　クリスマス当日。
「お〜、賑わってますねぇ〜」
　かねてからの予定通り、聖夜にショッピングモールに繰り出した俺たち。チキンを受け取るついでではあるが、折角のクリスマス。楽しまなければ損というものだ。

「じゃあじゃあ、最初はどこ行きます〜？」
「そうだな、無難に雑貨屋でも見に行くか？」
「お〜、良いですねー！　クリスマスのグッズとか色々ありそ〜！　それじゃあ行きますよ〜」
　ヒシミラクルは眩しく笑って歩き出す。るんるんと鼻歌混じりで、尻尾を楽しげに揺らす彼女の背中を温かく思いながら追いかけ隣に並び立つのであった。

「――わぁ、ほんとにクリスマスグッズでいっぱい♪　サンタにツリーに、雪だるまとかもありますよ〜」
「そういえば特にクリスマス飾りとかは用意してなかったな。ここら辺のものを置いておくだけで一気にクリスマス感が出そうだ」
「お〜、今からトレーナー室をクリスマス仕様にしちゃいます〜？？」
　そう言ってにやりと笑うヒシミラクル。確かに、ささやかとはいえクリスマスパーティを開くのだからそういった飾りはあっても良いだろう。
　……けど、今から帰って1から準備をするというのも大変そうではあった。

「あ〜、確かに。……あ、じゃあじゃあ、こういうのはどうですかっ？」
「うん？」
　ヒシミラクルは、たたと駆け出すと、それから赤色の帽子を取って頭につける。
「おお、サンタ帽か」
「はいっ、これ被るだけでもパーティ感マシマシですよ〜？」
「たしかに。良いかもな」
「でしょう？　……あ、トレーナーさんにはこれ！」
「ん？」
　ヒシミラクルから、サンタ帽とはまた違う商品を渡される。見れば、それはカチューシャで。試しに頭につけて見ると……。

「……ぷっ、あははっ♪　トレーナーさん、トナカイ似合ってますよ！」
「そ、そうか……？」
　トナカイの角を模したカチューシャ。確かに、これもクリスマスらしいが……トナカイがよく似合うと言われて喜んで良いのかどうしたら良いのか少し分からなかった。

「よーし、じゃあサンタ帽とトナカイカチューシャ買っちゃいましょうか！　これでクリスマスパーティらしくなりますねっ♪」
「はいはい、まあ折角だしな」
　そう言って、ささやかなクリスマスグッズを持ってレジへと向かうのだった。

――――

「うーん、次はどこ行きましょうか？」
「そうだな、クリスマスグッズは買ったから……次は、……そうだ、パーティの時に飲むドリンクとかはどうだ？」
「あ、それ良いですね！　じゃあじゃあ、スーパーですかね？　1階ですねー、向かいましょーか」

　そうして、俺たちは大型スーパーへとやってきた。クリスマス用のチキンやケーキなどが並んでいるのを尻目に、俺たちはパーティ用の飲料コーナーへ向かった。

「うーん、ここはやっぱりコーラ……！　いやいや、グレープジュースも捨てがたい……！」
「まあ、パーティと言ってもふたりだけだしデカいの2本くらいかな」
「ですねー。……あ、シャンメリーありますよ、シャンメリー！」
　シャンメリー。この時期によく売り出されているシャンパン風のノンアルドリンク。クリスマスといえばやはりシャンメリーは外せない。

「買っちゃうか、シャンメリー」
「やったー！　……あ、トレーナーさんはシャンメリーで良いんですか？　本物のシャンパンとか、ワインとかの方が良かったり……？」
　ヒシミラクルがちらりと酒類コーナーに視線を向けてからこちらの顔を伺う。確かに、折角のクリスマスなのだからアルコール飲料は欲しくはなるが……。

