繊巧レッドボア。それがワシの、AV男優としての名前や。  ワシの本名は、赤嶺 猪路(ルビ:あかみね いのじ)。四十五になったばかりの猪獣人で、少しだけふくよかなお兄さん(※自称)や。  ワシは、ゲイ向けAVのタチ役として活動している。ざっくり言やあ、ビデオカメラん前で雄んケツにちんぽばぶち込むのが仕事や。  今日の仕事場は、海水浴場の近くにある別荘。  本日は八月十六日。通常ならば、海水浴をしにきた客で賑わっている時期や。しかし、海水浴場が閉鎖されているため、別荘の大開口窓越しから見える砂浜は閑散としとる。  ワシが風ん噂で聞いた、閉鎖の原因は二つ。監視員の確保が難しいという事と、海水浴客の減少により利益が出ないという事。  太陽ん光ば浴びてキラキラと輝く海は綺麗やけど、砂浜に海水浴客がおらんと寂しか印象ば受くる。 「まあ、あれやね。昔は賑わっとったとこが寂れてるのは物悲しかね」 「そうッスねー」  ワシの呟きに、タンクトップ姿の狼獣人が相槌を打つ。細身の青年である彼の名は灰原 狼毅(はいばら ろうき)。腕利きのカメラマンで、ワシはロウ坊て呼んどる。 「ビデオカメラの準備はできとーと? ロウ坊」 「はい、ばっちりッス! ……けど、お相手が来ないッスね。約束の時間を過ぎてるんスけど」  ロウ坊が、腕時計を見ながら顔を顰める。 「海を眺めながらのんびり待っとけばいいばい。もし相手がドタキャンしたら、ロウ坊に相手してもろうかな」 「はははっ、それじゃ撮影する係が居なくなるッスよ。ビデオが撮れなきゃ商売上がったりッス」  そう言って、ロウ坊はダブルベッドの縁に腰掛けた。ワシも隣に座って海を眺めながら、これから撮影するビデオのコンセプトを思い返す。  これから撮影するのは、大手ゲイビデオメーカーの『ハウリング』からリリースされる予定の、ノンケ処女穴中出しシリーズの十九作目。  十九作目のコンセプトは、オーシャンビューが楽しめる別荘の中で、海水浴後のノンケと汗だくセックス……といったもんやった。そのためにワシは今、ボタニカル柄の黒いサーフパンツを着て、前開きタイプの白いラッシュガードを羽織っとる。  浮かれた格好やて思うばってん、メーカー側が用意した衣装なんやけん仕方なか。恐らく、相手も似たような衣装ば着て撮影に臨むはずや。 「遅刻しちまったぜ」  噂をすれば影や。ドスドスと足音ば立てながら、左目の下に小さな傷がある大柄な白熊獣人が別荘ん中に入ってきた。  彼はワシが着ているのとまったく同じ、黒いサーフパンツを着ている。ラッシュガードもワシと同じ型だが、色は赤。恐らく、被毛ん色と被るとば避けたっちゃろう。  ワシの被毛は赤で、彼の被毛は白。つまり、お互いの被毛の色のラッシュガードを着ている事になる。これも、メーカー側ん計らいなんやろう。  メーカー側から事前に貰った情報によると、この目付きが鋭い白熊獣人の名は白貫 熊臣(ルビ:しらぬき くまおみ)。年齢は二十五歳。高校生ん時は柔道部に所属しとったらしか。  前開きになったラッシュガードの隙間から見える身体は、筋肉の上に程よく脂肪が乗っとった。いわゆる、ガチムチ体型ちゅうやつや。 「時間にルーズな男は嫌われるばい。クマ坊」 「貰ったマニュアル通りに準備したら時間がかかっちまってよ……って、おい。クマ坊ってのは俺の事か?」 「もちろん。一回り年下の男は、ワシから見たらかわいい坊主ばい」  クマ坊の目付きがさらに鋭くなる。 「おっさん、舐めてんのか?」 「まだ舐めてなかよ。今から舐めるかもしれんがね。チンポを」 「まさかそっちの狼じゃなくて、おっさんが俺の相手なのか!?」   鋭い目付きは一転して、驚きで見開かれる。  ワシにはメーカー側から相手の情報が送られてきたが、クマ坊には送られなかったらしい。もしくは、クマ坊が情報を見落としたか。 「自分はただのカメラマンッス。お察しの通り、貴方のお相手はそちらのボアさんッスよ」  ロウ坊はすっくと立ち上がった後、ビデオカメラを構えた。 「ボア? 変な名前だな」 「通り名ってヤツや。こん界隈では、繊巧レッドボアて呼ばれとる」 「線香……?」 「そんイントネーション……仏壇ん前に供えるヤツば想像したろ!? 違うけんな! 細やかで巧みな技って意味や!」  確かに盆の時期だが、ワシはまだ死んどらん。線香ば想像されたら困る。 「はあ……金のためとはいえ、こんな太ったおっさんにヤられちまうのか……」 「そん様子やと金に困っとーごたーな。察するに、ギャンブルで負けて素寒貧になったちゅうところか?」 「げっ、何で分かるんだよ」  他者を見た目で判断するのは良くないが、クマ坊からは粗野で乱暴かつギャンブルが好きそうな印象を受ける。