■■朝の連続ドラマ『NTRとは闘争也2』■■ ジャンル:不条理系愛憎劇 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 目次 ■プロローグ■       『NTRビデオレター』エロ有り       『ぬこみちゃん登場』 ■第01週目■       『親友なんかじゃねぇ!』       『謎の幼馴染X』       『わからせ失敗』エロ有り       『どんより反省会』 ■黛一樹の日記1■ ■第02週目■       『勉強会なんかじゃねぇ!』       『贖罪系幼馴染』       『大きな愛』エロ有り       『でろでろ反省会』 ■黛一樹の日記2■ ■第03週目■       『デジャヴなんかじゃねぇ!』       『献身的幼馴染』       『寂しい人』エロ有り       『ぐんにょり反省会』 ■黛一樹の日記3■ ■第04週目■       『俺は友達なんかじゃねぇ!』       『告白系幼馴染』       『裏切り者は誰だ』エロ有り       『選択反省会』 ■黛一樹の日記4■ ■第05週目■       『恋人なんかじゃねぇ!』       『一人だけの幼馴染』       『幸せは誰の物?』       『断罪反省会』 ■黛一樹の日記5■ ■第06週目■       『消えるんじゃねぇ!』       『恋人で幼馴染』       『一姫の心』エロ有り       『ひたすら反省会』 ■黛一樹の日記6■ ■第07週目■       『さよなら』 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 登場人物 ■稲垣 拓哉■  Grok学園三年生  バスケ部部員、ポジションはパワーフォワード  直情的だが、暴力はあまり好きではない  交際していた彼女を親友のはずだった『黛 一樹』に寝取られた ■黛 一樹■  Grok学園三年生  野球部部員、ジションはピッチャー  『稲垣 拓哉』とは小学生の頃からの付き合い  お調子者だが、親友関係が上手く行ってないないと感じている  『稲垣 拓哉』が交際していた彼女を寝取った ■優奈■  Grok学園三年生  黛 一樹に寝取られた ■ぬこえみちゃん■  多元世界観測体  彼女を寝取られた『稲垣 拓哉』に興味を抱き、干渉した  『稲垣 拓哉』の部屋に寝室を増設した  好物はメロンパン、嫌いな物はゴキブリ -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■プロローグA『NTRビデオレター』■  テレビの画面がチカチカと点滅し、部屋に不気味な光を投げかけている。俺、稲垣拓哉は、ソファに沈 み込むように座り、目の前の映像に釘付けだ。手に握ったリモコンは、汗で滑りそうになっている。心臓 がドクドクと脈打つ。喉がカラカラだ。画面の中では、優奈が――俺の彼女が、まるで別人のように喘い でいる。  ビデオレター。そんなくそくらえなものが、今日、俺のアパートのポストに投げ込まれていた。封筒に は何の名前も書かれていない。ただ、黒いマジックで「拓哉へ」とだけ殴り書きされていた。開けた瞬間 に、何故かとてつもなく嫌な予感が。でも、俺はそれでもディスクをプレーヤーに突っ込んだ。馬鹿みた いに、知りたい衝動に負けたんだ。  画面の中の優奈は、薄暗い部屋で全裸だ。彼女の肌は、仄かな光を受けて白く輝いている。胸は柔らか く揺れ、まるで熟した果実のようにたわわだ。腰からヒップにかけての曲線は、まるで彫刻のような優美 さで、俺の視線を絡め取る。でも、その美しさが今、俺の心を抉る刃だ。  彼女の隣には、黛一樹。あの親友だったはずの野郎が、ニヤニヤしながら彼女の身体に手を這わせてい る。 一樹「優奈、ほら、もっと声出してよ。拓哉に見せてやろうぜ、どれだけ気持ちいいか」  一樹の声は、軽薄で、どこか俺を嘲るような響きを帯びている。優奈の頬は紅潮し、瞳は潤んで、唇が 半開きだ。彼女の口から漏れるのは、甘く、淫らな嬌声。 優奈「んっ、あぁっ……一樹ぃ……!」  その声は、俺が知る優奈のものじゃない。こんな声、俺には一度も聞かせてくれなかった。  彼女の胸が、一樹の手の中で形を変える。柔らかく、弾力のあるその膨らみは、彼の指に押されて波打 つ。優奈の身体がビクンと震え、喉から「あぁ゛んっ!」と鋭い声が飛び出す。一樹は彼女の腰を引き寄 せ、ヒップを撫でる。優奈のお尻は、張り詰めた曲線を描き、触れられるたびに小さく跳ねるように艶め かしく動く。 優奈「やっ、だっ、んんぅっ……!」  彼女の声は、羞恥と快感が混じり合って、どんどん熱を帯びていく。  この映像が本物だと、頭のどこかでわかってる。でも、受け入れたくない。優奈は俺の彼女だ。一年生 のとき、校庭の桜の下で、恥ずかしそうに告白してきたあの優奈だ。なのに、なんでこんなことに――。  画面の中、一樹が優奈の首筋に唇を這わせる。彼女の身体が弓なりに反り、胸が突き上がる。 優奈「ひゃうっ、んぁ゛っ……!」  優奈の声は、まるで楽器の弦が弾かれたみたいに高く響く。一樹の手が彼女の太ももを滑り、内側に潜 り込む。優奈の脚がピクピクと震え、彼女の唇から「ぁっ、ぁぁ゛んっ♡」と、淫靡な音が溢れ出す。彼 女の目は半ば閉じられ、焦点が定まっていない。まるで快楽に溺れているみたいだ。 一樹「拓哉の前じゃ、こんな声出さなかったよな? でもさ、俺にはこうやって喘ぐんだ。な? 優奈」  一樹の言葉は、まるで俺の胸にナイフを突き刺すようだ。彼の目はカメラを――つまり俺を――見据え ている。その視線に、妙な物を感じる。でも、俺の頭はそれどころじゃない。優奈の声、彼女の身体の動 き、全部が俺の理性を焼き切っていく。  優奈の胸が、一樹の動きに合わせて揺れる。柔らかく、たっぷりとしたその膨らみは、彼の手の中で淫 らに踊る。彼女のヒップは、シーツに擦れるたびに小さな音を立て、張りのある曲線が光を反射する。 優奈「んっ、んんぅ゛っ♡ やぁっ、一樹、だめぇっ……!」  優奈の声は、どんどん切羽詰まっていく。彼女の指がシーツを掴み、身体が小刻みに震える。一樹が彼 女の内ももを撫で上げると、優奈の腰が勝手に持ち上がる。 優奈「あぁ゛っ! んぁぁ゛んっ♡♡」 彼女の嬌声は、部屋中に響き、俺の耳を貫く。  俺の手が震える。リモコンを握り潰しそうになる。画面の中の優奈は、俺が知らない女だ。彼女の身体 は、一樹の手によって淫らに開花していく。胸は彼の指に弄ばれ、ヒップは彼の手で揉みしだかれる。 優奈「やっ、んんぅ゛っ♡ あぁ゛ぁ゛んっ♡♡」  優奈の声は、まるで熱に浮かされたように高ぶっていく。彼女の肌は汗で濡れ、髪は乱れて頬に張り付 いている。  一樹が優奈の耳元で何か囁く。彼女の身体がビクンと跳ね、 優奈「あぁ゛ぁ゛っ! んんぅ゛ぅ゛んっ♡♡♡」 喉から、ほとんど叫び声のような嬌声が迸る。彼女の胸が激しく上下し、ヒップがシーツに擦れる音がマ イク越しに聞こえる。一樹の手が彼女の身体を這い、優奈の反応はますます激しくなる。 優奈「だっ、だめぇっ! んぁぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡」  彼女の声は、淫猥さを極め、まるで快楽の淵に沈むように響く。  俺の視界が滲む。涙か、怒りか、自分でもわからない。画面の中の優奈は、俺の知らない快楽に溺れて いる。一樹の指が彼女の身体を這うたび、彼女の胸が、ヒップが、淫らに反応する。 優奈「んぁ゛ぁ゛っ! やぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡」  彼女の声は、まるで俺を嘲笑うように部屋に響く。一樹の瞳が、カメラ越しに俺を捉える。 一樹「な? 拓哉。最高だろ、優奈って」  彼の声は、軽薄で、どこか俺を試すような響きだ。  ビデオはまだ続く。優奈の嬌声は、どんどん淫らに、熱狂的に変わっていく。彼女の身体は、一樹の手 によって完全に支配されている。胸は彼の指に弄ばれ、ヒップは彼の手で揉みしだかれる。 