「……とは言っても、パーティはトレーナー室でやるしな。流石に職場で飲酒は気が引けるなー。俺もシャンメリーで良いよ」
「なるほどー、それじゃあひとまずシャンメリーで。それから……やっぱりコーラですかね？」
「まあ、それが定番だよな。良いぞ、コーラも買っちゃおうか」
「わーい♪　らーらーらーららー♪」
　テレビで聞き覚えのあるCMソングを口ずさみながら、ヒシミラクルは2Lのコーラをカゴに入れる。
　他に買うものは……帰りにチキンの他にも色々料理が入ったセットを受け取る予定なので、今は特に無いだろう。
　そうして、俺たちはクリスマスパーティ用のドリンクを用意するのだった。

――――

「お次はどーしましょうか？　クリスマスの準備も良いですけど〜、そろそろクリスマスっぽいこともしたいですよね〜」
「そうは言うけど、クリスマスらしいことってなんだ？」
　彼女の言葉に問いかける。
「……うーん……クリスマスらしいこと。クリスマスらしいことかー……なんでしょうね？」
　意外と、改めて聞かれると分からないものだ。チキンを食べてシャンメリーを開けて、じゃあそれ以外には？
「……あ、プレゼント交換会！」
「プレゼント交換会……？」
「そうですよ！　やっぱりクリスマスと言えばプレゼントじゃないですか」
「まあ、そうだな」
　子供の頃はサンタクロースから。友人や恋人の間では贈り物をしあい、あるいはイベントごとなら抽選会やプレゼントの渡し合いなどもある。確かに、クリスマスと言えばの代名詞だろう。

「でも、どうするんだ？　プレゼントと言っても何も用意してないぞ？」
「それなら今から用意すれば良いんですよ！　一旦別れてお互いにプレゼントを探して、それから合流してプレゼントの渡し合いをしましょう！」
「なるほどな、分かった。やってみよう」
　そう応えると、ヒシミラクルはパンと手を合わせて頷く。

「それじゃあ制限時間は1時間！　場所はショッピングモール内で、予算は……お財布が傷まない程度で、程々に……！！」
「ああ、それじゃあ始めようか」
「よーし、レッツゴー！」

　――それから、ショッピングモール内をぶらぶらと歩き回った。急にプレゼントと言われても意外と難しく。俺たちらしい突発的で程々なプレゼントとなると、ううむ、何が良いだろうか。

　そうして、見ていると……ふと、水色と白のストライプ模様が目に留まる。
　冬用のファッションを取り揃えた店で、彼女のカラーを思わせるような物を見つけて、思わず手に取る。
　それはモコモコとした、暖かそうなマフラーだった。……ふむ、これならプレゼントとして丁度良いかもしれない。そこまで外も寒い訳では無いが、俺もヒシミラクルもマフラーやネックウォーマーの類は持ってきて無かった。
　貰ってすぐに着けることができて、暖かくて、彼女を思わせるようなもので。プレゼントとしてはこれ以上無いだろう。

　早速、手にとって会計を済ませ、まだ少し時間はあるが先に待ち合わせ場所に戻る。
　手の中にあったふわふわな感触を思い出しながら彼女を待っていると、制限時間10分ほど前になってヒシミラクルは帰ってきた。

「おー、お早いですねトレーナーさん。……もしかして、テキトーに決めました？」
「んなワケ無いだろ。一応ちゃんと考えて選んだぞ？」
「えへへ、良かった〜。じゃあじゃあ、早速プレゼントをお披露目しちゃいましょ〜か！」
　高めのテンションをそのままに、ヒシミラクルが袋の中に手を入れる。

　ならば、と俺も彼女へのプレゼントを手にとって……。

「それじゃあ、プレゼント、ばん！！　……って、えぇ！？」
　彼女の掛け声と同時に、彼女へのプレゼントを、白と水色のマフラーを差し出すと……。

　――なんと、彼女からのプレゼントも、マフラーだった。

「え、え。そんなミラクルあります！？　まさか、どっちもマフラー選んでくるなんて？？　え、こっそり後つけてました……？」
「いやいやいや。普通に選んだらこうなったというか……」
「えー、……わたしも、冬だし、寒くなるかもだし。トレーナーさん首周りなにも付けてなかったから渡してすぐ着けれて良いかなーって思っただけなんですけど……」
　……どうやら、考えることは一緒だったらしい。

