「ぁあ゛ぁ……」
　顔を真っ赤にして、トレーナーさんが机に突っ伏す。トレーナーさんの周りにはたくさんのお酒の空き缶。祝勝会を兼ねた温泉旅行で、私とトレーナーさんは旅館のお部屋で飲み会をしていたのですが……。
「うぅ……ヒシミラクルぅ……」
「はいはい、私はここにいますよ〜」
　トレーナーさんは相当酔っ払ってしまったみたいです。……あ、勿論私は飲んでませんよ？　まだ未成年ですし？　これはただの炭酸ジュースです。

「なあヒシミラクル……飲んでるかぁ……？　食べてるかぁ〜……？？」
　机の上には美味しいごはんとおつまみとそれからお菓子。どれも既に味わい尽くして、どれも美味しくて、ちょっと汚れちゃった手の指の先を見て、それから答えます。
「はいっ！」

「ヒシミラクル……俺はな……俺はなあ……」
　うわ言のように、トレーナーさんが私の名前を呼びます。
「俺……ホントはぁ……実はホントはあぁ……ヒシミラクルのいっぱい食べてる姿とか好きでぇ……」
「え……？」

「ホントはいっぱいぃ、食べさせてあげたくてぇっ……！」
　ぽろぽろと、トレーナーさんが涙を溢しだして。
「ホントは駄目だけどっ」

「いけねえことだけどっ……！！」

「ホントはっ……！　お前のだらしないお腹が好きでぇっ……！！　だらしないお腹触りたいっ……！！」
「たくさんっ揉みしだきたいぃ……っ！！」

　床に崩れ落ちて、トレーナーさんがみっともない姿で欲望を叫ぶ。……ぇ、えぇ……？　あのトレーナーさんが、悪魔みたいに私に動けトレーニングしろってうるさいトレーナーさんが、私がいっぱい食べるとこ見るの好きぃ……？？
　私のだらしないおなかをいっぱい揉みたいぃ……？？？

「……あの、いま言ったことホントですか……？」
「うぅ……っ……あぁ、ああ……。おれはトレーナー失格だっ……！」
「えっと、失格とかどうでも良いんですけど、ホントに私の食べてる姿好きなんですか？」
「……うん……」
「私のおなか好きなんですか……？？」
「好きぃ……」

　土下座をするみたいな姿勢で、うなだれて、トレーナーさんが情けなく言葉を漏らす。
　その姿を見ていると……なんだか、言い知れない感覚が背中を撫でて――。

「……えっと、その……揉みますか……？　私のおなか……？」
「……っ……っぅ……うぅ……」
　ひくっ、ひくと床に突っ伏したトレーナーさんの背中が跳ねて、そうして少しの間が空いて、それから――。
「…………揉む……」

――――

「その……どうぞ……？」
　ぺらと服の裾をめくって、お腹をあらわにする。
　最近はその……大きなレースも終わったから自分をねぎらう為にいろいろ食べてて……ちょっと、ちょーっとですよ？？　食べすぎちゃったかなー？　って思うようなお腹を……トレーナーさんの前に差し出す。

「…………」
「……え、えっとその……お、怒らないでくださいね……？　も、揉むって言ったのはと、トレーナーさんなんですからね……！？」
　普段だったら、アスリートに有るまじき腹だと叱責の言葉が飛び出そうな状況なんですけど……。だから、ドキドキしてるんですけど……。
「…………うぅ」
　トレーナーさんは、そんな感じじゃ全然無くて……。

　そろり、と――。トレーナーさんの手が私のおなかに伸びて……。

「っ……」
　むにゅり。

　むに、むにゅ――。

「……っと、トレーナーさん……っ！　あ、あのっ！　ぁ、えっ、ぇっと……その、どう……ですか……？」
「……やわこい……」
　むにゅり、もみ……。トレーナーさんの手が、私のおなかをそっと力を込めてつまむ。おなかが、トレーナーの手に沿ってカタチを変える。
「っ……と、トレーナーさん……」
「ミラクル……もち、もみ……」
　だんだんと、遠慮が次第になくなって……むにっ、むにゅぅとおなかが揉まれていって、くすぐったさと、熱さが、だんだんとおなかの周りに集まっていって。

「……ヒシミラクル……へそが、横になってる……」
「ふぇ、へ、へそ……？」
　不意にそう言われて、目線が下がっておへその方を見ようとした瞬間――。

　にゅっ、ずぷっ。

「っっ……！！？///　ひぁっ！///」
　背筋をゾクゾクと痺れて、それから一歩遅れておへその中に固い感触を感じて――。
「ヒシミラクルのおへそ……すきだ……」
「ァっ……ゃ、トレーナーさんっ、ちょ、どこさわっ……ひゃんっ///」
　つぷ、つぷ。って、おへそに指を入れられて――。ぐぃー……と中を伸ばされて……。
　むに、むにぃ……。
「ぅあ、トレーナーさっ……///　おへそダメ、ダメです……！　禁止、それキンシですっ！！」
「っ……！　ぅ、あ、す……すまないっ」
　おへそから指が離れて、トレーナーさんが狼狽えてます。
「ぁ、おれ……そ、そのっ」
「……もう、トレーナーさんのえっち……。……その、おへそはダメですけど、おなかはもう少し揉んでて良いので……」
　ぐちゃぐちゃな顔をしていたトレーナーさんを見てなんだかこっちも心が変になっちゃって。気がついたら私は、またトレーナーさんにおなかを差し出していて……。

