「トレっち〜〜♡♡」
　ぎゅっ。
　飛びついてくるヴィブロスをそっと受け止める。
「えへへ〜……♡　トレっち〜……♡」
「はいはい」
　むぎゅ〜。
　全身を使ってめいいっぱいハグをしてくるヴィブロス。ここはドバイのホテルの一室。俺とヴィブロスは2人だけで何度目かのドバイ旅行に来ていた。

「えへへ〜♡　お部屋入っちゃったもんねぇ♪　これでいつもよりもいーーっぱいっ♡　トレっちに甘えられるねっ♡」
「外でもいっぱい甘えてたろ？」
「え〜、これでもお外じゃちゃんとガマンしてたんだよ〜？　抱きつくのも〜、ちょっとだけにしてたし〜。でもでもー、今は2人っきりだから……♡　いーっぱい甘えちゃうよ♪」
　そう言って、ヴィブロスはすりすりと俺の身体に頬ずりをする。
「んん〜……♡　えへへ、トレっちだ〜♡」
「はいはい、……ほんと、君は何年経っても甘えんぼだな」
「そーだよ〜♪　私はこれからもず〜っと甘えるのだ〜いすき♡　なんだもんっ♡　だからトレっち〜……♡　いっぱい甘やかして〜♡　おねが〜い♪」
「ああ」
　そう言って、ヴィブロスの身体を優しく抱きしめる。
「えへへ〜……♡　トレっちすき〜♡　ぎゅ〜〜……♡」
「……ああ、俺もだよ」
「…………♡♡」

　ぎゅ〜〜ぅ。
　ヴィブロスの熱い抱擁を真っ直ぐに受け止めて、甘えたがりのヴィブロスにめいいっぱいの愛情を注ぐ。それが今の、俺たちの姿だった。

　――ヴィブロスとトゥインクル・シリーズを駆け抜けてから数年。彼女がトレセン学園を卒業し、担当ウマ娘じゃなくなってからも。ヴィブロスは俺のことをトレっちと呼び続けた。
「――だって、トレっちはトレっちなんだもん♡」
　それが彼女の言い分であった。
　たとえ担当契約が終わっても、俺たちは変わらず同じ時間を過ごした。週末は彼女の実家に顔を出し、休みの日は時間を合わせてヴィブロスやその家族と休日を過ごした。旅行をしたり、行事をしたり、買い物をしたり。
　当たり前のように、俺はヴィブロスと同じ時間を過ごした。彼女が言っていたように、俺はもうヴィブロスの新しい家族となったのだ。

「えへへ、ドバイ観光楽しかったね♪　やっぱりドバイってさいこ〜♡　何度来てもキラキラで……♡　と〜っても素敵な場所！」
「ああ」
　ホテルの窓から、2人並んできらびやかなドバイの夜景を眺める。
「ここから見るドバイも綺麗〜♡」
「ああ、そうだな……綺麗だ」
「――…………えへへ……♡　トレっち〜……♡　ちゅーしよっ♡」
　ヴィブロスが甘えた声でおねだりする。
「……突然だな」
「だって〜……こんなキレイな夜景を見てたら、なんだか胸がドキドキしちゃって……♪　ちゅーしたくなっちゃったんだもん♡　……ね、いいでしょ？　おねがーい♡」
　うるうるとこちらに上目遣いで迫ってくるヴィブロスに、俺はどうしても、勝てない。

「……ちょっとだけだぞ」
「えへへっ……♡　ありがとトレっち〜……♡　……ん、ちゅ〜……♡」
「――んっ……」
　ヴィブロスがつま先立ちをして近づいて、そして唇が重なり合う。彼女の甘い甘い感触を味わいながら、そっと彼女を抱きしめる。
「ん〜……♡」
　幸せそうに目をつむりキスを楽しむ彼女の表情は、あのドバイの夜景よりも、綺麗だ。

「トレっち〜……♡　もっともっと、ちょ〜だい……♡」
「ああ……」
　ちゅっ、ちゅ。
　触れ合うだけのキスを、何度も重ねる。それだけで、胸は高鳴り、心は満たされる。
「トレっち〜♡　すき……♡　だ〜いすき……♡」
「ああ……」
「えへへ……♡　ずっといっしょだよ……？♡」
「ああ、君を……離さない」
「……♡」
　ぎゅっと、彼女を抱く腕の力を強める。それだけで、どんな言葉よりも、俺の気持ちは彼女に伝わってくれるだろう――。

「えへっ……♡　私、しあわせ……♡」
「そっか……」
「ふふ〜……♪　トレっちも〜……しあわせ……？」
「……ああ、幸せだよヴィブロス」
「やった♡　ぎゅ〜……♡♡」
　彼女の温かな抱擁に、温かな気持ちで抱き返す。幸せを分かち合って、その温もりを分かち合って……。

――――
「ねーねートレっち〜……♡　すわろ……♪」
　ヴィブロスに促されるまま、俺たちは2人でソファーに向かう。ちょこんとソファーに座ると、ヴィブロスはトンと寄りかかりこちらに頭を預けてくる。
「……えへ、トレっち〜……♡　なでなでして欲しいな〜♡」
「まだまだ、甘えたりない？」
「うんっ♡」
　期待のこもった眼差しでこちらに返事を返すヴィブロス。そんな彼女の期待に応えるように、こちらに差し出された彼女の髪をそっと撫でる。
「んっ……♪」
「……よしよし、なで……なで……」
「ん〜……♡」
　なで……なで……。彼女の頭を優しく撫でる。
　ヴィブロスは猫のように目を細めて、なでなでを堪能する。彼女から漏れ出る蕩けた声が、彼女がこの手のひらの感触を心地良く思ってくれていることを物語っていた。

