──遠くから誰かの声が聴こえている。 誰かが僕を呼ぶ声がする。 否、遠くではない。重い瞼を薄く開くと、傍らに声の主の人影が見えた。 酷い耳鳴りが掻き消そうとするが、よく聴き馴れた甲高い声は、そんなもの貫いて僕に届いた。よく耳を澄ますと、測定器の奏でる弱々しい電子音や、周りを慌ただしく駆ける職員の喧騒も聴こえてきた。 ……どうやら、僕はもうここまでらしい。 声の主は殆ど握力の残されていない手で僕の手を握っていた。もう余り感覚も無いが、微かに伝わる温もりでそれが判った。 『わたくしより先に行かないでよ』だとか『今おうちの人来るからもうちょっと待ってよ』だとか言っているが……すまない、僕はもう疲れてしまってね。 だいたい、長生きした方が先に逝った方を笑ってやるなんて言ってたのは君の方じゃないか。どうしてそんな泣きじゃくっているんだい。せめて最期くらいは笑顔でいてくれないか。 ……いや、解っている。きっと逆だったとして、僕も同じ事をしていただろうから。 ごめんね灯花、一足先にういに会いに行くことを……独りだけ置いていってしまうのを許しておくれ。 そして次はもっと仲良……むふっ…続きはまた来──