「要請ッ！　マチカネタンホイザッ！　君の力を借りたいっ！」
「わっわ、理事長さんー！　どうかされたんですか？」

　夕方、トレセン学園を歩いていたら、突然理事長さんに声をかけられちゃいました。むむ、どうしたのかなー？

「説明ッ！　そろそろ、“あの日”が近づいているだろう？」
「あの日って……もしかして、バレンタインデーのことですか？」
「うむっ！　聞くところによるとマチカネタンホイザ、君はお菓子作りが得意らしいなっ！」
「でへへぇ……それほどでも〜」
　まあ確かに、この前のバレンタインはトレーナーにマカロン作ったりもしましたしー、結構得意な方ではあるかも？　えへへっ、でも理事長さんにそう言われちゃうと照れるな〜。

「なので、君の力を借りたいっ！　私のバレンタイン作りを手伝ってはくれないかっ！？」
　理事長さんがぺこりと頭を下げました。ふむ、ふむふむふむ。なるほどなるほど〜。

「いいですよ〜」「本当かッ！？　感謝ッ！！」
「ちょうどそろそろバレンタインの準備しないとな〜って思ってた所ですしー。理事長さんっ、一緒に作っちゃいましょうかっ♪」
「感謝する！　マチカネタンホイザッ！！」
　理事長さんのお顔がパァっと明るくなります。うんうん、ひとりよりふたりと言いますしー。一緒に作ったほうが楽しいよね。むん。

「じゃあまずはどんなものを作るかですね〜理事長さんはどんなのが作りたいんですか？」
「ふむ、そうだな――」

　――そうして、私と理事長さんはバレンタインのお菓子作りをすることになったのでした。

――――――

　理事長さんと一緒に材料のお買い物をしましてー、そのまま寮のキッチンへやって来ました。
　チョコレートにバターにお砂糖、卵に生クリーム！　いや〜一通りは買えましたね〜。

「いやはやそれにしても、ガトーショコラ……イイですねぇ〜半ナマとろーり濃厚チョコレート……むふふ〜」
「ふ、ふむ……すこし背伸びをし過ぎてしまっただろうか……？　私にちゃんと作れるだろうか……」
　すこし不安そうな理事長さん。そんな理事長さんにマチカネお姉さんはしっかり励ましてあげます！

「大丈夫ですよ〜！！　理事長さんっ！　一緒にやれば怖くありませんっ。私にお任せあれ！」
「……そ、そうかっ！　感謝ッ！　ならばっ、大船に乗ったつもりで挑戦させてもらおう！」
「その意気ですよ〜じゃあお菓子作り頑張っていきましょ〜！　えいっえいっむんっ！」
「むんッ！」

――――

「理事長さん、お鍋熱くなっちゃってるので気をつけてくださいねー」
　弱火でコトコト温めたお鍋に砕いたチョコとバターと生クリームが入っています。
「ふむっ……これを溶けるまで混ぜていけばいいのだなっ？」
「はい！　じっくりゆっくり、ベラで混ぜながら溶かしていきましょ〜！」
　踏み台に乗ってお鍋を一生懸命かき混ぜる理事長さんを後ろから見守ります。いや〜いいですねぇ……いっぱい応援しちゃいたくなりますよ〜。

「うむっ……！　できたぞ、タンホイザ！」
「お〜、いい感じですね〜！　それじゃあ火は止めて〜卵とチョコをボウルで混ぜていきましょう〜」
「あい、わかった……！」

――――

「それじゃあ型に流し込んで〜」「こうだな……？」
　理事長さんが生地を一生懸命流し込みます。がんばれ〜！
「よしっ！　出来たぞ！」「じゃあこれを、オーブンでぇ〜20分っ！　焼きますっ！」「おお、これで焼き上がるのか？」「そうですっ！」

　ピッ。
　理事長さんがオーブンのスイッチを入れました。
「ふう……」「これでとりあえず一段落ですね〜理事長さん、お疲れさまでした〜」
「感謝ッ！　君のおかげで今のところ問題なくチョコが作れているっ！　私ひとりではできなかったであろう！」
「いやいや、理事長さんがいっぱい頑張ったからですよ〜私はお手伝いしただけですし。うんうん。理事長さんスゴいっ！」
「そ、そうか……！　えへへ……」

