、畳張りの広い和室に僕を案内してくれた。イ草の香りが漂っているので、この部屋の畳は張り替えたばかりのようだ。  部屋の真ん中には、薄い敷き布団が置いてある。 「はいどうぞッス」 「ありがとう!」  部屋の隅にある黒い座卓の上に、ロウくんは麦茶が入ったコップを置いてくれた。氷が入っていて、キンキンに冷えていそうだ。とてもありがたい。  麦茶を置いた後、ロウくんは機材の準備に集中するために隣の部屋に向かった。そこで作業をするようだ。 「んぐっ、んぐっ……ぷはーっ!」  広い和室に一人残された僕は、飲み会でビールを飲むかのような勢いで冷たい麦茶を一息に飲み干してしまった。我ならおじさんくさいと思う。でも喉がカラカラだったから仕方ないよね。 「ふう」  コップを座卓に置くと、カランと涼しげな音が鳴った。直後、部屋の襖が勢いよく開く。 「……すみません。遅くなりました」  襖の向こうから現れたのは体格の良い虎獣人の青年。彼は、僕とは対照的な黒くて艶やかな毛皮に全身を覆われていた。汗を吸った白い半袖シャツが身体にぴっちりと張り付いていて、胸筋が浮き出ている。下に身につけている青色のハーフパンツも少し身体に合っていないようで窮屈そうだ。  パッと見た感じ、筋肉質で程よく脂肪も乗った感じの体型である。いわゆる、ガチムチってやつだね。ちょっと厳かそうというか、コワモテではあるけれどモテそうな見た目だ。同性に。 「遅くないよー。まだ集合時間の前だしね。……ほら、こっちにおいで。まだ機材の準備ができていないみたいだからお話でもして時間を潰そうよ」 「は、はい」  彼はややぎこちない足取りで僕の近くに来ると、畳の上で正座をした。  うーん、緊張している様子だなあ。 「えっと、炟虎くんだったよね」  僕が尋ねると、彼はこくこくと頷いた。  クライアントから事前に貰った情報によると、彼の名前は黒宮 炟虎(くろみや たつとら)。二十歳の青年で、見習いの大工さんらしい。体格が良いのは、仕事柄かもしれないなあ。 「たっくんって呼んでいいかな?」 「えっ? あっ、はい。大丈夫です」  多少面食らった様子を見せたけど、彼は僕の申し出を受け入れてくれた。愛称で呼ぶのは、仲良くなりたい相手と距離を詰めるテクニックの一つである。 「……あの、俺は、貴方を何と呼べばいいでしょうか」 「ベアって呼んでくれたら嬉しいな。僕は普段、絶倫ホワイトベアって名前で活動しているんだけれど、それを略してみんなベアさんって呼んでるんだよね」  うん、自分のAV男優としての名前を言うのって恥ずかしいね。でも、恥ずかしがっていたらこの業界ではやっていけないのだ。 「分かりました。ベアさん、ですね。……その、ふつつかものですが、今日はよろしくお願いします」  たっくんは、僕に向かって深々と頭を下げた。土下座しそうな勢いで。 「ま、真面目すぎない!? 僕、この業界で二十年くらい働いているけれど、たっくんみたいな子を相手にするのは初めてかも……」 「そうなんですか?」 「うん。たっくんくらいの年齢だと、少しヤンチャな感じの子が多かったよ。遊ぶお金欲しさって感じのね。でも、たっくんはそんな感じじゃなさそうだなあ。ここに居るのが不思議だよ」  AVに出演するために、たっくんはここに居る。それも、ゲイビデオ界隈で人気がある 『ノンケ処女穴中出しシリーズ』に。  ノンケとは、基本的に異性愛者を指す。つまり、ノンケ処女穴中出しシリーズに出演する子は男性経験が無い子なのだ。  ゲイ界隈で、ノンケは高い需要がある。だからこそ、男性経験が無い本物のノンケが出演しているのをウリにしているノンケ処女穴中出しシリーズは大人気なのだ。 「……あのさ、何か理由があるの? あっ、話したくないなら別に良いんだけど……」  ノンケがゲイビデオに出演する理由は遊ぶ金欲しさか、借金の返済のためというのが多い。