ミルウォールブリックのオーナーの新聞に載っていたハイローラースイート追悼文 1968年のコロネーションカップ、2冠馬ロイヤルパレスを破り栄誉を手にしたのはケンタッキーダービー馬でもあるHighroller Sweetである。 当社の新聞を愛読している皆様であれば大枚はたいたギャンブル中毒者を捕まえておく牢獄ならばHighroller Suiteではないのか、ポーランド人はアワレにもドイツとロシアに殴られ続けて言語中枢に障害が生じたのかと首を捻るであろうがそうではない。 不夜城ラスベガスはギャングの巣窟でありFBIに痛くもない腹を探られるのを躱すためと、何よりも本馬が稀代のチョコレート好きであると知ったオーナーががわざわざSweetと名付けたのである。舌鋒鋭い当新聞主筆の『チョコレートをサラブレッドの禁止薬物にしろ!』の記事をフィッシュ&チップスの包み紙で見たことのある記憶のある読者もおられるであろう。 そんな名馬が社会主義の終焉を見届けた後、先月息を引き取った。 商魂たくましい大手食品会社、マーズ社は主力のチョコバー、スニッカーズを本馬が毛嫌いしていたことを苦慮していたのだろう、好物であったチョコスナック『プリンス・ポロ』の生産会社たるオルザSAと業務提携を結びアメリカ向けに『ハイローラー・スイート』という名で売り出した。パッケージには『ボロ雑巾の山』と酷評された本馬があしらわれ、裏にはそれぞれに『勝負師御用達』『口元に甘美なる幸運を』『サンドイッチよりお手軽』『葉巻はもう時代遅れ』『Chant du Cygne』などとまあ歯の浮くようなセリフが並べられている。 戯れに当新聞主筆が1つ買い求め大英帝国が誇る名馬にして種牡馬たるミルウォークブリックの鼻先に近づけさせたところ、ぺろりと平らげお代わりを催促し、無いことを知ると犬のような悲痛な遠吠えを上げた。マーズ社には申し訳ないが、当製品は人よりも馬の嗜好に合致している模様。 鉄のカーテンを潜り抜け、自由とチョコをこよなく愛し、最強でも最優でも最速でもなく最高であり続けた稀代の勝負師Highroller Sweet、最後の大勝負を終え極上の臥所(highroller Suite)にて眠りにつく。