　理事長さんはテレテレと笑いました。
　……ところで、理事長さんはこれ誰にあげるつもりだろう？
「えっ？　誰にあげるのか、と？」
「はい。こんなに一生懸命作ってましたし、気になるじゃないですか〜」
「そ、それは……だな……」
　理事長さんが、恥ずかしそうに目を逸らしてます。
　……おや、おやおやおや〜？

「……もしかして、好きな男の子とかですか〜？」
「すっ……！？　否ッ！　断じて、そのようなものではっ……！？」
「え〜〜でも理事長さんすっごく頑張ってたじゃないですかぁ〜♪　それだけ大事な相手に渡したいってことですよねー？」
「うっ……それは……」「私にだけっ！　この通りっ！　誰にも言わないから教えてください〜っ！」
「むむむっ……うぅ、君にはここまで協力してもらったし……」
　すこしお顔の赤い理事長さんが、むむむ〜と悩んでます。
「わ、わかったっ……そ、その……彼は、最近よくお世話になってる相手でな？」
「ふむほむ……♪」
「彼はいつも担当のため一生懸命頑張っていて、私にも良くしてくれていて……」
　担当のため……ってことは誰かのトレーナーさんってことですかねー？　ふむふむなるほどなるほどー♪

「この私を動物園に連れていってくれたり……お母さまへのプレゼントを一緒に選んで貰ったり……」
「……んんん……？」
「お母さまと会えないかもしれないとなったら、私のために色々と手伝ってもらって時間を作ってくれたり……とにかく、彼にはいっぱいお世話になってるのだ」

　……なんかその話、どこかで聞いたことあるよーな……？
「あのーー……理事長さん……それってもしかして……？」
「う、うむ……君のトレーナーだ……」
「わっ、わわっ……！！　わひゃ〜〜……！？」

　どひゃぁびっくりした！　まさか理事長さんがバレンタインを贈りたい相手がトレーナーだったなんて〜！？
「え〜〜っ！　理事長さんっもっと早く言ってくれたら良かったのに〜！」
「す、すまんっ……！　なんだか気恥ずかしくなってしまって……！」
　へーー……そうなんだ、理事長さんトレーナーさんのために一生懸命ガトーショコラ作ってたんだ〜……♪

「……ふふっ♪　そっか〜」「うぅ〜……彼には当日まで、内緒にしていて欲しいっ！」
「ふふふ、了解ですっ！　いや〜それにしても理事長さん、私のトレーナーにバレンタインを……いやあ、見る目がありますな〜」
　恥ずかしそうに帽子を被る理事長さんにニコニコしちゃいます。
「いや〜トレーナー優しいからな〜わかっちゃうな〜♪　むふふふ〜♪」
「な、何を笑っているのだ！？」
「いやはや、理事長さんトレーナーのこと好きなんだ〜って思いまして♪　いやあ良いですよねトレーナー。優しいお兄さんって感じですもんね〜♪」
　いやあ微笑ましいですね〜。初恋か〜♪

「い、否ッ！　ち、ちがっ……！　私は決して、その……彼のことはそういうあれではなくだなっ……！　その、日頃の感謝の気持ちというか、なんというか……」
「……でも本当は〜？　憧れとかっ？　ドキドキとかっ？」「……〜〜〜っ！　だから、そういうのではなくてだなっ……！！」
　必死に否定するところがますます怪しい〜！　理事長さん、すっかりお顔が真っ赤になっちゃっていますしっ♪

「キャッキャ」
「うぅ〜〜！　そ、そういう君はどうなのだっ！　マチカネタンホイザ！」
「…………？　……ぅぇっ！？　うぇーーっ！？　わ、私ですか……！？」
　突然、理事長さんから扇子を突き出される。
「うむっ！　彼と君との間には堅い絆があるっ！　長くともに走り続けたのだ！　そういうタンホイザの方こそ、彼に特別な気持ちがあるのではないかっ！」
「いやっいやいやいやいやいや！！　違いますよっ、トレーナーと私は別にそんなんじゃ……」

