　今日はトレーナーさんとお出かけの日。ペアチケットを貰ったからと、トレーナーさんは僕を水族館に誘ってくれた。
(……こ、これ、デート……だよね……？)

　そっと、トレーナーさんを見る。トレーナーさんは僕のすぐそばで、人混みではぐれないように、近くにいてくれている。
「シュヴァル、結構混んでるけど……大丈夫？」
「は、はい……大丈夫……です」
「ん、そっか。この人混みだから、はぐれないようにな」
　そう言って、トレーナーさんはそっと手を差し出す。

　…………こ、これ……手を、繋ごうと……してくれてる……？

　トレーナーさんが歩く度に、揺れる手のひら。そ……っと、手を伸ばしかけて、止める。
(……っ……だ、ダメ……トレーナーさんと手を……繋ぐなんて……っ)
　鼓動が早くなり、顔が赤くなるのを感じる。
　……僕は臆病者だ。この少しの勇気が、出ない……。

(…………け、けど……けど、これじゃ、ダメ……だよね……？　せっかくトレーナーさんが手を繋ごうとしてくれてるのに……僕は……僕は……。……っ、な……なら……っ)
　一歩、前に出てトレーナーさんの隣に並ぶ。
(……手は、勇気が出ない……けど、これなら)
「……？」

　ふぁさ。
　しゅる……しゅる……。
　トレーナーさんが差し出してくれた腕に、尻尾をそっと巻きつける。

　これが、勇気の出ない僕の、精いっぱい。直接手を握り合うなんてできないから、せめて僕のこの尻尾で……。
「…………ん」
　トレーナーさんは少し驚いた顔をしていたけれど、すぐに小さく頷いて僕にそっと肩を寄せてくれた。

　……う、うぅ……近い……恥ずかしい……。……けど、でも……温かい……。
　人混みの中をはぐれないように、肩を寄せ合って。腕と尻尾を絡めて、僕らは歩く……。
(……思ったより、近い……け、けど、……手を握るのに比べたら、このくらい……平気、だよね……？　代わりに尻尾でするくらいなら……まだ……うん……)
　トレーナーさんの腕の温かさを感じながら、歩幅を合わせながら、僕らは人混みの中を歩むのだった……。

――――――
「ひそひそ……ね、ねぇ……あれ……」
「…………？」
(…………なぜだか視線を感じるような……？　……気のせい、かな……？)
「……み、見た……？　あのカップル……尻尾で手繋いで……」「わ、わぁ……あんな大胆なの……初めて見た……」「ヤバ……すご……」「いいなぁ……」

「…………？？」

おわり