指輪。 前の世界でも今の世界でも普通に親しまれているアクセサリーだ、ただのオシャレとしての意味もあれば当然誓いの証としても…。 「華歩様~?」 「あ、いいえ!ただここにきて貰ってばかりだなって…。」 「いえいえ~気にしないでください~、特に『指輪』ソレに関してはこちらの不始末の部分も多いので~。」 「ですがその、貰ったのにデラーシュさんの手をはたいてしまったのも。」 貰った時に条件反射で手を振り払ってしまった、迷惑をかけておいて更にあんな子をと思い返すと罪悪感が。 「あ~そのことですか~、むしろありがとうございます、たまには誰かがマスターのお尻を叩いてあげないと緩んでしまうので。」 「い、いいんでしょうか…。」 「それに~指輪を渡すときには左手はないですよ~あれは駄目。」 「それは…まあ」 確かに左手を持ち上げられたときには、少し失礼かもしれないが大昔のプロポーズを思い出してしまった。 「眷属たちが~喜ぶからって麻痺しているんでしょうね~あれはないですよ~。」 それほど長い時間は過ごしてはいないがこの短時間でもこの人がデラーシュに対しての想いは計り知れないものだと思う、それを足蹴にされたら不愉快になって当然だろうに。 「ところで華歩様はそれをどうしますか?」 「え?」 強引に話を変えられた、指輪をどうするか、指に付ける気にはならなかった、手袋を外すとかではなくなんとなく指輪に触れたくない気持ちが強かった。 「ま~あ~付けなくてもいいですよ~あの地下を見た後ですし~何か呪われそうでしょうしね~。」 「そ、そこまでは…。」 急な返しで驚いた流石にここまでよくしてもらってくる相手が渡した護身具だ呪ってくるとは思えない、とは言え…言われてみるとそんな気もしてきた。 「まあ~つけたくないなら服の中にでも入れておいてください~」 「えっと…すいません。」 「いえいえ~あ!つきましたよ~」 そう言って部屋の中に入っていった。