それはある日のレースでの出来事だった。サトノダイヤモンドは実力から見ても苦戦を強いられるであろう面々の中で、細い勝ち筋を広い上げ僅差で一着を掴み取った。
疲労と苦心、そしてそれらの中で勝利したという喜びは落差で何倍にも跳ね上がった。その想いを封じ込めることが出来ない彼女は、トレーナーを見つけると一目散で駆け寄り、飛びついて抱きついた。
喜びを同じくサトノダイヤモンドを迎えるトレーナー。彼女のダイビングハグを受けターフを転がった後に、トレーナーは医務室に向かった。
大した怪我ではなく、背中を少し打って青痣を作っただけだった。しかし、サトノダイヤモンドはそれを見て激しく落ち込んだ。自らの激情に身を任せた行動がトレーナーを傷つけたとショックを受けたのだった。


当然トレーナーも周囲の友人もすぐにサトノダイヤモンドを慰めた。しかし、自罰的になる彼女はその言葉を聞きつつも胸には響いていないようであった。
その後もトレーニングは通常通り行っているように見えたが、ふとしたタイミングで遠慮がちになっていった。トレーナーは彼女の気持ちを晴らしてやりたいと思った。
こういう時、強引に「大丈夫だ、気にしていない、なんともない」と言い張っても、それが事実だとしても、傷つけてしまった当人が心の底からそう思えることはないとわかっていた。
だからトレーナーは、違うアプローチでサトノダイヤモンドを再び彼女らしい気持ちでいられるよう訴えかける必要があると考えた。



「ダイヤちゃん」
パドックに向かう彼女を呼び止めたのはトレーナーだった。サトノダイヤモンドの調子は不調と言うほどでもないが、おそらくこのまま走ればベストなパフォーマンスを発揮することは出来ないだろうといった様子だ。
振り返り上目遣いで、少し怯えた様子のサトノダイヤモンド。トレーナーは片手で自らのシャツを掴むと、振り払うようにシャツを取っ払い、上半身を顕にした。
「これを見てくれ！」
そこには、鍛え抜かれた輝かしい筋肉があった。ボディビルダーのような盛り上がった筋肉ではないが、細身の身体からは意外性を感じる肉の鎧を纏っているようだ。アスリート体型、細マッチョと呼ばれるような肉体である。
まあ、と声を上げ驚くサトノダイヤモンド。憂いはどこかに吹き飛んだようだった。
「君が僕を傷つけたことを気にしているのも知っているし、何を言われても開き直れないのもわかっている。だから僕は強くなった。もう怪我なんかしない」
トレーナーはあの日より、密かに身体を鍛え続けていた。


「君が気にするくらいなら僕が強くなる。嫌だったらちゃんと言う。だから一切の遠慮なく、走ってきてくれ。そして勝ってこの胸に飛び込んできてくれ！」
サトノダイヤモンドはトレーナーのその思い遣りに潤みかけた目元を袖で拭うと、元気な返事をしてパドックに向かった。最早彼女に憂いはなかった。
こうして一着を掴み取ったサトノダイヤモンドは、再びトレーナーに駆け寄っていく。迎え撃つは上裸のトレーナー。腰を落として彼女を抱きしめる姿勢だ。
サトノダイヤモンドの力強いハグを受けても、見事トレーナーは踏ん張ってみせた。その姿に思わず周囲の観客からも拍手が飛び交う。
「トレーナーさん！トレーナーさん！トレーナーさん！！」
サトノダイヤモンドは喜びのあまり更に力強くトレーナーを抱きしめると、彼の腕ごと胴体を斜めに抱きかかえ、頭を自らの胸に押し当てた。



トレーナーの足が地面から離れた。大きな荷物を斜めに抱きかかえるような姿勢でサトノダイヤモンドがトレーナーを抱きかかえる。トレーナーはなんとか抵抗していたが両腕をホールドされ身動きが取れない状態だ。
「んー！んんー！」
サトノダイヤモンドの豊満な胸に顔を押し当てられ、言葉すら出せない。ただその叫びは熱い吐息となって彼女の胸を刺激するだけであり、その口はもごもごと動くだけで彼女の胸を刺激するだけであった。
トレーナーからの愛の返礼に更にサトノダイヤモンドの昂りは増していく。彼女は「嫌だったら言いますもんね」とおまじないのように胸の中で反芻する。
そしてサトノダイヤモンドはトレーナーを大切に抱きかかえたまま、感謝と愛を更に返すべく個室へと消えていった。