私は待つことができなかった。
彼と私の間で交わされた鉄の契約だけでは、彼を繋ぎ止めることはできないのではないか、と。私は彼を愛していた。だから、彼ともう一つの契約を交わしたかった。
「どうしたんだ？　突然こっちの部屋を訪ねてきて」
彼との旅行の夜。私は彼の部屋の戸をノックした。
「中に入ってもよろしいでしょうか？　大事な話がしたくて」
そう彼に声を掛けると、彼はあっさりと部屋に招いてくれた。不用心なのか、それともそれだけ私を信頼なさっているのか。
「それで、大事な話って？」「トレーナーさん、私が家族を何より大切にしているのは知っていますね？」「そうだね」
「……私の一番大切なモノの中にトレーナーさん、貴方を加えたい」「それって……」
「ですが今の私にその資格は無い……ですので仮の契を結びたいのです。……トレーナーさん、左手の薬指を差し出してくれませんか？」「……ジャーニーなら、いいよ」
そう言って差し出される彼の薬指にそっとキスをし、それから深く薬指を咥え、そして……。
ガリっ。
鉄の味が口に広がる。彼の薬指に血の指輪ができる。
「貴方を愛しています」
そうして契は、結ばれた。
おわり