「第1回！　チキチキ！　愛してるよゲーム！！」
『わぁ〜〜〜！！』

「…………はい？」

　トレーニングが終わって帰ろうとするトレーナーさんとビリーヴサブトレーナーを呼び止めて、私たちはかねてより用意していた企画を開催する。

「な、なんだお前ら急に」
「あの、トレーニングはもう終わりですよ」
　状況を飲み込めていないトレーナーさんと、至って冷静に流そうとするビリーヴさん。しかしその程度で流される程我々も甘くは無い。

「はい！　トレーナーさんとビリーヴさんはお付き合いしてるんですよね！？」
「え、あっ。ま、まあ……？」
「……そうですね」
「ですが、トレーナーさんとビリーヴさんのことですから、面を向かって“愛してるよ”なんて言わないと思うんですよ」
「えぇ……？」
「それとも言ってるんですか！？」
「いや……あんま言わないけど……」

「それじゃあビリーヴさんが可哀想です！」
「いえ、別にそういうことはありませんが」
「だったらビリーヴさんもトレーナーさんに愛してるって言うんですか！？　言わないですよね！？　トレーナーさん可哀想！！」
「押しが強すぎる……」

「という訳で！　愛してるよゲームをしてください！！」
「どういう訳ですか」
「ルールは簡単！　お互いに愛してるよと言い合って、先に照れた方の負けです！」
「あの、僕らに拒否権とか無いんですか」

　それ来たと、私たちは二人を引っ張り向かい合わせます。
『ひゅー！　ひゅー！』
『やれーー！　いけーー！！』
　沸き立つオーディエンス。向かい合った二人の間に近づき、私はレフェリー役を買って出る。
「それではまずは先行ビリーヴさんから！」
「はあ……仕方ないですね……」
「ビリーヴ……！？」
「……口で言っても聞かないのは分かりきってますし。とっととやって終わらせましょう、トレーナーさん」
「ビリーヴ……！？？」
　諦めてノッてくれるビリーヴさんは何だかんだでチョロい。トレーナーさんはまだ心の準備ができていないようです。そんなのでビリーヴさんからの愛してるに耐えられるのでしょうか。

「それでは、どうぞ！！」

「…………トレーナーさん、愛してますよ」
「っ！！//////」
　平気な表情で、真顔で、愛の言葉を言い放つビリーヴさん。一見すれば何とも無いように見えるけど、当然のことのように愛を言葉にできるというのはそれはそれで素晴らしい！　これは……破壊力抜群だっ！
『ひゃ〜〜！！』『ビリーヴさん最高〜〜！！』
「っ……び、ビリーヴ……っ！///」
　ビリーヴからの真っすぐな愛の言葉をモロに食らったトレーナーさんは、顔を耳まで赤くしています。
「……その。次はトレーナーさんの番ですよ」
　真っすぐな瞳で、トレーナーさんにそう言うビリーヴさん。ほ、本来なら照れに照れまくってるトレーナーさんの負けで確定だけれど……でも見たいよね！？　トレーナーさんがビリーヴさんに愛してるって言ってるところ！！

「ぇ、えっと……これ、本当に言わないとダメか……？」
「……僕も言いましたし。……逃れる選択肢は無い、と思います」
「そ、そうか……」

「それでは、後攻トレーナーさん！　よろしくお願いしますっ！」

「…………そ、その……び、ビリーヴ。……あ、ぁあ……あいっ……！　あいしてるぞっ、ビリーヴっ……！！///」
「………………はい」
　静かに目を閉じて、それから応えるビリーヴさん。一方のトレーナーさんは、もう顔が真っ赤っかで。

『それくらいで照れんなーー！！』『トレーナーさんかわいい〜〜〜』『バカヤロー！！』『推せる〜〜〜！！』
　チームメンバーからのヤジが好き放題飛び交う中、プルプルと顔を伏せるトレーナーさんと至って平常なビリーヴさん。

「……はい、トレーナーさんの負けです。これでもう良いですよね」
「えっ、あ。……まあ、その……はい？」
「じゃあ、僕らは帰ります。貴方たちも、暗くなる前に早く帰ってください」
　そう言って、そそくさと帰ろうとするビリーヴさんを呼び止める。

「……あの、まだ何か」
「いや、いやいや。やっぱりこれで終わりは無いですよ！　もっと私たちを楽しませてください！！」
『そうだー！！』『もっとイチャつけーー！！』
「…………良い性格してますよね、貴方たち。少しは取り繕ったりしませんか？」
「続き！　もっと続きをしてください！！」
「……続きと言われても、見ての通り。勝負にならないじゃないですか」
「ぐっ……」

　それは確かに、そうだった。ビリーヴさんは愛してるくらいじゃ顔色一つ変えないし、トレーナーさんは見ての通りの真っ赤っかだし。
　でも、でもでも……！　もっと二人をイジりたい！　絡ませたいっ！！　ならば――！！

