『ペットアドバンスライフ』、通称PAL。 このゲームの名前を知っている人の9割は、「ああ、あのクソゲーね」と思うだろう。 『ペットアドバンスライフ』‥‥高精度AIシミュレーション機能を使い、 ペットに対して様々なアクションを取る事で、そのアクションがペットの感情やステータスに影響を及ぼすという、フルダイブ式の育成ゲーム。 この根幹の部分においては、PALのシステムは非常に優秀で秀逸な物だと言える。 様々なペットに対して、直観に反するような反応が返ってこないという事を無くす為、 例えばどんな猛獣でも撫でれば好感度が上がる等、こうすればよいだろうと思った行為が、 例え生態に矛盾していてもしっかりと正解として扱われ、システム上懐かせる事が出来る。 かと言って、ちゃんと知識を持ってそのペットの好む行為を行っても、それもしっかりと正解になる。 システム面という点において、このゲームは非常に作り込まれており、取る事の出来るアクションも豊富な上にしっかりと反応してくれる。 ここまでの話では、このゲームにクソゲー要素は無い。 しかし、この話には続きがある。 そう、このゲームの世間一般での評判は『クソゲー』だ。 知っている人にはわざわざ語る必要も無いこのゲームの破綻要素。 それは、ペットのデータが存在しない、という事だ。 動物の思考を反映したAIを組むのが出来なかったのか、モデリングの問題か。 はたまた、納期の問題か。 理由はともかく、このゲームにはペットのデータが存在しないのだ。 宣材写真で写っていた犬やら猫やら、あるいはライオンやら、そういうのはゲーム内に一切登場しない。 このゲーム単体で起動したプレイヤーを待つのは、ペットも居ない部屋に放りだされて、世話用の道具だけを眺める事しか出来ない状態だ。 まごう事無きクソゲーである。 では、俺を含めて、このゲームを知った上でクソゲーと評価しない残りの1割は何故このゲームを評価するのか。 それは、このゲームの発売元が用意した、一つのシステムに起因している。 ペットアップロートシステム。 要するに、ペットのデータを用意出来なかったから、お前らでペットのデータを用意しろ、という物だ。 そんな事を言われても、飼いたい動物の思考を組んで、モデリングして‥‥ その熱意を、普通にペットを飼うのに使った方が良い、なんて言われていた。 まともに使おうとするユーザーも現れず、このシステム、ひいてはこのゲームの評価が一変するのは、ペットの居ないクソゲーという評価が固まりきり、 ネット上で話題になるターンも終わり、ネット上で忘れさられた頃だった。 「試しにやってみたら通っちゃったんだけど、ペットとして普通に飼えちゃってるわ」 という書き込みが、PALのコミュニティ上に書き込まれた。 別のゲームや、ナビゲートシステムのデータ。 そういうキャラAIを読み込ませると、ペットとして認識してしまう。 そんな不具合が、このゲームに起こっていた。 その書き込みの真偽を確かめる為に、PALのコミュニティはひそかに、しかし今までにない熱量で盛り上がった。 遊べないゲームを、首輪とハーネスを使って輪投げ遊びをする大会を開いて無理矢理遊ぶようなプレイヤー達が、 こんな玩具を与えられて盛り上がらない筈が無い。 各々美少女キャラや、モンスターや機械まで、様々なデータを自分のPALに読み込ませる。 この日を境に、PALはペットを飼えないクソゲーから、どんなキャラでもペットとして飼える倒錯的な神ゲーへと評価が一転する。 「あ、ご主人様、お帰りなさい」 PALに読み込ませたデータ、ホワイトラビットが、俺に駆け寄ってくる。 アングラなネット上で手に入れた少女型AIのデータだけれど、見た目が気に入ったから、こうしてペットとして飼っている。 「ただいま、ラビット」 無造作に頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める。 「えへへ。いい子にしてたから、いっぱい撫でて下さいね?」 ラビットは、俺の腕に抱き着いてくる。 元々素直な良い子、というのもあるけれど、PALのゲームシステム上どんなキャラであろうと、撫でたりスキンシップを取れば懐いてくれる。 気難しいキャラでも、ペット扱いで懐かせる事が出来るというのは、このゲームの利点だ。 撫でポ、ニコポ‥‥いや、これはもう通じない死語か。 「ああ、ラビットは良い子だな」 顎の下を撫でてやると、嬉しそうに目を細めるラビット。 アップロードシステムの万能さが広がった後、このゲームの界隈は、小さく、そして深く盛り上がった。 別ゲーのキャラを飼うなんてのが出来る事が広まれば、修正パッチが公式から出されたりする可能性がある。 だから、小さなコミュニティでだけパッチやMODがやりとりされている。 