ロウ・ジェット
[浴場1]
ナターリアを個室まで運ぶと、そっと寝かせる。
彼女を寝台へ横たえると、すぐに濡れた髪を横へ逃がし、タオルを肩までかける。
ロウ・ジェット
[浴場1]
普段なら冗談のひとつも出る男が、今はほとんど笑っていない。
ロウ・ジェット
[浴場1]
「……仕事熱心にも限度があるだろ」
「風呂でまで倒れるんじゃねえよ、馬鹿」
ロウ・ジェット
[浴場1]
声は怒っているが、その手つきはとても慎重だった。
一通り済ませた後、ナターリアを眺める。
ナターリア
[浴場1]
「うぅん……」
目を擦りながら身を起こす
ロウ・ジェット
[浴場1]
「大丈夫かい? お姫様」
ナターリア
[浴場1]
「ひょえ」
「ロウくん……どうして、ここに……?」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「たまたま仕事でこっちに来ててな。そしたらフラフラしながら入浴してきたナタリーが現れたってわけだ」
ナターリア
[浴場1]
「なるほどぉ……奇遇ですねぇ……」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「ああ。本来であれば運命的だ、とか言って喜ぶべきなんだろうけどな」
ナターリア
[浴場1]
あ、これ怒ってるな。
ロウ・ジェット
[浴場1]
「……急に恋人が目の前でぶっ倒れなければ」
ナターリア
[浴場1]
「あれは……ロウくんが悪くってえ…………」
「いると思ってなかったからびっくりしてえ……」
ナターリア
[浴場1]
「……ごめんなさい」
ロウ・ジェット
[浴場1]
ロウは小さく息を吐いた。責める声ではない。
安心したような、呆れたような声だった。
ロウ・ジェット
[浴場1]
「まあ、そうだな。こんなところに俺がいたのが悪い」
「……だから謝らなくていいさ」
ナターリア
[浴場1]
「ロウくん……」トゥンク
ロウ・ジェット
[浴場1]
「……それにしても、“ロウくんが悪くってえ”か」
「ずいぶん可愛い罪状だな」
ナターリア
[浴場1]
「だって……びっくりしたから……」
「お仕事中いつでも会いたくなる人の顔が目の前にあったんだもん……」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「じゃあ、びっくりさせた俺は有罪だな」
「罰として、今日一日はしっかりとナタリーのことを見張る」
ナターリア
[浴場1]
「……」
「キングスフォールに戻ったら……今回の出張のレポートとか……纏めないとで……」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「今は全部禁止だ」
ナターリア
[浴場1]
「ぴぇ」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「俺が幻覚に見えるくらい疲れてたんだろ? だったら休もう。一緒にさ」
ナターリア
[浴場1]
「さ、さっきは見えてなかったの……!」
「たまに見ることはあるけど……!」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「おいおい」
「俺がいない時に、どんなロウくんが見えてるのかをじっくりと聞く必要がありそうだな」
ナターリア
[浴場1]
「しまった……!墓穴を掘った……!」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「幸い時間はある。仕事はキングスフォールに戻ってから考えろ。俺も手伝うからさ」
ナターリア
[浴場1]
「うう……はい……」
どの道、こうなってはロウくんに反抗は出来ないのだし。
ロウ・ジェット
[浴場1]
「……なあ、ナタリー」
ナターリア
[浴場1]
「はい……」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「俺は、お前が仕事を頑張るところが好きだ」
ナターリア
[浴場1]
トゥンク
ロウ・ジェット
[浴場1]
「責任から逃げないところも。疲れてるくせに、誰かのために働くところも」
「でもな……お前が倒れるまで頑張るのは、好きじゃない」
「俺の好きな女が、自分を後回しにしすぎるのは……心臓に悪い」
ナターリア
[浴場1]
「ううっ」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「愛してるよ、ナタリー」
ナターリアを抱きしめながら囁く。
ナターリア
[浴場1]
ぼっ、とナターリアの顔が朱に染まる。それこそ本当に燃えるような勢いで。
ナターリア
[浴場1]
「わっ、私もっ」
声が、上ずりながら。
「愛してますっ」
ロウ・ジェット
[浴場1]
「だから、今はゆっくり休んでくれ」
ナターリア
[浴場1]
「ひゃい……」
ロウくんはかっこいいなあ……と惚れ直し(数日振り数百回目)しながら体重を預ける。
ロウ・ジェット
[浴場1]
「よし、じゃあ宿に行こう。この姿のナタリーを他の男には見せたくないからな」
と言って、ナターリアを抱きかかえながら個室を出る。
ナターリア
[浴場1]
「ひゃあっ!」
びっくりして大きな声を出すが大人しく運ばれます。