ハッピーハロウィン♪ さんのレビュー 感動しました!!ストップモーションで動く人形たちもかわいかったし、葬送祭の王が初めて知った祭りをしたがるというのも共感できました。☆5つです!! 「というわけで、私達もクリスマスをしようと思うんです」 映画に影響されたヒトジティが提案する。 「俺様を呼び出してまでやる事がそれか?」 それを聞いたゴミカスが呆れた顔で言う。 「それに、クリスマスなら国内でやってるじゃないか」 この世界では毎年この時期になるとクリスマスゴブリンやクリスマスオーガが出没する。誰が名付けたのかも定かではないこの魔物たちの名前を取って、この時期を「クリスマス」と呼んでいるのだ。 「モラレルさんの所のアンデッドが言ってました!24日と25日が旬だって!!この時期はサンタゴブリン達と同じ格好をして、角の生えた空飛ぶ生き物に乗って子供たちにプレゼントを配るんです!映画でもそう言ってたから間違いありません!」 「お、おう…それと俺様と何の関係があるんだ?」 「え?…そういえば、なんででしょう。ミカちゃんと一緒にやりたいなって思って…」 「まあ、暇だからいいが…」 「わーい!ミカちゃん、一緒に『クリスマス』を盛り上げましょうね!!」 二人は話し合って、まず空飛ぶ生き物を調達しようという事になった。 「嫌だ。われが巣を留守にしたらこのキャンディを狙う者が現れるかもしれん」 キャンディドラゴンに頼んだが、すげなく断られてしまった。 「そ、そこをなんとか…キャンディも一杯あげますから」 「われの求めるジュエリーなキャンディがあまりないではないか」 ヒトジティが用意したのは色とりどりのキャンディだったが、お菓子の国で取れるものはヌガー入りのナッツキャンディとか、色付きの物ばかりだった。透き通ったキャンディはトラレテーラ領では貴重なのだ。 「そうか。では、このキャンディはいくつかいただいていこう」 そう言ってゴミカスは、「キャンディドラゴンの」キャンディを取ろうとした。 「貴様!われのキャンディに何をする!!」 キャンディドラゴンが溶けた飴のブレスを吐く。 「ふん!!」 ゴミカスは魔力糸を出して溶けた飴に細工をする。 キャンディが溶けないように冷やされた部屋の中で、細工されたキャンディが見る見る冷えていく。 そこに有ったのは、見事な飴細工。ゴミカスは持ち前の器用さで飴ブレスに細工したのだ。 「こ、これは…!!」 「協力しないというなら仕方がない。この飴細工は持ち帰って、食べてしまおう」 「ま、待った!!わかった!!その飴細工と交換だ!!われも協力しよう!!」 「やったー!!早速ゴミカス君を誘った甲斐がありました!」 「角が生えた空飛ぶ生き物はこれでいいな」 「はい!!」 「魔王様方、プレゼントの準備は着々と出来ております」 お菓子の森に来た二人をキャンディーネが出迎える。 マミーだぬき達がお菓子を箱に入れ、包装していた。 「順調なようですね」 「はい、時々菓子ぷにがやってきて混入しようとしますが、兵たちが守っています」 クッキーの兵隊達が周りを守っていた。 「プレゼントも順調です!!」 「それで、近くの国々に侵攻しているお前達を迎え入れろというのか」 「そう言う事になりますが、迎え入れてもらうのは2人だけでいいので」 「その2人が問題なのだが」 「私はいいと思う」 サンク・マスグラードの皇帝・レストロイカとトラレテーラ領の宰相ガチクズ、そして氷獄魔王マヒアドが話し合っているのを、トラレテーラとゴミカスは見ていた。 「それに、二人だけではないだろう。ドラゴンまで付いている。魔王二人と、ドラゴンだ。これを我が国に一晩迎え入れろと?」 「なので、先だって講和条約を結ぼうと我々は考えています。それに、そちらは度重なる粛清で国民の不安も増しているところ。ここで支援しようと思うのです」 「だから私が間に入る。この講和条約を破った方には、マヒアド・ヴリザッガ・ブーフダインが天罰を下す」 「お前も魔王だろうが。おい、小娘」 「は、はい」 トラレテーラが返事をする。 「おや、小娘などおりませんが?この部屋にいる女性はトラレテーラ領の魔王ヒトジティ・トラレテーラ様のみ。この御方に対してそんな失礼な事は言いますまい」 「このよく口の回る宰相とお人好しすぎる魔王は信用できん。お前の考えを聞きたい」 「魔王様。臆せず、思った事をそのまま言えばよろしいのですよ」 「わ、私は、クリスマスっていうのが楽しい物だって知って、それを広めようと思って」 「確かに、この時期はあのクリスマスナントカ共の落とす物で生活が潤うな。しかし、既に民達は祝っている。お前達が来ずとも」 「サンク・マスグラードの人達は皆怯えてて、寒そうで、せめて子供達にはおいしいお菓子を配ってあげようと思って」 「そのお菓子とやらは食って大丈夫なのか?トラレテーラ領の菓子は破片でも腹を壊すと聞いたが」 「それは菓子ぷにっていうモンスターで、そ、その…貴方達にも一つずつ持ってきました。