「じゃあ……お互いを褒め合ってくださいっ！」

「……はい？」
「え……？」
「トレーナーさんはビリーヴさんの良い所を！　ビリーヴさんはトレーナーさんの良い所を褒め合ってくださいっ！　先に照れた方が負けですっ！　これなら、トレーナーさんでも早々には照れないですよねっ！？」
「ま、まぁ……褒めるくらいなら……？」
　どこか自信なさげなトレーナーさんの言葉を一旦信じることにして、トレーナーさんとビリーヴさんをまた向き合わせる。

「それでは、先行！　今度はトレーナーさんから、よろしくお願いしますっ！」
「あ、ああ……えっと……」
「……やるんですね。……まあ、いいか」

「……えっと、ビリーヴは……努力家だ、えらい」
「……そうですね、ありがとうございます。……えっと、それじゃあ僕は……」

「……トレーナーさんは、真面目で、一生懸命です」
「そんなこと言ったら、ビリーヴだって俺よりも何倍もすごく真面目で、ずっと一生懸命で……！」
「いえ、それでもトレーナーさんは仕事に一生懸命で、僕の為に、いえ……今はみんなの為に、頑張ってくれていて……」
「いやいや、ビリーヴこそ。みんなの為に色々やってくれてるし、俺なんかよりずっと、あいつらと同じ目線に立てて、寄り添いながら指導してくれて……！」
「それを言うなら、トレーナーさんは指導者として軸がしっかりしていて。指導者の鑑だと、思います。責任感が凄くて」
「いや、ビリーヴこそ……！」

　1度褒め始めたら、止まらない褒めの応酬を繰り広げるトレーナーさんとビリーヴさん。あれでも、なんか思ってたのと違うような……？

「……いや、あの。お二人とも一旦、仕事の話で褒めるの禁止にしませんか……？　なんか、仕事の話し出したら止まらないじゃないですか二人とも」
『これはこれで悪くないけど、なんか違うーー』『もっとイチャつけー！！！』

「……らしいですよ」
「そ、そうか……」
「…………まあ、僕たちが仕事の話をし出したら止まらないのは、実際そうですし……」
「じゃあ、禁止にするか……？」
「そうですね」
　トレーナーさんとビリーヴさんが互いに頷く。そうして、褒め合いゲームは再開される。

「えっと、それじゃあビリーヴは……ご飯が美味しい……！　特に和食、丁寧に調理されててすごく美味しい」
「えっと、ありがとうございます……それでは、その……ご飯を食べ終わったら、僕の代わりにお皿洗いを全部やってくれて……」
「いやいや、ご飯作ってくれたんだから当然だってそれは」
「いえ、それでも……いつも助かっています」
「そ、そうか……えっと、次は……綺麗好きでたまに部屋の掃除をしてくれて、いつも助かってる」
「いえ、それほどでも……そもそもトレーナーさんの部屋は結構片付いてますし。……たまに、だらしない所もありますが……」
「うっ」

　……なんか、褒め合ってるけど……あれ、なんか。どんどんトレーナーさんとビリーヴさんの二人の生活が浮き彫りになってるというか、見せつけられてるというか。

『これ、これ……夫婦の会話……！！』『イチャイチャというか、仲睦まじいのを見せつけられてる……！』
「そう言われましても……」
「仕事の話を禁止にしたのはお前たちだろ……！？　プライベートの話になるのは仕方ないだろ……！」

「あの、もっとこう……特別感あるというか、恋人みたいなのは無いんですか……！？」
「こ、恋人っ！？　え、えぇ……！？」
「…………デートの時、いつも僕の為に色々調べたり僕の好きそうなことをプランに入れたりしてくれて、嬉しいです」
「っ！　え、えっとそれはっ……」
『デートの時にトレーナーさんがリードしてくれるのは解釈一致』『公式からの供給たすかる』

「えっと、それじゃあ……デートから帰った後、毎回LANEしてくれるのが嬉しい……？」
「っ……！　……ちょ、ちょっとトレーナーさん……！？」
「えっ、ビリーヴさんそんなことしてるんですか……！？」
『律儀というか、えっ、可愛い』『好きじゃんそれもう』『どんな顔してLANEしてるの！？　青春じゃん』
「……っ、あの、うるさい、です」
『あのビリーヴさんが照れてるっ！？』『いや、まだイケる！！　続行ッ！　続行ッ！！』

「……っ、その……一緒に出かける時いつもトレーナーさん、僕の歩幅に合わせて歩いてくれて……その……」
「んなっ」
『っ！！！』『えっ、何その気遣い、えやばメロいやつじゃん』
「そ、それを言うなら、ビリーヴもさり気なく手を繋いでくれるしっ」
『！！！！！！』『うわうわうわうわやってますよこの人』
「と、トレーナーさんっ……！！」

　そんなこんなで、ビリーヴさんとトレーナーさんは互いに一歩も引かず。お互いを褒め合い……その火力で私たちは脳をこんがりと焼かれながら、どんどんと二人の惚気話は加速して。

