『ドンドンドン！』『ドンドンドン！』『ドンドンドンドンドンドンドン！！』
　……今日はやけに怪奇現象が多い。マンハッタンカフェの担当をしてから怪奇現象に遭遇することも増え、その結果慣れてしまったのだけれども……どうしようかと困っていたところに、担当のマンハッタンカフェがやってきた。
「……トレーナーさん。落ち着いて聞いてください。トレーナーさんは今、とても厄介なモノに目をつけられてしまったようです」
　目を伏せがちにそう伝えてくれるカフェ。先程から目を合わせてもらえていないのも、それだけ大変な事態が起きていることの証左なのだろう。
「わかった、何をすればいい？」
「安心してください……私が、守りますから……なのでまずは安全な場所へ避難しましょう」

　――そうして、俺とマンハッタンカフェはタキオンと共有しているカフェの私室に連れてこられる。いまはどうやらタキオンはいないらしい。
　とりあえずカフェのお気に入りのソファに二人して座る。
「タキオンさんは……この時間はデータ取りに行っているみたいですね。……はい、これでひとまず安心だと、思います」
　なるほど、っとホッとしていると……。
『ドンドンドン！！』
「ひいっ！？」
「……安心してください、外から扉を叩いてるだけです。アレはこの部屋には入ってこれません」
　そっかなら安心だね、と言葉を漏らす……。の、だが。
『ドンドンドン！！』『ドンドンドン！！』『ゔゔぁああああ！！！』
「まって、これホントに大丈夫……？」
「……怖いですか……？　大丈夫です、私がいるので……私があなたを守ります」
　彼女の頼もしい言葉にひとまず安心する。
「……だから、トレーナーさん。できる限り身体を密着させましょう」
「……それが、必要なのか……？」
「…………ええ、あなたを守る為に必要です……」
　そう言って、マンハッタンカフェはソファに座りながらこちらを抱きしめる。
「ぎゅう……♡」

「……これなら、そのヤバいやつもどうにかなるの……？」
「…………♡♡　……？　……えっあ、はい……そうです」
　そういえば、カフェと抱きついてから、怪奇現象がピタリと止んだ。きっと、彼女と抱きしめ合っているおかげなのだろう。
「……なあ、これ、いつまでやってればいいんだ……？　今回は仕方ないとしても、こういうのは立場上良くないし……」　「……♡　……あ、そうですね……アレが諦めてくれるまで……ですかね……？」
「そっか……」

　先程とは打って変わって、静かになったカフェの私室で、俺たちは抱きしめ合う。カフェは持ち前の霊能力であの怪異と対抗しているからだろうか……抱きしめながらもたまにボーっとしてるようだ。
「…………♡♪」

　暫し二人で、静寂の中で抱きしめ合っていた……のだが、その静寂を突然破る者が現れた。
「おーいカフェ！！　ちょっと頼みがあるんだけ――」
『ゔぉぉおおお！！！！』『バンっ！！　バンっ！！　バンっ！！』
「！？？？　ぎゃぁーーーっ！！！　オバケーーーっ！！！！」
　ジャングルポケットが、やってきたと思ったら、怪異の猛攻により一目散に逃げていってしまった……。

「……あの、これ大丈夫なの……？　ジャングルポケット、君になにか用があったみたいだけど……」
「…………問題ありません」
「えっ？」
「…………あれは、ドッペルゲンガーです。ポッケさんのドッペルゲンガーでした」
　……彼女が言うのなら、そうなのだろう。あれもこの怪異のひとつなのだろうか……？
「……そんなことより、続きを……♡」
「あ、ああ……そうだな……それじゃあ、ぎゅ……――」
「――いやあ！！　良いデータが取れたねぇ！！」
『ボオッ！！！』
「うわぁぁっ！！？　私のデータが燃えたっ！！！？？」

　またも急な来訪者、この部屋の主のアグネスタキオンがやってきた……のだが、謎の発火現象によりタキオンの抱えていたデータが燃えた……。
「あ、ああ……私のデータが……もう一度……測定しなければ……」
　とぼとぼと、哀愁を漂わせて帰っていくタキオン。いくらなんでも可哀想に思えてきたのだが……。
「……大丈夫です、あれもタキオンさんのドッペルゲンガーですので。本人ではないです」
　可哀想なアグネスタキオンは存在しなかったんだ。

「…………これでもう誰にも邪魔されないですよね……」
　……？　彼女が何か呟いたようだったが、よく聞き取れなかった。
「……さ、抱きしめてください……♡　トレーナーさん……♪」「わかったよ」
　どこか嬉しそうなマンハッタンカフェを抱きしめようとした、そのとき――。

『ドンッ』
　不意に背後から強い力で押されてカフェを抱きしめたままその勢いで押し倒してしまった。
「…………っ♡♡」
「す、すまんカフェ……！　今どくから……！」
「い、いえ……どうかこのまま……こちらの方が魔除けの効果が高そうですし……♡」
「そ、そうか……で、でもこれは流石に不味いんじゃ――」
　担当とトレーナーの立場上、非常に不味い状態であるのには間違いない。
　こんな姿を誰かに見られたら……と思った矢先に、部屋の入口には――。
「――タキオンちゃん？　頼みたいことがあるって言ってたけど、なー……に……？　えっ……？」
　――ダンツフレームが立っていた。
「ご、ごごごご！！　ごめんなさいっ！！　失礼しましたぁぁ！！！」
　そして、顔を真っ赤にして去ってしまった……。やってしまった……見られてしまった……絶対に色々勘違いしちゃってるよね……？
　どうしよう……。
「ご安心ください。さっきのダンツさんも、おそらくドッペルゲンガーです」
「……いや、さっきからドッペルゲンガーやけに多くない！？」
　彼女は本当にドッペルゲンガーだったのか、カフェの言葉を信じるほかない。どうか、あのダンツがドッペルゲンガーでありますように……。
　そう祈りながら、俺はマンハッタンカフェと深く深く抱きしめ合うのだった……。

「…………ふふっ、幸せです……♡」
『👻👍』

おわり