「トレっち〜……♡　お耳にもなでなでちょーだい〜♡」
「ああ、こっちもだな」
　髪を撫でる動きはそのままに、彼女のウマ耳に触れる。
「ん……♡」
　そっと……耳を撫でると、彼女の耳がぴくりと動く。そのまま、優しく梳かすように彼女の耳を撫でていく――。
「んん……♡　ふぁ……♡　えへへ、すき〜……♪」
　彼女の耳を包むように、ほんのり丸めた手のひらで彼女の耳を撫でていく。なで……なで……。
「んぅ……♪　トレっちの手優しい……♡　でもでも〜……もっちょっとはげしくても……♡　良いかもっ？」
「わかったよ、ヴィブロス……」
　そう言って親指を動かし、ヴィブロスの耳を内側と外側から挟みこむ。
「あっ……♡」

　きゅっ。すぅり……すり……。
「んんぅ♡」
　彼女の耳を優しく挟み、伸ばすように擦っていくと、彼女の耳は気持ち良さそうにピクピクと震える。
「トレっち〜……♡　ソレ、すき……♡」
「気に入ってくれて良かった」
　すぅり……すり。
「あっ……♡　んん〜……♪　んっ……♡」
　すり……すりすりくに……。
「んんぅ……♡　ん〜〜♡　すきぃ……♡」
　ぐりぐり、と。ヴィブロスは頭をこちらに猫のように押し当て擦りつける。
「トレっち〜……♡　もっともっと〜……♡　ねっ、ちゅーして〜……♡」
　甘えた声でおねだりするヴィブロスに底無しの愛情を注いでいく。
「いいよ」
　ちゅぅ。
「……♡♡　んっ……ちゅぅ♡」
　なでなで、すりすり……ちゅぅ。
「んっ……ちゅぅ……♡　むちゅぅ〜……♡」
　ヴィブロスの目が蕩けて、彼女はキスに夢中になる。耳の愛撫と口づけと、その両方を味わって、幸せに満ち満ちた表情で甘えた声を上げるヴィブロス。

　何度かのキスを終えると、ヴィブロスは物欲しげな顔でこちらを見つめてくる。
「……ん、まだ物足りない？」
「ん〜……。そうだけど〜……でもお耳もして欲しいような〜……うーん……あっ」
　何かを閃いたのか、ぽんと手を叩くとヴィブロスはこちらに甘えた視線を送る。
「ね〜トレっち〜……♡　お耳に〜……囁いてほしーなっ♡」
「んん……それは良いけど、囁くって何を……？」
「ん〜……だいすき♡　とか？♡」
　イタズラめいた表情で笑うヴィブロスにやれやれと軽く息を吐く。そして、そっと彼女の耳に口元を近づけ、優しく囁いていく。

「…………ヴィブロスは本当に、甘えん坊だな……」
「んっ……♡」
「……いつまで経っても……いや、前よりもずっと……甘えんぼだ……」
「……んん……♡　だって……トレっちがトレっちなんだもん……♡」
「……いけない子だな」
「うぅ〜……♡　だって〜……♡」
「……いけない子だよ」
「うぅ〜〜♡　じゃあ……じゃあ……甘えちゃ……ダメ……？」

「…………いいよ」
「……！」
「……好きなだけ、甘えていいよ」
「……やった……♡　トレっちだいすき〜……♡」
「…………俺もだよ」
「…………♡♡　……ね、もっとすきって言って〜……♡」
「…………大好きだよ、ヴィブロス……」
「〜〜っ♡　えへっえへへ……♡」
「……愛してるぞ、ヴィブロス」
「♡♡♡　もっと……♡♡　もっとちょ〜だい♡」
「……好きだ、ヴィブロス」
「〜〜〜っ♡♡」

「――えへっ……♡　えへへぇ……♡　すきっ……トレっち〜……♡」
　顔も緩みきって、甘えた声ですりすりとこちらに身体を密着させるヴィブロス。その様子を眺めながら優しく頭を、身体を撫でてあげる。
「ん〜〜……♡　しあわせ〜……♡」
「良かった」
「ん〜……♡　ねぇねぇ、トレっち〜もうおしまい〜？」
　そう言われて時計を見ると、帰ってきてからそこそこ時間が経っていることに気付く。

「もうこんな時間か」
「……あ、ホント……！　そろそろディナーの時間かも……？」
「ん、そうだな。……どうする？　まだ物足りなそうだけど……」
　未だにこちらに身体を預けているヴィブロスにそう尋ねる。
「ん〜……確かにまだ満足〜！　ってワケじゃないけど〜〜……。うーん……でもでも〜♡」

「――やっぱり2人でディナーにしよっかな♡」
「いいのか？」
「うん！　お腹も空いてきちゃったし〜。それに〜……♡」
　ヴィブロスは何かを企むような小悪魔めいた表情を覗かせる。
「2人で一緒にごはん食べて〜、お部屋に戻って〜、それからシャワーも浴びて〜……♡　そうしたらそうしたら――♡」
「――いーっぱい、甘えられるもんねっ♡　まだまだ夜はこれからだよっ、トレっち♡」
「――――…………」

　――どうやら、彼女の甘えんぼはまだまだ続くらしい。

　……ドバイの夜は、終わらない――。

おわり