夏希ちゃん主役の野球回が読みたいの   ある日調整屋さんを訪れると例の如くみたまさんがいつもの思いつきでグループ対抗の野球大会を企画していることを知らされるの 即座に賛同する夏希ちゃんだけど当然まともに野球経験のある子なんてほぼ居なそうというかたぶん自分ぐらいなの そこで夏希ちゃんは日を分けて各チームに出向き自らコーチを務めることを提案するの 願ってもない提案に喜ぶみたまさんにしかし夏希ちゃんはひとつの条件を付け足すの それは『その場合自分は試合に出場しないこと』 彼女が誰よりも野球が好きなことは聞いていたし記憶まで覗いているみたまさんは本当にそれでいいのか確かめるけど夏希ちゃんはこう答えるの 「どのチームに所属するにしてもフェアじゃないし……それに今の私は、みんなを応援するのが役目ですから!」   そんなこんなでMBC(Magia Baseball Classic)開催の報せが各グループを駆け巡るの ネームドだけだと人数足りないチームとかあるけどそこはまぁ合併するなりモブも頭数入れるなりどうとでもなるの各々のご想像にお任せするの 重要なのはユニオンと時女が別チームになることなの 試合は約一ヶ月後…それまでは各々自由に練成してていいけど各チームごとに何日かだけ里見グループが所有する球場を貸し切りで使わせて貰えるのでその日は夏希ちゃんが直々に監督指導する感じになったの まぁ大会と言ってもあくまで素人同士のレクリエーションだしそこまで本気になる必要はない…筈なのだけれど…だからといって手を抜くような連中じゃないのはご存知の通りなの はじめはまずルールとか覚えて基礎練習でもやって貰えば充分かなーと思っていた空穂監督だったけどやがて各チームのやる気にあてられそして監督の熱にまた選手達の熱量も高まっていくの自分の知る限り魔法少女はどいつもこいつもなんだかんだノリがいいの そしてふと現役時代…兄貴や参京院初等部軟式野球部のみんなと肩を並べていたあの頃を思い出すの 長く伸びた影の落ちるグラウンドを均しながらどこか寂しそうにバッターボックスを見つめるその背中を誰かが見ていたの ≪さぁ始まりました!!チキチキ☆魔法少女甲子園!……みたまさんタイトルこんなんでしたっけ?……えー実況は私、枇々木めぐると≫ ≪解説の空穂夏希です!みんな!今日は練習の成果を存分に発揮してねー!!ゴー!ファイ!ウィーンッ!!≫   運営兼なんかあった時の救護班は調整屋さん達が担当するのなんか先生がやけに乗り気だったの 当日になって急遽固有魔法の使用許可(1試合3回まで)ルールが追加されたり運営からの補食差し入れテロがあったりひと悶着ふた悶着あれど概ね順調にイベントは進んでいくの 一応筆者も中学で野球部だったけどクソ田舎で他に部活とか無いもんで半ば無理矢理やらされてあんまりいい思い出は無いため詳細な試合描写は割愛させていただくのこちらも各々ご自由に妄想して欲しいの 魔法少女身体能力を遺憾なく発揮しプロにも退けをとらぬプレーの数々が繰り広げられた末の決勝戦 相対するはユニオン所属のどれか(たぶんみかづき荘チーム)対静香ちゃん筆頭時女一族チームとなったの しかしそのまま何事もなく終わるシナリオではないの試合の直前だが魔女の乱入だぜなの まぁこれだけの戦力が揃ってて負けることはあろう筈がなく可哀想な魔女はボッコボコのボコにされたけどなんか事故ってユニオンチームのピッチャー(たぶんやっちゃん辺り)が腕を負傷してしまうの 一晩もあればちょっとした治癒魔法でも治る程度だけどこれじゃあ次の試合は絶望的…かといって他にマウンドに立てそうな人もおらず…皆が頭を抱えたその時なの 「それならとっておきの選手がそこに居るじゃない」…とcv内田秀   「そうでしょう?夏希さん」 「ぇ……わ、私!?でっ、でも私はチームに所属してないし、それに……その…」 「……『素人相手に経験者の自分が参加したらふぇあじゃない』ってところかしら?舐められたものね」 「──ッ!ちが…っ」違う。そう、言い切れなかった 思えばあの日コーチを名乗り出た時も、その気持ちは確かにあったかもしれない。事実、最初に皆の練習に付き合った時は、キャッチボールさえままならない子も少なくなかったのだから。だけど── 「自分で言うのもなんだけど、今の私達なら昔のあなたよりも強いと思うわ。……ひょっとしたらお兄様達にも勝てちゃうかもしれないわね」 流石に聞き捨てならない。ならないが、否定もしきれない。魔法少女の身体があるとは言えど、たった一ヶ月でそれ程までに彼女らが上達したのは、自分もこの目で見てきたのだから。 「静香ちゃん……ちょっと言い過ぎだよぅ」 「……ごめんなさい、少し意地悪し過ぎたわ。だけど夏希さん、きっとあなたが居たいのはそんな実況席じゃなくて……『そこ』でしょう?」 そう言って指を差した先にあったのは、ダイヤモンドの一角、ホームベースを挟んで仲良く並んだ白い箱。   迷いは、いつの間にか消えていた。 ≪──ななななぁんと!?これはどういうことでしょうか!チームみかづき荘、負傷したピッチャー七海選手に代わりましてユニフォームを着ているのは……先程まで隣に座ってた空穂監督だぁーーー!!なんで!?いいんですか解説代理のみたまさん!≫ ≪いいわよぉ~≫ ≪いいそうです!!そしてこれは……各チームからも野次どころか、伝説の選手の入場に次々と歓声が上がっております!無粋な横槍が入り一時はどうなることかと思われましたが……この試合、決勝戦に相応しい盛り上がりとなって参りました!!≫   「……うむ、両者出揃ったな。何度も言っているが、当然ながら自分は平等に審判を務めさせて貰う。貴様等もスポーツ魔法少女シップに恥じないプレーを心掛け……存分に、楽しんでくれ。なぎたんとの約束だぞ。それでは──選手!お互いに、礼!」 『『よろしくお願いしまーす!!』』 ベンチの日陰を出て、熱気に揺らぐ砂を踏み締める。思えば、試合中のグラウンドに立ち入ったのも随分久し振りだ。 軽くバットを振ってみる。……うん、やっぱり身体は覚えてくれている。   「夏希さん!!」 マウンドの上から声が掛かる。 「! なんですか静香さん?」 仁王立ちの投手は満面の笑みでこう答えた。 「……手加減は、無用よ?」 「──当然!!」   ありがとう、静香さん……みんな。 応援するのも大好きだけど……私もやっぱり、もう一度戦いたかったんだ。 このグラウンドで、チームと、一緒に!   「空穂夏希!バッターボックス入りまーす!!」