キャッシュがデリートされその体が崩れると同時に彼が作り上げた空間も崩壊していく。マギアビーストは天高く飛び上がると全身から光を放ち崩れ行く世界を修復していく。   調整屋から外に出た炎山はクロスフュージョンを解除し上空を走る光を見て全てが終わったことを察する。 科学省に連絡しようとした瞬間、背後から強い衝撃と共に柔らかい感触に包まれる。   「えんざーん♥️」 「離せ、俺はまだやることが…」   炎山がみたまを引き剥がそうとすると、正面から足音もなく十七夜が近付いてきて炎山とみたまを一緒に抱き締める。   「……」 「お前までなんだ!?…ブルース、見てないで助けろ!」   顔を赤くしてブルースに助けを求める炎山に、ブルースは思わず苦笑してしまうのだった。       「繋がらないな…」 炎山に連絡を取ろうとしたが応答がなく困った顔をしていたライカに、旭が後ろから肩をポンと叩く。振り返ると時女一族の皆が無事を祝ってネットセイバーと談笑していた。 ライカも肩の荷が降りたのか一息吐くと旭と一緒に皆の元へ歩き始めた。     「あー終わった終わった」 「楽勝だったな」 「このまま遊びに行っちゃうとかアガんない?」 「プリンセスに賛成!」 「駄目ですよぉ…」   ネオWWWとネオマギウスの面々もぞろぞろと帰路につこうとしていた。 後ろから皆の様子を見守っていた時雨だが、ふとテスラが振り返って時雨を見つめる。そして、黙ってこちらに来るように手で呼ぶ仕草を見て、時雨は駆け足で駆け寄っていく。       「……そうか、引き続き頼む」   科学省では祐一郎が職員からの報告を受けて連絡を取り合っていた。 それぞれ孤立していた各地にネットワークを復旧させる手はずを伝えようやく一段落したところだった。 名人が安堵した表情で祐一郎に話しかける。   「終わりましたね、光博士」 「ああ、皆本当にご苦労だった」   科学省の防衛をしていたネットセイバーも警戒を解いて各々自由に行動し始める。 みふゆも変身を解いて部屋を出ようとすると、ちょうどそこにドリルマンが帰って来た。その顔を見て、みふゆは笑みを浮かべて思い切り抱き締めに行く。       熱斗は重い瞼を開けて意識を取り戻した。 マギアビーストから変身を解いた熱斗の視界に写ったのは優しい笑みで自分を見下ろす結菜の顔だった。 驚く熱斗の頬にそっと結菜の手が添えられる。   「やっと、貴方を助けられたわねぇ」 「……ありがとう、結菜さん」   突然のことに驚いた熱斗だが、やがて頬を赤く染めながら結菜にお礼を告げる。 その様子を遠くから眺めていたプロミスドブラッドの面々だったがアオがしびれを切らして飛び出そうとする。   「いつまで膝枕してるのかなー!?」 「まあまあ良いじゃねーか妹、今回くらい」 「いっつも姉さまあんな感じだよね!」 「まあまあ良いじゃねーか妹」 「よくない!!!」   騒ぎ始めたアオを宥めつつ、ロックマンは結菜の元にいる熱斗を見守りながら呟いた。   「お疲れ様、熱斗くん」         「あーん、疲れたよアイリスー」 「そうね」   自分になだれかかってくる灯花を抱き止めてアイリスは笑みを浮かべる。   「ご苦労だったな、カーネル」 「いえ、大佐こそ」   「大佐!カーネル!」     戦いを終えたバレルとカーネルにかりんが声をかける。 かりんを見つめるバレルとカーネル。色々なことを伝えたかったかりんだが、声は出さずに、ただ右手で敬礼をした。 笑顔で敬礼をするかりんを見て、カーネルは静かに笑みを浮かべバレルは右手をシュッと前に出して微笑んだ。   「ほれ、何をやっとるんじゃ。引き上げるぞ」 「帰るわよ、かりん」   ワイリーとゆりこが皆に帰るよう促す。かりんは慌てて皆の元へ駆け出した。     「待ってなの、ゆりこお姉さん!」         一連の騒動が収まったのを見届けると、フォルテは踵を返しワープしようとする。そこへみことが声をかけた。   「もう行くの?」 「ここにもう用はない。お前も付いてくるな」 「つれないなー」   さっさとワープしてこの世界を後にしたフォルテにみことは呆れつつ、自分も後を追ってこの世界を経った。       「あー、終わった終わった!」 「フェリシア、お疲れ様でガッツ!」     フェリシアとガッツマンは握手をして笑い合い、そのままガッツマンはフェリシアを肩にのせた。 ナイトマンも同様にさなを乗せて、サーカスマンも鶴乃をお腹の中に招き入れる。   それぞれパートナーに笑顔を向けて無事を喜び合うさなと鶴乃だったが、ふとさなが気になったことを呟いた。   「あの、いろはさんは…」 「大丈夫よ、いろは達なら…暫く二人にしてあげましょう」 「重いプクー。離れるプクー」     思い切り体重を乗せて寄りかかるやちよに対するバブルマンの抗議を無視し、やちよはさなにいろはの無事を伝えた。         湾岸病院前の海でいろはと黒江は二人で寄り添って沈み行く夕日を眺めていた。やがて、静かにいろはが口を開く。   「ずっと考えていたよ。あの日黒江に合わなかった私を。ネットワーク技術が発達していなくて、ネビュラもデューオの試練もなかった時の自分を」 「……うん」 「そこには、もしかしたら今より幸せな私がいたのかもしれない。ういと今でも一緒に笑いあって、私の知らない色んな人ともっと仲良くなっていた未来があったかもしれない」 「そうだね」   「それでも私は、今この瞬間を後悔なんてしてないよ。ういや灯花ちゃんやねむちゃん。リーガルやスラーやデューオ達と戦った自分を、辛くても否定はしない。今抱えてる痛みや、熱斗君達と一緒にいられた喜びも全部私の本当の思いだから」 「……」   いろはと黒江の脳裏にあの日の、初めて病室で出会った時の光景が浮かび上がる。 いろはは黒真っ直ぐ見つめて伝える。   「あなたを見つけて、私は幸せになれたよ」 「……私も、だよ」   静かに涙を流す黒江。二人の距離はいつしか縮まっていき、やがてそっと互いの唇が重なりあうのだった。