どうぞ」 ヒトジティがプレゼントボックスをレストロイカとマヒアドに渡す。 「私、その、マスグラードの皆に幸せになってほしいんです!本当なら、子供だけじゃなくて、 大人にも配ってあげたい」 「美味いな。ウチの者達にも食わせてやりたい」 と、マヒアド。 「どうだジーニャ」 レストロイカは毒見させたジーニャに聞いた。 「美味い」 「そうか」 「あ、ありがとうございます!」 「レストロイカ。お前も気づいているだろう。トラレテーラの善性を。お前がその衛兵を可愛がっていることは知っているぞ。大方毒見と言ってその娘に菓子を食べさせたかったのだろう」 「そうだな。しかし…」 レストロイカはガチクズとゴミカスを睨みながら言った。 「その善性と、トラレテーラ領の動きが結びつかん」 ガチクズは不敵に笑ったままで、ゴミカスは目を逸らした。 その後、レストロイカとマヒアドとガチクズが難しい話をして、ガチクズが人質になる代わりにヒトジティ達はクリスマスの夜にサンク・マスグラードに入れることになった。 そしてクリスマスの夜、キャンディドラゴンがそりを引いて飛び立つ。大きななキャンディドラゴンの引く大きなそりの上にはプレゼントの袋がたくさんと、ヒトジティとゴミカスの2人。 2人共、クリスマスゴブリン達が落としていった「サンタクロースの服」を着ている。これを着ていれば冬のサンク・マスグラードの夜も温かく過ごせるのだ。 「あ、あの広場ですよ」 レストロイカに指定された広場に降りたつ。本当はサンタクロースの様にプレゼントを枕元に置きたかったのだが、そんなもの一晩で間に合うかと広場に子供達を集めたのだ。 全員、身寄りのない子供だ。 「皆ー!!プレゼントだよー!!」 ヒトジティが呼びかけるが、子供たちは怯えていた。 「ど、ドラゴンだ・・・」 「あのお姉ちゃん、角が生えてる…?魔族…?」 「あ、あれ…?」 「僕達、やっぱり粛清されるんだ…あいつらに食べられちゃうんだ…」 「そ、そんなことしません」 ヒトジティが焦っていると、ゴミカスが前に出てきた。手には大きな缶と沢山の割り箸。 「お前達、見ていろ!!」 そう言ってゴミカスは缶を開けると、中に入ったどろどろとした透明な物に色を付けて、割った割箸でこね始めた。 そうしてできた細工を子供たちに見せる。 「何これ?」 「綺麗…」 「食べてみろ、甘いぞ」 そう言ってゴミカスは一番前の子供に渡す。 「あ、甘い!飴だ!!」 食べた子供が声を上げる。 ゴミカスが持ってきたのは水飴と、色や味を鮮やかにするための調味料だったのだ。 「作ってほしい奴は並べ。あと、あいつはお菓子の詰め合わせをくれるぞ」 そう言ってヒトジティを指差す。 「皆ー!!こっちにはプレゼントもあるよー!!」 ヒトジティがそう言うと、警戒を解かれた子供たちが集まってくる。 ゴミカスの水飴も大忙しだ。 「ありがとう、お姉ちゃん!」 「俺様は『お兄ちゃん』だ!!」 「お、お兄ちゃん…?」 ゴミカスのせいで何人かの子供の性癖が歪んだ。 「こっちにも!!」 「私も頂戴!!」 「ふ、ふええ」 ヒトジティの手が回らなくなってくると、 「こっちにも並べ!」 万が一の時の為に近くで見張っていた衛兵達が手伝ってくれた。 「あ、ありがとうございます」 「次は私たちの分も頼む」 そう言って、ジーニャは子供たちにプレゼントを渡した。 ヒトジティのクリスマス大作戦はまずまずの成功を収め、ガチクズも解放された。 トラレテーラ領に帰った頃にはもう朝だった。 「では、私はこれで」 ガチクズが帰っていく。 「俺様も帰るぞ」 「あ、待ってください」 「なんだ?俺様は眠いんだ」 「ミカちゃんにもプレゼントがあります!」 そう言ってヒトジティはプレゼントの置いてある部屋にゴミカスを案内する。 (どうせお菓子なんだろうな…) ゴミカスがそう思っていると、 「はい、これ!!」 1/144HGサカエトロイ。サカエトルの魔ンダムベース限定のプラモデルだ。 「ど、どうやって…?」 「フフ、秘密です」 本当はガチクズが用意して、「魔王様から渡してください」と言われたのだ。 「あ、ありがとう」 「いえいえ。…ミカちゃんからもプレゼントがあるんですよね?」 「え?」 「…無いんですか?」 ヒトジティが拗ねた顔をする。 「す、すまない…そうだ、今度親と合わせて…」 「えいっ」 ヒトジティがゴミカスの唇をちゅ、と奪う。 「え?え?」 「今年はこれで我慢してあげます。来年はちゃんとプレゼントをくださいね?」 その時のヒトジティの顔を、ゴミカスは忘れられなかった。 ポーっとしながら、HGサカエトロイの大きな箱を抱えて、ゴミカスは帰って行った。 メリークリスマス♪ その後ゴミカスは作ったサカエトロイを魔ンスタにアップした。 「そうっ!!これ!これよ!!このサカエトロイを見るために私はあのハッピーハロウィン♪の時間軸からやり直したのよ!!」 器用なゴミカスの作った精巧な魔ンプラを見て一人の少女が歓喜したのを誰も知らない。