最近、見て見ぬ振りをしていることがある。 日課の教団の仕事――キャンディ生産と配布の割り振り、アルバイトの統括と休養の管理、お腹をすかせてる子達に宴会場でご飯を食べてもらって、それが終わると、すっかり外は暗くなっている。 そしてもう一つ進行しているタスクがちょうど終わる頃だな、と思って、私は彼女の好む飲み物をいくつか用意してから研究棟へ足を運んだ。 「お疲れ様、エレナ。仕事は順調?」 「今終わったとこだよ」 エレナは少し怒っているように見えた。 「おい、これだけ資材を溜め込んだ理由はなんだ? 36時間労働だぞ! この教団には労基法が無いのか!」 エレナの言葉に、私はたしかにもっともだと思う。 「ごめん。でも、好きな時に好きなタイミングで休んでいいんだよ? 」 そう言って、どっちがいい? と栄養ドリンクとコーヒーをエレナに見せると、エレナはコーヒーに手を伸ばした。 「なんか、この研究だけは、やってるとついつい続けてしまうんだよっ。普段はもっと、適当にやってサボってるさ」 うん、と頷くと、少し会話が途切れた。そして、少しの間。 最近、エレナと話すときに毎回この妙な「間」が発生する。それはお互い喋る言葉を見失ったわけではなく――単純に、エレナがなにか話したそうにしていて、私がそれを待っている、という構図。 そして、私はエレナがどういうことを話したいのかも知っている。 「ところで……だ。君、教団でなにか不満ごとはないのかい?」 「不満ごと? 王国の統治を任されて、毎日労基法が存在しないかのようにこきつかわれてることかな」 「そういうことじゃない! それもあるだろうけど……私が話してるのはだな、もっとこう、生命の根本の話だよ。食って、動いて、寝る。それとおんなじくらい、大きい欲求だよ」 私が黙っていると、エレナはわざとらしくコホン。と喉を整えて。少し焦った表情で私の顔を覗く。 「取引をしようじゃないか」 エレナのその言葉が建前だと分かる。カードをめくるように、私はその裏の本音を見る。 (何徹もすると何故か異常にムラムラする!でもこの国には女以外いないし、一人じゃどうにも気持ちよくなれない!) …………。 そこから幾多もの言葉で遠回しに私を懐柔しようとするエレナの言葉に頷いて、エレナは満足そうにわかってくれたらいいんだ、と笑った。 「場所は本当にここでいいの?」 「ここだからいいんだ。さっきまで作業してた場所でやると、興奮する……」 場所を移動せず、研究室の椅子。そこでエレナは焦燥の混じった顔でそう言った。私も少し興奮しながら、エレナの首元にキスする。エレナも私の下腹部を服上から触りながら私の唇や耳をねぶるように舐めた。 「っふ……なぁ、もういいだろ。実は、この取引を持ちかけたときから興奮していて、準備は出来てたんだ……頼むよ」 そう言ってエレナはシャツの裾をあげ、それで露わになった性器を私に見せつけた。エレナの小さい体に備えられたそれは、人間のペニスが入るのかどうか疑問にも思った。 「何度でも言うが、これはただの性処理であって、セックスは禁止だからな。指とかで、刺激してくれ」 私は頷いて、エレナの性器にゆっくりと中指を挿れる。 「あっ…はぁっ…」 びくびくっと前かがみになって私の腕を掴むエレナの姿に、あどけないものを感じて少し興奮を覚える。 にゅるにゅると中に入っていく指先。腟内は肉の壁のように圧迫感が強いが、押し広げるとかなり伸縮し、長さの程度は分からないが横幅だけで言うなら人間のペニスも悠々と入りそうだった。たとえるなら……男が一人で処理をするときに、たまにつかうそれ、に似ていた。 優しく刺激し続けていたが、少し指を引っ込めるだけで不安そうな顔をするのが嗜虐心を唆る。 「なんだ……指がもう疲れたのか? 日ごろからキーボードを打ち込んでないからそうなるんだ」 「いや、慣れてきたころかな、と思ったから、ちょっと強めにやろうかなって」 ごくり、とエレナが唾を飲む音が聞こえた。またぬぷぬぷ…と今度は2本指を挿れると、エレナの内側から腹を擦るように激しく指を動かした。 「あっ! それだめ、気持ちぃっ……!」 ちゅくちゅくちゅくちゅくっ!と淫猥な音が響く。エレナは腰をがくがく動かして快感によがっている。少し止めて、の声を唇でふさいで舌を絡めると、脳まで犯されたかのように目の焦点が合わなくなり、しきりに喘ぎ声をだす以外はほぼ無抵抗に快感を貪っていた。 そこで一度動かすのをやめ、唇を離す。 「……ど、どうしたんだ……?」 (もう、もうちょっとでイけるのに……なんだ?門限でもあるのか? 帰るのか? こんなタイミングで?) 膣壁を擦った中で、特に反応の良かった部分をぐっ、と押す。 「お゙ォ゙っ……!」 にゅるにゅると刺激を続ける最中に、ときおりぐっ、と快感の強い部分を押す。エレナはさっきまで指のピストンだけでよがっていたのに、今はもうこの指圧の虜になっている。 「ゔぁ゙っ! やばい、もうくる、イキそうっ!」 (すごい、今まで経験したことない深いのがお腹の底からくる、気持ちいい、気持ちいい…!) びくびくびくっ!! と強い痙攣を起こしてエレナは絶頂する。それからびくっ、びくっ、と小さな快感のウェーブを全身で感じている彼女にに私は興奮する。 (余韻の気持ちいいのが残ってる間も優しく撫でてくれている……すごい気持ちいい……人間、なんて心遣いのあるやつ……) 快感に浸っているエレナを見て興奮が絶頂に至った私は、静かに下を脱いでいきり勃ったペニスをエレナに見せる。 「んぁ」 と無言でエレナは口を開けた。 私はゆっくりとエレナの口腔にペニスを挿れ、その熱い体温に身震いする。エレナは拙く舌を動かしてペニスを刺激していたが、堪えられなくなった私はエレナの頭を掴んでペニスを押し込む。 「っむ……ぷぇ! んぉ……おぇっ!」 しばらくエレナの喉でペニスを刺激して、射精感がこみ上げた私は、その口腔からペニスを抜き、彼女の眼前にペニスを向ける。 「ん……」 エレナはそうされるのが当然とばかりに顔を差し出した。私は快感に打ち震えながら吐精し、あまたの興奮にさらされてきた大量の精液は、エレナの体を侵略した。 シャワーを浴び終えると、エレナがそこに待っていた。私とは別のシャワーで身を清めたエレナは、おぅ、お疲れ、とコーヒーを飲んでいた。 「これから寝るのにそんなにコーヒーばかり飲むのも体に悪いよ」 「いいんだよ、普段は栄養食食べてるんだから、プラマイゼロだ」 少しの間。この何とも言えない間が発生するのは、決まってエレナがなにか言いたくて、でもプライドが邪魔して言えないときなんだろう。しばらくお互い黙ってから、エレナが口を開く。 「あ、あのさ! よかったら今後も定期的に、この取引をしないか? いやぁ、私もなかなかストレスが多い身分でね。それは君もそうだろう? そう! だから――」 (どうだろう、さすがに断られるか? でもあんなに気持ちよくしてくれる奴なんて絶対にどこにもいない! 絶対に逃したくない……。独占された……あたしの体はこいつに独占されてしまったんだ!) あれこれ言うエレナの頭を撫でて、不思議そうにこちらを見上げる彼女の表情を見る。 私はエレナが大好きだったから、その後の取引はすべて承諾した。