『闇の闘士の二人が「S.H.Figuarts(真骨彫製法)日野勇太」で遊んでみた。』 「やはりそういう事なのね…」 開口一番、橘樹 文華がよくわからない事を口走った。 「橘樹さん……えぇ、そういう事です」 などと千年桜 織姫もよくわからない受け答えをしたところで場面が切り替わる。 __________ 「はい、というわけで皆様こんにちは…千年桜 織姫です。」 「橘樹 文華よ」 挨拶を済ませたところで文華が疑問に思った事を口にする。 「ところで…どうして私達が呼ばれたのかしら?こういうのって普通本人が出演するものではないの?」 「アーツの対象年齢は15歳以上…残念ながら日野さんの年齢ではこちらの商品をご購入いただけないので、面白おかしくレビューしてくれそうな私達に白羽の矢が立ったとの事です。」 「面白おかしく?…生憎だけれど、メーカー様のご期待には応えられそうにはないわね」 織姫からの説明を受けても尚、文華は釈然としない様子。 「……では早速フィギュアの方を見て参りましょう…」 埒が明かないと判断した織姫は話を切り出すべく、卓上のフィギュア一式に視線を向けた。 「真骨彫製法なだけあって上々の出来ではないでしょうか?アーツとしては小柄な方ではありますが、塗装は申し分無し…お顔も商品ページだとのっぺりしていてあまり似ていない印象を受けましたが、実物はそう悪くありません…。何よりTシャツのドット絵…タンポ印刷での再現が非常に忠実ですね…」 フィギュア本体の感想を織姫が述べた後、今度は文華による付属品の解説だ。 「……デジヴァイスよ」 一言述べると手に取っていたデジヴァイスを卓上に置き、次にゴーグルを手に取る。 「……ゴーグルね」 「これは進化の時に使う何か小物……あっ…」 タグと紋章を指で摘まみ上げようとしたその時、勢い余ってタグを指で弾き飛ばしてしまった様だ。 「………ナイヨ!?…ナイヨ!? ……………アッタヨ!!」 文華はしばらく動転しながら床の上を探し回っていたが、無事見つける事ができた様子。 「…………どれも小さいながらとても良く出来ていると思うわ」 何事も無かったかの様に椅子に座り、クールな雰囲気を必死に保とうとする。しかしながら今さら何をやっても焼け石に水なのは言うまでも無い。 「他には交換用の手首パーツも豊富よ。早速このデジヴァイス持ち手に交換してみましょう」 文華はフィギュア本体を手に取り握り拳パーツを外そうとするが、接合部が固いのか中々取れないでいる。見かねた織姫が声を掛ける。 「橘樹さん…パーツが中々外れない時はドライヤーやぬるま湯で軟らかくしてから取り外すようにして下さい。無理に外そうとすると破損の原因に…」 ペキッ 「「………あ…」」 __________ 再び場面は切り替わり、卓上にはデジヴァイスを構える勇太のフィギュアが置かれている。 「こちらがデジヴァイス持ち手を使って、デジヴァイスを持たせた状態になります。」 「難儀な玩具ね…」 「流石にあれは橘樹さんが悪いかと……ですが難儀という点には概ね同意です。先程は上々の出来と申しましたがそれは造形や塗装面での話…。パーカーを羽織ったスタイルが可動の幅を狭める要因となってしまい思う様なポージングをさせる事が出来ず、特にフードのある首周りなんて最悪ですね…。ゴーグルを首から掛けさせる事で更に可動が制限されてしまいます。このポーズを取らせるまでの間に何度干渉する部分を削ってしまおうと思った事か…。それに換えの表情パーツの少なさも如何ともし難いです。付属するのは笑顔、驚き顔、叫び顔、の3種のみ……もっとキリッとした感じの表情は用意できなかったのでしょうか?この手の可動フィギュアは戦わせるシーンを再現してこそなんぼでしょう……驚き顔なんてパッと見で叫び顔との違いが分かり辛い様なしょうもないものにコストを割くくらいならそちらを入れて欲しかったです。数年後にお出しされるであろうリニューアル版という名の実質値上げ再販に付属するなんて言い出したら怒りますよ、本当に……。兎にも角にも、このままの仕様でお出しするというのであれば私は購入を見送らせていただく所存でございます…」 「織姫さん…」 次第にヒートアップする織姫を制止する様に文華が声を掛けた。 「…何か?」 織姫を宥めようとしたのかと思いきや、どうもそうではないらしい。 「進化の時に使うやつが見当たらないのだけれど…」 「……またですか…」 またもやタグを落としてしまった様だ。二人でテーブルの下に潜り込む。しかし今回は中々見つからないのか、一向に二人が上がって来る気配が無い。 __________ またまた場面が切り替わりTake3。 「というわけで、非常に小さい付属品ですので紛失には気をつけましょうという注意喚起でした。」 「お高いのだから、スペアの一つや二つ付けて欲しいところよね。この進化で使うやつ」 「……」 「…………あ、いや、別に高くないわ。いつまでも棚の守護神やってるよくわからないアニメのフィギュアよりはお値打ちだと思う。」 「期待通りの意見をありがとうございます。橘樹さん」 「そう…」 期待通りって何が!?織姫さん的にはあれが正解だったの!?などと内心では戸惑いつつも文華は決してクールさを損なわない。 「では商品レビューに戻りましょうか。本商品には勿論、パートナーデジモンであるボーボモンも付属するわ」 「すみません橘樹さん。よく聞こえなかったので何が付属するのかもう一度教えて貰えないでしょうか…?」 「ボーボモン」 「フフッ…」 ボーボモンが笑壺に入ったのか、織姫は腹を抱えながら必死に笑いを堪えている。 「え!?何!?どうしたの!?織姫さん!?織姫さーん!?」 __________ そしてTake4。 「以上が商品レビューになります。」 「エスエッチィグアーツシンコッチョンシェ-ホーディノヒュータの魅力は少しでも伝わったかしら?」 言い慣れない単語故に噛み噛みになってしまい、結果オンドゥル語を話している様になってしまった文華。 これがまたもや壺に入ってしまい、腹を抱えて蹲る織姫。 「ちょっ……本当にやめて下さい橘樹さん……」 「だから何なの!?」 「推しのテイマーの立体物が欲しいという皆様……フフッ シリーズが存続できるか否かは…… ディノヒュータの売り上げに……プッ 掛かっていますので、この機会に…本商品を…是非手に取っていただきたく…存じます…」 「そんなに笑わなくたって良いじゃない!!」 最後までグダグダなまま、レビュー動画は終了となった。 __________ 「などという事が先日ありまして…」 「…なんでその話を私に…」 織姫から一連の出来事を聞かされる烏藤 すみれだったが、織姫の意図が一切理解できず困惑気味な様子だ。 その傍ら、本棚の薄い本を物色していた文華は顔を真っ赤にしながら聞き耳を立てている。 「(あいつらいつまでここでくっちゃべってるつもりだ?いい加減帰って欲しいんだが…)」 古本屋を切り盛りしている店主、浅霧 皐はただただ迷惑そうに3人の様子を眺めているのであった。