「シュ〜ヴァち〜♡」
「うわぁっ、ヴィブロス！？」
　休日。寮の広間でゆっくりしていたら、妹のヴィブロスが急にやってきて飛びついてきた。
「えへへ〜♡　シュ〜ヴァち〜♡」
「ちょっ、近……！？　なんだよ、くっつきすぎって……！　……は、もしかしてヴィブロスっ……！」
「えへへ〜……そう、今日は甘えんぼチートデー♡」
　“甘えんぼチートデー”……甘え好きのヴィブロスがより一層にその甘えたがりを爆発させる日……。いつもなら、姉さんやヴィブロスのトレーナーさんに任せていて、僕は極力その日のヴィブロスとは関わらないようにしていたけど……。

「その、姉さんやヴィブロスのトレーナーさんは……？」
「ん〜……お姉ちゃんはトレーニングで忙しくて〜……トレっちは大事なお仕事なんだって……だからシュヴァちしかいないの……！　おねが〜い……♡」
「うっ……僕は、その……これから買い物とかで忙しくて……」
　……嘘はついていない。もう少しゆっくりしてから行こうと思っていただけで、買い物に行こうとしていたのは事実、なのだけれど……。

「え〜！？　じゃあ、私もいっしょについてきたいなぁ〜？？　ねえねえ、シュヴァち〜私も連れてって〜〜？♡」
「……いや、それは……その……」
「シュヴァちのお買い物のジャマはしないから〜！　お願いっ、連れてって〜！！」
　うるうる、と上目遣いで僕を見つめるヴィブロス……うぅ、こういうのは、僕の得意なやつじゃないのに……。でも……。

「…………その、ホントに邪魔しないでよ……？」
「……っ……！　うんっ！！」
「……今日だけ、だから」
「〜〜っ！　ありがとっシュヴァち〜っ♡♪」
「わあっ、抱きつくなっ！？」
　むぎゅぅと飛びかかってくるヴィブロスにタジタジになりながら、僕たちはショッピングモールへ向かうことになるのだった。

――――――

「……あの、ヴィブロス。腕にくっつかないで……その、歩きづらいし……他の人の目もあるし……」
「え〜！　やだぁー」
　僕の腕にひっついて、抱きつきながらヴィブロスがついてくる。ショッピングモールに着いた途端にこんな風にされて……は、恥ずかしい。
「だってだって〜シュヴァちとらぶらぶ〜♡　したいんだもんっ。甘えたいの〜おねが〜い……！」
「ううっ」
　至近距離で見つめられて、あぁヴィブロスのこういう所がズルい。う、うざったいと思う訳じゃないけど、なんかやりづらくて……！
「は、恥ずかしいし……」
「恥ずかしくなんてないもんっ！　だってシュヴァちは私のお姉ちゃんだし？　姉妹だもんっ、これくらい普通だって〜！！」
　ふ、普通かな……？　あ、あんまりそうは思えないけど……。

「ねっねっ、シュヴァちはどこ行くのっ？　早くいこいこっ！　えへへ、いい子にしてるから〜♪」
「う、うん……それじゃえっと、トレーニングシューズを……」
「スポーツ店だねっ、行こ行こうっ！　お〜！♡」
　元気いっぱいに声を上げて、それからぐんぐんと進もうとするヴィブロス。
「……結局、僕の腕離す気は無いんだね……はぁ、もう……仕方ないか……」
「えへへっ……♡」

――――

「ねーねー、どれにするの？　あっ、こっちのやつとかどう？　どうっ！？　水色のラインがと〜っても可愛いよっ？♡」
「い、いや……デザインでは選ばないよ。機能面をちゃんと見ないと……。……というか、可愛いのは別に僕には合わないし」
「え〜！？　そんなことないよ〜！！　だってシュヴァちってすっごく可愛いじゃんっ！　このシューズも絶対に似合うって〜！！」
「っ……だ、だからぁ……！」
　ぐいぐいとこちらに迫るヴィブロス。そう言われたって、僕にはそういうのは似合わないし……！

「え、じゃあアレは！？　ハイブランドのすっごく良いやつ！　素材も機能面も最高級〜♡」
　ヴィブロスが指を指した靴を見る。僕はブランド物には詳しくないから分からないけど、飾り方からしてもう見るからに高そうだ……。