その印象は当たりだったようだ。 「ギャンブルは程々にしといた方が良かよ。パチンコが好きなワシん知り合いはヤクザに金ば借り過ぎた挙句、海に浮かぶハメになったけんな」 「ハッ、余計なお世話だ。この仕事でゲットした金で、負け分は余裕で取り戻せるはずだからな!」  どこからそんな自信が湧いてくるのだろう。頭が沸いているのではないのだろうか。……なんて、口に出したら殴られそうやけん胸ん内に秘めとこう。  ばってん、放っといたら破滅してしまいそうな若者やな。ギャンブルで身を崩し、海に浮かぶハメになったら流石に可哀想や。 「……よし、決めたったい。ワシが今から、クマ坊にギャンブルよりも楽しか体験ばさせたるよ」 「は? 何言ってんだ?」 「あー、ボアさんが本気になっちまったッスね。ご愁傷様ッス」  ワシは長年の経験で培ってきたテクニックで、数多の雄をメスにしてきた。ワシのチンポが忘れられない、メスに。クマ坊も、今からそんメスん仲間入りや。 「ほれ、一刻も早よ金が欲しかっちゃろう? なら、しゃっしゃとやるばい」 「チッ、言われなくともそうするぜ」  不機嫌なのを隠そうともせず、クマ坊はベッドに横たわって枕に頭を乗せた。そして、懐からスマホを取り出して弄り始める。 「ヤるなら勝手にヤれよ。おっさんのチンポをケツに入れるなんてすっげえ嫌だけど、背に腹は変えられねえ」 「大丈夫や。すぐに、ケツにチンポば入れらるー事が好きで堪らんくなる。数分後には喘ぎまくっとーはずや」 「ハッ、ありえねえな」  クマ坊は鼻で笑いながら、スマホを弄り続ける。  ──興奮してしまう。こん生意気な雄ガキば、今からメスにするばい。興奮せんわけがなか。興奮しすぎて、サーフパンツば突き破りそうなくらいにチンポが硬うなってしもうた。 「ロウ坊。撮影ば始めてよかよ」 「合点承知ッス! さあ、始めるッスよ! じゅー、きゅー、はーち……」  小型のビデオカメラを片手に構えたロウ坊が、カウントダウンを始めた。カウントがゼロんなったら、仕事ん始まりや。 「……さーん、にー」  イチ、ゼロ。  撮影が始まった。 「さて、お宝ば拝見っと」  クマ坊のサーフパンツに手をかけて下にずらすと、だらりと垂れたふてぶてしかチンポが姿ば現した。少し皮を被っとるそれから、仄かにシトラス系のボディーソープん香りがする。貰ったマニュアル通りに準備をしてきたというクマ坊の言葉は嘘ではないようや。 「まずは味見をさせてもらうばい」  ピンクの亀頭が露出している部分に顔を近づけ、舌で軽く舐める。 「……ふん」  上目遣いでクマ坊を見ると、眉間に皺が寄っていた。きっと、気色悪かと思いよーとやろう。だが、そげん思っとられるのも今だけや。 「覚悟するったい。クマ坊」  大きく口を開け、だらりと垂れた肉棒を根元まで咥える。フローラルな風味に混ざって、汗の風味が微かに口の中に広がった。 「……っ!」  吸いつきながら、舌で肉棒を舐め回す。  舌ん動きに緩急ばつけるのが大事や。相手が予想できんタイミングで強か刺激ば断続的に与え続くる。そうすりゃ、チンポは快感ば得て必ず硬うなる。 「……クソッ、こんなおっさんの口で……!」  クマ坊の口から悔しげな声が漏れた。  絶対に勃起せんと思いよったんやろう。だが、現実はこん通り。クマ坊んチンポは今、ワシの口ん中でビンビンに硬くなっとる。 「がっ!? やめっ、くっ……!」  いつしか、クマ坊ん手からスマホが離れとった。もう、画面ば見る余裕が無かとやろう。それもそんはず。ワシは今、奥までチンポを咥え込んだ状態で、喉ん筋肉に力ば入れて締め付けとる。勃起した状態でワシのこん技ば食ろうた男は、一分も保たんで射精してきた。 「あっ、やべっ、あ、あぁぁぁっ!?」  口内で、硬くなったチンポが大きく跳ねる。同時に、喉ん奥に熱い液体が勢いよく叩きつけられるのを感じた。濃厚な雄の臭いが鼻腔を満たして、ワシの興奮がさらに高まる。 「気持ちよかったろ?」  チンポから口を離し、口内に放出された精液を右の手の平に垂らして受け止める。 「ちく、しょう……っ!」  クマ坊は、歯噛みして悔しげな表情を浮かべていた。ワシにイかされたのが信じられんといった様子や。 「放心しとー暇はなかくさ。本番はこれからなんやけんな」  半脱ぎ状態だったクマ坊のサーフパンツを、完全に剥ぎ取る。そして、ワシはクマ坊の左右の太腿をぐいと押し、M字開脚をさせた。  ──クマ坊のキュッと締まったアナルは、薄いピンク色をしとる。まさに処女穴と呼ぶに相応しい見た目や。 「今からここば、立派なおまんこにしちゃるけんな」 【続く】