　――ここはトレセン学園の地下施設。トレセン内での私物の闇取引や非合法な施設などがあるとまことしやかに囁かれている、裏トレセン学園。
　そんな場所に、何も知らないトレーナーがまた一人……まるで無垢な生贄のように、この先の自分の運命も知らずに……呼び出される。
　ここはトレセン学園の地下施設。今日の贄は、ダイイチルビーのトレーナー……。彼の身に待ち受ける運命とは、果たして――。

――――――
「突然呼び出されて来てみたけど……トレセン学園にこんな地下施設があったんだな……」
　エレベーターから降りたルビトレは、キョロキョロと辺りを見る。
（すごく真っ暗だけど、ぼんやり光る壁の照明のお陰でなんとか道は分かるな……。……でも、なんというか……薄気味悪い場所だなぁ）
　ルビトレはちらりと手に持っていた手紙を見る。そこには地図の場所へ○○時に来い、といった内容のものであった。
　ルビトレは少しその通路の雰囲気に躊躇いつつも、地図の案内通りに歩を進める。

「それにしても……一体誰がこんな手紙を……」
　その手紙は、主にトレセン学園の関係者が公用で用いられているモノと似通ったデザインであった。だから学園関係者の差し金だろうか、と考えつつルビトレはしていの場所に辿り着く。
「……ここ、か」
　彼の前には、重たそうなしっかりとした鉄の扉。
　その扉をゆっくりと、ルビトレは力を込めて開ける……。その重たい扉を開けた先に待ち受けていたのは――。

「――……マッサージ、ルーム……？」
　その部屋は、なんとも形容し難い部屋であった。彼の口からついて出た“マッサージ”という言葉は正しいのであろう。
　薄暗く、ぼんやりとランプの光が照らす部屋。その中にはおそらくアロマが焚かれていて……そして、施術用の台と、おそらくマッサージで使う用のオイルなどが置かれたミニテーブルがある。
　なるほど、これは確かにマッサージルームのようだ。しかし、それにしては不自然な所もある。

　まず、マッサージをするには施術台があまりにも短すぎる。人が充分に横になるには、この倍はないといけないだろう。
　それから、マッサージするにはあまりに短い施術台が圧迫感のある防音壁にぴったりとくっついていて動かせそうにも無いこと。
　そうして、最後に……何故か施術台の高さに合わせて、壁に穴が空いていた。その穴はゴム製の黒いモノで塞がれているが幾つか切り込みがあり、ちょうどくじ引きBOXのように手などを入れたら貫通するだろう。

「……俺は、こんな所で一体何をすれば……？」
　疑問に思ったルビトレは辺りを見渡し、そしてやがて一枚の手紙を見つける。
「これは……仕事の、依頼……？　えっと……この部屋の向こう側に客がいるから、こちらでマッサージをして欲しい……！？」
　壁の向こうの人間にマッサージなど、どうやれば良いのか。というか、どうして自分がマッサージをしなければならないのか。ルビトレの疑問は尽きない。
　だが、その次の文を読んだとき、ルビトレは驚きの声を上げた。
「えっ……！？　施術がしっかりと完了された場合は……――5万円が給料として振り込まれるのか……！？」
　仕事の量に対してあまりにもリターンが大きすぎる。その下には口止め料でもあるとの記載があるが、それでも大きな金額であることは変わらない。
　いやむしろ、これ本当に大丈夫な仕事なのか……？　と不安にもなるだろう。

「あ、怪しすぎる……！　でも、5万か……それに、ただマッサージするだけだし……」
　そう葛藤している内にリン、とベルがなる。振り返ってみるといつの間にやら、あの壁の穴から誰かの尻尾が生えていた。
「…………なるほど、そうか……尻尾のマッサージをするのか……」
　ルビトレは一流のトレーナーである。マッサージの知識はしっかりあるし、担当のダイイチルビーに実際に行ったこともある。ダイイチルビーはいつものように多くを語らなかった為、彼自身に自覚は無いが彼のマッサージ技術はかなりの腕前のモノだった。

　だが、尻尾となると話は別だ。彼はダイイチルビーの尻尾にマッサージをしたことは無かった。当然他のウマ娘にも。何故なら、尻尾はウマ娘にとってデリケートな部分であるからだ。
　知識としては知っているが、実践ではしたことが無い……いや、むしろ実践したことがあったら問題だ。
　だからこそ、彼は悩んだ。こんなことをやってしまって良いのだろうか。それと同時に納得した。こんな地下の怪しげな部屋に呼ばれたのか。何故報酬がこんなにも高額なのか。
「どう……しようか……」
（誰の尻尾かも分からないこの尻尾を、俺は全力でマッサージしなければならないのか……）
　リン。またベルが鳴る。これはきっと、早く施術をしてくれという合図。
　ゴクリ、と彼の喉が鳴る。そうして、彼は覚悟を決めた。
（ごめん、ルビー俺は……）
　彼がマッサージ用品を手に取る。そうして、ルビトレの秘密の尻尾マッサージが始まるのであった……。

