人里離れた一軒家、そこに魔王軍崩壊の英雄ボーリャックと、愛妻のイザベルが住んでいた。 「イザベル、家事は俺がやるといっただろう」 「だめ!これは私の仕事だから」 断る妻を制してテキパキと洗濯物を片付けていく。 「身重の妻に家事を任せきりにするほど甲斐性のない夫か俺は?」 ボーリャックの言葉に頬を染めてイザベルは首を横に振る。家事を終えた夫の顔に、憂慮の色があることに気づいたイザベルはその理由を尋ねた。 「どうも、俺たちの結婚がまだ理解を得られてないようでな」 「そう、なんだ」 俯くイザベルをボーリャックはそっと抱きしめる。 「大丈夫だ。何があっても俺がお前を守る」 「あなた…」 ボーリャックは先程届いたクリスト、イザベラ夫妻。ギルからの手紙を思い返しながら決心を新たにした。 『何考えてんですか?僕は妻の妹を貴方に嫁がせるために預けたのではないんですよ!』 『任せてくれ、ってイザベルを預ける時貴方が言ったのがまさかデキ婚という意味とは気づきませんでした。直ぐに妹を返してください』 『イザベルに結婚を祝した時の奴の顔が今でも忘れられん。何考えて同名の、しかもクリストの義妹とデキ婚したんだ』