「ごめんなさい……ごめんなさい、お母さん、もう無理……」  薄闇に溶けるほど小さな声が、か細く震えた。結い上げた髪が乱れ、汗で額に張り付いている。彼女の瞳は潤み、恐怖と羞恥に揺れていた。しかし、母親の腕は娘の華奢な身体を抱き締め、頭を優しく撫でる。その手つきは慈愛に満ちているようで、どこかぞっとするほど冷たかった。 「大丈夫よ、愛子。もうすぐ終わるから。お母さんが、ちゃんと見ててあげるから」  母親の言葉は、まるで子守唄のように甘く響いた。だが、その言葉とは裏腹に、彼女の視線は娘の背後に立つ男へと向けられていた。男は無言で、ただ貪欲な瞳で愛子の全身を舐め回すように見つめている。その視線に晒された愛子の身体は、まるで氷点下の風に晒されたように身を震わせる。  男がゆっくりと手を伸ばし、愛子の背中に触れた。その指先が、肌の上を滑り、微かに隆起した肩甲骨をなぞる。愛子は反射的に身を強張らせ、男の手から逃れようと藻掻いた。しかし、母親の腕はまるで鉄の枷のように、娘の身体をしっかりと拘束している。 「お母さん……っ」  愛子は、最後に縋るように母親を見上げた。その瞳には、助けを求める切実な光が宿っていた。しかし、母親はただ静かに微笑むだけだった。 「いいのよ、愛子。これも、お母さんのためなの。それに……愛子も、きっと気持ちいいから」  母親の囁きは、愛子の耳朶をくすぐる。それは、慰めでも、優しさでもなく、愛子を奈落の底へと突き落とす呪文だった。男の手が、愛子の薄い肩を掴み、そのままゆっくりと衣服を脱がせていく。一枚、また一枚と、衣服が身体から離れていくたびに、愛子の心は深く抉られていくようだった。  やがて、愛子の全身が薄闇の中に晒された。男の視線が、愛子の裸体を這い、その白い肌の上で熱く燃えている。その熱さに耐えられず、愛子は目を閉じた。しかし、その瞼の裏には、男の欲望に満ちた瞳と、それを静かに見つめる母親の冷たい眼差しが焼き付いている。  男の指先が、愛子の柔らかな肌に触れた。その感触は、愛子の身体に走る悪寒を一層強めた。愛子は、再び身体を強張らせ、藻掻こうとした。しかし、母親の拘束は解けず、愛子はただ男の行為を為すがままに受け入れるしかなかった。  男の指が、愛子の身体を這い、胸元へと向かっていく。その指が、まだ膨らみ始めたばかりの蕾のような胸を弄ぶ。愛子は、その感触に身体の奥底から込み上げる吐き気を感じた。しかし、母親は愛子の背中に顔を埋め、静かに息を吸い込む。まるで、男が娘を犯す光景を、五感すべてで楽しんでいるようだった。  男の指が、愛子の柔らかな肌を撫で、股間へと向かっていく。その指が、愛子のまだ幼い性器を弄ぶ。愛子は、その感触に全身を震わせ、無意識のうちに涙を流していた。しかし、母親の顔は、喜びと陶酔に歪んでいた。  男の舌が、愛子の肌を這う。その感触は、愛子の身体に電流が走ったように感じられ、全身の筋肉が収縮する。男は、愛子の身体を、まるで上質な肉のように貪り、その一つ一つの部位を堪能する。愛子の心は、恐怖と屈辱に満ちていた。しかし、その身体は、男の行為に微かに反応しているようだった。  男は、愛子の身体を離し、ゆっくりと立ち上がった。そして、自分の衣服を脱ぎ始めた。愛子は、その光景を直視することができず、再び目を閉じた。しかし、その瞼の裏には、男の裸体が焼き付いている。その身体は、欲望と興奮に満ち、愛子を貪り喰おうとしている。  男が、愛子の身体を再び抱き締め、ベッドへと連れていく。愛子は、抵抗する力を失い、ただ男の腕に身を任せるしかなかった。ベッドの上で、男は愛子の身体を押し倒し、その上に覆いかぶさる。愛子の身体は、男の重みに押し潰され、呼吸が苦しくなる。  男の巨大な熱が、愛子の性器に押し付けられる。愛子は、恐怖と痛みに全身を震わせ、再び涙を流した。しかし、母親は愛子の隣に横たわり、静かにその様子を見つめている。