でも、僕の勘が告げている。たっくんはそのどちらでもないと。  あまり詮索するのは良くないと思うけれど、気になって仕方がない。 「……その、数日前に母さんが急病で入院して……。俺の家は母子家庭で、あまり裕福ではないので……」 「つまり、お母さんの入院費を稼ぐために出演するのを決めたの?」 「……はい」  うっ、想像していた以上に重い理由だった。でも、そんな理由がないとたっくんみたいな真面目そうな子がAVに出演しようなんて思わないよなあ。 「そっか。……ごめん。聞いておいてなんだけど、気の利いた事が言えそうにないや。本当にごめん」  興味本位で踏み込んではいけないところに踏み込んでしまった気がして、僕は頭を下げて謝ることしかできなかった。 「……気にしないでください。俺、良かったって思っていますから」 「良かった?」 「はい。……この選択をしたのは、今の俺にとって最善で間違っていないと思っています。でも、経験が無いから不安ではありました。……だから、初めての相手がベアさんみたいな優しそうな方で良かったな、と」  経験が無いとは、性行為の経験が無いのを意味するのだろう。きっと、男性どころか女性相手の経験も無い。正真正銘、僕が初めての相手なんだ。 「……優しそうと思ってくれてありがとう。こう見えても僕はテクニシャンなんだ。キミを絶対に気持ち良くさせるし、絶対に後悔させないと約束するよ。だから、安心して僕に身を委ねてほしい」  不安感が少しでも軽減したらいいなと思いながら放った僕の言葉を聞いたたっくんは、 「……ありがとうございます。」  口元を緩めて、微かに笑みを浮かべた。  少しコワモテな彼の穏やかな笑みはギャップがあってとても可愛い。思わず、そんなことを考えてしまった。  彼の笑顔を見ながら、僕は胸の内で誓う。僕とのセックスがたっくんにとって良い思い出になるように全力を尽くすんだ、と。  ……なんて事を考えている内に、 「機材の準備、もう少しで終わりそうッス。お二人もぼちぼち準備してもらえると……」  ロウくんが部屋に入ってきて、麦茶が入ったコップをたっくんに手渡した。それを受け取ったたっくんがお礼を言った後に、僕は頷きながらこう答える。 「分かった。たっくんが麦茶を飲み終わったら、準備するよ」  たっくんの方に視線を向けると、さっきの僕のように勢いよく麦茶を飲んでいた。外は暑かったから、やっぱり喉が渇くよね。 「……ベアさん。一つ、質問してもいいですか?」  麦茶を飲み終えた彼は、遠慮がちにそう尋ねてきた。 「大丈夫だよ。何を聞きたいの?」 「その、こういうビデオに出演する時はベアさんのような通り名が必要なのでしょうか……?」 「通り名? 絶倫ホワイトベアのこと?」  合っていたようで、たっくんはこくりと頷いた。 「もしベアさんのような通り名が必要ならば、俺は何とかブラックタイガーという通り名になるのでしょうか……?」 「エビかな?」  不安げなたっくんに、ウシエビを連想するような通り名は必要ないという事を伝える。すると、彼はほっとした表情を浮かべた。  ……よし、色々とツッコミたいことはあるけれどとりあえず準備を始めようかな!  §  準備といっても、タチ役の僕は大した準備をする必要がない。軽くシャワーを浴びて身を清めるだけで準備OKだ。  対して、ウケ役は準備が大変である。体内を洗浄しないといけないからね。ゲイビデオに出演するウケ役には予めマニュアルが配られているから、今のたっくんはきっとそのマニュアルに従って準備をしている。真面目そうだから、凄く丁寧に準備をしそうだなあ。 「……機材の準備、OKッス」  照明とカメラの準備が終わったようで、ロウくんは僕に向かってビシっと親指を立てた。アメリカンなハンドサインだなあ。 「そっか。