ラケルナ
[露天風呂]
大浴場は人が多かったためさっと髪と身体を洗い、人気のなさそうな露天風呂へと抜けて来る。
やはりというか人の姿は皆無。ラルヴァで、夜でもリラックスのできる環境が待っていた。
ラケルナ
[露天風呂]
「ふー…………………………」
長く息を吐く。いつもこさえる生傷に染みる風呂にも、慣れて来たものだ。
こてんと縁に頭を置いて、湯に身体を預ける。
ラケルナ
[露天風呂]
「いい湯ですねぇ」
誰に伝えるでもなく呟いて、音は開放された空に放たれていく。
ラケルナ
[露天風呂]
誰の耳にも入らぬままに。それが心地よい。
ラケルナ
[露天風呂]
抑圧されている……などと言う気はないが。それでも普段から我慢していることは多いように感じる。人族の領域で蛮族が生きようと言うのだから、それは当然のことで、仕方のないことだと理解しているけれど。
しかしやはり、こうして解放的でいられる時間はとてもありがたく、そして得難く感じるものだ。
ラケルナ
[露天風呂]
「あふ……」
欠伸なんかも、してみちゃったりして。
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
石床を足音少なに歩いてくる金髪の人間がいる
ラケルナ
[露天風呂]
足音に、目を瞑る。この眼を見て良い気分になるものはいまい。
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
かけ湯は済ませているらしく、湯気の温かさに癒しを予感しながら湯舟へ…と
先客がいる
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「すまぬの、失礼する」
一声かけてから湯に浸かる
ラケルナ
[露天風呂]
その声にパチリ、と目を見開き声の主に顔を向ける。
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「…うむ?」
よく見ると知った顔だった
ラケルナ
[露天風呂]
「ソロモンさん!」
ばしゃ!と湯を自分の身体で持ち上げつつその場に立ち上がる。
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「ラケルナではないか」
「久しいの。元気だった…」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「カカッ。聞くまでもなかったか」
ラケルナ
[露天風呂]
「はい!このラケルナ、いつも元気です!」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「あぁ。そうであると嬉しいものよ」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「じゃが、ま。ほどほどに仲間やワシを頼っていいんじゃよ」
ラケルナ
[露天風呂]
「はい!と言いたいところですがまだまだソロモンさんのお力を借りるに見合う力は得ていませんで……」
「もうしばらく、お待ちください」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「そうか?」
そこで改めて老体はラケルナさんをしげしげと眺めます
自身と全く同じ背丈だ
ラケルナ
[露天風呂]
違いがあるとすればラケルナの身体には生傷古傷問わず無数の傷があり、ソロモンさんの方にはそれが見当たらない綺麗な身体であることだろう。
ラケルナ
[露天風呂]
「そうです!」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
…と、いうほどでもない
年齢に見合わぬ依頼を受けているためか、肌には薄い傷もそれなりに
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「…ふふっ」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「ラケルナや。初めて会った時のことは覚えておるかの?」
ラケルナ
[露天風呂]
「はい、はっきりと」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「ワシも未だに覚えておる」
「その時の…今より少しだけ幼かったお主に比べて」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「確実に、1段以上強くなっておる」
「もうしばらく…ではないさ。仲間と共に戦い、過ごせるならば…」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「ワシなど、いくらも数えぬうちに飛び越してしまうだろうよ」
ラケルナ
[露天風呂]
「いえ、それはありえませんね!ソロモンさん!」
「何故なら私がソロモンさんと肩を並べる資格を得た暁には私達は共に戦うからです!」
「ゆえに飛び越えることはありません。ともに成長していくのですからね!」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「…カカッ!」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「なんともまあ頼もしい話じゃ」
「じゃがワシの成長には期待せぬことじゃな。老体は朽ちゆくのみであるからの」
ラケルナ
[露天風呂]
その言葉には眉をしかめる。
ラケルナ