その瞳には、悲しみや後悔の光は一切なく、ただ純粋な好奇心と興奮が宿っていた。  男の肉が、愛子の身体を穿つ。愛子は、痛みに耐えきれず、小さな悲鳴を上げた。しかし、男の行為は止まらない。男は、愛子の身体を、まるで自分の欲望を満たすための道具のように扱った。愛子の心は、恐怖と屈辱に満ち、絶望の淵へと突き落とされていく。  その時、母親がゆっくりと男の背中に手を回し、その身体を抱き締めた。男は、母親の行為に驚き、動きを止める。母親は、男の耳元に顔を寄せ、小さな声で囁いた。 「もっと、もっと激しくして。愛子の、もっと奥まで……」  母親の言葉は、男の欲望に火をつけた。男は、再び愛子の身体を穿ち、その行為は一層激しさを増す。愛子は、痛みに耐えきれず、意識が遠のいていく。しかし、その意識が朦朧とする中で、愛子の耳に、母親の喘ぎ声が届いた。  母親は、愛子の隣で、男の行為に興奮しているようだった。その声は、愛子の心をさらに深く抉った。愛子は、もう二度と母親に頼ることはできないと悟った。そして、愛子の心は、完全に絶望に染まった。  男の行為は、さらに続いた。男は、愛子の身体を弄び、その快楽を貪り喰う。愛子は、もはや何も感じることができず、ただ人形のように男の行為を受け入れるしかなかった。  やがて、男の行為が終わり、男は愛子の身体から離れた。愛子の身体は、男の痕跡が残され、薄汚れていた。しかし、母親は愛子の身体を抱き締め、優しく唇を重ねた。 「愛子……よく頑張ったわね」  母親の言葉は、愛子の心をさらに深く傷つけた。愛子は、何も答えることができず、ただ虚ろな瞳で天井を見つめる。  その時、母親は男に微笑みかけ、自分の衣服を脱ぎ始めた。男は、再び欲望に満ちた瞳で母親の裸体を見つめる。母親は、まるで男を誘うかのように、ゆっくりと身体を揺らす。男は、その姿に興奮し、再び母親を抱き締めた。  母親と男は、愛子の隣で性行為を始めた。愛子は、その光景を直視することができず、再び目を閉じた。しかし、その瞼の裏には、母親と男の絡み合う裸体が焼き付いている。愛子は、もう何も感じることができず、ただ虚ろな瞳で天井を見つめるしかなかった。  男と母親の行為は、さらに続いた。愛子の心は、恐怖と屈辱に満ち、絶望の淵へと突き落とされていく。そして、愛子は、もう二度と元の自分には戻れないと悟った。  夜が明け、太陽が昇る頃、男は母親と愛子の身体を離れ、静かに部屋を出て行った。母親は、愛子の身体を抱き締め、優しく唇を重ねた。しかし、愛子の心は、もう何も感じることができなかった。愛子は、ただ虚ろな瞳で天井を見つめるしかなかった。そして、愛子の心は、完全に絶望に染まっていた。 静謐な朝だった。少なくとも、周囲の者にとってはそう見えただろう。開け放たれた窓から射し込む朝陽は、空気中に漂う埃を金色に染め、無数に瞬く粒子は、まるで現実とは隔絶された、幻想的な世界を形成している。部屋は、昨夜の熱狂の痕跡をわずかに残しながら、既に静寂を取り戻していた。シーツには深い皺が刻まれ、甘い、それでいてどこか生臭い匂いが微かに漂っている。そのベッドの中央に、愛子の身体は横たわっていた。 ​彼女の瞳は、まるで深海の底に沈んだ硝子玉のように、光を失い、虚ろに天井の一点を見つめている。涙腺は既に干上がり、涙の代わりに、その双眸から流れ落ちるべきだった感情の残骸が、枯れた川底の石のようにそこに横たわっていた。彼女の白い肌には、男の指の跡が赤く残り、胸元から腹部にかけては、噛み痕が黒ずんで痛々しい。その下半身は、昨夜の挿入の痕が鮮烈に残っており、開かれたままの足の隙間から、男の白い残滓がまだ乾ききらずに滲み出ている。その光景は、まるで汚された彫像のようだった。完璧なまでに美しい芸術作品が、冒涜的な行為によって穢され、二度と元の姿に戻れないことが決定づけられた、絶望的な芸術。 ​隣には、母親の身体が静かに横たわっていた。彼女は規則正しい寝息を立て、まるで何事もなかったかのように安らかに眠っている。