「今の走り、どうですかビリーヴさん！」
「……うん、フォームは良かったと思う。走りのブレも少なかった、良い走りができてたと思うよ」
「本当ですか！？　えへへ、ありがとうございますビリーヴサブトレーナー！」

　“サブトレーナー”。それが今の僕の仕事だ。トレーナーさんの元で研修を受けて2年、難関のトレーナーライセンス試験を乗り越えて、僕は新人トレーナーとしてトレセン学園に入り、そのままトレーナーさんのチームのサブトレーナーになった。

「今度は私の走りも見てください！」
「いやいや次は私だって！」
　チームのみんなは……僕が現役の頃から馴染みの後輩たちだ。みんな、僕のことを慕ってくれている。

「おーい、ビリーヴは一人だけだぞー。走り見て欲しいなら俺も空いてるからなー」
「えー、じゃあジャンケンで決めよっか」
「負けたらトレーナーさんで妥協ね！」
「おい」
　じゃんけんほい。楽しげにはしゃぐ教え子たちを苦笑いしながら見守るトレーナーさん。僕がサブトレーナーになって、ちょっとみんなからの扱いが悪くなった気もするけど……それでも、みんなトレーナーさんのことを信頼している。
もちろん、僕も。

「調子はどうだ？　ビリーヴ」
「はい、問題無いです」
「そうか。……うん、トレーナーとして板についてきたんじゃないか？」
「そう、かもしれませんね。みんなも僕のこと頼ってくれて」

　やったー私の勝ち！　そんな声が聞こえる。嬉しそうにこちらを見つめる僕の教え子。
　僕は短距離の専門家として短距離に適正のある子の指導を行っていた。トレーナーとしての熟練度はやっぱりトレーナーさんの方が上だけど、それでも実際にレースを走ったからこそ教えられることはある。
　トレーナーとしての指導はトレーナーさんが、走者としての指導は僕が。そうやって上手く補完しあって指導できている……と思う。

「ビリーヴには、いつも助けられてるからな」
「……いえ、僕は僕の仕事をこなしてるだけですから」
「ああ、そうだな。それでこそ俺の“仕事仲間”だ！　これからも頼りにしてるぞビリーヴ」
　“仕事仲間”。僕とトレーナーさんの二人の関係。トレーナーさんと一緒に仕事ができる、それが何より嬉しくて“仕事仲間”でいられることが嬉しくて、頼りにされるのが嬉しくて。だから僕は応える。

「はい、これからもよろしくお願いします。トレーナーさん」

おわり