　深く深く底を潜るエレベーター、長い長い地下通路。そこを抜けて目の前に広がる光景は、圧巻の一言。
　ザーっと轟き流れ落ちる水。ここは日光、華厳の滝。

「おお、これが華厳の滝か……凄いな」
「日本三大名瀑の一つですからね、その中でも一際有名な華厳の滝。……噂には聞いていましたが、やはり実際に見ると違いますね」
　ジャーニーの漏らした言葉に頷き同意する。俺とジャーニーは日光へと旅行に来ていた。その旅行の目的の一つが、この華厳の滝であった。

　華厳の滝のエネルギーを感じながら、より近くで見ようと人混みをかき分け進んでいく。標高が高いからか、それとも流れ落ちる水のエネルギーか、初夏であるにも関わらず過ごしやすく涼しさを非常に感じられる。

「おお、近くで見るとより一層迫力が凄いな」
「そうですね……これは、中々……」
　華厳の滝の迫力に思わず息を呑む。自然の美しさと厳しさを感じさせるような、激しくも美麗なその光景を俺たちはしばらくの間眺め浸っていた。

　展望台の最前列を少し離れ、これからどうしようかと考え辺りを見渡すとひとつの売店を見つけた。
「俺、ちょっと売店覗いてみようかな。ジャーニーはどうする？」
「おや、売店ですか。そうですね……私はもう少し滝を眺めていようかと思います。ですので私のことはお気になさらず、売店を見てきてくださいトレーナーさん」
「わかった、じゃ先に行ってるね。一通り見たら戻るから」
「ええ、行ってらっしゃいませ」

　そうして、俺はジャーニーと離れ売店へと向かうことにした。何か面白いものは売ってるだろうか、そんな期待を胸に秘めて――。

「――……おや……？」

――――――

「ただいま、ジャーニー」
「おかえりなさい、トレーナーさん」
　一通り売店を見てまわり、目ぼしい物を見つけた俺はひとまずジャーニーの元へと帰ってきた。

「いかがでした？　何か良いものは見つかったでしょうか」
「ああ、それがな……！」
　ジャーニーに売店での話をしようとした所で。

「ん……？　あれは」
　観光客の中に、何か機材を持った集団を見かける。
「どうやら、テレビの取材みたいですね」
「はあ……流石、観光地だな。……まあ、俺には関係ないか」
　そう言って遠巻きで取材群を眺めながら、俺はジャーニーを連れて売店へと向かう。別にテレビに映りたいという欲求は無い。俺には関係のないことだ、と。そう思っていた。――まだ、その時は……。

――――――

　それから数日後。ジャーニーとの旅行を終え休日も過ぎ去った昼間。ランチでも食べようかと食堂を訪れると……。
「……あれが、ドリームジャーニーさんのトレーナー……」
「わぁ……噂の……」

「……？」
　どこからか、ヒソヒソ声が聞こえてくる。しっかりとは聴き取れていないが、その好奇の目は俺に向いてるような気がして……。
　しかし、何か噂になるようなことをした覚えは無いので首をかしげる。一体、なんだと言うのだ……？

「よ、お前凄いことになってるな？」
　どうしたのだろうかと疑問に思っていると、同僚のトレーナーが突然話しかけてくる。

「え、凄いこと？　何が？」
「は？　え、知らないのか……？」
　困惑顔の同僚。しかし、そんな風に言われてもまるで見当が付かないのだが……。

「今、お前ネットで凄いことになってんぞ」
「……は？」
「ほら、これ見ろって」
　そう言って、同僚はこちらにスマホを見せる。そこには、おそらくウマッターの呟きであろうモノと、ひとつの画像があった。
　その画像には、どこかのニュース番組のテロップ、中央には俺の担当のドリームジャーニーの姿があった。

「えっ……？」
　そして、よくよく見ると……画面の下部に、字幕がついている。そう、画面の中のドリームジャーニーは、インタビュアーにこう答えていたのだ。

『トレーナーさんと二人できました』
　……と。

「今、このインタビュー画像がめっちゃバズってんだよ。トレーナーと二人きりで旅行している現役ウマ娘がニュースに登場したって」
「は……？　えっいや、えっ？？」
　画像の背景には見覚えがある。華厳の滝だ。そして、その場にインタビュアーが居たのも覚えている。まさか、俺が売店に居る内に、あのジャーニーがインタビューを受けていたのだろうか。
　というか、問題はジャーニーの発言の方だ。彼女の言葉に嘘は無い。嘘は無いのだが、何か非常によろしくない勘違いを巻き起こしているのでは無いか……？
　俺とジャーニーは決して、話題を巻き起こすような関係ではない。しかし、それが囃し立てられているということは、あるいは先程のように噂話をされているということは。……つまり、そういう事なのだろう。

「まさかお前がなぁ……いや、他人の仲をどうこういうつもりは無いが……」
「待て、誤解だ……！？」
　同僚は、生温かい目でぽんぽんと肩を叩く。違う、決してそんなことは、誓って無いのだ……！

『ドリームジャーニーのトレーナー、至急理事長室まで来るようにッ！』
「！？？」
　校内アナウンス、理事長の声で直々に呼び出される。
「ほら、行ってこい」
「いや、俺は何もしていないっ！　これは誤解なんだ！！」
　そう叫ぶものの、その声はただ虚しく響くだけで。生温かい視線に囲まれながら、俺は無実を叫びながら理事長室へと向かうことになるのだった――。

――――

「……ふう、ある程度反応の予想はしていましたが……まさか、所謂ミームになるほどまでに反響があるとは思いませんでした……」
「……ですが、まあ――」

「――好都合、ではありますね。ふふ……♪」

おわり