　仕事の小休憩。キャンディの袋を開けて口に放り込む。口の中に広がるほのかな甘みに浸っていた所、こんこんとトレーナー室の扉がノックされる。
「……ふふっ、トレーナーさんハッピーハロウィン♪」
「ああ、ローレルか。ハッピーハロウィン」
　やってきたのは小悪魔ちっくな衣装を着たサクラローレルだった。そうか、今日はハロウィンか。彼女の可愛らしい衣装を見ながら今日がなんの日であったのかを思い出す。

「ハロウィンってことで……トレーナーさんっ……♪」
　頬に指を当て、イタズラめいた表情でサクラローレルはハロウィンのお約束の言葉を続ける。
「……トリック・オア・トリート♡」
　ローレルの艶のある声と仮装も合わさって、かなりの破壊力の伴ったその言葉に心臓を刺されつつ、俺はその言葉に応えるためお菓子を探す。

「えっと、今なめてる飴がまだあった筈なんだけど……。……あれ、無い」
　袋をガサゴソと漁るものの、手応えがまるで無い。まさか、さっきのが最後の1個だったのか……？
「……もしかして、お菓子……無いんですか？」
「そ、そうみたい……」
「へぇ……そうなんですね……♡」
　サクラローレルが目を細める。……嫌な、予感がする。

「あ、あの……ローレル……？」
「ふふっ、お菓子が無いなら……イタズラ、するしかないみたいですね……♪」
「ま、待って……！？」
　サクラローレルのイタズラ。妖しく微笑むサクラローレルに、獲物を狙うような彼女に、何かの危機を感じ取って、俺は思わず声を上げる。
「どうかしましたか？♡　ふふ、トレーナーさんが悪いんですよ……？　だって、お菓子を持ってないんですから……♪」
「お、お菓子なら用意するから……！　い、イタズラだけは……！」
「……私にイタズラされるの、イヤですか……？」
　……嫌だという訳では無い。訳では無いが……イタズラされたら最後、無事に帰して貰えなさそうだと、そう思わずにはいられない。だから、俺はどうにかその場をやり過ごそうとするが。

「……ふふ、どこに行くんですか……♪　まだ、私の質問は終わってないですよ……♪　トリック・オア・トリート、どっちにするんですか……♡」
「え、えっとそれは……その……できれば、トリックは避けて欲しいというか……」
「えー……♡　でも、お菓子はトレーナーさんが今なめてるキャンディしか無いんですよね？　それじゃあイタズラをするしか……」
「それは……そうだけど、どうにか……」
「そうですねー……。……あっ、そうだ――♪」
　急にぱんと手を合わせると、サクラローレルは良いことを思いついたみたいに表情を変える。

「トレーナーさん、私イタズラしませんっ♪」
「……え、そう……？　えっと、あ、ありがとうローレル。後でお菓子買ってくるから――」
「――ふふ、お菓子なんて買わなくて大丈夫ですよ？　……♪」
「え、いやでも」
　すんなりと引き下がる彼女の言葉に、少し困惑をしていると、彼女はゆらり、と妖しく揺れる。
「ええ、だって――今から、お菓子を貰いますから……♡」
「……え？　そんなこと言ったってここにお菓子なんて――」
「ふふっ――♡」
　ローレルが笑ったかと思ったら、グイと距離を突然詰めてきて、そのまま――。
「――いただきます……♡」

　ちゅぅっ。

「っ……！？」
「ん、ちゅぅ……♡」
　突然のキス。自分の唇に熱くて柔らかいものが重なって、脳の処理が追いつかなくなって、そうしていると――。

　ぇおっ……♡

「んんっ！！？」
「……♡　ぇーぉ……♡」
　ちゅっ、れろ。唇を押し広げるようにサクラローレルの艶かしい舌が押し込まれる。そうして、しばらく俺の口内を探っていたかと思ったら、俺の口の中に入っていたキャンディを見つけて。
　ローレルは舌でそのキャンディを絡めとると、味わうようにねとねとと少しなぶってから、奪い去ってしまった。

「んっ♡　ぷは……♡」
「……っ、ろ、ローレルっ」
　唇が離れ、ローレルの艶かしくも妖しい笑顔が視界を独占する。
「……ふふっ、トレーナーさんのお菓子……♡　いただきました……♡」
　ぺろ、とローレルは口を開け舌を出すと、器用に溶けて小さくなったキャンディを舌の上に乗せてこちらに見せつける。
「っ……！」
「ふふっ♪　トレーナーさんのキャンディ、美味しいですよ……♡」
　そうして舌をしまったサクラローレルは、俺のキャンディを、それはそれは長い時間をかけて味わって。その姿をこちらにじっくりと、焼きつくまで、見せつけてくるのであった……。

おわり