その顔は、朝陽を受けて慈愛に満ちた母親の顔そのものだった。しかし、その耳の裏には、愛子には見覚えのない、男がつけたと思われる噛み痕が微かに赤く残っている。それが、愛子の心を再び深く抉った。昨夜の行為が、母親にとって何事でもなかったどころか、むしろ待ち望んでいた、甘美な快楽だったことを、その痕跡は雄弁に物語っていた。愛子の心臓を握り潰されるような、吐き気を催す感覚が込み上げてくる。しかし、吐き出すべき感情も、流すべき涙も、彼女の身体にはもう残っていなかった。 ​愛子は、ゆっくりと、震える指先で、自分の身体を覆うようにシーツを引き寄せた。その動きは、まるで重い枷を引きずる囚人のようだった。一枚の布が、自身の裸体を覆い隠すだけの、無意味な行為。しかし、その行為に、愛子は最後の人間性を保とうと必死だった。自分の身体が、もはや自分の意志とは関係なく、他人の欲望を満たすための「モノ」に成り果てたことを、シーツの感触を通して再確認する。その瞬間、愛子の意識は、自身の身体からゆっくりと乖離していった。 ​ベッドに横たわるのは、愛子の身体。しかし、その身体を内側から見つめているのは、もはや愛子自身ではなかった。それは、感情も、痛みも、何も感じない、透明な観測者。昨夜の悪夢は、身体の隅々にまで深く刻み込まれていたが、その観測者は、まるで遠い星の出来事を眺める天文学者のように、冷徹なまでに客観的にそれを記録していた。男の粗い息遣い、母親の甘い喘ぎ、そして自分の身体が発した、か細い悲鳴。それらの全てが、意味を持たないノイズとして脳内で反響する。 ​やがて、母親が目を覚ました。彼女は大きく伸びをし、愛子の横顔を覗き込むように微笑んだ。 「あら、愛子。もう起きてたのね。よく眠れた?」 その言葉に、愛子は何も答えなかった。いや、答えようがなかった。喉はカラカラに乾き、声帯は硬く凍りついている。言葉を発するエネルギーも、感情も、何もかもが枯渇していた。 ​母親は、そんな愛子の様子を見て、少しも気にする様子もなく、ゆっくりとベッドから降りた。白いシーツから現れた母親の身体には、愛子と同じように、男のつけた痕跡が残されていた。その光景は、愛子の魂を再び深く抉った。それは、この行為が、自分と母親を繋ぐ、新たな絆として認識されていることの証左だった。もはや、倫理も、道徳も、親子の情愛も、全てが歪んだ性的な儀式に塗り替えられてしまった。 ​母親は、愛子の隣に腰を下ろし、優しくその髪を撫でた。 「愛子、今日から、この人はあなたの『パパ』よ。少し、乱暴なところもあるけれど、ちゃんと愛子を愛してくれるわ。私たち、これからずっと、三人で暮らしていくのよ」 母親の言葉は、愛子の心を粉々に砕いた。それは、単なる言葉ではなかった。愛子を、完全に、そして永遠に、この悪夢の世界に閉じ込めるための、絶対的な宣告。 ​愛子は、何も言えずにただ母親の顔を見つめた。その瞳は、まるで他人の顔を見るように、無機質で、冷たかった。母親は、そんな愛子の瞳に気づくこともなく、幸福そうに微笑んでいる。その笑顔は、愛子を地獄の底へと突き落とす、悪魔の笑顔だった。 ​愛子の心は、完全に、そして永久に閉ざされた。もはや、彼女の心に、母親に対する情愛も、男に対する恐怖も、そして自身に対する羞恥も存在しなかった。ただ、深い、深い虚無だけが広がっていた。それは、何かが満たされることのない空虚ではなく、何も存在しない、完全な無だった。 ​愛子の意識は、完全に肉体から離脱し、天井のシミ、窓の外の木々、そして母親の幸福そうな顔を、ただ淡々と観察するだけの存在となった。それは、感情のない記録装置。愛子という人間を構成していた全てが消え去り、そこには、ただ呼吸を繰り返し、脈動するだけの肉塊が残された。 ​母親は、愛子の身体を抱き起こし、優しく着替えをさせた。その手つきは、まるで壊れ物を扱うかのようだった。しかし、その優しさは、愛子にとって何の意味も持たなかった。