優奈「あぁ゛ぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡ んんぅ゛ぅ゛ぅ゛っ♡♡♡」  彼女の声は、まるで快楽の奔流に飲み込まれたように響く。俺の心は、怒りと悲しみで引き裂かれそう になる。  テレビの画面が、優奈の乱れた姿を映し続ける。彼女の胸、ヒップ、すべてが一樹の手に委ねられてい る。俺はただ、ソファに座り、震える手でリモコンを握りしめるだけだ。このビデオレターは、俺の心を 抉り、俺の全てを踏みにじる。優奈の嬌声が、俺の耳に突き刺さる。 優奈「んぁ゛ぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡♡」  その声は、俺の知らない優奈のものだ。 ■プロローグB『ぬこみちゃん登場』■  テレビの画面はまだチカチカと点滅しているが、俺、稲垣拓哉はもう見ていられない。ソファに沈み込 んだまま、頭を抱える。優奈の嬌声が耳にこびりついて離れない。胸が締め付けられ、胃がキリキリと痛 む。あのビデオレター――一樹の嘲笑と、優奈の淫らな姿が、俺の心をズタズタに引き裂いた。どうして こんなことになったんだよ……。  突然、部屋に奇妙な音が響いた。ガタッ、という硬いものが動く音。顔を上げると、俺の机の引き出し が勝手に開いている。いや、開いたんじゃない。まるで何かに押し上げられるように、ゆっくりと浮き上 がっているんだ。目を疑う。引き出しの中から、黄色い光が漏れ出し、部屋の薄暗さを切り裂く。 拓哉「な、なんだよ、これ……!」  思わず立ち上がり、身構える。  光の中から、ふわっと何かが飛び出した。黄色い、ふわふわした生き物――狸? いや、狸にしては妙 に丸っこくて、頭に赤いリボンが巻かれている。そいつは俺の机の上にちょこんと着地し、ニコニコと笑 いながら前足を振った。 ぬこみちゃん「やあ、稲垣拓哉さん! ぬはぬこみちゃん、多元世界観測体なんぬ!」  声は妙に甲高く、まるでアニメのキャラクターみたいだ。でも語尾に「なんぬ」って、なんだそれ? 拓哉「は? 何!? お前、なんで俺の部屋に……!」  頭が混乱する。さっきまでの絶望が、こいつの登場で一瞬吹き飛んだ。でも、すぐに警戒心が湧き上が る。こんな変な生き物、見たことねえぞ。 拓哉「お、お前、どこから出てきたんだよ! 引き出しに住んでんのか!?」  ぬこみちゃんはケラケラと笑い、尻尾をピョコピョコ揺らした。 ぬこみちゃん「ふふっ、引き出しはただの入口なんぬ! ぬはね、拓哉さんのことを観測してたの。だっ        て、すっごく面白いことになってるんだもん! 彼女、優奈さんを寝取られちゃって、悔        しがってる拓哉さん! 最高のドラマなんぬ!」  そいつの目はキラキラと輝いていて、まるで俺の不幸を楽しみやがってるみたいだ。 拓哉「ふざけんな!」  思わず声を荒げる。 拓哉「面白くねえよ! 優奈が……一樹に……くそっ、なんでこんな目に!」  拳を握りしめ、机を叩く。ぬこみちゃんはひょいっと跳ねて叩く手を避け、ニヤリと笑った。 ぬこみちゃん「だからさ、拓哉さん! 悔しいなら、復讐すればいいんぬ! 黛一樹に、優奈さんを奪い        返して、思い知らせてやればいいんぬ! ぬ、協力してあげるんぬ!」 拓哉「復讐……?」  俺は一瞬言葉を失う。頭のどこかで、そいつの言葉がズシンと響く。一樹をぶちのめして、優奈を取り 戻す――そんな想像が、胸の奥で燃え上がる。でも、すぐに現実が押し寄せる。 拓哉「そんなこと、できるわけねえだろ……。もう、優奈は……あんな風に……」  ビデオの映像が脳裏に蘇り、喉が詰まる。  ぬこみちゃんは、まるで俺の弱気を笑うように、ピョンピョンと机の上で跳ねた。 ぬこみちゃん「できるんぬ! ぬにはね、特別な力があるの! ほら、ちょっと見てて!」  そいつが前足を振ると、部屋の空気が急に重くなった。まるで時間が歪むような、奇妙な感覚。次の瞬 間、目の前が真っ白に光り、身体がふわっと浮くような錯覚に襲われる。 拓哉「お、おい! 何だこれ!?」  叫ぶ俺の声が、どこか遠くに吸い込まれる。  光が収まると、俺はまだ自分の部屋に立っていた。でも、なんか違う。机の上のカレンダーが、目に見 えて変わっている。日付が――一ヶ月前だ。 拓哉「な、なんだよ、これ……! 時間、巻き戻ったのか!?」  頭がクラクラする。ぬこみちゃんは得意げに胸を張り、リボンを揺らした。 ぬこみちゃん「ふふん! ぬ、時間を操作して、優奈さんが寝取られる一ヶ月前の時間軸に移動させたん        ぬ! これで、拓哉さんはやり直せる! 一樹の野郎をギャフンと言わせるチャンスなん        ぬ!」 拓哉「時間操作……? そんなバカな……」  信じられない。でも、カレンダーの日付は確かに一ヶ月前を示している。窓の外の景色も、なんとなく 秋の色合いが薄い。俺は混乱しながらぬこみちゃんを睨む。 拓哉「お前、ほんとに何者なんだよ! なんで俺なんかにこんなこと……!」 ぬこみちゃん「んー、だって拓哉さん、面白そうだもん! ぬ、ドラマチックな復讐劇が大好きなんぬ!        それに、拓哉さんの悔しそうな顔、めっちゃそそるんぬ!」  ぬこみちゃんは無邪気に笑い、俺のイラつきを完全に無視しやがる。そいつはポケットもないのにどこ からか、キラキラ光る小さな機械を取り出した。見た目は、なんか古い携帯電話みたいだけど、表面に変 な模様が刻まれている。 ぬこみちゃん「ほら、これ! 復讐アイテム、『同位体情報上書き機』なんぬ!」 拓哉「同位体……何?」  わけわかんねえ。俺は機械を受け取りながら、眉をひそめる。ぬこみちゃんは、まるで子供に教えるよ うに、ゆっくり説明し始めた。 ぬこみちゃん「この機械ね、相手の構成情報に並行同位体のコピー情報を連結して、改変する道具なの!        つまり、一樹の行動とか、優奈さんの気持ちとか、いろんなものをちょっと書き換えられ        るんぬ! 例えば、一樹をヘタレにしちゃったり、優奈さんを拓哉さんにメロメロにした        り!」 拓哉「はあ? そんな漫画みたいな……」  頭が追いつかない。機械を手に持っても、ただ冷たい金属の感触があるだけで、何の力も感じねえ。ぬ こみちゃんは俺の困惑を無視して、ニコニコと続ける。 ぬこみちゃん「まあ、拓哉さんには難しいよね! とりあえず、使ってみればわかるんぬ! 復讐、スタ        ートなんぬ!」 拓哉「待て、待てよ! まだ話が――!」  叫ぶ俺の声を遮るように、ぬこみちゃんがパチンと前足を鳴らした。すると、部屋の壁が急にグニャリ と歪み、まるで空間が引き伸ばされるみたいに新しいドアが現れた。 ぬこみちゃん「はい、ぬ、拓哉さんの部屋を空間改変して、寝室を増設したんぬ! 復讐の作戦、ゆっく        り考えるのにいいよね! じゃ、ぬはこれで! メロンパン食べに行くんぬ!」 拓哉「おい、ちょっと――!」  呼び止める間もなく、ぬこみちゃんは黄色い光に包まれて、プシュッと消えた。机の引き出しも、まる で何もなかったみたいに閉まっている。俺は呆然と立ち尽くし、手の中の『同位体情報上書き機』を眺め る。わけわかんねえけど……こいつのおかげで、一ヶ月前に戻ったってことか?  新しいドアを恐る恐る開けると、確かに見たことのない寝室が広がっていた。シンプルなベッドと、窓 から差し込む柔らかい光。俺のアパートにこんな部屋、絶対なかった。頭が混乱するけど、身体は妙に疲 れている。ソファに倒れ込むように座り、機械を握りしめる。 拓哉「復讐、か……」  一樹のニヤけた顔と、優奈の嬌声が脳裏に蘇る。胸の奥で、怒りが再び燃え上がる。  とりあえず、今日はもう頭が整理できねえ。ベッドにドサッと倒れ込み、目を閉じる。明日から――い や、今から、俺はどうするんだ? ぬこみちゃんの言う通り、一樹をギャフンと言わせて、優奈を取り戻 すのか? 考えるだけで心臓がバクバクする。でも、どこかで、ほんの少し、希望みたいなものが芽生え ている気がした。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■第01週目A『親友なんかじゃねぇ!』■  朝、目が覚めると、昨日までのことが夢みたいに頭をよぎる。