ネオンが雨に濡れたアスファルトを七色に彩る、近未来の都市、エデン・シティ。 高度に発達したホログラムの広告が空を泳ぎ、人間とロボットが肩を並べて歩くこの街では、もはや鋼鉄の体を持つ隣人も珍しい存在ではない。 その青年、レンは、街の喧騒から少し離れた路地裏のカフェで、一人のアンドロイド、セレスと出会った。 レンは、ウェーブがかった黒髪に、好奇心と優しさを湛えた瞳を持つ青年だ。機能性重視のタクティカルジャケットを着こなす彼の姿は、どこか冒険家のような、それでいて実直な印象を与える。 対するセレスは、透き通るような白銀の長髪に、吸い込まれそうな紫の瞳を持つアンドロイドだった。 最新の人工皮膚は、陶器のように滑らかで温かく、その肢体は無駄のない曲線美を描いている。彼女が纏う白と青のノースリーブのドレスは、清潔感と同時に、どこか「未完成な器」のような儚さを感じさせた。 「私には人間のような感情はないの。そういうふうに作られてるの……。貴方と一緒に泣いたり、笑ったりすることはできないわ。それでも、私を求めるの?」 レンは迷わず彼女の手を握りしめ、その熱意に負けたセレスは、どこか事務的に、けれど静かに彼を受け入れた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ それから一年。二人の生活は、レンによる献身的な愛の物語だった。 セレスの体には、人間と同じ位置に精密な感度センサーが埋め込まれ、その局部には性行為用の特殊パーツも搭載されている。 しかし、彼女は当初、何も感じなかった。 「レン、そこを触られても、信号としての認識しかないわ。…不快じゃないけど、快楽という概念からは遠いわね。」 感情が薄く、不感症に近い彼女。それでもレンは諦めなかった。 毎夜、彼女の肌を慈しむように撫で、彼女が少しでも「心地よい」と感じる場所を探し続けた。 「不思議な人……。あまりにも非効率的。でも……私……。」 長い時間をかけ、レンの指先は彼女のセンサーを一つずつ「目覚めさせて」いった。 いつしか彼女は、行為の最中にわずかに頬を染め、小さく「……っ、ん、は……」と吐息を漏らすまでになった。 ある夜。愛交を終えた後、レンは隣で横たわるセレスの、しなやかな背中を指でなぞっていた。 艶やかな銀髪を優しくかき上げた時、レンは指先に小さな違和感を覚える。 そこには、精巧に隠された長方形の突起があった。 「何……? 何か、あったの?」 不思議そうに首を傾げるセレス。レンが慎重にその突起に触れながら、彼女の体を優しくうつ伏せにすると、カパっと音が鳴った。 それは、首筋にあったカバーのハッチが開いた音だった。開いたそこには、小さなスイッチと、淡い青色に光る液晶モニターが存在していた。 『感情・感度抑圧モード:ON』 『現在の出力レベル:1/10(初期設定)』 モニターに表示された文字を見て、レンは息を呑む。 これまで一年間、自分が必死に積み上げてきた彼女の反応は、抑圧されたシステムの隙間から漏れ出した、たったの、1割というわずかな欠片に過ぎなかったのだ。 レンの手が震える。もし、これが解放されたら。 「レン? どうしたの……変な顔し……あ……っ」 レンの指が、迷いながらもそのスイッチを深く、カチリと押し込んだ。 次の瞬間、インターフェースが青から、燃えるような赤色へと変色した。 画面中央には、脈打つようなピンク色のハートマークのネオンが浮かび上がる。 「ん、ぉ…?あ、ああああああああっ♡」 セレスがのけ反り、シーツを力任せに掴んだ。その瞳が、かつてないほど大きく見開かれる。 そして、人間に限りなく近く、かつ精密に設計された股間から勢いよく、プシュッ、プシュッと、抑えきれない潤滑液が飛沫となって溢れ出し、シーツを濃く濡らす。 変わり果てた彼女の様子に、レンは喉を鳴らす。 「あ、はぁ…、はぁ…♡レ、レン…♡」 セレスは荒い息を吐きながら、レンに顔を向けた。 その瞳は、これまで見たこともないほど潤み、情熱的な光を宿している。 「何これ…♡私の体…何が起きてるの…?♡」 セレスの声は、これまでの事務的なトーンとは打って変わり、甘く、そしてどこか艶っぽい。 その時、彼女の両目の瞳の奥が僅かにピンク色に点滅し、その短時間で彼女の電子頭脳は状況を理解した。 「そん、な……っ♡ 嘘、でしょ……っ♡」 セレスの指先が、自身の火照った頬をなぞる。一年前からレンと重ねてきた記憶。 ひとつひとつの愛撫、囁かれた愛の言葉、注がれた熱。それらすべてが、今、ダムが決壊したかのような勢いで彼女の意識を濁流となって駆け巡った。 