「トレーナーさん、クリスマスの予定ってなにか決まってます？」
　唐突に、ヒシミラクルからそう尋ねられる。
「いや、特に予定は無いけど」
「ですよねー。だと思いましたぁ」
　しれっとそう返すヒシミラクル。……なんだろう、喧嘩を売っているのだろうか？

「いやぁね、何だかんだでわたしたち、毎年クリスマス一緒に過ごしてるじゃないですか」
「……まあ、そうだな。お前がエアクリスマスになりかけてた時から、何だかんだ……」
「いやぁ、あれは我ながらひどかった。それはともかく、じゃあ今年もやっちゃいますか〜って思った訳なんですけど、もし万が一にも、億が一にもトレーナーさんにクリスマスの予定ができちゃってたら大変じゃないですか」
「億が一は余計だな」
「でも良かったです、トレーナーさんが今年も独り身で」
　やはり軽く喧嘩を売ってるのだろうか。失礼な物言いをするヒシミラクルに怒ってやろうか悩みつつ、彼女の言葉に応える。

「……つまり、クリスマスのお誘いという訳か？」
「……まあ、そうなりますかね？　実質？」
　実質も何も普通にクリスマスのお誘いだとは思うのだが……まあ、そこにツッコミを入れてもどうにもならない。
　それはそれとして、クリスマスに予定を立てるとするならどうしようか。何をするか、ひとまず決めておかねばなるまい。

「あー、そうですねぇ……。うーん、手の込んだパーティとか、料理とかケーキ作りとかはちょっとあんまりですかねー？　かといってお高いディナーとかは、ちょっと敷居が高いですし……」
「クリスマスくらい、ちょっと良いとこ行っても俺は構わないけど？」
「おっ、太っ腹〜？　……でもでも、やっぱりわたしたちらしくは無いですよね。それよりもー……あっそうだ、ケンタはどうですか！　チキンを大人買い！　二人で贅沢に堪能……！　とかっ♪」
　クリスマスにケンタとはまたベタな、とは思ったが。いやしかし、悪くない。それくらいの方が、ヒシミラクルらしい。

「じゃあクリスマスはケンタか。店で食べるのは……ちょっと混みそうだな。持ち帰りにするか」
「ですねですね。そうそう、当日は絶対混みますから、今のうちに予約しちゃわないと！　早くしないと売り切れちゃいますよ〜？」
「はいはい」
　急かされるようにスマホを持たされ、公式アプリを開かされる。確かに、例年人気なだけに早い内から予約した方が良いだろう。

　そうして、メニューを眺めると……。
「あ、クリスマスパック……！　色々入ってるみたいですよ、これ！」
「おお、色々種類があるな……どれどれ……お、これなんか良いな。チキンにグラタンにケーキまで入ってる」
「こっちも良さげですよー？　ナゲットにチキンに色々入ってますます」
　ソファーに隣り合って座って、小さなスマホの画面に映し出されたメニューを二人で眺める。
「かける2！　行っちゃいます〜？」
「いやいや……」
「わたしならペロリですよ〜〜？？」
「いやいやいや……」
　そう言いつつも、指は自然とチキンに伸びていて。何だかんだと言いつつ、結構な量のチキンが電子カートの中に入っていた。

「それじゃあ、注文〜！」
　ポチっと、ヒシミラクルに指を引っ張られるままに注文ボタンを押す。
「へへへ、買っちゃいましたね〜」
「買っちゃったなあ。今年のクリスマスはチキンパーティだな」
「ですね〜♪」

「……でもでも〜、チキンだけじゃちょっと味気無いですよねー」
「うーん、それもそうだな。店舗に受け取りに出かけるんだし、折角なら他にも楽しみたいな」
「じゃあじゃあ、街に繰り出しますか〜？」
　楽しげに、期待に満ちたキラキラした目でヒシミラクルはそう聞いてくる。
「クリスマスなら色々やってそうだしな。折角だし色々見て回っても良いかもな」
「ショッピングして〜、イルミネーションも見ちゃったりなんかして〜、楽しそうなイベントとかももしかしたらやってるかもー？」
　今からもう想像を広げて、期待をるんるんと膨らませるヒシミラクル。そんな彼女の隣で、一緒に街を歩いてクリスマスを過ごせるのなら、それはまた、随分と楽しいクリスマスになるだろうと、そう思う。

「えへへっ、楽しみですね♪　トレーナーさんっ♪」
「……ああ、そうだな。クリスマスが楽しみだ」
「ですよねー！　ふふ〜♪」
　ご機嫌に鼻唄を歌う彼女に、思う。
　ああ、今年も。
　良いクリスマスになりそうだ。

　――クリスマスまで、あと少し。

おわり