「Amoris Avarus」 ーーーーーーーーーー .. …. ……都内のハイクラスホテルの一室で、私と彼女は向き合って立っていた。互いの体温すら感じ取れそうな距離──隔てるものは、揃って身に纏った純白のネグリジェのみ。 夜空に浮かぶ満月のような双眸が、仄暗い部屋の中で妖しく輝いている。 私はただ、その美しさに魅了されるだけ。 「にゃむ。いつまでそうしているつもり?」 彼女の言葉で我に帰る。 ああ…そうだ。私たちはこれから── ムーコの背丈は“あの頃”からすっかり伸びて、もうほとんど私と変わらない。 そっと抱き寄せるように彼女の首に腕をまわし、震える手でネグリジェのバックリボンに手をかけた。ほんの挨拶とばかりに右頬にキスをされ、ただでさえ覚束なかった指先がより一層言うことを聞かなくなる。 「どうしたの。手が止まっているわ」 鼓膜をくすぐる吐息のような囁き。 肩を撫でる透き通るような細い髪。 ヘアコロンとアメニティソープの香り。 頬に残る、湿った唇の感触。 脳の芯が痺れ、何も考えられなくなる。 彼女のすべてに、五感が支配されてゆく。 「………」 耳朶を唇で軽く責め、“この先”を強く催してくるムーコ。 焦らしてしまった。はやくはやく… 衝き動かされるように、彼女を縛り付けていたものを乱暴にほどく。 私は緩んだネグリジェの肩紐を掴んでひと息に── 「え」 ひと息に脱がせたはず…なのに。 目の前には純白のネグリジェを纏ったムーコが立っていた。 そして床には、私が脱がせたネグリジェ… 「…???」 「ほら、もう一枚」 「はぁ?あっ…はい」 もう一枚、また一枚。 脱がせるたびに、ムーコは少しずつ小さくなってゆく。 部屋の床が白い抜け殻(?)でいっぱいになった頃、彼女はすっかりあの頃と同じ背丈に戻ってしまっていた。 …あの頃?今は…あれっ? 『こたえは、たまねぎ』 「いやあの…ムーコ…」 『食いしんぼうなアモーリス。ざんねんでした』 ちょっと待って。私まだ── 『また、来てね♪』 ……… …… 「…ぅあ゛ぁ」 間の抜けた自分の声と、カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚めた。 ここは都内のハイクラスホテルの一室。 隣ではムーコが寝息をたてて…いるわけない。 昨晩、年末恒例の由緒ある生放送音楽番組に出演したsumimiとAve Mujica。このホテルの宴会場で打ち上げ兼忘年会を開いて、せっかくの機会だからと私は部屋に泊まって… いや、そんなんよりも! スマホが表示している日時は1月1日の午前7時、ってことは…… 「うそぉーっ!今のがアタシの初夢〜っ!?」 Fine. ーーーーーーーーーー 元ネタは童謡『くいしんぼおばけ』より。