[サブ1] ノブレス : 真っ暗闇の森の中で。ラルヴァであることを示す瞳が赤い光を淡く放っている。
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「……なんで、こんなところに」
[サブ1] ノブレス : 「独占したくなる顔してたから」
[サブ1] ノブレス : 「誰にも見せたくなかった」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「うぁ……」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「どーしてそんなスラスラと……恥ずかしいことを……」
[サブ1] ノブレス : 「ちゃんと言わないとクリノに伝わらないからなあ」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「だって、拙はルーンフォークです。従者となるべく造られ、産まれてきたのです。それが……愛していただける、なんて……」
[サブ1] ノブレス : 「初めてなんだよ」
[サブ1] ノブレス : 「叱ってくれたの」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「……そんなもの、ノブレス様でしたら、いずれ現れていましたよ。あんな無茶をする方、放っておけないでしょう」
[サブ1] ノブレス : 「でもクリノが初めてだったんだよ」
[サブ1] ノブレス : 「だから、好きになった」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「うぁ……」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「……自惚れても、良いのですか」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「拙は、ノブレス様の、主様の、……旦那様の」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「お側ではなく、隣に立っていて良いと、そう自惚れても」
[サブ1] ノブレス : 「もちろんだ」
[サブ1] ノブレス : 「ずっと、そうして欲しい」
[サブ1]
クリノ・ヒューム :
「……熱に浮かされていますね拙、少し頭を冷やさねば。ちょうど登った血を吸ってくださる方もいらっしまいますし──」
羞恥を誤魔化すように、いつも通りスカーフを下ろそうとして……止める。
「……いえ。本日、キスマークを付けるのは……こちらは嫌です」
[サブ1] ノブレス : お預けを喰らった表情になる。クリノがスカーフに手を伸ばすと”そういうこと”だとすっかり身体が覚えている。
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「ふふ。首筋にではなく……ちゃんと、唇に。……はしたないでしょうか?」
[サブ1] ノブレス : 「いや……そんなことはない。そんなことは」
[サブ1] ノブレス : 腕を──クリノの両肩に回す。屈みながら顔を近づける。
[サブ1]
クリノ・ヒューム :
──口付け。それをすることになるなど、考えもしなかった。
拙は従者だから。主様のお側にいて、そしていつか主様のお子様や、稼働期間が残っていればお孫様をお育てできれば、と。
[サブ1]
ノブレス :
吸血をするときは──衝動に駆られてしまう。思い切り肩を握りしめて、荒々しく肩に口付けて。
今は、ゆっくりゆっくりと近づけて行く。少し、腕が震える。
[サブ1]
クリノ・ヒューム :
あぁ──愛しいお方。焦れったいお方。
ですが、ここで拙から行ってしまうのはダメです。貴方様の勇気を踏み躙ることになってしまいますし……。
拙も、求められたいのですから。
[サブ1] クリノ・ヒューム : 目を閉じる。力を抜く。すべてを受け入れる構え。
[サブ1] ノブレス : たっぷりと時間をかけて。暗闇の中で2つの影が重なった。
[サブ1] ノブレス : 触れ合うだけの、それを。長く、永く。
[サブ1]
クリノ・ヒューム :
掴まれている肩を振り払って、手を背中に回す。
身体すべてを彼に預けて、体重をかけていって。
いつまでもいつまでも、重なり合っていたいと。
[サブ1]
ノブレス :
如何ともしがたい寿命の差がある。クリノの生きる時間の、幾倍もの時間を生きて行かなければならない定めを背負っている。
だからせめて。この時間を永遠に。
永遠に忘れることのないように。
[サブ1]
クリノ・ヒューム :
愛していただける。
愛させていただける。
その実感を、こうして、繋がる体温と柔らかな唇で与えてくださる。
あぁ──拙は、幸せ者です。
[サブ1]
クリノ・ヒューム :
そして、思う。
どうして拙は、貴方様を置いて、先に逝ってしまうのでしょう……。
[サブ1] ノブレス : 強く、強く抱きしめる。放したくないという意志の現れとでも言うように。
[サブ1] ノブレス : そして──離した。触れ合わせていた唇を。
[サブ1] ノブレス : 「クリノ」
[サブ1]
クリノ・ヒューム :
「ぁ……」離れてしまった。寂しげな吐息が漏れる。
「はい、何でしょうか。貴方様」
[サブ1] ノブレス : 「やっぱり、嫌だ。クリノが先に逝くのは」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「……申し訳ありません。拙の不徳の致すところです」
[サブ1] ノブレス : 「だから、探そう」
[サブ1] ノブレス : 「ずっと、一緒に生きる方法を探そう。せめて、俺の命が尽きるまでは」
[サブ1] ノブレス : 「俺はもう、クリノがいない生き方は考えられない。考えたくもない」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「……ですから、拙ではなく、他の方をお選びになれば、良かったですのに……」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「でも……もう遅いです。拙も……我儘になってしまいました」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「拙の全ては貴方様のものです。ですから、対価として……貴方様の御心は、拙のものです」
[サブ1] クリノ・ヒューム : 「最期まで……一緒に居りましょう」
[サブ1] ノブレス : 「喜んで」
[サブ1] ノブレス : 再度、唇を落とした。
[サブ1]
クリノ・ヒューム :
唇を受け入れる。舌を迎え入れる。
……拙は、貴方様が望むのでしたら、何でも受け入れます。
御奉仕させてくださいませ。それが拙の、愛し方ですので。
[サブ1] ノブレス : 二つから一つになった影はずっと、離れることがなかった。