じゃあ、後はたっくんを待つだけだね」  シャワーを浴びた後に全身を獣人用ドライヤーで乾かして準備万端の僕は、和室の中央にある敷布団の上に座った。でも、シャワーを浴びてもなお汗くさい。何故ならば、先程まで着ていた黒い半袖シャツとボクサーパンツを身につけているからだ。これには理由がある。  これから撮影するのは、大手ゲイビデオメーカーの『ハウリング』からリリースされる予定のノンケ処女穴中出しシリーズの十六作目。  十六作目のコンセプトは、蝉の声が鳴り響く夏の日本家屋の中でノンケと汗だくセックス……といったものだった。ご丁寧に、汗が染み付いたシャツを脱がずに汗だくセックスしろというクライアントのお達しもある。マニアックだよねえ。 「……お待たせしました」  程なくして、準備を終えた様子のたっくんが和室に入ってきた。僕と同じように、彼も先程まで着ていた白いシャツを身につけている。ハーフパンツを脱いで、灰色のボクサーパンツを晒している状態になっているのはさっきと違うけれど。 「それじゃ、撮影を始めるッスよ。準備は良いッスか?」  たっくんは頷きながら、僕のすぐ前に移動して正座した。今、僕は胡座をかいているけれど、釣られて思わず正座しそうになっちゃったな。 「ベアさんも準備はOKッスか?」 「うん。いつでも良いよ」 「承知したッス。さあ、いくッスよ。じゅー、きゅー、はーち……」  小型のビデオカメラを片手に構えたロウくんが、カウントダウンを始めた。カウントがゼロになったら、本番だ。  うーん、やっぱりカメラを向けられると気が引き締まるなあ。定点カメラも部屋の隅にセットされているけれど、そっちよりもロウくんが構えたカメラの方に意識が向いてしまう。 「……さーん、にー」  イチとゼロは、ジェスチャーでカウントするものだ。  ……ニの掛け声から二秒経過。つまり、たった今、撮影が始まった。 「あ、その……」  緊張した様子のたっくんが、身を強張らせている。  僕はたっくんを抱き寄せ、背中をぽんぽんと叩いた。 「大丈夫。怖くない。怖くないからね」  背中を優しく叩いている内に、たっくんの身の強張りが取れてきた。少し、緊張が解れてきたみたい。 「胸、触ってもいいかな?」 「は、はいっ……!」  ぴっちりとした白いシャツに浮き出ているたっくんの乳首を触ってみたいと、出会った時から僕は思っていたんだよね。  乳首は、触られて感じるヒトとそうでないヒトが二極化する部位だ。たっくんはどっちだろうな。 「んっ……!」  シャツの上から、左右の乳首を左右の人差し指で同時にカリカリと掻くように刺激を与えると、たっくんの口から可愛い声が漏れた。どうやら、たっくんは乳首を触られて感じるヒトのようだ。 「く、あっ……!」  親指と人差し指で乳首を軽く摘んでひねると、たっくんの身体がぴくりと跳ねた。  ふと、下に視線を向ける。すると、灰色のボクサーパンツがもっこりと膨らんでいるのが確認できた。 「……窮屈そうだから、脱がせるね」  僕はたっくんを仰向けに寝かせた後、ボクサーパンツに手をかけて一気に剥ぎ取った。その瞬間、少し皮を被った太い剛直がぶるんと揺れて姿を現した。  たっくんもシャワーを浴びたと思うけれど、膨張したおちんちんからは汗の臭いが漂っている。特に、少し皮を被った先端は蒸れた臭いが強い。それがまた僕を興奮させた。 「僕も脱いじゃおっと」  自らのボクサーパンツに手をかけ、脱ぎ捨てる。僕のおちんちんはとっくに臨戦態勢だ。 「お、大きい……!」 「ははっ。よく言われる」  僕のおちんちんの長さは平均的だ。でも、太さがあるから大きく見えるみたい。たっくんのおちんちんも太いけれど、僕のはさらに太い。ぴったりとくっつけてみると、それが一目瞭然だ。 「はっ、ああっ……」  たっくんに覆い被さった僕は、おちんちん同士をくっつけた状態で少し体重をかけて腰を振った。 「重くない?」 「んっ……いえ、大丈夫、です……あっ……!」 