「う〜、寒っ」 「貴様はコートを着てるだろうに。だらしないな、マオカ生徒」 特訓と称して夜遅くまで学園で勉学に励んでいたマオカと、そんな有望な生徒を寄宿舎へと送り届ける教師のデルモンテ。 登下校中に、ダンジョンが発生しないとも限らないのがここ、レンハート勇者学園である。 辺りには雪がちらつき始めており、レンハートにも冬が訪れていた。 「先生いいですよね。年中ジャージ姿に見えて、その実はモフモフの毛皮で覆われてるんですもんっ!」 「……モフモフて」 デルモンテはそう言うと、そっぽを向いて黙り込む。マオカが何度がちょっかいを掛けるが、無関心を決め込む。 何か気分を害したのだろうか?仕方なく、マオカも周辺に目を向けて寄宿舎までの道を静かに歩き始めた。 辺りはしんと静まり返っており、振り返ると学舎の明かりがぼやりと薄靄にうかぶきり。 退屈な時間。「早く自室に戻りたいな……」と、マオカが思い始める。デルモンテが口を開いたのはそんな時だった。 「……モフモフ」 「……え?」 今にも風雪に掻き消されそうなか細い声。 デルモンテの方を向きやると、その姿は既に獣へと変わっていて、肘を差し出している。 マオカが呆気に取られていると、その肘で彼女を小突く。傷つける気はないのだろうが、結構痛い。 「……じゃあ、遠慮なく」 濃紺の毛皮に女生徒のか細い指が触れる。 くすぐったそうに、デルモンテの耳がピクピクっと動いた。 「……どう……だ?」 「……うーん、モフモフ……と言うより、ゴワゴワしてる」 女生徒の評価に納得がいかなかったのか、「もういいだろ」と彼女の腕を払い、寄宿舎へ急ごうとするデルモンテ。すかさず、マオカがその腕を再び掴む。 「ゴワゴワだけど、あったかいから……もう少し触ります」 「……勝手にしろ」 心なしか、二人の足取りが重くなる。 レンハートを吹き抜ける冬の訪れが生徒と教師を引き裂いたのは、二人が寄宿舎に着いてからだった。 寒いから暖かいやつ書いてみたの