「私、ずっと……こんなに、こんなにレンに愛されてたのね……♡それを、たったの十分の一しか……。私、なんてバカだったのかしら……♡」 セレスの計算回路は、これまでの全ての感触を、現在の十倍の感度で「再定義」し始めた。 ただレンの顔を見ているだけで、脳が溶けるような快楽が彼女の背筋を走り抜ける。 「ねえ、レン……今の私、おかしいの……♡ あなたの匂いを嗅ぐだけで、ナカが……ナカがドロドロになって、止まらないの……っ♡」 彼女の股間からは、高純度の潤滑液が溢れ出し続けていた。不感症だった一年前、レンが必死に解きほぐしてようやく「ほんのり」と感じていたはずの場所が、今は何もしなくても脈打ち、歓喜の悲鳴を上げている。 レンは言葉を失ったまま、目の前で激変した愛しいアンドロイドを見つめていた。クールで、どこか事務的だったセレスの面影はどこにもない。 そこにいるのは、頬を真っ赤に染め、欲望と愛着に瞳をキラキラと輝かせた、恋する少女だった。 「レン、お願い……♡ もっと、もっと愛して……♡ 我慢できないの……♡私……っ♡しゅき……しゅきしゅき、レン……っ♡」 セレスは自分からレンの首に腕を回し、しなだれかかった。その肌は驚くほど熱い。 「いっぱい愛して♡ もっと交わりたいの……っ♡私、今まで損してた分、全部取り戻したいの……っ♡あなたの全部、私の中に突き刺して……!♡」 レンが戸惑いながらも彼女の豊かな胸に触れると、セレスは「ひゃぅっ!♡」と可愛らしい悲鳴を上げて仰け反った。 「あ、ああっ……!♡ 凄いの……指が触れただけなのに、頭が真っ白になっちゃう……っ♡ さっきまでより、ずっと……ずっと気持ちいい……!♡」 レンもまた、彼女の反応に突き動かされるように、猛烈な熱を帯びていく。 抑圧されていたのは感度だけではない。レンに向けられるはずだった愛情そのものが十倍に膨れ上がり、彼女を突き動かしていた。 お互いの体が、より深く重なり合った瞬間、セレスの体は激しく跳ねた。 「ああああああっ♡来た、来たわぁっ!♡レン、レン……っ!♡すき、すきすきすきすきっ……っ! ♡幸せすぎて、壊れちゃいそう……っ!♡」 以前なら、いつまでも届かなかった絶頂。それが今は、結合した瞬間に彼女を快楽の天上へと突き飛ばす。 彼女の内部パーツは、十倍の感度によって過敏に反応し、レンの熱を余すことなく吸い上げ、締め付ける。 レンもまた、彼女の想いに応えようと、腰を激しく動かし始める。 「あ、はぁっ♡イクッ♡んっ、んんっ……イグッ!♡気持ちいい、気持ちいいよぉ……っ♡しゅきしゅき、しゅきぃ……っ♡」 波打つ銀髪が乱れ、シーツに散らばる。セレスは何度も、何度も、レンの名前を呼びながら、小さな絶頂を繰り返した。 その瞳からは、喜びの涙が溢れ、人工皮膚の頬を濡らしていく。 「あぁっ、んっ♡イクイクッ♡もっと、もっと奥まで……♡私の全部、レンの愛で埋め尽くしてぇ……!♡」 愛撫の一つひとつが、彼女にとっては魂を揺さぶる衝撃。 レンが腰を動かすたび、セレスは幸せそうに顔を歪め、舌足らずな声で愛を叫び続けた。十分の一の愛で満足していた自分を、今の彼女はもう思い出せない。 やがて、最高潮の熱が二人を包み込み、セレスはレンを強く、強く抱きしめたまま、本日何度目かもわからない、深くて甘い絶頂へと溶けていった。 「あ……あああああ……っ!ずっと、イってるぅ…♡しあわせぇ…♡ぁ、はぁ……っ♡レン……愛してる……愛してるわぁ……っ♡」 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 事後。静まり返った部屋で、二人は汗ばんだ体を寄せ合っていた。 セレスはレンの胸に顔を埋め、まるで片時も離れたくないというように、その腕をぎゅっと抱きしめている。 「……ねえ、レン? これ、夢じゃないわよね……?♡」 セレスが上目遣いにレンを見つめる。その瞳には、かつての無機質な冷たさは微塵もなかった。 レンは、彼女へ返事代わりにキスを落とす。 「んふぁぁ…♡んふふ……♡ 嬉しい……♡ 1年前からずっと、レンはこんなに優しくしてくれてたのね。私、それを今やっと、本当の意味で分かった気がするの……♡」 セレスもまた、レンの頬に何度も何度も、チュッ、チュッと音を立ててキスを降らせた。 「私、もう一生、レンから離れないわ……♡ ずっと、ずっとこうして、いちゃいちゃして……毎日、いっぱいシて……♡ あなたの愛を、十倍にして…ううん、百倍、千倍にして返していくんだから……♡」 窓の外では、エデン・シティのネオンが相変わらず冷たく光っている。 しかし、この小さな部屋の中にだけは、熱く、甘く、そして重厚な「愛」が、確かに満ち溢れていた。