[露天風呂]
「いえ、残念ですがそれもなりませんね」
「私がソロモンさんへ期待することはやめません。どれほど期待してもしすぎるということはないです」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「むむ…」
この子と関わってそれなりに経つが、こういう所だけは頂けなかった
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「いや、あのな…。くどいと思われるかもしれぬが…」
「ワシが老体なのは事実じゃし、成長など期待できぬのも事実なのじゃ」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「実力はまあ…客観的に見て高位冒険者クラスはまだあると自負しておるが」
ラケルナ
[露天風呂]
「そうですか」
「ではソロモンさんが自分へ掛けることの出来なくなってしまった分の期待も、私が受け持つといたしましょう」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「お主のそのワシへの過剰なまでの信用はどこから来るんじゃ…」
ラケルナ
[露天風呂]
「ソロモンさんからです」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
…子供らしいといえばそうだ、が
やはり…ラケルナの年齢でここまで辿り着くには無理も難題もあったのだろう
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
その時、支えとなるものが母の事しかなかったのが
今このような形で発露しているのかもしれぬな…
ラケルナ
[露天風呂]
「何より」
「ソロモンさんが言ったのですよ。力になってくれると」
「……あの言葉は嘘でしたか」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「その言を違えるつもりはない」
ラケルナ
[露天風呂]
「であれば」
「私は無限に期待しますよ、ソロモンさんに」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「無限!?」
ラケルナ
[露天風呂]
「無限です。尽きることはありません」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「そうかぁ…尽きぬのかぁ…」
あの時に力を貸すと約束したのに後悔など欠片もない。ないが
ラケルナ
[露天風呂]
「はい」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
そうかぁ…
ラケルナ
[露天風呂]
「……それだけ、あなたは私の心を救ってくれたんです」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「………」
ワシは…忘れておったのかもしれん
ただの一言、その力を
ラケルナ
[露天風呂]
「ですので」
「ソロモンさんが如何に過大評価と思おうと、私からソロモンさんの評価が変わることはありません」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「うむ…」
これを言葉で覆すのはおそらく無理じゃな、と諦めた
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「…む、そうじゃ」
「リコットや他の仲間の話を聞きたいのう、ワシ」
このまま攻め込まれると分が悪い。話を変えることにした
ラケルナ
[露天風呂]
「リコットさんとネァさんですか。そうですねぇ……」
「リコットさんとは面識がおありのようですし、今日はネァさんの話をしましょうか」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「そうじゃな。今まで、そのネァと会ったことがなくての」
タイミングが悪かった。名前しか知らない
ラケルナ
[露天風呂]
「ネァさんはダリオンの神官でして、そしてフィノア派のドルイドなエルフです」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「ほう、ダリオンの」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「…フィノア派?」
ラケルナ
[露天風呂]
「木になりませんか?それが私達とネァさんのファーストインプレッションでした」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
その疑問符は存在を知らぬことを意味するものではなく
”あの”フィノア派?という意味だった
ラケルナ
[露天風呂]
「ネァさんはフィノア派らしく、森を取り戻したいと常々言っておられるのですが」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「う、うむ」
ラケルナ
[露天風呂]
「さりとて今ある営みを否定することも避けたいようでして」
「理想と現実の狭間に板挟みになりながらも、足搔いている方、諦めようとしない方、と簡単に紹介するならそんな方です」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「なるほど」
よかった…!穏健派のフィノア派だ…!