「そっか、良かった」  腰を振って強く摩擦する度に、彼の口からいやらしい声が漏れる。乳首と同様に、おちんちんもしっかりと敏感なようだ。 「たっくんはさ、週に何回くらいオナニーしているの?」 「……っく、忙しくない時は、毎日……」 「へえ、真面目そうなのに性欲が強いんだね。健全な男の子だ」  適当にはぐらかしても良かったのに、素直に答えてくれるなんて可愛いなあ。こんな反応をされたらもっと答えづらい質問をしちゃいたくなる。何をオカズにしているの、みたいな質問をね。でも、我慢だ。過度に羞恥心を煽るプレイは、セックス未経験の彼には刺激が強いだろうからね。 「……エッチな汁が出てきたね」  兜合わせを開始してから数分後。腰を振るとぐちゅぐちゅと湿った音が鳴り響くようになった。目視はしていないが、恐らく僕たちのおちんちんから我慢汁が分泌されて混ざり合っている。 「気持ちいいかい?」  そう尋ねると、たっくんは消え入りそうな声で「はい」と答えた。 「そっか。じゃあ、もっと気持ちいいことをしてあげる」 「もっと、気持ちいいこと……?」  僕は兜合わせをやめ、姿勢を変えてたっくんのおちんちんに顔を近づけた。  想像した通り、たっくんのおちんちんは我慢汁でぬるぬるになっている。そして、先程よりも蒸れた臭いが強くなっていた。その臭いが鼻腔の中で新鮮な畳の香りと混ざり合い、えも言われぬ興奮を覚える。 「たっくんのおちんちん、咥えるね」  返事を待たず、僕はたっくんの太いおちんちんの先端――亀頭部を口に含んだ。 「んうっ!? あっ、ベアさん……っ!!」  口内で舌を動かして包皮を剥くと、たっくんの身体がびくりと跳ねた。舌先でカリ首をなぞると、たっくんの身体の震えがより大きくなる。どうやら、ここが弱点のようだ。 「はっ、ああっ、ううっ……」  彼の口から漏れる低くて艶やかな声を堪能しながら、カリ首を含む亀頭部を重点的に舌で攻めた。  刺激を与える度に、しょっぱい我慢汁の味が濃くなる。きっと、鈴口から止め処なく溢れ出ているのだろう。  たっくんのおちんちんを咥えながら、僕はふとロウくんの方に視線を向けた。  ビデオカメラを片手で持って僕たちを撮影するロウくんの表情は真剣そのもの。けれど、視線を下にずらすと彼のズボンの前面が窮屈そうに膨らんでいるのが確認できた。  僕はさり気なく、右手の人差し指でロウくんとたっくんを交互に指し示して合図を送った。長年一緒に仕事をしてきたから、これだけできっと僕の意図を察せるだろう。  ロウくんは一度頷いた後、ビデオカメラを持っていない方の手で器用にズボンを脱いだ。  窮屈な枷から解き放たれたロウくんの長い肉棒は、我慢汁を流しながら天を仰いでいる。彼はしゃがみ込んで、その肉棒の先端をたっくんの左頬にそっとくっつけた。 「みんなで一緒に気持ちよくなろう?」  僕はたっくんのおちんちんから口を離してそう言った。たっくんもその意味は分かったようで、顔を左側に向けてロウくんのおちんちんを直視する。 「えっと……ベアさんのように、舐めればいいんですよね……」 「上手くやろうと思わなくていいよ。飴を舐めるような感覚で気楽にね」 「は、はい……んむっ」  恐る恐るといった様子で、たっくんはロウくんのおちんちんを口に含んだ。  AV撮影中に、カメラマンが混ざって乱交するのはよくあることである。ロウくんもそれに慣れていて、おちんちんにどんな刺激を受けても一言も発さずに勃起した状態を保ったまま撮影を続けられるプロだ。 「んっ、んう、んんっ」  たっくんは目を閉じながら、ロウくんのおちんちんの先端――つまり亀頭部に必死で吸い付いている。その様子はとても可愛くて、同時にひどくいやらしいと思ってしまった。僕のおちんちんに、さらに血が集まっていくのを感じる。  