「ビリーヴは可愛い！！！」
「っ……その、僕はそんなこと無いと思うんですけど」
「いーや、ビリーヴは誰がなんと言おうと可愛い……！！　気を抜くと毎日ドキドキしそうになる……！」
「〜〜っ……！　と、トレーナーさん……！？　その、うぅ……なら、トレーナーさんも、意外とカッコ良くて……。普段は優しいというか、面白いというか、可愛いところもあるけど……その、いざって時はカッコいいし……それから、仕事をしている時も、真剣な表情で」
「〜〜っ……！　い、いや！　仕事の話は禁止ってことになってるだろっ……！」
「でも、そういう姿勢が良いのは本当ですし」

「なら、ビリーヴの走ってる姿は誰よりもカッコいい……！！　俺の知る中で最高のウマ娘だ、誰にも負けない短距離界のスペシャリスト……！！」
「っ……！　でも、それを一緒に磨いてくれたのはトレーナーさんですし、僕がこうなれたのはトレーナーさんの尽力のお陰で、だから……トレーナーさんも、カッコいいです」
「っ……ビリーヴっ……！　え、えっと……えっと、それじゃあ……私服のセンスが好きだ！　普段のスマートな私服はよく似合ってるし、それから出かける時にたまに着てくれる可愛らしい服も、その……ギャップが凄くて、めちゃくちゃ可愛くて好きだっ……！」
「っ！？　と、トレーナーさん、それは……！？」
「えっ、待って……ビリーヴさんって可愛い私服持ってるんですか……！？」

「……ああ、もう……」
『見せっ、見せ……！！　ビリーヴさんのデートの勝負服見せて！！』
「えっと、写真が確か……」
「〜〜っ……トレーナーさんっ！！」
　ビリーヴさんがトレーナーさんの腕を掴んで止める。
「び、ビリーヴっ……！？」
「あの、その……あれは、見せないでください……恥ずかしいので……」

「……でも、凄く可愛いんだぞ……？」
「…………トレーナーさんの記憶の中だけに留めてください……。他の人には、その……」

『……えっ、それトレーナーさんにだけ特別に見せてるってコト……？？』
『可愛い僕は貴方にしか知られたくないってヤツ！？』
「……っ、あの、そろそろやめにしませんかっ……！？」
『えーーーおかわりもっと欲しいんですけどーー』

「…………じゃあ、トレーナーさんを全力で照れさせれば終わりですよね」
「あ、あの……ビリーヴ……？」

「……僕を抱きしめてくれるとき、温かくて、優しくて、好きです」
「っっ」
『ぐはっ』『衛生兵ーっ！！』
「そ、その……ビリーヴの身体、細くて、ずっと抱いていたくなる……」
「っ……///」
『あーーやばいやばい大人の人呼んできてこれはやばい』
「トレーナーさんは、結構手が大きくて、撫でられたり手を重ねると……その、男の人なんだなって分かると言いますか……」
『いけません、これはいけませんよ……！？？』
「俺に寄りかかって見上げる時の表情がすごく、好きだ……」
「その、僕のこと、好きなんだなって、トレーナーさんの顔に出てる時……僕も好きだって、思います……」
「ビリーヴがたまに、じっと俺の方を見つめてくれて……それがなんだか嬉しそうで、俺も嬉しくなるというか……」
「……その、僕と一緒にいる時のトレーナーさんって、幸せそうで……僕も……幸せです……」
「っ……その、ビリーヴが何でも無い時に、ぼそっと好きって言ってくれるの心臓に悪いくらい好き……」
「と、トレーナーさんっ……それだったら、僕は、その……トレーナーさんに……」

「ちょっ、ちょっ……！！　ま、待った！！」
　じぃと見つめあって、二人だけの世界でお互いを褒め合うトレーナーさんとビリーヴさんに待ったをかける。

「……え、えっと……なん、でしょうか……？」
「あの……ごめんなさい、みんなもう脳が焼けすぎて死んでるので、そこら辺で勘弁してくれませんか……？」
『…………やばぁ……』『脳が焼け切れるッ……！　許容量越えてるってッ』『推せるというか崇拝』『イチャつきやがって……ッ』『なんかもうホントすみません』
　死屍累々のトレーニング場。あまりに高純度のトレビリは熱した砂糖菓子のような高温で私たちの脳をいともたやすく焼き切り。みな口から砂糖を吐き死んでいた。

「えっと……それじゃあ……」
「……俺たちの勝ち、ってことになるのか……？」
『もうお前らの勝ちで良いよ……』『ほんとナマ言ってすみませんでした』『トレビリキテる……』

「…………」「…………」

「……帰るか」「そう、ですね……」

　そうして、トレーナーさんとビリーヴさんは、倒れ伏した私たちを置いて、微妙な距離感で、ともに歩き出すのでした。

おわり