ラケルナ
[露天風呂]
「とても魔動機が嫌いなのでそこは少し、困りものですが」
苦笑も交えつつ。
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「フィノア派ならば致し方あるまいて」
ラケルナ
[露天風呂]
「アルケミーキットすら嫌がるんですよ」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「筋金入りじゃの。まあそうでもなければフィノア派にならんか…」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「樹にならんかと尋ねられたとき、なんと返したんじゃ?」
ラケルナ
[露天風呂]
「今は考えていませんが、後々なら悪くないですね。……というようなことを」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「おや」
樹になるのもやぶさかでないのか…
ラケルナ
[露天風呂]
「蝋になるよりはマシじゃないですか」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「…そうじゃな」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「ならば、今はそのつもりがなくなったかのう?」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「なにせ、ノスフェラトゥを狩る仲間も実力も付けてきておるのじゃからな!」
ラケルナ
[露天風呂]
「今はネァさんと仲良しになったので。私の目的を果たしたあとに、お手伝いをするのはいいかなと」
「果てにあるものが樹木でも、そう悪くはないかなーとそんなところを」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「ふむん」
子供らしい所と現実を見る賢さと、枯れた部分があるよなこの子は
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「仲良くなったといったが、あれかの。依頼で組んだというわけではないのかの?」
初対面がお前も樹にならないか?ならば
ラケルナ
[露天風呂]
「依頼で組みまして」
「リコットさんともその時が初対面でした」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「おや。あの子と一緒に出会ったのじゃな」
ラケルナ
[露天風呂]
「その時は依頼が終わったら打ち上げをして解散となったのですが……」
「幾度か再会して。リコットさんを仲間にした時にちょうどネァさんとも遭遇しまして」
「私達二人だと危なっかしいからと不安そうにしていたのでじゃあ一緒に。と」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
クク、と喉元で笑う
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「なんじゃ。面倒見がいいというか、お人よしというか……」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「…ほれ。おったじゃろ?」
「蛮族だろうが気にせず助力をするような、お人よしが」
初めて会った時の会話から
ラケルナ
[露天風呂]
「ふふ、そうですね」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「ワシが言うまでもなく実践しておるじゃろうし余計な世話じゃろうが」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「…大事にするといい。仲間たちをの」
ラケルナ
[露天風呂]
「はい」
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
「うむ」
かつての自分自身と重ね合わせながら、満足そうに頷いた
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
そうして湯に身を任せ、夜風の涼しさを楽しむ
ラケルナ
[露天風呂]
隣で。再びリラックスして湯の温かさと夜風の涼しさで整う。
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
200以上も年齢の離れた子と共に浸かるその姿は…
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
外見だけならば友人のようであった
サンスベリア=ソロモン
[露天風呂]
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
しばらくの後。二人が上がり、無人となった後の露天に小さな影がある。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
ちゃぷり、と身を浴す。
これまでは湯の熱が芯へ伝わる感覚が心地よいと感じていた……が。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
今日ばかりは、少し違う。
むしろ、身に残る熱が洗い流されてしまうのが惜しいような。
そんな感覚。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
「……」
熱を帯びた頬を、夜風が撫でる。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
誰もいなくてよかった、と思う。
今、何を口にするか自分でも分かったものではないから。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
小さな総身を満たす喜びを、少しずつ鎮めていく。
いつまでも浮かれている訳にも行くまい。
……彼女に言わせれば、それも"かわいい"のだろうが。
意味もなく何度も湯から手を出し、顔を撫でる。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
……思い起こすばかりではなくて、先のことも考えなければ、と思う。
家を持てば……これまでのように、あちこち転々として山の管理を行うなど難しいだろうし。
レンジャーギルドに相談をしておいて、少しずつ規模を縮小させてもらうのが無難だろうか、と思う。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
些か申し訳なくはあるが……元より、自分の趣味のようなものだった。
生き甲斐、と言い換えてもいい。
ただ、それよりも大きな生き甲斐を見つけただけの事。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
口元に手をやる。
気を抜けば、どれほど緩んだ顔を晒すか分かったものではない。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
「……いかんな」
いつまで経っても、平常心が戻って来そうにない。
岩に頭を預けて、天を仰ぎ見る。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
相変わらず月の綺麗に見える場所だ、と思う。
揺れる湯けむりを越して見るそれは、眼鏡を外して見るとより幻想的に見える。
彼女もこの景色を好ましく思うだろうか、と考え……僅かに、首を振る。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
きっと、問うまでもないことだ。傍らに僕が在るなら、なおのこと。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
……ようやく、そう思えるようになった。
……ただ。
彼女の肌を見るのは僕だけで在りたい、と思う気持ちも、ある。
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
「……悩ましいな」
ジャック・アウイナイト
[露天風呂]
「……うん」
家を建てる時は個人用の風呂を付けれないものか聞いてみよう、と思った。