懸命にロウくんのおちんちんをしゃぶるたっくんをいつまでも見ていたい気持ちになったが、そうもいかない。僕は僕の役目を果たさなければ。 「たっくん。お尻、解していくからね」  僕は、予め敷布団の近くに置いていたプラスチックの容器を手に取った。この中に入っているのはローション。スムーズにセックスを行うための必需品だ。  蓋を開けて逆さにし、片手で容器に圧をかけると粘り気が強い透明な液体が出てくる。ひやりとするそれを右手の人差し指に垂らし、少し体温で温めた後にたっくんのお尻の穴――今撮っているビデオのタイトル風に言えば処女穴に、指を当てた。 「んむっ……!」  指に力を込めると、湿った音を立てて第一関節の辺りまで飲み込まれていった。  ロウくんのおちんちんをしゃぶるのにたっくんの意識が向いている内に、お尻をじっくりと慣らす。それが僕の立てた作戦だ。 「たっくんの中、あったかいね」  肉穴に挿入した指先に熱を感じる。そして、締め付けもすごい。指を入れた瞬間に未経験なのが良く分かった。これは解すのに時間がかかりそうだ。  僕は円を描くようにぐりぐりと人差し指を動かしながら、第二関節までゆっくりと挿入した。 「ふっ、んんっ……」  たっくんの身体が強張る。少しキツイのかもしれない。これ以上挿入すると痛みを感じるかもしれないので、指を奥まで入れるのは後回しにしよう。  人差し指を第二関節まで挿入すれば、男の子の弱点――前立腺を刺激する事が可能だ。長年の経験のおかげで、僕はすぐにたっくんの弱点を探り当てることに成功した。 「んううっ!?」  こりこりと弾力を感じる部分を指先で圧迫すると、たっくんのおちんちんがびくりと跳ねて我慢汁が勢いよく噴出した。しっかりと気持ちよくなってくれているようだ。 「むぐっ、んん、ううっ……!!」  一定のリズムで前立腺を圧迫する度に、たっくんの口から艶やかな声が漏れる。たっくんにとっては未知の感覚で戸惑いもあるはず。けれど、そんな状況でも彼は必死でロウくんのおちんちんに吸い付いて刺激を与えるのをやめなかった。  与えられた役目を全うしようとするたっくんの姿は健気で、とても可愛らしいと思う。不覚にも、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。この感覚の名前は、きっとトキメキというものだ。  ……ははっ。良い年したおじさんが、何考えているんだろうね。変なことを考えていないで、僕は僕の役目を果たさないと。  前立腺を刺激している内に、たっくんのお尻はかなり解れてきた。ゆっくりと力を込めると抵抗なく、僕の人差し指が根元まで沈み込む。少しローションを足せば、もう一本指を増やしても良さそうだ。そう判断した僕はローションを中指に垂らした後、たっくんの肉穴に宛てがった。  指先に力を込めると、二本目の指がたっくんの中にゆっくりと沈み込む。ここからは集中的に穴を広げていこう。 「んんっ、う……っ!」  ハサミの刃を開くように、人差し指と中指を外側に開く。僅かに見えた肉穴の内部は薄い桃色で、とても綺麗な色をしていた。それを見た僕の中で獣欲が膨れ上がり、今すぐにでもおちんちんを挿入して深く繋がりたい気持ちになってしまったが、ぐっと我慢だ。たっくんに痛い思いはさせたくないし、後悔させないという約束は絶対に果たしたい。  二本の指を開いて、閉じて、開いて、閉じる。この動作を繰り返すことで、ゆっくりとだが確実にたっくんのアナルは拡張されていく。  ちらりとたっくんの顔を見ると、口の周りがロウくんの我慢汁でべたべたになっていた。この分だと、ロウくんの限界は近そうだ。ロウくんがたっくんの口内に射精する前に、アナルの拡張を済ませられるといいな。  ……うん。だいぶ柔らかくなってきたから、薬指も挿入してみよう。一旦二本の指を引き抜いた後にローションを追加し、人差し指と中指、そして薬指を同時に挿入する。