「……ぷっ、ふふっ……あははっ、どれだけ仲良しなんですかわたしたち……！」
「ははは、なんか恥ずかしくなってきたな」
「もう……っ、あはは〜」

　互いに照れくさく感じながらも笑い合う。こんな所で、“ミラクル”を起こすとは思わなかったが。……まあ、それも俺たちらしいのかもしれない。

「……まあ、そういう訳だしミラクル。ほら」
「えっ、あっ――」
　そっと、ヒシミラクルへのプレゼントのマフラーを広げると、彼女の首元にくるりと回して巻いてやる。

「わっ、ちょ……！///」
「どうだ、ミラクル？」
「え、えっと……その、あ、あったかいですね。って、そうじゃなくて……！！///」
　何かを訴えるような目でじぃっと見てくるヒシミラクル。どうしたのだろうかと首を傾げると。
「……もうっ、あーもう良いです良いです」
　ぷい、とそっぽを向いてしまった。

「…………むぅ、それなら……えいっ」
　ばっと。ヒシミラクルが手に持っていたマフラーを広げると、ちょっと背伸びをして、こちらの首にそっとマフラーを巻きつけてきた。

「……っ！」
「……はいっ、おかえしですっ」
「…………あ、あぁ……」

　……今度は逆に自分がされてみて、分かった。……マフラーをひとに巻いてもらうというのは、思っていたより照れくさい。

「……そ、その。すまん」
「……なんですかー？　わたしはよく分かりませんけどーーもうっ」

　怒ってるんだか、なんなのか、よく分からない表情を横からちらりと覗かせながら、ヒシミラクルは頬を膨らませていた。

「――……まあ、お互いにマフラー巻いてあったかくなった訳ですし……。その、外。行っちゃいます？」
　ヒシミラクルが、そう尋ねてくる。

　外、といえば……確か――。

――――

「――わあ、綺麗〜！」
　すっかり暗くなった道を、煌びやかなイルミネーションが彩る。

「うんうん、クリスマスと言えばイルミネーションですよね〜」
「そうだなー」
　わぁっとはしゃぎ少し前のめりなヒシミラクルを追いながら、イルミネーションに飾られた道を歩く。
「良いですね良いですねっ、これこれ、こういうのが良いんですよ！　The・クリスマス♪」

「あ、映えとか狙っちゃいますっ？　ふたりで記念撮影とかっ！　どれが良いかな〜♪　あっち！　いや、こっちの方が映えそうかも〜！」
　こうして、きゃっきゃとはしゃぐ姿を見ていると、ヒシミラクルも女の子なんだなと思う。
　まあ、普段が女の子らしくないという訳では無いが。

　当たり前のようにクリスマスに浮かれ、イルミネーションにはしゃぐ、そんな一人の少女。何か特別なことをふたりでしている訳ではなくて、ある意味ではありきたりかもしれないクリスマス。
　けれど、彼女はそんな時間が何よりも好きで。昔のようにこんな普通なクリスマスで良いのか？　とは思わない。
　何より、こうして楽しそうに笑っている彼女を見ていれば、ヒシミラクルがどれだけこの時間を楽しんでいるか。そして、そんな時間が自分にとってもどれだけ楽しくて素晴らしいものか、ハッキリと分かるのだから。

「えへへ、トレーナーさんはどこで撮りたいですか〜？♪」
「むう、そうだな……」
「あはは、迷っちゃいますよね〜♪　……って、あ――」

　さっきまではしゃいでいたミラクルが、不意に動きを止める。どうしたのだろうか、と疑問に思っていると、頬に、冷たくも柔らかい何かが触れる。

「――雪、だ……わ、わぁ……♪」
　空を見上げるヒシミラクル。彼女の言葉に誘われるように、白くて冷たい雪が空から降り出す。

「雪……天気予報じゃ雪が降るなんて言ってなかった筈だけど……」
「……すごい、スゴイですよトレーナーさん……！　雪だ、雪ですよ！　わ、わぁっ♪　ホワイトクリスマスだ〜……！！」
「まさか雪まで降るなんて……」
「こんなこと、あるんですね……。……えへへっ、これも“ミラクル”……ですかねっ？♪」
　そうこちらに笑いかけるヒシミラクルに、思わず小さな笑みが溢れる。
　ああ、そうだ。彼女はヒシミラクル。彼女と一緒のクリスマスなのだ。これくらいの奇跡“ミラクル”は、起きて当然なのかもしれない――。