いや、夢じゃねえ。あのビデオレター、 優奈の嬌声、一樹のニヤけた顔――全部、本当だ。でも、今は一ヶ月前。ぬこみちゃんとかいう変な狸の おかげで、やり直せるチャンスを掴んだ。ベッドから這い出し、パジャマ姿のままリビングに移動する。 頭はまだモヤモヤしてるけど、腹の中では熱い何かが燻ってる。  テーブルの上には、なぜかメロンパンが置いてある。いや、置いてあるってか、黄色い狸がその横でム シャムシャ食ってる。 ぬこみちゃん「おはよ、稲垣拓哉さん! よく寝れたんぬ?」  ぬこみちゃんが、リボンを揺らしながらニコニコとこっちを見る。昨日、勝手に寝室を増設して消えた こいつが、なんでまたここにいるんだよ。 拓哉「お前……なんでメロンパン食ってんだ? つか、勝手に入ってくるなよ!」 ぬこみちゃん「ふふ、ぬ、メロンパン大好きなんぬ! 拓哉さんの部屋、居心地いいからついね!」  ぬこみちゃんはケラケラ笑いながら、パンくずを前足で払う。 ぬこみちゃん「それより、復讐の作戦会議だよ! 『同位体情報上書き機』、持ってるよね? 優奈さん        をメロメロにしちゃう? それとも、一樹をヘタレに改変?」  その目は、まるで子供がゲームの攻略を考えるみたいに楽しそうだった。 拓哉「いや、待てよ……」  俺はテーブルに肘をつき、頭を掻く。優奈を改変って、なんか違う気がする。 拓哉「優奈を弄るのは、なんか……気が引ける。アイツは、俺の彼女なんだ。無理やり変えるなんて、俺    のやり方じゃねえよ」  胸の奥で、優奈の笑顔がチラつく。あのビデオの淫らな姿じゃなく、桜の下で恥ずかしそうに笑ったあ の優奈だ。  ぬこみちゃんは、ちょっと不満そうに尻尾を振った。 ぬこみちゃん「ふーん、拓哉さん、硬派だねなんぬ。でもさ、それなら一樹をギャフンと言わせるしかな        いよね? ほら、根性で一樹と二人きりの状況、作っちゃいなよ! そこで『同位体情報        上書き機』使えば、完璧なんぬ!」  その言葉に、腹の奥で怒りが再び燃え上がる。そうだよ、あの親友の皮をかぶった野郎を、絶対に許し ちゃいけねえ。 拓哉「二人きり、か……。よし、わかった。やってやるよ」  俺は拳を握り、決意を固める。 ぬこみちゃん「やったー! 拓哉さん、かっこいいんぬ!」  制服に着替えてアパートを出ると、秋の空気がひんやりしてて気持ちがいい。Grok学園までの道を 歩きながら、頭を整理する。一ヶ月前――優奈がまだ俺の彼女で、一樹が裏切る前の世界。胸の奥で、ほ んの少し安堵が広がる。  校門近くで、ふと見慣れた後ろ姿が目に入った。優奈だ。女子制服のベストが、彼女の華奢な肩にぴっ たりと馴染んでる。振り返った彼女の笑顔が、朝日を受けて眩しい。 優奈「拓哉! おはよー!」  無邪気な声と、大輪の華のような笑顔。ビデオのあの淫らな姿が嘘みたいだ。心臓がドクンと跳ね、思 わず真顔になりかけたが、慌てて笑顔を作る。 拓哉「お、おはよ、優奈」  この笑顔を守るためなら、なんだってやる。俺はそう心に誓った。  一限目の休憩時間、教室の喧騒の中で、ムカつく声が耳に飛び込んでくる。 一樹「よー、拓哉! 昨日、なんか用あった? 急にLINE切っちゃってさ!」  一樹が茶色いショートヘアを揺らし、馴れ馴れしく肩を叩いてくる。こいつの笑顔が、親友の仮面だっ てわかってる今、腹の底から怒りが湧き上がる。あんなビデオを送りつけやがって、よくも平然と話しか けてこれるよな。 拓哉「別に、なんでもねえよ」  俺は平静を装いながら、内心で歯を食いしばる。こいつが優奈に手を出した瞬間を思い出すたび、拳を ぶち込みたくなる。でも、まだだ。今は我慢のときだ。 拓哉「お前こそ、最近どうよ? 野球部、引退したんだろ?」  言葉を投げかけながら、冷静に観察する。一樹はヘラッと笑った 一樹「まあな、三年の秋だし。もうのんびりだぜ!」  無防備なその態度が、逆に俺の闘志を煽る。  昼休み、購買のパンを片手に、俺はわざと一樹の隣に座った。教室の窓から差し込む光が、机にまだら な影を落としてる。 拓哉「なあ、一樹。さ、放課後、屋上でダベらね? もう三年だし、なんか、話したい気分なんだよ」  さりげなく、でも確実に提案する。 一樹「お、いいね! 野球部も引退したし、暇だし。屋上、行こうぜ!」  一樹はパンを頬張りながら快諾した。よし、第一歩は踏み出した。  放課後、教室のざわめきが静まる中、俺はブレザーのポケットに手を突っ込む。そこには、ぬこみちゃ んからもらった『同位体情報上書き機』の冷たい感触。こいつの使い方はまだわかんねえけど、一樹と向 き合うなら、これが鍵になるはずだ。深呼吸して、屋上への階段を登る。心臓がバクバクしてるけど、腹 の奥の怒りは静かに燃え続けてる。一樹、お前を絶対に許さねえ――。  階段の先、屋上のドアが見えてくる。俺の手はポケットの中で、機械を握りしめた。 ■第01週目B『謎の幼馴染X』■  屋上のドアを押し開けると、秋の風が頬を撫でた。夕焼けが空を赤く染め、コンクリートの床に長い影 を落としている。一樹はすでにそこにいて、手すりに寄りかかりながら俺を待っていた。 一樹「よ、拓哉! 遅えぞ、なんだよ、バスケの筋トレでもしてたか?」  茶色いショートヘアを揺らし、ヘラッとした笑顔でこっちを見る。親友の仮面をかぶったその顔に、腹 の底で怒りが燻る。でも、俺は笑顔を貼り付けて近づいた。 拓哉「ハハ、んなわけねえだろ。もう引退したし、のんびりだよ」  ポケットの中で、『同位体情報上書き機』を握りしめる。冷たい金属の感触が、俺の決意を固める。一 樹をギャフンと言わせる――そのために、ここに来たんだ。適当に話を振って、隙を作る。 拓哉「そういや、お前、野球部引退してどうよ? ピッチャーだったんだろ? 肩寂しくねえか?」  俺は手すりに肘をつき、さりげなく距離を詰める。  一樹は笑いながら肩をすくめた。 一樹「まあな、ちょっと物足りねえけどさ。三年の秋だし、受験もあるしな。拓哉こそ、バスケのパワー    フォワード、名残惜しくね? あのダンク、めっちゃカッコよかったぜ」  こいつの軽い口調、親しげな態度――全部、ビデオレターの嘲笑と重なる。心臓がドクドクと脈打つ。 もう我慢できねえ。 拓哉「ハハ、そりゃどうも」  俺は笑いながら、ポケットから『同位体情報上書き機』をそっと取り出す。ぬこみちゃんの説明はさっ ぱりわからなかったけど、こいつを一樹に向けてボタンを押せば何か起きるはずだ。 拓哉「なあ、一樹、ちょっと面白いもん見せてやるよ」  俺はわざと軽い調子で言い、機械をこいつの胸元に向けた。 一樹「へ? なんだそれ、ゲーム機か?」  一樹が興味津々に身を乗り出した瞬間、俺はボタンを押した。  ピカッ! 眩い光が一樹を包み込み、俺の視界が一瞬真っ白になる。 拓哉「うおっ、まぶしっ!?」  叫びながら目をこする。光が収まったとき、目の前に立っていたのは――一樹じゃなかった。  ショートボブの茶色い髪、爽やかな顔立ちの女の子。ブレザーじゃなく、ブラウスの上にジャージの上 着、プリーツスカートを履いてる。スラッとした体型で、胸元はスポーツブラのラインがほのかに浮き、 ヒップはスカートの裾から張りのある曲線を覗かせる。俺は呆然と立ち尽くす。 拓哉「な、なんだこれ……!? お前、誰だ!?」  女の子は目を丸くして、慌てたように俺に駆け寄った。 一姫「たっくん、大丈夫!? 急に光ったりして、びっくりしたんだから!」  彼女の声は明るく、でも心配そうに響く。待て、待て待て待て。「たっくん」? その呼び方に、頭が ガツンと殴られたみたいになる。 拓哉「お、お前……たっくん、ってなんだよ!? それ、一樹が昔、俺を呼んでた渾名だろ!?」  彼女はキョトンとして、首を傾げた。 一姫「え? 小学校の頃からずっとこう呼んでるじゃん? たっくん、どしたの? なんか変だよ?」  彼女の瞳は本気で心配そうで、まるで俺が頭でも打ったみたいに見つめてくる。俺の頭は混乱の渦に飲 み込まれる。一樹が……女に? いや、こいつ、誰だよ!? 拓哉「ちょっと待て、詳しく話せ! お前、黛一樹だろ? なんでこんなことに……!」  俺は声を荒げ、彼女の肩を掴む。