その瞬間、 「うっ、んんんんんっ!?」  たっくんの身体がびくびくと痙攣した。身体の震えと連動して彼のおちんちんが大きく跳ね、先端から大量の白濁液が噴出する。放たれた白濁液は放物線を描き、彼が身につけている白い半袖シャツをさらに白く染め上げた。 「んぶっ、んんん、ぐうっ!!」  たっくんとほぼ同時にロウくんも限界を迎えたようだ。たっくんの口の端から、濃厚な白濁液がどろりと漏れ出ている。  射精を終えたロウくんは口元を緩めて満足気な表情を浮かべた後、すぐに口元を引き締めて立ち上がり、何事もなかったかのように撮影を続行した。  ……フルチンで撮影するロウくんの姿はちょっとシュールだなと思ったけれど、心の内に秘めておこう。 「んぐっ……す、すみません、ベアさん……。お尻、じんじんして……気がついたら、イってしまいました……」  たっくんは口内に放たれたロウくんの精液を飲み込んだ後、謝罪の言葉を口にした。 「気にしないで。お尻で感じてくれたみたいで嬉しいよ。……それに、たっくんは若いからまだまだイけるでしょ?」  僕がそう尋ねると、たっくんは少し恥ずかしそうに目を逸らしつつ頷いた。  たっくんのおちんちんは、射精したばかりだというのに萎える気配は無く硬いままだ。黒い被毛に覆われた竿に、白い精液がべっとりとくっついているのがとてもいやらしい。 「ほら、こんなにお尻が広がったよ」  わざとぐちゅぐちゅと音を立てながら、三本の指でたっくんのアナルを掻き回す。 「あ、あの……多分、もう大丈夫です」 「大丈夫って、何が?」  ぶっちゃけると、聞かなくても意図は分かる。でも、聞きたいと思った。たっくんの口から、僕を求める言葉を。 「……もう、ベアさんのおちんちんをお尻に入れても、大丈夫だと思います……」  そう言ったたっくんの頬は、真っ赤に染まっていた。  再び、僕の胸は締め付けられる。  ああ、これはやばいな。やっぱり、この子はとても可愛い。ただの仕事仲間として見ないといけないのに、それ以上の関係を望んでしまいそうになる。……けれど、僕はプロだ。自分の気持ちを抑え込んで一線を引くのには慣れている。  一つ深呼吸した後、僕はたっくんのアナルからゆっくりと指を引き抜いた。そして、限界まで硬くなった自分の肉棒にローションを垂らしてよく馴染ませる。 「たっくん。まずは先っぽだけ、ゆっくり入れるからね。もし痛かったら遠慮なく言うように。いいね?」 「はっ、はい……! よろしく、お願いします」  たっくんは自らの脚を大きく広げ、小さく口を開けたアナルを僕に見せつけてきた。  自然に、男を煽るような動きができていて怖いなあ。なんて思いつつ、僕はローションと我慢汁でぐちょぐちょになった肉棒の先端をたっくんのアナルに宛てがった。 「いくよ……」  体重をかけながら、腰を前に突き出す。ぬぷりと湿った音を立てながら、亀頭部がゆっくりとたっくんの処女穴に飲み込まれていった。 「ふあっ、お、大きいっ……!」 「痛くないかい?」 「大丈夫です……っ!」  どうやら、本当に痛みは感じていないようだ。たっくんのおちんちんは硬さを保ったまま。尚且つ、先端からは我慢汁がとろとろと流れ出ている。 「もっと奥まで入れてもいいかい?」 「はい……っ!」  僕は両手でたっくんの腰を掴みながら、さらに前へ腰を突き出した。  よく慣らしたおかげで大した抵抗感なく、僕の自慢の逸物が半分ほど沈み込む。 「少し、このままで居ようか」 「ありがとうございます……!」  根元まで挿入するのは、もう少し慣らした後が良さそうだ。そう判断した僕は腰の動きを止めながらも、片手でたっくんの太いおちんちんを握って上下に扱いた。 「あっ、ん……く、ああっ!!」 「気持ちいい?」  その問いに、たっくんはこくこくと頷く。  気持ちいいのは僕も同じだ。