それは、感情を持たない人形を世話するような、無意味な行為。愛子は、ただされるがままに、母親の動きに合わせて身体を揺らす。 ​やがて、愛子の身支度が整った。母親は、愛子の手を握り、ゆっくりと部屋を出た。廊下には、昨夜愛子を犯した男が立っていた。彼は、愛子と目が合うと、にこやかに微笑んだ。その笑顔は、愛子には恐怖も、憎悪も、何も感じさせなかった。ただ、意味を持たない、無機質な記号。 ​男は、愛子の隣に立ち、その華奢な肩を抱いた。愛子は、何の抵抗も示さなかった。その身体は、まるで魂を抜き取られた人形のように、ぐったりとしている。男は、そんな愛子の様子を不思議そうに眺め、母親に尋ねた。 「どうしたんだ、愛子ちゃん。元気がないじゃないか」 母親は、優しく男に微笑みかけた。 「大丈夫よ。愛子は、少し疲れちゃっただけ。もう少しすれば、慣れてくれるわ」 母親の言葉に、男は満足そうに頷いた。そして、愛子の肩を抱き寄せ、優しくその頭を撫でた。その手つきは、昨夜の乱暴さとは打って変わって、まるで愛する娘を慈しむ父親のようだった。 ​愛子の意識は、その光景をただ淡々と眺めていた。温かい男の手、優しい母親の笑顔、そして、抱きかかえられる自分自身の身体。全てが、まるで他人事のように遠い出来事だった。彼女の心に、何も響くものはなかった。 ​三人は、リビングへと向かった。そこには、朝食が用意されていた。テーブルには、温かいスープと焼きたてのパンが並び、コーヒーの香りが部屋に満ちている。それは、ごく普通の、平和な家族の朝の風景だった。しかし、愛子にとって、それは虚構でしかなかった。平和という名の檻に閉じ込められ、幸福という名の毒を毎日飲まされる日々。 ​男は、愛子の隣に座り、スープを一口飲むと、満面の笑みで言った。 「いやあ、こんなに美味しい朝食は久しぶりだ。まるで夢みたいだね」 母親は、嬉しそうに微笑んだ。 「そう言ってもらえて嬉しいわ。愛子も、ちゃんと食べなさい」 母親は、愛子のスプーンを手に取り、スープをすくい、愛子の口元へと運んだ。愛子は、何の抵抗も示さず、ただ口を開け、スープを飲み込んだ。その味は、愛子にとって何の味も感じられなかった。それは、栄養を摂取するための、無機質な液体でしかなかった。 ​朝食を終えた後、三人はリビングのソファに腰を下ろし、談笑を始めた。男は、昨日の仕事の話をし、母親は、それを楽しそうに聞いている。愛子だけが、ただ無言で、ソファに座っていた。彼女の瞳は、まるで壁のシミを数えるように、虚ろに部屋の中を見つめている。 ​母親は、そんな愛子の様子を見て、ふと愛子の手を握り、優しく言った。 「愛子、今日からこの人は、私たちの家族よ。怖がらなくても大丈夫だからね」 母親の言葉に、男は愛子の手を優しく握り、微笑んだ。 「そうだよ、愛子ちゃん。僕は、君の新しい家族だからね」 愛子は、何の反応も示さなかった。彼女の心は、既に死んでいた。いや、心そのものが、最初から存在しなかったかのように、虚無だった。 ​その日、愛子は初めて、自らの存在を「無」として認識した。自分は、ただ呼吸をし、心臓を動かし、外界からの刺激に反応するだけの、空っぽの器。その器に、母親と男は、自分たちの欲望と、歪んだ愛情を注ぎ込んでいく。しかし、その器に、それらが満たされることはなかった。なぜなら、その器は、最初から底が抜けていたからだ。 ​愛子の身体は、その日を境に、母親と男の共同所有物となった。毎夜、愛子は男に犯され、母親はそれを隣で見守る。そして、男が母親を犯す時は、愛子はそれを隣で見守る。三人の歪んだ性行為は、日々のルーティンとなり、愛子にとって、それは食事や睡眠と同じくらい、当たり前の日常となった。 ​愛子の心は、もう恐怖も、屈辱も、何も感じなかった。ただ、身体が、男の行為に微かに反応し、母親の喘ぎ声に、無機質な共鳴を返すだけ。彼女は、もはや人間ではなかった。それは、感情を持たない、肉の人形。