「ぅっ……ミラクル……ミラクルっ……」
「んっ……」
　もみ、ワシ、と。おなかがトレーナーさんの大きな手の中に収まって……むに、むにと揉まれてて。
「柔らかいな……ミラクル……」
「そ、そうですか……」
「もちもちだ……どれだけたべたらこうなるんだ……？」
「も、もう……っ！　そ、そんなこと言うならもう揉ませませんよっ」
「…………もみ、もみ」
　かち、かち、と。二人きりの部屋で時計の針の音が響いて。
「んっ……んぅ」
「ミラクル……ミラクル……」
　何がそんなに楽しいのでしょう。何がそんなに良いのでしょう。分からないけど……でも、その……悪くは無い感じで……。

「……あの、トレーナーさん……それだけで、満足……ですか……？」
「…………ぇ」
「えっと、だからその……っ、もう少し、欲を出しても良いですよ……？　トレーナーさんなら……」
　私も、おかしくなっちゃったんでしょうか。実は知らない間にお酒を飲んじゃってたとか……？？　いや、そんなことは無いんですけど……でも、普通だったら恥ずかしくてこんなこと言わないしやらせられないのに……。

「……じゃ、じゃあ……その……おなかにかお、埋めても……？」
「…………い、良いでしょうっ……！　その、埋めてくださいっ、トレーナーさんっ……！　さあ、はいっ！///」
「っ、い、良いんだな……？？」
　こく、と。赤い顔でトレーナーさんに頷くと。トレーナーさんはごくり、とこちらからも聴こえるくらいに喉を鳴らして、それからゆっくりと私のおなかに顔を近づけて――。

「ぁ……」
　むにゅり。トレーナーさんの顔が私のおなかに密着して、むにゅぅ、と押し当てられて。

「ぎゅぅっ……」
　私の腰に手を回して、トレーナーさんがおなかに顔を押し付けながら抱きついてくる。
「うぅっ……///」
　は、恥ずかしい……///　でも、トレーナーさんに良いって言っちゃった手前ダメとは言えなくて……。
「うぅっ……柔らかいっ……柔らかい……ミラクル……好きだぁあ……」
「うぅ〜〜っ……！///」
　恥ずかしさで頭がどうにかなっちゃいそうだけど、だけど……不思議とイヤって訳じゃなくて、うぅ、なんか変な感じで。でも、どうしたらいいか分からなくて、だからトレーナーさんの肩をポコポコ手をグーにして殴って。
「うぅっ……好きだミラクルっ……！」
「ぅぅ〜〜っ！　このヘンタイっ、バカ、酔っぱらい〜〜！！///　こんな時にスキスキ言わないでくださいよ〜〜っ！！///」
「好きだぁあ……っ！！」
　私のおなかの中で叫ぶトレーナーさん。うう、この人もう全部で私のおなか堪能してっ！！
　この、このっ……！

「うぅーー……ミラクルすき……おなかもすき……」
「……うぅ、……もう、はいはい……私はどこにも逃げませんから……」
　情けなくて、恥ずかしくて、トレーナーさんは今すっごくヒドい感じなのに……でも、幸せそうで……あんなにしっかりモノのトレーナーさんが私のおなかでこんなになっちゃってるのも、なんか……変な感じで……。

「……もう」
　ぎゅぅ。
　トレーナーさんのことを、上から、おなかも使って、ぎゅっと抱きしめる。

「うぁ、ミラクル……」
「……好きなだけ、私のこと堪能してください。そんなに私のことが好きなんですよね……？　だったら……その、今日だけ……良いですから……」
「ミラクル……」
「もう、その……トレーナーさんじゃなきゃ、こんなことしないんですからねっ……」
「うぅっ、ミラクルぅ……！！」

　……明日になったら、トレーナーさんはどれだけ覚えてるんだろう。もしかしたら、何にも覚えてなくて私だけが知ってるとか……？　トレーナーさんの恥ずかしいホンネも、欲望も……私のこといっぱい好きなことも……。

　……まあ、それも悪くは無いかなー……？　なんて……。
　……うん、私も今日は変な感じですね。

「……さぁ、トレーナーさんっ！　バッチこいですよ、今日の私はひと味違いますからねっ！　トレーナーさんの為に一肌でも二肌でも脱いでやりますよっ、さあ！　さあっ！」
「み、ミラクルぅ〜〜」

　そうして、私だけが知ってるトレーナーさんとの夜が、更けていくのでした……。

　おわり。


　――……あ、えっちなことは無かったですよ？　それはあしからず。

　ほんとうにおわり。