「えっと、確かに機能面は良さそうだけど……値段は、0が1つ2つ、……5つ、6つ……、……っ！？　い、いや高過ぎだろ！？」
「え〜〜っ超セレブ〜っ♡♡　これにしよっ！　これが絶対いいよシュヴァち〜っ♡♪」
「いやいやいや！！　こんなの履けないよ……！？　トレーニングシューズは消耗品なのに、こんな高いのずっと履き続けるなんてっ、よ、汚したりなんかしたらっ！　もし壊れたらっ」
「……あ〜、それは確かに、そうかも……？　えー、でもこれ履いてトレーニングすればめーっちゃ速くなれそうじゃないっ？」
「お小遣いどんだけあっても足りないって！？　足が速くなる前にお金が底を尽きるからっ……！！　とにかくダメっ！　これは無しっ！」
　慌ててそのシューズの棚から離れる。こんなの、絶対履けないし！　もし、て、店員さんに見つかって色々言われたらいよいよ僕のキャパシティオーバーしちゃうからっ……！！

「……はあ、なんか心臓に悪い……」
「う〜、ごめんねシュヴァち……」
「……ぁ、いや、その……別に謝る必要は……」
「う〜〜！　今度こそ、シュヴァちにピッタリなの探すからっ！」
「い、いや別にヴィブロスが探さなくても……」
　そう言っても聞かずに、ヴィブロスはフンフンっと意気込んでトレーニングシューズを探し始める。

「うーん、これが良いかなー？　でもこっちの方が可愛いしー……それに機能面も良い感じ？　いやいや、でもシュヴァちの走り方的にこういうのよりは〜……」
　……案外、真面目に靴選びを始めるヴィブロス。ヴィブロスのことだから……また、自分の好みだけ優先して選ぶと思ったけど……。むむむ、と考え込むヴィブロスの隣に、僕はそっと向かって……。

「――……うん。機能的な質は悪くないけど、これは僕の求めるモノじゃないかな……それよりはこっちの……」
「…………！　ぅん……！　えっとえっと、こういう感じのが良いんだよね？　それじゃあそれじゃあ他にも似たようなのが無いか探すねっ！」
「……うん、ありがとう。僕も、探す……一緒に探そう、ヴィブロス」
「……〜〜……っ……！　うんっ♪」

　――そうして、二人で協力して靴を探して……自分でも納得のいく良いトレーニングシューズを買うことができるのだった。

――――

「……あ、みてみてシュヴァち！　新作のフラペチーノだってっ！　これSNSで話題になってる奴だよ〜！？」
「そう、なの……？」
　買い物を終えてショッピングモールをゆっくり歩いて回っていると、行列のできてるコーヒーショップがあって。全国チェーンで、僕でも知ってる有名店だけど……SNSとかそういうのに疎い僕にはあまり縁遠いお店なんだけど……。

「……ねえねえ、シュヴァち〜♡」
「…………なに」
「新作のフラペチーノ……欲しいな〜？♡　飲みたいなぁ〜♡？」

「………………」
「おねが〜〜い！♡」
　……まあ、こうなるだろうなとは思ったけど……。
「…………」
「……あ、あれ、シュヴァち〜……？」
　ただ黙って、歩き出す。
　……財布を持って、コーヒーショップに――。

「――！！」
「……今日だけ、だから」
「〜〜っ！！　シュヴァち〜大好きっ♡♡」

　――ありがとうございました〜。
　ヴィブロスの言っていた新作フラペチーノを1つ買って店から出る。

「おお〜！　これが新作フラペチーノ……！　えへ、えへへ〜♡　シュヴァちに買って貰っちゃった……♪」
　感動してるみたいに、喜びでいっぱいの顔でフラペチーノを見つめるヴィブロス。……もう、そんな喜ぶことなのか？

「んんん〜！　早速一口……いや、やっぱSNS用に写真撮ってから……！　あっ、そうだ！」
「……うん？」
「ねねシュヴァち〜！　こっち持って持って〜♡」
　そう言って、フラペチーノのカップをこちらに寄越してくる。持ってって言われても……？　とりあえず、言われるがままに手を伸ばして持とうとすると、ヴィブロスは僕がカップを持っても手を離すことは無くて。