彼女は、ただ、母親と男の欲望を満たすための、美しい道具として存在し続けた。 ​そして、愛子は悟った。自分は、もう二度と、元の自分には戻れない。いや、元の自分など、最初から存在しなかったのかもしれない。自分は、最初から、この日のために、作られた人形だったのかもしれない。その結論に達した時、愛子の心に、最後の光が消えた。そして、そこに残されたのは、永遠に続く、深い、深い闇だった。 太陽は、もう愛子にとって、時間の流れを示す無意味な記号でしかなかった。朝の光が窓から差し込み、部屋を満たすたびに、それは新たな日、そして新たな悪夢の始まりを告げる。しかし、愛子の心には、恐怖も、絶望も、何も湧き上がってはこなかった。ただ、身体が、空虚な空間に存在する物体として、日々を淡々と消費していく。 ​男は、愛子の身体をまるで高価な玩具のように扱った。昨夜は優しく触れたかと思えば、次の夜には粗暴に扱った。愛子は、その全ての行為を、ただ人形のように受け入れた。男の指が、乳首を摘み、舌がそこを這う。愛子の心は、まるで遠い場所からその光景を眺めているように無反応だったが、乳首は、意志に反して硬く膨らみ、男の舌に絡みついた。心と身体の乖離(かいり)が、この爛れた生活の唯一の真実だった。理性的な思考が「拒絶」を叫ぶ一方で、肉体は勝手に、勝手に反応し、快楽の微かな震えを返す。愛子は、その反応を、まるで他人の身体に起こっている出来事のように、冷徹に観察していた。 ​母親は、そんな愛子と男の行為を、いつも隣で見守っていた。彼女の瞳は、愛情と興奮、そして陶酔に満ち、愛子の身体を貪る男の姿と、それに反応する娘の姿を、飽くことなく見つめていた。時に、母親は男に囁きかけ、より激しい行為を促す。その声は、愛子の耳に、呪文のように響いた。母親は、男の背中に手を回し、その行為に加わることもあった。母と男の身体が、愛子の両側から、一つの塊となって彼女の身体を挟み込む。愛子は、まるで二つの巨岩に挟まれた砂粒のように、その熱と重みに押しつぶされ、ただ呼吸をするだけの存在となった。 ​ある夜、男が愛子の身体に深く埋まり、激しい行為を繰り返している時、母親が愛子の顔を覗き込んだ。そして、愛子の冷たい瞳をじっと見つめ、ゆっくりと、愛子の乳房に顔を埋めた。男が愛子の肉を貫く度に、母親の舌が、乳首を執拗に弄る。愛子は、男の動きと母親の舌の動きに、同時に身体の奥底から込み上げる快感を感じた。心は、この卑劣な快楽を拒絶しようと叫ぶが、身体は、それをさらに深く求めていく。無垢な顔と淫らな下半身が、一人の人間の中に同居している。それは、愛子という存在が、もはや善悪の二元論から解き放たれ、ただ欲望と快楽の海を漂うだけの、生きた人形に成り果てたことを示していた。 ​男の肉が、愛子の身体から離れた後も、母親の舌は、愛子の乳房を離さなかった。母親は、まるで愛子の身体が、自分自身の身体であるかのように、その全ての部位を慈しむように味わっていた。そして、愛子の性器は、男の白い残滓で汚れているにもかかわらず、母親は、その中に自らの指を差し入れ、愛子の奥を抉った。その行為に、愛子の身体は再び身震いし、微かな喘ぎ声を漏らした。それは、快楽の悲鳴でも、苦痛の悲鳴でもなく、ただ、空虚な器に満たされた、無機質な音だった。 ​三人の爛れた生活は、こうして続いていった。愛子は、もはや自分の身体が、誰のものであるかさえ分からなくなっていた。男は、愛子の身体を、母親は愛子の心の一部を、それぞれが貪り、互いに分け合った。愛子は、その両者から、自分という存在を、少しずつ、少しずつ、削り取られていった。そして、最後に残ったのは、ただ呼吸を繰り返し、脈動するだけの、空っぽの抜け殻。愛子という名前も、愛子という記憶も、全てが遠い過去の幻となり、彼女は、ただ母親と男の欲望を満たすためだけに存在する、永遠に続く夜の中を漂い続けた。それは、決して終わることのない、爛れた舞踏会だった。