彼女は少しムッとした顔で、俺の手を振りほどいた。 一姫「一樹じゃないよ! あたし、黛一姫! たっくんの彼女だよ! 付き合って五年、忘れたなんて言 わないよね!?」  彼女の言葉は、まるで雷みたいに俺の頭を直撃した。 拓哉「彼女!? 五年!?」  俺は叫びながら後ずさる。優奈が彼女だろ! 五年って、中学二年から? いや、待て、頭整理しろ! こいつ、一姫って名前で、一樹の並行世界の存在とか? ぬこみちゃんの言ってた「同位体」って、こう いうことか!? 混乱が頂点に達する。  目の前の女――一姫は、嫉妬深い目で俺を睨む。 一姫「ねえ、たっくん、なんか他の女の子の名前、出しそうだったよね? 誰? 言ってみなよ!」  彼女の声には、明らかに怒りが混じってる。 拓哉「いや、誰もいねえよ! つか、俺もわけわかんねえんだよ!」  叫びながら、頭を掻きむしる。だが、目の前の一姫の顔――一樹そっくりの爽やかな笑顔と、女の子ら しい柔らかな輪郭が、俺の理性を揺さぶる。ビデオレターの怒り、一樹への憎しみ、優奈への想い、全部 がぐちゃぐちゃに混ざり合って、なんかもう、どうでもいいような気がしてきた。 拓哉「くそっ、もうヤケだ!」  俺は一歩踏み出し、一姫の手首を掴む。彼女の目が驚きで大きく見開かれる。 一姫「え、たっくん、なに!?」  俺は勢いのまま、彼女をコンクリートの床に押し倒した。一姫の身体が軽く跳ね、ショートボブの髪が 乱れる。ジャージの上着がずれて、ブラウスの下のスポーツブラのラインがくっきり浮かぶ。ヒップはス カートの下で張りのある曲線を描き、俺の視線を絡め取る。彼女の頬が、ほのかに赤く染まる。 一姫「た、たっくん……!?」  彼女の声は、驚きと、どこか期待のような響きを帯びていた。 ■第01週目C『わからせ失敗』■  一姫を押し倒した瞬間、俺、稲垣拓哉の頭はまだ混乱の真っ只中だ。コンクリートの屋上に彼女の身体 が軽く跳ね、ショートボブの髪が夕焼けに揺れる。ジャージの上着がずれて、ブラウスの下にスポーツブ ラのラインが浮かぶ。プリーツスカートがめくれ、張りのあるヒップがチラリと覗く。  彼女の瞳は、しおらしいのにどこか期待に濡れた光を帯びていて、俺の心臓をドクンと跳ねさせる。 一姫「た、たっくん……?」  一姫の声は小さく、でも熱っぽい。なんだよ、この雰囲気! 俺は一樹をギャフンと言わせに来たはず なのに、なんでこんなことに!? 拓哉「くそっ、わけわかんねえけど……!」  怒りと混乱が絡み合い、俺は一姫の肩を掴んだまま、彼女のブラウスのボタンを乱暴に外す。スポーツ ブラに包まれた胸が露わになり、柔らかく弾力のある膨らみが夕陽に映える。 一姫「ひゃっ、んっ……!」  一姫の口から小さな声が漏れ、身体がビクンと震える。俺はもう考えるのをやめて、彼女の胸に手を這 わせた。柔らかく、温かい感触が指先に広がり、スポーツブラ越しでもそのたわわな形が伝わってくる。 一姫「あっ、んぁっ……たっくん、んんっ!」  一姫の声が、甘く切なげに響く。  彼女の瞳は潤んで、俺をじっと見つめてくる。そこには羞恥と、でもどこか待ち望むような光がある。 俺の頭はさらにぐちゃぐちゃになるが、身体はもう止まらない。スカートをたくし上げ、スポーツショー ツに指をかけると、一姫の太ももがピクピクと震えた。 一姫「やっ、んんぅっ……!」  ショーツをずらし、指で彼女の秘部を撫でると、熱く濡れた感触が俺を襲う。 一姫「あぁっ、んぁ゛っ!」  一姫の嬌声が屋上に響き、俺の理性を焼き切る。彼女の胸は俺の手の中で形を変え、ヒップはコンクリ ートに擦れて小さく跳ねる。 一姫「んっ、ぁぁ゛んっ……たっくん、だっ、んんぅ゛っ♡」  彼女の声は、どんどん淫らに熱を帯びていく。  なんだこの雰囲気! 一樹だったはずのこいつが、こんな声で喘いでるなんて! でも、俺の下半身は もうガチガチに反応してる。ズボンを下ろし、一姫の脚を広げる。彼女の目は半開きで、頬は真っ赤だ。 一姫「たっくん……いいよ、きて……」  彼女の囁きに、俺の我慢は完全にぶっ飛んだ。 拓哉「くそっ、これはお仕置きだ! 一樹、お前への復讐なんだよ!」  自分に言い聞かせながら、俺は正常位で一姫に覆い被さる。  彼女の中に入った瞬間、熱く締め付ける感触に頭がクラッとする。処女じゃなかった。一姫の身体は、 最初から俺を受け入れ、腰が勝手に動く。 一姫「あぁ゛っ! んぁぁ゛んっ♡ たっくん、んんぅ゛っ♡」  彼女の嬌声は、まるで快楽に溺れるように高く響く。胸が俺の動きに合わせて揺れ、ヒップがコンクリ ートに擦れる音が耳に届く。俺は一姫の腰を掴み、激しく突き上げる。 一姫「んぁ゛ぁ゛っ! やっ、んんぅ゛ぅ゛んっ♡♡」  彼女の声は熱狂的で、淫猥な響きが屋上にこだまする。俺ももう、ただ本能に突き動かされてる。 拓哉「くそっ、一樹、覚えてろよ!」  怒りをぶつけるように、俺は一姫の中で果てた。熱い迸りが彼女の奥に注がれ、一姫の身体がビクンと 跳ねる。 一姫「あぁ゛ぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡ たっくん、んぁぁ゛ぁ゛っ♡♡」  行為が終わると、俺はハアハアと息を切らし、一姫の横に倒れ込む。彼女は汗で濡れた髪を乱し、潤ん だ瞳で俺を見つめる。 一姫「たっくん……よかった、よね?」  彼女の声は弱々しく、でも満足げだ。俺は混乱したまま、ぼそっと呟く。 拓哉「お前……処女じゃなかったな。なんでだ?」  一姫は少し恥ずかしそうに、頬を染めて答えた。 一姫「あたし……処女、バイブで破っちゃったの。初めてでたっくんに満足してもらえなかったら嫌だっ    たから、練習してたんだ……」  彼女の爆弾発言に、俺の頭はまたしても真っ白になる。 拓哉「バイブ!? 練習!? お前、なんつーこと……!」  叫びそうになるが、一姫はしおらしく笑って、俺の手を握ってきた。 一姫「たっくんのこと、ずっと大好きだから……」  その言葉が、俺の胸を締め付ける。  お互い、黙って服を整える。俺はブレザーを羽織り直し、一姫はジャージとスカートを直す。彼女の胸 はブラウスに収まり、ヒップはスカートの下で柔らかな曲線を取り戻す。 一姫「うっ……!」  突然、一姫が呻いてよろめいた。 拓哉「おい、大丈夫か!?」  駆け寄る俺の目の前で、彼女の身体がピカッと光る。次の瞬間、そこにいたのは――一樹だった。男の 姿に戻った一樹が、意識を失ってコンクリートに倒れ込む。 拓哉「な、なんだこれ!?」  俺は慌てて一樹の脈を確認する。生きてる、ただ気絶してるだけだ。でも、さっきの一姫の記憶は、こ いつにはないみたいだ。『同位体情報上書き機』の効果が切れたのか? 頭が整理しきれねえけど、こい つをこのまま放っておくわけにもいかねえ。 拓哉「くそっ、ヤベーことになったな……」  俺は一樹を背負い、よろよろと屋上を後にする。夕焼けが背中に重くのしかかる中、俺の心はまだ混乱 と怒りでぐちゃぐちゃだった。 ■第01週目D『どんより反省会』■  一樹を背負って、夕暮れの街を歩く。黛家までは、Grok学園からそう遠くない。俺、稲垣拓哉は、 肩にずっしりとのしかかるこいつの重さに舌打ちしながら、さっきの屋上の出来事を反芻する。一樹が女 になって、俺が一姫と――いや、もう考えるだけで頭がぐちゃぐちゃだ。実家の門前で、意識を失った一 樹をそっと下ろし、インターホンを押す。 拓哉「お、お前ん家だろ。後は自分でなんとかしろよ……」  呟きながら、足早にその場を後にした。 アパートに戻ると、部屋の空気がやけに重く感じる。ブレザーを放り投げ、ソファにドサッと倒れ込む。 頭の中では、一姫の嬌声と、一樹のニヤけた顔が交互に浮かぶ。 拓哉「くそっ、なんなんだよ、今日……!」  拳を握りしめ、テーブルを叩く。すると、どこからともなく黄色い光がチラつき、ぬこみちゃんがテー ブルにポンと現れた。 ぬこみちゃん「おかえり、稲垣拓哉さん! ふふ、なかなか刺激的な一日だったんぬね!」  リボンを揺らし、ニコニコと笑うその姿に、俺のイライラが爆発する。 拓哉「お前! あの『同位体情報上書き機』、なんなんだよ! 一樹が女になって、わけわかんねえこと    に……!」  俺は立ち上がり、ぬこみちゃんを睨みつける。