彼の竿を扱く度に、肉穴がきゅうきゅうと締まって僕のおちんちんに快感という名の甘い刺激が与えられる。  僕は今までに何度もアナルセックスをしてきた。だからこそ断言できるが、これは名器だ。  程よい締め付けと吸い付き感。そして、溶けてしまうと錯覚しそうになるほどの熱。これはもう、精液を搾り取るために存在する肉穴としか思えない。全部挿入したら、僕はどうなってしまうのだろうか。  僅かな不安と、多大な期待が僕の胸の中に芽生える。 「ベアさん……全部、入れてください」 「……いいのかい?」 「はい。俺、ベアさんの全部を受け入れたいです……」  その言葉は、僕の獣欲を最大限に煽った。  僕は再び、たっくんの腰を両手で掴んだ。そして、体重をかけて一気に最奥までおちんちんを挿入する。 「うあああっ!」  肉穴が、強く収縮した。同時に彼は再び全身を痙攣させ、二度目の射精を迎える。汗と精液に塗れた白いシャツがさらに汚れ、辺りに漂う濃厚な雄の臭いがさらに強くなった。 「……たっくんは本当にエッチだね。処女喪失で感じて射精しちゃうなんてさ」 「くうっ……そんなこと、言わないで、ください……っ!!」  たっくんのおちんちんは小刻みに震えながら白濁液をびゅーびゅーと撒き散らしている。根元までおちんちんを受け入れて悦んでいるのは明らかだ。しかも、彼のおちんちんは二度目の射精を迎えても硬いまま。もしかしたら、僕と同じように彼も絶倫なのかも。  ……絶倫ブラックタイガーというワードが頭に思い浮かんだけれど、笑ってしまいそうになるから忘れよう。そんなバカなことを考えながら、僕はゆっくりと腰を引いた。 「んうううっ!!」  おちんちんが肉襞を捲る感触は、たっくんにとって刺激が強すぎたようだ。また、彼のおちんちんが小刻みに何度も跳ねた。しかし、精液は噴出しない。 「あっ、俺、変です……っ! ベアさんにおちんちんを入れられてからずっと、お腹の下辺りがじんじんして……うああっ!!」  限界まで腰を引いた後に再び最奥までおちんちんを挿入すると、やはりたっくんのおちんちんはびくびくと震えた。  恐らく、今の彼は射精を伴わない絶頂……ドライオーガズムを迎えている。相当、感じやすい体質のようだ。 「……ごめん。ちょっと、抑えられないかも」  ここまで感じやすい子相手なら、多少荒々しく腰を振っても大丈夫なはず。そう思った僕は、自らの快楽を貪るためのピストン運動を開始した。 「うあっ、あっ、あああぁぁっ!!」  腰を引いた後、少し上向きに突き上げるかのように腰を前に突き出す。  先程の愛撫で、たっくんの前立腺の場所は把握している。だから、彼が最高の快感を得られるように、腰を前に突き出す際は前立腺を狙った。これは、男優として活動している内に自然と身につけていた当て掘りというテクニックだ。 「ベアさん、ベアさん……っ!!」  たっくんが、僕にしがみついてきた。なので僕も抱きしめ返しながら、激しく腰を振る。  僕は、ハグが好きだ。相手の体温を全身で感じられて安心するし、興奮もする。  彼を抱きしめると、むわりと蒸れた熱気が伝わった。汗が首筋を伝い、蝉の声は変わらず鳴り響いている。蝉の声が鳴り響く夏の日本家屋の中でノンケと汗だくセックスするというコンセプト通りの状況だ。撮影前はマニアックなコンセプトだなあとどこか冷めたように俯瞰して見ていたけれど、実際に体験してみるとこれはやばい。汗と精液が混ざり合った濃厚な雄の臭いと相手から伝わる熱で、頭がくらくらして酷く興奮する。 「んむっ、んうっ……」  僕は半ば無意識に、たっくんに口付けをしていた。口付けをしながら強く抱きしめ、ゆさゆさと腰を振る。  全身が蕩けそうな程に気持ち良くて、極楽という言葉が相応しいと思った。 「ベアさん、俺、またっ、出そうです……!!」 「いいよ、たっくん……! 僕もイきそうだから、一緒に……っ!」  