「えへへ、二人でフラペチーノを持って〜……それから、角度はこれくらいで〜」
「あ、あの……ヴィブロス……？」
「うん、良い感じっ♪　じゃあ撮るよ〜♡」
　パシャっ。
　ヴィブロスがスマホでフラペチーノを撮る。えっ、いや……あの、これ僕が持つ意味って。
「えへへ〜シュヴァちに買って貰っちゃった♡　ってウマスタにあげちゃお♪♡」
「え、これ上げるの……！？　僕も写ってるんだけど……！？」
「え〜いいじゃん〜手だけだから〜♪　シュヴァちが買ってくれて〜シュヴァちと一緒に持ってる新作フラペチーノっ♪　もう最高すぎてもはや万バズ間違い無しだもんっ！」
「えぇ……？　いや、そんな良い物とは思えないけど……僕の好き……す、……気まぐれで、買っただけだし……」
「え〜！　それが良いんじゃんっ！　シュヴァちが買ってくれたんだよっ！？　もうっすっごくすっごく嬉しいんだからっ！♡　あ、お姉ちゃんにも送っちゃお〜！」

　心の底から楽しそうにはしゃぐヴィブロス。こ、こういう反応は慣れてないから……僕はどうしたら良いかよく分かんないんだけど……。
　……でも、喜んでるなら、良い……のかなぁ……？

「――……それじゃあそれじゃあ、いただきま〜す♪♡」
　スマホをしまって、ヴィブロスはようやくフラペチーノに口をつける。
「……う〜〜ん！♡　美味し〜〜♡♡」

「えっ、すご……！　めっちゃ美味しいんだけど！？　新作だもんね〜人気だもんね〜こりゃ納得だね〜〜♪」
「……そんなに美味しいの」
「うんっ！　……あ、シュヴァちも一口飲むっ！？」
「……えっ、ぁ……いや、いいよ別に……」
「え〜、いやいや遠慮しないで良いから〜！　飲んで飲んでシュヴァち〜！！」
　またそうやって、おねだりしてくるヴィブロス。……いや、この場合は僕にあげようとしてるから別に悪いことでは無いのか……？　う、うう……でも、一口貰うのを断るのも変……かな……？　それに、元はと言えば僕のお金で買ったものだし……。

「……じゃあ、一口だけ」
「……！　うんっ♡　はいっ、どーぞ♪♡」
　差し出されたカップ、そのストローをおずおずと口につけ……ちゅぅと吸うと……。

「……ぁ、おいしい」
「……！！　でしょ！？　美味しいよねっ、シュヴァちっ！♡」
「うん……確かに、すごく美味しい。あんまりああ言うお店のもの飲んだこと無いけど……これは、好き……かも……」
　初めて飲んでみたけれど、意外な美味しさに思わず言葉が漏れる。
「あ〜、だったら2つ買ったら良かったかな〜？　シュヴァちの分もー」
「……いや、その……1つで充分だから。……美味しかったけど」
「うん、じゃあじゃあ〜二人でシェアして飲も〜♡」
「うえっ……！？　しぇ、シェア……！？」
「うんっ！　これ二人で飲みながら帰ろっ！　シェアしたら美味しさも幸せも半分こできるよ〜♡」
　ヴィブロスの提案に、面を食らうけど。……まあ、断る理由も……考えれば無いし……。

「ねっ、いい案だと思わない？♡　ねぇねぇ、シューヴァーちー♡」
「……寄り道しないで帰るよ、ヴィブロス」
「……！　……じゃあ、じゃあ？」
「……うん、半分、貰うね」
「うんっ！！」

　そうして、僕らは同じフラペチーノを分け合いながら、ともに帰路につくのであった……。

「シュヴァちとシェアする帰り道〜♡♡　んん〜〜！！　さいこ〜〜♡♪」
「…………もう、リアクションがオーバーすぎだってば……そんなに喜ぶことじゃ……」
「ううん〜♡　そんなこと無いもん〜♡　シュヴァちと一緒、さいこ〜♡　えへへっ♡」
「…………もう」

おわり