彼女――いや、狸はメロンパンのかけらを前足でつまみ ながら、ケラケラと笑った。 ぬこみちゃん「あはは! びっくりしたでしょ? でもさ、ぬ、優奈さんを上書きするのは嫌だって拓哉        さんが言ったから、一樹を懲らしめる方向でセレクトしただけだなんぬ! ほら、並行世        界の一姫ちゃん、なかなか可愛かったじゃん?」 拓哉「可愛いとか、そういう問題じゃねえ!」  俺は頭を掻きむしる。一姫の潤んだ瞳や、熱っぽい嬌声が脳裏に蘇り、胸の奥で何かモヤモヤする。 拓哉「俺、復讐しようとしたのに、なんか……一姫とやっちまって、罪悪感まで感じてんだよ! 一樹を    ギャフンと言わせるって、こんなんじゃねえだろ!」  声が震える。優奈の笑顔を思い出すたび、俺の行動が間違ってたんじゃないかって気がしてくる。  ぬこみちゃんは、ちょっと真面目な顔になって、尻尾をピョコピョコ振った。 ぬこみちゃん「んー、拓哉さん、難しいこと考えすぎなんぬ。ほら、優奈さんを守るためだよね? 一樹        がまたあのビデオレターみたいなことしないように、戦わなきゃ! 今日だって、ちゃん        と一樹をビックリさせたじゃん! ぬ、応援してるんぬ!」  言葉は、どこか適当だけど、妙に心に響く。  優奈を守る――そうだ、俺はあの眩しい笑顔を取り戻すために、こんなバカみたいな状況に飛び込んだ んだ。 拓哉「優奈のため、か……」  俺は拳を握り、腹の奥で怒りの炎をどうにか灯す。ビデオレターの記憶――一樹の嘲笑と、優奈の淫ら な姿が、胸を締め付ける。 拓哉「くそっ、絶対にあいつを許さねえ。優奈を、こんな目に遭わせやがって……!」 ぬこみちゃん「そうそう、その調子なんぬ!」   ぬこみちゃんは跳ね回り、なぜかメロンパンをもう一つ取り出して差し出してきた。 ぬこみちゃん「ほら、腹減ったでしょ? 食べて元気出すんぬ!」  渋々メロンパンをかじりながら、夕飯代わりにする。風呂に入って汗と混乱を流し、パジャマに着替え る。ぬこみちゃんが勝手に増設した寝室のベッドに潜り込むと、柔らかいシーツが疲れた身体を包む。頭 の中はまだゴチャゴチャしてるけど、優奈の笑顔を思い浮かべると、なんとか心が落ち着いてくる。 拓哉「優奈……絶対、守ってみせる」  呟きながら、目を閉じる。ぬこみちゃんの「ガンバレ、拓哉さんなんぬ!」って声が、どこか遠くで響 いてた気がした。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■黛一樹の日記1■  変な一日だったぜ。  朝から拓哉の奴、なんかそっけなかったんだよな。教室で話しかけたら、いつもみたいにヘラヘラ絡ん でくるかと思ったら、妙に目が鋭くてさ。なんつーか、俺のこと睨んでるみたいだった。ハハ、気のせい か? でもよ、拓哉ってさ、優奈と付き合い始めてから、なんか俺のことあんま構わなくなったよな。昔 はもっと、なんつーか、二人でバカやってたのにさ。ま、彼女できたらそうなるか。ちょっと、寂しいっ つーか、ムカつくっつーか。  昼に拓哉が「屋上でダベろうぜ」って誘ってきたときは、ちょっとテンション上がったぜ。やっぱ親友 だろ、拓哉! 野球部も引退したし、こういう時間、悪くねえなって思ってた。で、放課後、屋上で適当 に部活トークしてたんだけど……なんか、そこからの記憶がボヤッとしてんだよな。拓哉が変な機械持っ てた気がするんだけど、急に光ったっけ? そしたら、なんか意識飛んで、気づいたら家の前で寝てた。 マジ、なんだったんだ、あれ。  でもさ、なんか変な夢見た気がする。すげえリアルで、なんか……すっげえ気持ちいい夢。ハハ、なん つーか、ちょっとエロい感じ? 詳しくは覚えてねえけど、なんか心臓バクバクしてたぜ。拓哉と屋上で 話してたはずなのに、なんでこんな夢見たんだろ。ま、いいか。夢なんてそんなもんだろ。  拓哉、明日もなんか企んでんのかな。アイツ、ちょっと様子がおかしいぜ。ま、親友だし、ちょっとく らい変でもいいか。さて、シャワー浴びて寝るかな。なんか、妙に疲れてんだよな、今日。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■第01週目A『勉強会なんかじゃねぇ!』■  朝、目が覚めた瞬間、鼓動が重く跳ねた。夢を見ていた。一姫の潤んだ瞳、熱っぽい吐息、唇が俺に触 れる感触――キスしてる場面で、ビクッと目が覚めたんだ。俺、稲垣拓哉は、ベッドの上でしばらく呆然 とする。 拓哉「くそっ、なんで一姫の夢なんか……!」  頭を振って、昨日の屋上の出来事を追い出す。だが、身体の奥に残る妙な熱が、俺を落ち着かせねえ。 ぬこみちゃん「拓哉さん、おはよなんぬ! なんか、すっごい顔してるよ? 大丈夫なんぬ?」  ぬこみちゃんが、いつものようにテーブルにポンと現れ、メロンパンをかじりながら俺を覗き込む。無 邪気な目が、なんかすげぇムカつく。 拓哉「大丈夫じゃねえよ。変な夢見て、頭ぐちゃぐちゃだ……。」  ぼそっと呟くと、ぬこみちゃんはリボンを揺らしてケラケラ笑った。 ぬこみちゃん「ふふ、どんな夢? まさか、一姫ちゃんとイチャイチャ? 拓哉さん、復讐のつもりがハ        マっちゃったとか?」 拓哉「ふざけんな!」  俺は顔を赤くして立ち上がる。 拓哉「ハマるわけねえだろ! あれは一樹を懲らしめるためで……くそっ、わけわかんねえ!」  混乱を誤魔化すように、制服に着替える。 ぬこみちゃん「まあまあ、拓哉さんは優奈さんを守るヒーローだよね! ほら、今日も一樹をギャフンと        言わせるチャンス、掴みに行くんぬ!」  ぬこみちゃんはニヤニヤしながら、と適当に煽ってくる。なんか丸め込まれてる気がするけど、優奈の 笑顔を思い出すと、腹の奥で闘志が再び燻り出す。  アパートからダッシュで登校中、秋の朝はひんやりしてて、Grok学園までの道を歩きながら頭を整理す るのに丁度いいかな。が、校門近くで優奈の声が聞こえてきて、思考が一瞬吹っ飛んだ。 優奈「拓哉、おはよー!」  彼女の眩しい笑顔と、ベストが映える華奢な姿に、心臓がドキッとする。 拓哉「お、おはよ、優奈。いや、ちょっと運動不足で走ってたんだ」  笑顔を返すけど、ビデオレターの記憶がチラついて、胸が締め付けられる。 一樹「よー、優奈、拓哉! 朝からイチャついてんな!」  突然、軽薄な声が割り込んできた。一樹だ。ニヤけた顔で俺たちの間にズカズカ入ってくる。親友の仮 面をかぶったこいつの態度に、憎しみがグツグツと沸き上がる。だが、ふと一姫の嬌声や、屋上での熱っ ぽい感触が脳裏をよぎり、なんか微妙な気分になる。 拓哉「一樹、うるせえよ。勝手に話に入ってくんな」  俺は冷たく返す。 優奈「もう、二人とも仲良いね!」  でも、優奈がそう笑うもんだから、余計に複雑な気持ちになる。  三限目の休憩時間、教室の喧騒の中で一樹がまた絡んできた。 一樹「なあ、拓哉、数学の小テスト、俺、ボロボロだったんだよ。勉強、教えてくれよ!」  ヘラッとした笑顔で肩を叩いてくるこいつに、俺は舌打ちしそうになる。 拓哉「自分でやれよ、忙しいんだ」  断ろうとした瞬間、一樹がニヤリ。 一樹「じゃあ、優奈も呼んで三人で勉強会にしようぜ!」  優奈の名前が出た瞬間、ビデオレターの映像がフラッシュバックする。こいつに優奈を近づけたくねえ って気持ちが爆発する。 拓哉「……わかった。マンツーマンでいいだろ。放課後、俺ん家来い」  渋々承諾すると、無邪気に喜びやがった。 一樹「マジ? 助かるぜ!」  昼休み、購買のパンを片手に、俺は俺は一人でベンチに座って考える。ポケットに忍ばせた『同位体情 報上書き機』の冷たい感触が、指先に重い。使うべきか、悩む。昨日、一樹を一姫に変えたあの光景―― あれで本当に復讐になるのか? 罪悪感と怒りがせめぎ合う中、優奈がトレイを持って近づいてきた。 優奈「拓哉、一人で食べてるの? 一緒にいい?」  彼女の笑顔に、胸が温かくなる。 拓哉「お、おう、いいよ」  並んでパンをかじりながら、優奈の何気ない話に耳を傾ける。彼女の声、仕草、全部が愛おしい。この 笑顔を守るためなら、どんなことだって――。俺は心の中で決意を固める。一樹を絶対に許さねえ。  