（お兄さま起きてる？）21:49
LANEにライスからの着信。本心としては早く寝てほしいところではあるが、あまりこういったメッセージを送らないライスの様子にただならぬものを感じ取り、説教は引っ込んでしまった。
既読21:49（起きてるよ😀どうしたのカナ😅何か困りごと？？？💦💦）
メッセージを送るとしばらく入力中を表す黒点が続いた。
（今日のお昼のことが気になって眠れなくて、ごめんなさい）21:50
今日の昼、というのはきっとあのことだ。部屋の整理をして不要な書類を処分しようとしていた時、昔の手紙を見つけた。かつて片思いをしていたウマ娘に宛てた、送らなかった手紙。そのことをライスに話したのだった。
既読21:52（そうだネ～🐼あれは）
メッセージを打ち込みながら記憶を掘り返す。ずっとずっと昔に仕舞い込んだ、あの頃の話。



進路のしの字も頭にない子供の頃、学校で将来について考えるよう宿題を出された。あの頃は社会も何も知らない子供で、自分の世界は自分の半径10kmくらいで完結していて、登場人物も親戚と知人だけだった。
その宿題を出さないまま夏休みを遊び倒していた時だった。その日は友人の誰もが帰省や旅行で都合がつかず、久しぶりに一人で暇を持て余していた。寝転がりながらテレビをつけていた時、ウマ娘が走っていた。
それまで興味もなかったレース中継に、僕は目を奪われた。トップを走る名も知らぬウマ娘が、追いすがる2番のウマ娘を横目で確認したことを鮮烈に覚えている。必死なのだ。例え先頭を走っていようとも。
そのウマ娘に一目惚れした僕は、宿題のプリントの将来の夢の欄に書かれたサラリーマンという文字を消しゴムで消して、トレーナーと書き込んだ。それが僕の今を決定づけた、単純な動機だった。
まあ今思えば、憧れと鮮烈さを美しい女性に覚え恋と錯覚しただけの、ただの子供だったのだけども。当時の僕はかわいいことに、そのウマ娘に手紙を送ろうともした。彼女のトレーナーになりたいと思いさえした。


感情は抜きにして、物理的に無理というのに。そのくらい夢を恥ずかしげもなく抱いたというわけだ。その手紙は結局出すことはなかったが、トレーナーとなる夢を諦めないためのお守りとして取っておいた。
既読22:15（というわけなのサ😁😁）
返事はつかない。彼女なりに今の話を反芻しているのだろうか。ライスの不安はなんとなく察することが出来る。きっと手紙を見つけたことで僕が担当じゃなくなってしまうのではないかと杞憂したのだろう。
既読22:16（でもあの手紙はもう捨てたよ🐤憧れ🦾を初恋と勘違いしただけだったし👶今はライスのトレーナー一本だからね🔥🔥🔥）
当時の僕も、今のライスもきっとそう。大人になってから振り返れば笑っちゃうようなことでも、子供は真剣に悩んで思い込むものなんだろう。
既読22:17（だから何も心配要らないよ💦💦💦落ち着いたら早く寝ようね🌛😴）
（教えてくれてありがとうお兄さま。ライス不安になっちゃってた）22:17


（もう、この気持ちを諦めるか、思い切って無茶をするかしかないかと思ってた…）22:18
よくわからないが、僕がした単なる思い出話は、昼間のライスにとってはあらぬ誤解を生みかねない重大なものだったらしい。
既読22:18（安心して🌞ライスとは絶対離れたりしないから🐔🐣それに例えライスが無茶をしてもどんなことでも受け止めてみせるよ💪😤💪）
ライスが引退するその時まで、僕は担当トレーナーであることを辞めるつもりはないし、ライスが何をしても肯定してあげたい。ただそれを伝えたかった。
（今はライスの番だから大丈夫だもんね！遅くにごめんなさい。おやすみなさい、大好きなお兄さま）22:18
順番の話ではなかったのだが、ライスが安心してくれたならもう何も言うまい。早く寝てほしいので、それ以上LANEは送らず、スマホを消してパソコンに向き直ったのだった。