たっくんのアナルが、僕の肉棒をぎゅうぎゅうに締め付けてくる。程なくして、僕は射精してしまうだろう。  僕は腰を限界まで引いた後、勢いをつけて最奥まで一気におちんちんを挿入した。 「うああああっ!!」  僕のシャツにぱたぱたと熱い液体がかかる。たっくんが放った精液の熱を感じながら、僕は全身を震わせて欲望の証をたっくんの中に注ぎ込んだ。  僕のおちんちんが彼の肉穴に包まれたまま、びくんびくんと跳ねているのが分かる。気持ち良過ぎて、頭がじんじんと痺れるような感覚に襲われた。中に出した精液がたっくんの体内を蹂躙しているという事実が僕の胸を充足感で満たす。  最後の一滴を放出するまで、彼のお尻は僕のおちんちんを断続的に締め付けてきた。 「……ふう。とても良かったよ、たっくん」  大きく息を吐きつつ、僕は腰をゆっくりと引いた。  硬さを保ったままの僕のおちんちんが抜け落ちたと同時に、ひくついたアナルから大量の精液がごぼりと溢れ出る。ロウくんはぽっかりと開いたたっくんのアナルにカメラを向け、僕の精液がゆっくりと垂れて敷布団を汚す瞬間までしっかりと収めた。  これでミッションコンプリート。無事に、ビデオのタイトルになっているノンケ処女穴中出しは完了した。けれど、僕のおちんちんはまだ硬いままで、もっとたっくんと繋がって中に欲望を吐き出したいという気持ちが消えない。  ……冷静になるんだ、僕。目的は果たしたから、これで終わり。高ぶる気持ちを鎮めて、後片付けを始めなきゃ。 「それじゃあ……」  先にシャワーを浴びてきていいよ。そう言う前に、たっくんは僕のシャツの裾を遠慮がちに掴んだ。 「ベアさん……」 「どっ、どうしたの?」  目を潤ませたたっくんは、荒い呼吸を繰り返している。 「お、俺、もっとベアさんと……エッチしたいです」  とても小さな声だったけれど、確かに聞こえた。たっくんが、僕との繋がりを望む言葉が。  またまた、僕の胸がキュッと締め付けられる。悪魔の誘惑だよ、こんなの。年甲斐もなく彼を好きになってしまいそうで、怖い。 「えっと……」  どうしよう。深みにハマってしまいそうで怖い。そう思いつつ、たっくんともっとセックスしたいという気持ちが胸の内で膨れ上がっていった。けれど、これ以上は仕事の範囲外になる。 「大丈夫ッスよ、ベアさん。ビデオ会社のお偉いさんたちは、ボーナス映像があると喜ぶものッス。ビデオの売れ行きが良くなるッスからね。……きっと報酬も弾むッスよ」  僕の葛藤を察したのか、ロウくんはビデオカメラを持っていない方の手の親指をビシッと立ててそう言ってきた。……いや、彼が立てているのは親指だけではない。おちんちんもだった。  さては、ボーナス映像を撮るという名目でロウくんもたっくんや僕とエッチしたいんだな? 「……よし、じゃあその言葉に乗っちゃおうかな。たっくんとロウくんが満足するまで、付き合うよ」  絶倫ホワイトベアである僕は、それができる。若者の性欲にも負けないぞ。 「よ、よろしく、お願いします……」  僕は頷き、硬さを保ったままのおちんちんを再びたっくんのアナルに挿入する。  ロウくんは定点カメラの位置調整を行った後、精液まみれのたっくんのおちんちんにしゃぶりついた。  たっくんもロウくんも、盛りのついた獣のような蕩けた表情を浮かべている。恐らくは、僕もそうなんだろう。    ――こうして、炎暑の中で汗と精に塗れながら行うドロドロのセックスが再開された。  たっくんと一回きりの関係で終わりたくない。腰を振りながら、僕はそんな事を考えてしまった。  ……とりあえず、このドロドロのセックスが終わった後に彼らをご飯に誘って奢ろうかな。丁度近くに、ちょっと顔が怖い虎獣人の店長が経営しているラーメン屋がある。  うん、決定。今日の夜は、彼らとラーメンを食べよう。僕たちの縁が長く続きますようにという験を担ぎながら、ね。 【了】