放課後、教室が静まる中、俺は一樹を連れてアパートへ向かう。 一樹「お前ん家、久々だな! なんかワクワクするぜ!」  一樹の軽薄な声に、俺は無言でポケットの『同位体情報上書き機』を握りしめる。ブレザーの下で、心 臓がバクバクと鳴る。アパートのドアが見えてきた瞬間、俺の目は鋭く一樹の背中を捉える。  さて、どうしてやろうか――。 ■第02週目B『贖罪系幼馴染』■  アパートのドアをくぐると、俺、稲垣拓哉は一樹をリビングに通した。狭い部屋に、教科書とノートを 広げ、数学の勉強会を始める。だが、俺の頭は問題集じゃなくて、ポケットに潜ませた『同位体情報上書 き機』のことでいっぱいだ。  一樹はブレザーを脱いで、シャツの袖をまくり、ヘラッとした笑顔でペンを転がしてる。 一樹「なあ、拓哉、この因数分解、さっぱりわかんねえんだけど!」  軽薄な声が耳に響くたび、ビデオレターの嘲笑が脳裏をよぎる。やっぱり許さねえ――その一心で、俺 は隙を伺う。  一樹は警戒心ゼロだ。ノートに落書きしながら笑う。 一樹「お前、昔はもっと数学得意だったよな!」  その瞬間、俺はポケットから『同位体情報上書き機』をそっと取り出した。 拓哉「へえ、そりゃどうだろな。ほら、ちょっと面白いもん見せてやるわ」  わざと軽い調子で言い、機械を一樹に向ける。ボタンを押すと、ピカッ! 眩い光が部屋を満たし、俺 は目を細める。光が収まったとき、目の前にいたのは――またしても一姫だった。  ショートボブの茶髪、ジャージの上着とプリーツスカートの女子制服姿。爽やかな美少女の顔が、俺を 呆然と見つめる。 一姫「た、たっくん!? ここ、どこ!?」  一姫の声は動揺に震え、キョロキョロと部屋を見回す。机の上の教科書、ソファのクッション、そして ――彼女の視線が写真立てに止まった。そこには、俺と優奈が桜の下で笑ってる写真。 一姫「ねえ、これ……誰!? たっくんの部屋、こんなじゃなかったよね!? この女、なんなの!?」  一姫の目が鋭くなり、俺に詰め寄ってくる。彼女の剣幕に、俺の背筋がゾクッとする。 拓哉「お、おい、落ち着けって! これは、なんつーか……!」  俺は慌てて手を振るが、一姫はヒップを揺らしながら一歩踏み出し、俺の胸を指で突く。 一姫「落ち着けないよ! たっくんの部屋に知らない女の写真! しかも、こんな親しげに! ねえ、た    っくん、説明してよ!」  彼女の声は怒りと不安で震え、潤んだ瞳が俺を射抜く。くそっ、なんでこうなるんだよ! 拓哉「わ、わかった、説明するから! 座れよ!」  俺は一姫をソファに押しやり、自分も向かいに座る。どう説明すりゃいいんだ? 頭を掻きむしりなが ら、なんとか言葉を絞り出す。 拓哉「あのな、お前……いや、一姫は、並行世界の存在なんだ。俺が使った機械で、黛一樹って奴を一時    的にお前に変えた。で、ここは俺の部屋だけど、お前が知ってる世界とは違うんだよ……」  自分でも何言ってるか半分わかんねえ。並行世界とか、ぬこみちゃんの説明をそのまま吐き出すしかね え。  一姫は目を丸くして、口をポカンと開ける。 一姫「並行……世界? たっくん、映画の話? あたし、頭悪いからわかんないよ!」  彼女は頬を膨らませ、でもどこか不安そうに写真立てをチラ見する。 一姫「でも、たっくんとこの女が……なんか、すっごい仲良さそうで、胸がモヤモヤする……」  彼女の声が小さくなり、スポーツブラに包まれた胸元が小さく上下する。俺は罪悪感に胃がキリキリす る。優奈の笑顔と、一姫の切なげな目が、頭の中でぶつかり合う。 一姫「で、でもさ!」  一姫が急に顔を上げ、決意したように俺を見つめた。 一姫「もしあたしが、たっくんの知ってる一樹って人のコピーなら、あたし、なんか悪いことしたよね?    だから、謝りたい! たっくんに、嫌われたくないよ……」  彼女の言葉に、俺は目を瞬く。謝る? こいつ、わけわかんねえ状況でそんなこと考えるのか? 拓哉「謝るって、どうやってだよ? お前、一樹の記憶ねえだろ?」  俺が聞くと、一姫は頬を赤くして、モジモジしながら呟いた。 一姫「う、うーん、並行世界のコピーなら、浮気には当たらないよね? だから、身体で……どう?」 拓哉「は!? 身体!?」  俺は思わず声を上げ、ソファからずり落ちそうになる。一姫は恥ずかしそうに目を逸らしつつ、でも大 胆に俺に近づいてきた。 一姫「え、えっと、たっくんに喜んでほしいから……!」  彼女の柔らかな手が俺の頬に触れ、ヒップがソファに沈む感触が近い。次の瞬間、彼女の唇が俺の唇に 押し付けられた。温かく、柔らかい感触に、頭が真っ白になる。一姫の吐息が鼻先をくすぐり、スポーツ ブラ越しに胸の膨らみが俺の胸に軽く当たる。 一姫「んっ……たっくん……」  彼女の小さな呟きが、部屋の静寂に響く。 ■第02週目C『大きな愛』■  一姫の唇が俺の唇に触れた瞬間、頭が真っ白になった。柔らかく温かい感触、甘い吐息が鼻先をくすぐ る。だが、俺、稲垣拓哉が何か言う前に、一姫が俺の胸を押し、ソファに押し倒してきた。 一姫「たっくん、ごめんね……でも、こうしないと、あたしの気持ち、伝えられない……!」  彼女の声は震えつつ、決意と愛に満ちている。潤んだ瞳が俺を射抜き、スポーツブラに包まれた胸が俺 の胸に押し付けられる。プリーツスカートの下で、ヒップがソファに沈む感触がやけに鮮明だ。 拓哉「お、おい、一姫、待てって……!」  俺は慌てて声を上げて制止するが、彼女の手が俺のブレザーを剥ぎ取り、シャツのボタンを一つずつ外 していく。 一姫「たっくんに、嫌われたくない……あたしのたっくんじゃなくても、たっくんの心を軽くしたいの」  一姫は頬を赤く染め、俺のズボンのベルトに指をかける。その瞳には、俺を想う献身的な愛が溢れ、胸 が締め付けられる。抵抗する間もなく、彼女の手が俺の下半身を解放し、熱い息がそこに触れた。 一姫「んっ、はぁっ……たっくん……!」  彼女の小さな呻きが響き、温かく湿った感触が俺を包む。一姫がフェラチオを始めた。唇が滑り、舌が 丁寧に絡みつくたび、俺の頭がクラクラする。 一姫「んっ、ちゅっ、んんぅっ……!」  彼女の動きはぎこちないのに、ひたむきで、俺への想いが伝わってくる。 拓哉「お前、なんでこんな……!」  叫びそうになるが、一姫は顔を上げ、恥ずかしそうに、でも真剣に微笑んだ。 一姫「こうなると思わなかったけど……本で勉強して、よかった、かな? たっくんに、気持ちよくなっ    てほしいから……ずっと、たっくんのこと想ってたから」  罪悪感が胸を突き刺す。一樹を懲らしめるはずが、俺は一姫の純粋な愛に飲み込まれそうになる。彼女 の瞳は、俺がどんな自分でも受け入れる覚悟を湛えている。  一姫は立ち上がり、ジャージの上着を脱ぎ、ブラウスのボタンをゆっくり外す。スポーツブラが露わに なり、柔らかく弾力のある胸が夕陽に映える。スカートを下ろすと、スポーツショーツに包まれたヒップ が張りのある曲線を描く。 一姫「たっくん、こっち……ベッドで、ちゃんとあたしの気持ち、受け取って?」  彼女の声は甘く、愛に満ち、俺を誘う。俺はもう抗えず、ぬこみちゃんが増設した寝室のベッドに一姫 に押し倒される。  彼女の胸に触れると、柔らかく温かい膨らみが指先に沈む。 一姫「あっ、んぁっ……たっくんっ!」  一姫の嬌声が漏れ、身体がビクンと震える。スポーツブラをずらし、直接肌に触れると、彼女の胸は俺 の手の中で淫らに形を変える。 一姫「んぁ゛っ! やっ、んんぅっ♡」  彼女の声は熱を帯び、愛と快楽が混じり合う。ショーツを剥ぎ取り、秘部に指を這わせると、熱く濡れ た感触に俺の理性が溶ける。 一姫「あぁ゛んっ! たっくん、んぁぁ゛っ♡」  彼女のヒップがシーツに擦れ、愛らしい震えが俺を煽る。  場の雰囲気に流され、俺の下半身はガチガチに反応してる。 拓哉「これは、お仕置きだからな……!」  自分に言い聞かせるが、一姫は潤んだ瞳で俺を見つめ、囁く 一姫「たっくん、好きにして……あたしの全部、たっくんに捧げるから……」  その献身的な愛に、罪悪感がさらに膨らむ。正常位で彼女に覆い被さり、熱く締め付ける中に入る。 