――――――
　尻尾にオイルを垂らし、良く馴染ませる。手櫛で優しく梳いていき、尻尾の毛を滑らかにさせていく。
　彼の手付きは少しぎこちなくはあったが上手であった。いつかその機会が来るかもしれないと備えて勉強していたのが功を奏したようだ。

　手櫛でスーっ……と軽く尻尾の毛を梳かす。すると、尻尾がビクリと跳ねる。
「わっ……びっくりした……これってその……“気持ちいい”ってことだよな……？」
　ならば、とルビトレは何度も手櫛で優しく尻尾を梳かしていく。その度に尻尾は震え、跳ねる。
　手応えを感じたルビトレは優しく揉みほぐすように尻尾をマッサージする。
『――――っ♡』
「ん？　何か聴こえたような……まあいいか……ってわぁ」

　急に、尻尾がルビトレの腕にまとわりついた。向こう側の客も積極的に刺激を欲しがってるようだった。
「ん……わかったよ」
　よしよしと尻尾を撫でながらそう言って、オイルを馴染ませた手のひらで尻尾をスリスリと撫でる。
『――っ♡――っ♡』
　ビクリビクリと何度も震える彼女の尻尾を、ルビトレは無慈悲にもぎゅぅと握った。
『――――――♡♡♡』
　彼女の尻尾がピンと張る。
「そのまま、せーの……！」
　シコっシコ……シコっ！！
『――――？？？♡♡♡♡』
　彼女の尻尾は手の中でなん往復も尻尾をしごかれる。それがどれだけの快楽なのか、それは彼の手のひらに伝わる、震え続ける尻尾の感覚で分かった。

　そうして、クライマックスに向けてルビトレはその手の動きを加速させる。
　シコっシコっシュリっシュリっシコシコシコっ！！
『――――っ♡♡　――っ♡♡　――ッ♡♡♡』
　そうして、トドメとばかりにルビトレは、尻尾の付け根のほうをぎゅぅぅっと握った。
『ーーーー〜〜〜〜っ♡♡♡♡♡♡』

　…………暫くの沈黙。おそらくお互いに息を整えているのだろう……。
「…………調子に乗って……だいぶ派手なことをしてしまった気がする……」
　ルビトレは冷静さを取り戻し、そうして血の気が引いていく……。仕事は全うした。しかし、担当への申し訳なさと、非合法的な仕事を行ってしまったことへの罪悪感に苛まれようとしたとき――。
　――リン。またしてもベルの音が鳴る。それは、客が満足したという合図だった。
「……満足、してくれたんだな……お相手さんは……それなら、良かった……のかな……？」
　こうして、担当への申し訳なさは心の中に抱えながらも、しっかりと仕事を全うできた達成感を胸に抱いてマッサージ用品の片付けを始めるルビトレ。

　そうして……ルビトレの地下トレセン学園での奇妙な夜は幕を閉じるのであった……。

――――――
「――ダイイチルビーさま。いかがでしたでしょうか」
　おそらく地下トレセン学園の関係者と思われる仮面をつけた女性が、防音室の扉を開けて中にいたダイイチルビーに声をかける。
「……ふぅ……はい、お陰様で……とても素晴らしい体験ができました」
　ダイイチルビーはうっすらと紅潮した表情でそう答える。
「それは良かったです、他に何か気になった点はございませんか……？」

「…………その、少し……いえ、かなり大きな声を出してしまったのですが……あちら側には聴こえていたでしょうか……？」
　おずおず、とルビーは問いかける。
「ご安心ください、こちらの部屋は完全防音となっておりますので。それに、カメラを見る限り気づいている様子もありませんでしたし」
「そうですか……ところで、そちらのカメラ映像も購入したいのですが……」
「そうなりますと、施術代と隠しカメラのデータのセットで10万円になります」
「お支払いいたします」
　そう言って、10万円を取り出し支払うダイイチルビー。
　こうして、ダイイチルビーの妖しげな夜は幕を閉じるのであった――。

――――――
（……欲を言えば、尻尾を見て私だと気付いて欲しかったですが……仕方ありません……むしろそちらの方が良かったかもしれませんね……）
（今日は……良い夜になりました、とても良かったですよ。ありがとうございましたトレーナーさん）

（…………誰とも知らない尻尾をマッサージしてしまった俺は、ダイイチルビーに相応しくない男になってしまったかもしれない……）

おわり