「わぁ、ロマンチックだなぁ……」
「……そうだな」
　ほっ、と白い息を吐いて、ヒシミラクルが溢した言葉に応えてやる。
　そうして暫くの間、幻想的な雪とイルミネーションに彩られた夜を味わうのだった。

――――――

「ありがとうございましたー」
　自動ドアをくぐって、少し寒い外の空気を感じる。

「いやぁ、結構混んでましたけど、なんとか受け取れましたね〜」
「早いうちに予約していたおかげだな」
「ふふん、わたしのおかげですねっ」

　得意げなヒシミラクルにはいはい、と適当に返しながら、両手の袋を見やる。
　思いきって、たくさん予約してしまったチキン。結構な量になって、まさか大きな袋が2つも必要になるとは思わなかったが……。

「いや〜、いっぱい買いましたね〜」
「買わされたなー」
「よーし、今日はいっぱいチキン食べるぞ〜！」
　張り切るヒシミラクルに、ちゃんと後でトレーニングするんだぞと釘を刺しつつ、歩き出す。
　一通りのお出かけを終え、チキンも受け取って、あとはトレセン学園へと帰るだけ。

「いやあ、楽しみですねぇクリスマスチキンパーティ♪」
「そうだな、さ、冷めない内に帰るぞ」
「は〜い。……あ、そうだ」
　ひょい、と。ヒシミラクルが隣に並ぶ。

「んっ！」
「……？　どうしたんだ、ミラクル」
「だから、んっ……！」
　手を差し伸べてくるヒシミラクル。しかしその意図が分からず、首を傾げると……。

「半分、チキン持ちますよ！」
「……えっ？　ああ、そういうこと……。……いや、大丈夫。これくらい平気だから」
「いやいや、遠慮しないでください。半分は、わたしのチキンな訳ですし」
　……まあ、半分はというか、量的に考えれば半分以上彼女のチキンではあるのだが。

　しかし、流石に年下の、女子の、しかも教え子に荷物を持たせるのは……。

「――いや、わたしウマ娘ですよ？　トレーナーさんより全然力強いんですからね？」
「それはそうなんだが……！　そう言われると事実でもそこそこ傷付くからやめてくれ」
「あーもう、良いんですってば！　えいっ、ばーっと！」
「おわっ！」
　ヒシミラクルは無理やり袋を手に取ると、そのまま奪っていってしまった。

「はい、これでおっけー」
「ううむ……まあ、お前がそれで良いなら構わないけど……」
「はい、良いんです！　それに――」
「……うん？」

　何か含みのあるような表情をしたかと思うと、ヒシミラクルはまた少し強引にこちらに近づいて。

　――ぎゅっ。

「……！？」
　手を、握られてしまった。

「ふふっ、トレーナーさん捕まえた♪」
「んな、ミラクル……！？」
「ほら、ふたりで袋を分ければ、手だって繋げちゃう訳ですよ♪」
　そう無垢に笑うヒシミラクル。けど、そうだとしても、ちょっとこれは大胆というか――。

「……？　どうしたんですか、トレーナーさん？」
「…………いや」
　しかし、どうやら他意がある訳では無さそうで……。どうにも、ずっとテンションの高い彼女の様子を見れば、まあ、そういうノリでやってるんだろうと――。

「……何でも無い。行こうか、ミラクル」
「んー？　変なトレーナーさん。……まあ、そんなことより早く帰ってチキンパーティ♪　わたしたちのトレセンへレッツゴー、なーんてっ……♪」
　少し駆け足気味に、楽しげに、先を歩くヒシミラクルを追いかけて。
　俺たちは雪の降る聖夜の帰り道を、プレゼントしあったマフラーと、楽しみなチキンたちを持って、手を繋いで、歩いてゆくのだった――。

おわり