エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「────」ぽつぽつと村を歩く。
喧騒の中をこうして|ゆっくり《・・・・》そぞろ歩くことなど、かつての俺にできることではなかった。
時間がない。寿命がない。
止まらぬ砂時計を日々眺め、進展のない──今にして思えば大幅にあったのだが──時を過ごしていたわけなのだから。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「……実感湧かんな。本当に|人間《・・》になったのか?」
何度目かになろう独り言。
その度どこからかじっとりした視線に晒されている気がする。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
信用していないわけじゃない。
今もまだ、いつか見た夢の続きの中にいるようで────
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
頭を振る。
狂気的なまでの前向きを己に強いていた反動か、どうも後ろに逸れてしまいがちだ。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
そうこう歩いている内に、馬小屋に辿り着く。
なんだったか、生まれ直しとか復活とかに由縁がありそうだなと思いながら切り出されたまま転がっている丸太に腰を下ろす。
轡を並べる馬を見やったまま、数刻前の出来事を回想する。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
アレは自分の意義を探すことに随分と執心していた。
ありはしない、という可能性が0じゃあるまいに。
最近は……随分と落ち着いていたようだったが。
どうやら手がかりを見つけてしまったらしい。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
──想起の魔剣。
忘却された記憶を呼び覚ます力を持つ……らしい。
それが、自分がかつて転がっていた遺跡の中で迷宮を形成したそうな。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
アレは──アポロは、鴉の面子に声をかけて、その迷宮を踏破しようとしている。
それはまぁ、良い。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「問題は……」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
あそこは|洋上無人要塞都市《ジェフリー》と、気質が似ている。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「いたしな……いや、アレが生まれた場所ならいないわけもないが……」言葉を濁して
万が一に備えるべきだろう。
今回は控えがいた方が良いと──俺はそう判断した。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「……まぁ、今すぐってわけでもない」ふぅ、と息を零して
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「ふむ」
「中々奇妙なところにいるものだね」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「ん?ああ……意味もなく歩いてみたんだ」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「意味もなくな。うん」 がちゃ、と兜を外し
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「それはいい。意味のあることばかりだと退屈だ」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「ようやくこういう動きもぎこちなくだが楽しめ────ああ、いや」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「まず意識するべきではないんだったな、こういうことを」
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「そうだね。何も考えず、頭を空にして動くというのもいい」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「染みついた動きからは中々脱却しにくいものだ」
ちょいちょいと手招き。
エイド・グラスパー
[馬小屋]
その招きに応じて近付き……胸の中へと収まる
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
膝の上に乗せた彼女の頭をすりすりと撫でる。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「ちょうどつい、こうしてしまうみたいに」
エイド・グラスパー
[馬小屋]
その手に、自ら頭を擦り付ける
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「そうだね。ただそう在るべくして在るかのように」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
(かわいいな……)
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「アポロから依頼があってな」
エイドの小さな身体を抱きしめながら、少し曇った顔が視界に入らないようにして。
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「ふむ。聞こうか」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「──想起の魔剣。読んで字の如く、失った記憶を取り戻す力のあるそれが、魔剣の迷宮を作ったらしい」
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「ふむ」
「……アポロの失った記憶、というと」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「自分の使命を与えられる以前の記憶か、作成された当時の記憶が目当てだろう」
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「何とも難しいものだね、何なのか分からないまま追い求めなければならないというのは」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「……そうだな。俺はその現状を良いとは思わない」
「ゴールが途方もなく遠くとはいえ見えていた俺でさえ……非常に苦しむ羽目になったから」
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「とはいえ。力添えあって、僕達は見事掴み取った訳だ」
「なら……今度は、僕達の番だろう。違うかな」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「間違いない。協力の仕方は用相談だが」
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「ま、僕達にできることなんて知れてるさ。障害があれば、それを打ち砕くだとかね」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「勿論。ただ、それの使いどころは考えないといけない」
「洋上無人要塞都市『ジェフリー』……鴉の誰かから聞いたことはあるか?」
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「さて、どうだったかな。何分グラスランナーなものだから」くすくす、と膝の上で笑う
「お聞かせ願えるかな?」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
具体的には鴉単発凶鳥の羽の舞台になった場所なので説明はそこを参照してもらうとして────
その説明をした上で。
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「少し、アポロがかつていた場所を先に覗いて来た」
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「……無茶をするねえ。あまり危ないところに一人で行ってほしくはないのだけど」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「偵察程度だよ。お前が心配することは何もない」
「……まぁ、|アストレイド《・・・・・・》がいたんだが」
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「アストレイド」と繰り返す
「神族と呼ばれるものにして……ティエンスの素体」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「……奥にもっとろくでもないものがありそうな気がしている」
「後詰に回った方がいいかと思ってな」溜息をついた
エイド・グラスパー
[馬小屋]
「なるほど。それなら、その判断には従おうか」
「何せ君は僕の|軍師《ウォーリーダー》殿だからね」
エヴィ・アイオニムス
[馬小屋]
「──ハ、仰せのままに」恭しく笑ってみせた。