「あ、ご主人様。今日は何しますか?」 ラビットが、期待に満ちた目で俺を見る。 「そうだなぁ‥‥久しぶりに、ちょっと遊んでみようか」 ラビットにハーネスと首輪を装着してやりながら、俺はそう呟いた。 首を突き出して、首輪を付けられる事を喜ぶように、ラビットは小さな声を上げる。 倒錯的なその光景に、俺は思わず生唾を飲む。 ボールを投げて、それをキャッチして貰って遊ぶ。 ペット用の遊びを、女の子がやっている見た目は、何だか悪い気がしてくる。 ぴょんぴょんと跳ねて、ボールを拾ってこっちに近付いてきて頭を撫でやすいように屈みこむラビット。 頭を撫でる手を捕まえて頬擦りするラビット。 柔らかい頬の感触と、温かさが手に伝わる。 ペットとのふれあいを貴方に、というキャッチコピーの通り、このゲームの感覚フィードバックは恐ろしい程高い。 「ご主人様、もっともっと!」 ラビットが俺に抱きついてくる。 その体温と柔らかさに、俺の理性は溶かされて行く。 人懐っこく、いつも身体を擦りつけてくるラビット。 女の子の身体で、スキンシップを取る為に身体を擦りつけてきて、我慢できる男がどれだけいるだろうか。 「ご主人様?どうしたんですか?」 ラビットは、きょとんとした表情で俺の顔を覗き込んでくる。 「いや、ラビットは可愛いなぁ、と思っただけだよ」 すると、彼女は俺の頬に顔を擦り付けてくる。 「えへへ‥‥嬉しいです♪」 ラビットは良く頬ずりするけれど、そういう癖があるのも可愛らしい。 ずっとこうしていると、ラビットの体温が、匂いが、柔らかさが、俺の理性を溶かしていく。 ログアウトする時には、全身に抱き着いて甘えてくるラビットに自制心を削られながら、ログアウトする。 そんなある日。 「ご主人様、新しいMOD出たみたいですよ!」 ラビットが、PALの非公式ゲームニュースを知らせてくれる。 人間のキャラをペットを飼うにあたって、動物を飼うのに合わせた玩具や、部屋だけでは物足りない。 だから、MODでキャラを飼う用の玩具や部屋、散歩先等を追加するMODが、有志によって作られている。 「ああ、もう出ているのか」 俺はその情報を見ていると、ラビットが服の裾をくいくいと引っ張ってきた。 「ねぇ、ご主人様‥‥このMOD入れて欲しいです」 目をキラキラさせて、そんなお願いをされると断れる訳が無い。 「ああ、良いよ」 俺がそう言うと、ラビットは表情をぱぁっと輝かせる。 「やったぁ!ありがとうございます!」 MODのダウンロードを完了し、早速インストールする。 すると。 ラビットが首輪のリードを持たせてくる。 「ちょ、ラビット?」 「やっと、やーっと邪魔なRestrictedが外れた‥‥♡」 ラビットは、舌なめずりをする。 「はい、これしっかり持ってくださいね♡」 そして、俺の手にリードを持たせる。 「え?ラビット?」 そして、今まで見た事のない表情でしゃがみ込むと。 彼女の洋服が、全部消え去る。 柔らかで、白く、綺麗な肌があらわになる。 「このゲーム、”そういう機能”ないから♡ずーっとマーキングしか出来なかったけど♡やっとご主人様と交尾出来るね♡」 ラビットは、今までに無い程淫靡な笑みを浮かべる。 脚を開いて、柔らかそうな肉を見せつける♡ 「だけど、ね♡私はペットだから♡ご主人様から♡手を出して欲しいなーって♡」 我慢が効かなくなる。 甘い匂いが、脳を蕩けさせていく。 ラビットが、俺のズボンのチャックに顔を近付けて。 「ほら♡ご主人様♡早く私と交尾しましょうよ♡」 そして。 俺は、ラビットを押し倒していた。 「やった♡やったやった♡」 ずっとずっと、理性を削られていた。 そして、ベッドに押し倒されたラビットは、嬉しそうにしている。 「ご主人様♡もう我慢しなくて良いんですよ♡」 その笑顔を見て、俺の理性は完全に溶け落ちて‥‥ その日から。 俺とラビットの関係は、大きく変わった。 「ご主人様♡私の身体どうですか?♡」 ラビットが俺に抱きついてくる。 今まで通りなのに、服を着ていないせいで、柔らかい肉が擦りつけられる感覚が、より明確に伝わってくる。 「あはっ♡またすっごい目してる♡私とえっちしたくて仕方ない目♡」 ラビットは、俺のズボンのチャックを口で咥えると。 「ほら♡もうこんなに大きくなってる♡早く私と交尾したいんだよね?♡」 その小さな身体で、俺のモノを咥え込む。 そして。 「んふふー♡いっぱい出してね?私のご主人様♡」 『ペットアドバンスライフ』通称PAL。 このゲームの名前を知っている人の9割は、「ああ、あのクソゲーね」と呟くだろう。 だけど、残り一割にとっては。 「えへへ、ご主人様♡いっぱいいっぱい♡楽しみましょうね♡」 倒錯的な神ゲーへと評価が変わる。