「そうなのか……？　私としては、二人はとてもお似合いだと思うのだが……」
「え、えへへー……？　そう、ですかー……？　でへへ……♪」
「……！　やはりっ！　その反応、君は彼にそういう気持ちがあるのでは無いか！？」
「いやいやっ！！　違いますっ違いますってぇ！？」
　う、うぅ〜〜！　こっちまで顔が赤くなってきちゃうぞ〜！？

　ピロン♪
「おや？」「……あっ」
　そうこうしてる間に、オーブンから焼き上がりの音が鳴ります。
「焼き上がったのか……？」「みたいです、開けましょ〜……！」
　ミトンを使ってそーっとオーブンから取り出す。
「お〜ちゃんと固まってますよー！」「そ、そうかっ！」
　中までいい感じか切り分けて見てみましょう。むん。

「いざ……！」「ごくり……」
　さくっ。しと……。
「お、おお〜……！？」「こ、これは！？」

　何個か切り分けて見てみると、外はしっかり中はしっとりとしたガトーショコラが出来ましたっ！
「これは……良い感じだろうか……！？」
「味見っ！　味見してみましょうっ！」
　んーー……パクっ！

「こ、これは……！？」「ん〜〜〜美味しいっ！！」
　濃厚なチョコがとろりと柔らかくて、それでいてショコラとしてしっかりもしていて、甘くて美味しくて……！
「理事長さんっ！　これ、美味しいっ！　大成功ですよっ！！」
「ほ、本当か……！？　わ、私がこれを……！？」
「はいっ！　パーフェクトべりーべりーデリシャスなガトーショコラです！」
「やっ……！　やった……！！」

　ぐすん、と。理事長さんが涙を流してます。うぅ……成功して良かったよ〜！
「理事長さん、大成功ですねっ……！！」
「ああっ……！　ああっ！！　ありがとう、マチカネタンホイザっ！！」
　がしりと、理事長さんに握手されます。えへへ、良かったなぁ〜。

「……それじゃあ理事長さんっ仕上げしましょうか！　切り分けて、粉砂糖かけて、ラッピングです！」
「ああ、そうだな！　頑張ろうっ！」
　そうして、理事長と最後の仕上げに取り掛かるのでした。

――――

　理事長さんの作ったガトーショコラを袋にいれて、結んで〜……はい、完成……！　いや〜これはなかなか良いものができたのではないでしょーか！

「……う、うむ……彼は喜んでくれるだろうか……」
　また理事長さんは不安そうな顔をしています。なのでここはまたしっかりと励ましてあげましょう！　むん！
「トレーナーなら絶対喜びますって！　だって理事長さんがこんなに頑張った手作りガトーショコラですよ！」
「そ、そう……だな……！　うむ、うむっ……！」
　ふふっ、理事長さんかわいい……！

「ふふ、これは私も負けてらんないぞー！」
「！　そうか、君もこれからバレンタインのお菓子作りだったな！　……私にも、手伝えることは無いだろうか？　私も、君の力になりたい……っ！」
「むっふふー、そうですねー！　それじゃあ理事長さんに色々手伝って貰っちゃいましょう！」
「ああ！　任せてくれっ！」

「それじゃあ、バレンタインに向けてもうひと頑張り！　頑張るぞー！　えいっえいっむんっ！」
「えいっえいっむんッ！」

――――――

　――そして、バレンタイン当日。

「あれ、タンホイザと……理事長……！？　どうかしたのですか……？」

　トレーナーさんがトレーナー室に入ってくるのを待ち伏せてた私と理事長さん！　ふふっ、待ちに待ったこの日。理事長さんもそわそわしながらトレーナーのことを待っていました。

「あのっ……そのっ……だな……！　その……」
「むっふっふっ……それじゃあ、せーのでやりましょう」
「あ、ああ……！」

「……？」「せーの……！」
　不思議そうにしているトレーナーに、ふたりで息を合わせてバレンタインチョコを差し出します！

『ハッピーバレンタインっ！　トレーナーっ！』

おわり