一姫「あぁ゛ぁ゛っ! んぁぁ゛んっ♡♡ たっくん、んんぅ゛ぅ゛っ♡♡」  一姫の嬌声は部屋に響き、胸が俺の動きに合わせて揺れる。ヒップがシーツに擦れる音が、淫らなリズ ムを刻む。 一姫「たっくん、好き……どんなたっくんでも、ずっと……!」  一姫の言葉が、快楽の波に乗り、俺の心を揺さぶる。彼女の胸を揉み、腰を掴んで激しく突き上げると 熱狂的な嬌声が迸る。 一姫「んぁ゛ぁ゛ぁ゛っ! やぁ゛んっ♡♡♡ たっくん、んんぅ゛ぅ゛んっ♡♡♡」  彼女の愛は、俺の怒りも罪悪感も飲み込み、ただひたすらに俺を求めている。俺はもう耐えきれず、彼 女の中で果てた。 一姫「あぁ゛ぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡♡ たっくん、んぁぁ゛ぁ゛ぁ゛っ♡♡♡」  彼女の身体がビクンと跳ね、俺の迸りを受け止める。  行為が終わると、俺はハアハアと息を切らし、一姫の横に倒れ込む。彼女は汗で濡れた髪を乱し、潤ん だ瞳で俺を見つめる。 一姫「たっくん……私の知ってるたっくんじゃないけど、苦しいときは、いつでも呼んでほしい……あた    し、たっくんのそばにいたいから」  彼女の声は優しく、愛に満ちている。優奈を守るためなのに、一姫の献身的な愛に、俺の心は罪悪感で いっぱいだ。 拓哉「お前……なんでそこまで……」  呟くが、言葉が途切れる。  お互い、黙って服を整える。一姫はジャージとスカートを直し、俺はブレザーを羽織る。と、突然、一 姫が呻いてよろめいた。 一姫「うっ……!」 拓哉「おい、大丈夫か!?」  駆け寄った俺の前で、彼女の身体がピカッと光る。次の瞬間、そこにいたのは一樹だった。男の姿に戻 り、意識を失って床に倒れ込む。 拓哉「またこれか……!」  俺は頭を掻きむしり、一樹の脈を確認する。気絶してるだけだ。 拓哉「取り敢えず、寝かせとくか……」  俺は一樹を担ぎ、ぬこみちゃんが増設した寝室じゃなく、元々の部屋のベッドに放り込む。 拓哉「起きるまで、ここで寝てろ」  布団をかけてやり、部屋の電気を消す。一姫の愛と、優奈への決意、一樹への怒りが、頭の中でぐちゃ ぐちゃに絡み合う。  リビングに戻る俺の背中に、罪悪感が重くのしかかる。 ■第02週目D『でろでろ反省会』■  一樹が目を覚ましたのは、俺がリビングでボーッとしてる時だった。 一樹「お、おい、拓哉……俺、なんでここで寝てたんだ?」  ブレザーを握りしめ、混乱した顔でベッドから這い出てくる一樹に、俺、稲垣拓哉は適当に誤魔化す。 拓哉「なんか、勉強してたら急にぶっ倒れたんだよ。疲れてたんじゃね?」 一樹「マジか……覚えてねえな……」  頭を振って、フラフラしながら靴を履く。 拓哉「まあ、悪いな。じゃ、帰るわ」  ドアを閉める音が響き、俺はソファに沈み込む。頭の中は、一姫の潤んだ瞳と嬌声でぐちゃぐちゃだ。 ぬこみちゃん「拓哉さん、お疲れなんぬ! 今日も一姫ちゃん、情熱的だったね!」  突然、テーブルに黄色い光がチラつき、ぬこみちゃんがメロンパンをかじりながらポンと現れる。リボ ンを揺らす無邪気な笑顔が、なんかもう余計にイラついてたまらない。 拓哉「情熱的じゃねえよ! お前、あの機械、ほんと何なんだ! 一姫が……あんな、献身的に……!」  俺は拳を握り、言葉を詰まらせる。一姫の「たっくん、いつでも呼んで」という言葉が、胸を締め付け る。  ぬこみちゃんは尻尾をピョコピョコ振って、ちょっと真面目な顔になった。 ぬこみちゃん「んー、一姫ちゃんについて、ちょっと教えてあげるんぬ。コピー元の並行世界じゃ、一姫        ちゃん、小学生の頃からたっくん――つまり、拓哉さんのことが大好きだったの。だから        ね、どんな状況でも、たっくんに尽くしちゃうんだよ。コピーでも、その想いは変わらな        いんぬ!」  彼女の説明に、俺の頭がさらに混乱する。 拓哉「待てよ……それじゃ、俺が並行世界の俺から一姫を寝取ってるみたいじゃねえか!」  俺は声を荒げ、ソファから立ち上がる。一姫の愛に満ちた瞳、彼女のひたむきな仕草が、罪悪感を掻き 立てる。ぬこみちゃんはケラケラ笑い、メロンパンのかけらをポロッと落とした。 ぬこみちゃん「ふふ、寝取るも何も、コピーはどこまで行ってもコピーでしかなんぬ! 並行世界の拓哉        さんは、別に一姫ちゃんとここでイチャイチャしてるわけじゃないし、寝取る相手なんて        いないよ!」 拓哉「そう言われても……!」  俺は頭を掻きむしる。ぬこみちゃんの理屈はわかるけど、一姫の献身的な姿が、頭から離れねえ。あの 愛は、コピー元の世界の拓哉じゃなく、この世界の俺に向けられてた。彼女の声、触れた肌の温もり、全 部が本物みたいに胸に刺さる。 拓哉「一姫は、俺のためにあそこまで……。なのに、俺は優奈を守るために戦ってるんだ。なんか、ズル    い気がする……」  呟くと、ぬこみちゃんはリボンを揺らし、ちょっと優しい声で言った。 ぬこみちゃん「拓哉さん、優奈さんを守るのは大事だよね。でも、一姫ちゃんの気持ちも、ちゃんと受け        止めてあげたらいいじゃんないんぬ。コピーでも、想いは本物だよ!」  その言葉に、俺は項垂れる。優奈の眩しい笑顔を守りたい。でも、一姫の献身的な愛を、ただのコピー として切り捨てるのも、なんか違う気がする。 拓哉「優奈のため……でも、一姫のためには、どうすりゃいいんだよ……」  頭を抱える俺。 ぬこみちゃん「ほら、悩むならまずご飯! 腹が減ってちゃ戦えないんぬ!」  ぬこみちゃんは、どこからかカレーの皿を取り出してきた。昨日と違って、スパイスの香りが部屋に広 がる。  渋々カレーを咀嚼し、風呂で汗と混乱を流す。パジャマに着替えて、ぬこみちゃんが増設した寝室のベ ッドに潜り込む。シーツの柔らかい感触が、疲れた身体を包む。 拓哉「優奈のため……一姫のため……」  呟きながら、目を閉じる。一姫の嬌声と、優奈の笑顔が、頭の中で交錯する。  どうすりゃいいんだ、俺は。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■黛一樹の日記2■  今日もなんか変な一日だったぜ。  朝、拓哉と優奈が校門でイチャついてるとこに突っ込んでやったんだけど、拓哉の奴、なんかめっちゃ 睨んでくるんだよな。ハハ、優奈とラブラブだからって、親友に冷たくすんなよって! でもさ、拓哉っ て、優奈と付き合い始めてからほんと俺のことあんま構わなくなったよな。昔はもっと、なんつーか、二 人でバカやってたのにな。ちょっとムカつくぜ。  三限目の休憩で、数学の小テストがボロボロだったから、拓哉に勉強教えてくれって頼んだら、めっち ゃ渋い顔された。チッ、なんだよ、親友だろ! 優奈も呼んで勉強会にしようぜって言ったら、なんか急 にマンツーマンでいいって承諾してきた。拓哉、なんか企んでる? まあ、放課後、アイツん家で勉強会 ってことで、ちょっと楽しみだったぜ。  でもよ、拓哉のアパートで勉強してたはずなのに……また記憶が飛んでんだよな。なんか、急に光った 気がして、気づいたら拓哉のベッドで寝てた。マジ、なんなんだ、これ! 拓哉曰く、俺が疲れてぶっ倒 れたらしいけど、ほんとかな? なんか、昨日も似たようなことあったし、ちょっと変だぜ。  それに、今日もなんか変な夢見た。すげえリアルで、なんか……女の視点で、拓哉とめっちゃイチャイ チャしてる夢。ハハ、キスしたり、なんつーか、エロい感じ? めっちゃ心臓バクバクしてたぜ。なんで こんな夢見るんだろ。拓哉の部屋にいたはずなのに、なんで女の夢? しかも、なんか拓哉のことすげえ 好きで、必死に尽くしてる感じだった。夢の中の俺、めっちゃ情熱的だったぜ。ハハ、変なの。  拓哉、明日もなんか企んでんのかな。アイツ、最近ほんと様子がおかしい。まあ、親友だし、ちょっと くらい変でもいいか。シャワー浴びて寝るわ。なんか、今日も妙に疲れてんだよな。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■第03週目A『デジャヴなんかじゃねぇ!』■  夢を見ていた。優奈と一姫が俺の前に立ち、どちらかを選べと迫ってくる。背後には閻魔様みたいな影 が映り、俺の心を裁くように睨んでくる。「選べ、稲垣拓哉!」って声が重く響き、俺は汗だくで飛び起 きた。 拓哉「うわっ!」  悲鳴を上げた俺に、黄色い光がチラつき、ぬこみちゃんがベッドの端にポンと現れる。 ぬこみちゃん「拓哉さん! どうしたんぬ!? 悲鳴上げてたよ!?」  リボンを揺らし、心配そうに俺を覗き込む。 拓哉「くそっ、悪夢だ……優奈と一姫が……いや、なんでもねえ」  俺、稲垣拓哉は頭を振って、混乱を追い出す。 ぬこみちゃん「ふーん、優奈さんと一姫ちゃん、どっちも大事だもんね! でもさ、復讐の道はまだ続く        よ! 一樹をギャフンと言わせて、優奈さんを守るんぬ!」  ぬこみちゃんはメロンパンをかじりながら、いつものように適当に煽ってくるけど、なんかその軽さが 今日は腹立つ。 拓哉「お前、簡単に言うけどよ……一姫の気持ち、重過ぎるんだよ」  呟くと、ぬこみちゃんはニヤッと笑って丸め込んでくる。 「だからこそ、拓哉さんがしっかりしないと! ほら、行け行けなんぬ!」  くそ、毎回こうだ。  さっさとブレザーの制服に着替えてアパートを走って出る。秋の空気が冷たいが、学園までの道のりは 今までよりも遠く感じる。校門のすぐ近くで優奈の後ろ姿を見かけた。ベストが映える華奢な肩、軽く揺 れる髪。話しかけようとした瞬間、一姫の真剣な瞳――「たっくん、いつでも呼んで」って声が脳裏をよ ぎり、足が止まる。 拓哉「……くそっ」  結局、声をかけられず、一人で校舎へ向かった。  二限目の休憩時間、古典文学の小テストの結果が返ってきた。予想通り、ボロボロだ。 拓哉「ちっ、古文なんざ、誰が覚えるかよ……」  頭を抱えてると、軽薄な声が耳に飛び込む。 一樹「よー、拓哉! なんか暗い顔してんな! 小テスト、ダメだったか?」  一樹だ。ニヤけた顔とビデオレターの嘲笑がフラッシュバックし、腹の奥で怒りが燻る。 拓哉「うるせえよ、ほっとけ」  冷たく返すが、一樹はヘラッと笑って、勝手に決める。 一樹「困ってる拓哉を、親友として助けてやろう! 放課後、勉強会な!」  その言葉に、俺は一瞬凍りつく。タイムスリップ前の記憶――一樹の裏切りを知る前、俺はこいつの親 友ぶりを馬鹿正直に信じてた。軽い口調、気さくな態度、全部があの頃と同じだ。 拓哉「……お前、ほんと変わんねえな」 一樹「ハハ、だろ? 親友だもんな!」  変わらず肩を叩いてくるが、俺の胸は憎しみと懐かしさでぐちゃぐちゃになりそうだ。  昼休み、購買で買ったサンドイッチを手に、俺は一樹と並んで教室の窓際で食うことになった。 一樹「お前、明日の追い出し試合で三年チームのフォワードだろ? 一二年生選抜、結構強いぜ。負けん なよ!」  会話が自然と、明日のバスケ部の三年生追い出し試合の話題になり、俺はハッとする。復讐のことで頭 がいっぱいで、試合のことすっかり忘れてた。 拓哉「……ああ、そうだな。負ける気はねえよ」  言葉を返すが、心の中では一姫の声と優奈の笑顔がせめぎ合う。こんな大事な試合を忘れるなんて、俺 って、どんだけ浮ついてんだ。  放課後、一樹が軽く絡んできた。 一樹「勉強会、今日もお前ん家でいいよな!」  俺はポケットに忍ばせた『同位体情報上書き機』の冷たい感触を握りしめ使うべきか、悩む。一姫の献 身的な愛、優奈を守る決意、一樹への憎しみ――全部が頭で絡み合って、答えが出ねえ。 拓哉「おう、いいぜ。行こう。」  渋々頷き、一樹を連れてアパートへ向かう。道中、一樹の軽い世間話が耳に流れるが、どうしたらいい のか分からない。ポケットの機械が、ずっしりと重い。アパートのドアが見えた瞬間、俺の心臓がバクバ クと鳴り始める。  さて、どうする、いやどうしたらいいんだ――。 ■第03週目B『献身的幼馴染』■  アパートのドアをくぐり、俺、稲垣拓哉は一樹をリビングに通した。机に古典文学の教科書とノートを 広げ、勉強会を始める。ポケットの『同位体情報上書き機』の重みが、ずっと気になってるけど、俺はそ れを押し殺して一樹の説明に耳を傾ける。 一樹「ほら、ここ、古文の助動詞の活用、ちゃんと覚えねえと訳せねえぞ」  一樹は茶色いショートヘアを掻きながら、得意げにペンを走らせる。古典が苦手な俺と違って、こいつ はこういうのサラッとこなすタイプだ。ムカつくけど、助かる――なんて、昔なら素直に思えたのに。 拓哉「へえ、意外と教えるの上手いな」  俺はノートに目を落としつつ、ふと口が滑る。 拓哉「なあ、一樹。優奈のこと、どう思ってる?」  言葉が出た瞬間、後悔した。一樹の手がピタッと止まり、ニヤけた顔で俺を覗き込む。 一樹「おおっと、なんだよ、拓哉。もしかして、優奈を取られるとでも思ってんのか?」  軽薄な声に、ビデオレターの嘲笑が重なる。腹の奥でイラっと火がつく。 拓哉「ふざけんな、んなわけねえだろ!」  声を荒げるが、一樹はヘラッと笑って、肩を叩いてくる。 一樹「ハハ、冗談だって! 優奈はお前の彼女だろ、俺がどうこうするわけねえじゃん!」  昔からこいつはこうだった。軽い口調でからかって、でもどこか憎めない。そんな一樹を、俺は親友だ と信じてた。小学生の頃、校庭でバカみたいに走り回って、汗だくで笑い合った日々が脳裏をよぎる。 拓哉「……お前、ほんと昔から変わんねえな」  呟くと、一樹はニヤリと笑った。 一樹「当たり前だろ! 小学生からの付き合いだぜ、拓哉。親友って、そういうもんだろ?」  無邪気な親友の言葉、しかしそれが俺の頭にビデオレターの映像がフラッシュバックさせる。一樹の嘲 笑、優奈の嬌声。あの裏切りが、俺の心を抉る。 拓哉「親友、か……」  俺の手が震え、ポケットの『同位体情報上書き機』を握りしめる。もう我慢できねえ。発作的に機械を 取り出し、一樹に向ける。 拓哉「なあ、一樹。ちょっと見せたいもんあんだ」 一樹「へ? なんだよ、それ――」  言いかけた瞬間、俺はボタンを押した。ピカッ! 眩い光が部屋を包み、俺は目を細める。光が収まる と、そこには一姫がいた。ショートボブの茶髪、ジャージの上着とプリーツスカートの女子制服姿。爽や かな美少女の顔が、俺を見つめる。 一姫「たっくん……!」  一姫の声は、驚きと心配に満ちてる。彼女はキョロキョロと部屋を見回した。 一姫「あたしがここにいるってことは……たっくん、また傷ついたんだよね?」  彼女の瞳は潤み、俺の胸にそっと抱きつく。スポーツブラ越しに感じる胸の柔らかさに、頭がクラッと する。 拓哉「一姫、お前……なんでそんなこと……」  言葉を詰まらせると、彼女は俺の背中を優しく擦り、静かに囁いた。 一姫「たっくん、いいよ……何があったか、話して。あたし、ちゃんと聞いてるから」  俺は一姫の腕の中で、堰を切ったように心中を話し出してしまった。 拓哉「一樹のことを、親友だと思ってた。あいつの軽いノリ、笑顔、全部信じてたんだ。なのに……あい    つ、優奈を……! あんな奴だと思いたくなかった。ビデオレター見て、本性知って、全部が信じ    られなくなった……!」  声が震え、胸の奥の怒りと悲しみが溢れ出す。一樹の裏切り、優奈の嬌声、一姫の献身――全部がぐち ゃぐちゃに絡み合って、俺の胸を締め付ける。  一姫はただ、黙って俺の背中を擦り続ける。彼女の温かい手は、俺の震えを静かに受け止める。 一姫「たっくん、つらいよね……でも、あたし、たっくんのそばにいるよ。どんなたっくんでも、ちゃん    と受け止めるから」  彼女の声は優しく、愛に満ちていて、俺の心をほのかに温める。だが、同時に罪悪感が胸を刺す。優奈 を守るため、一樹を懲らしめるためなのに、俺は一姫の愛に甘えてる。  どうすりゃいいんだ、俺は――。 ■第03週目C『寂しい人』■  一姫の温かい腕の中で、俺、稲垣拓哉の心はまだ混乱の渦だ。一樹の裏切り、優奈への決意、一姫の献 身――胸の中で絡み合い、息苦しい。彼女の柔らかな手が俺の背中を擦る中、ふと一姫が顔を上げる。潤 んだ瞳が俺を捉え、彼女は震える声で囁く。 一姫「たっくん……あたし、たっくんの悲しみ、全部受け止めたい。あたしには、たっくんの心を軽くす    ることしかできないけど……それでも、そばにいたい」  その言葉は、俺の心を深く突き刺す。次の瞬間、彼女の唇が俺の唇に触れた。柔らかく、熱く、愛に満 ちたキス。 拓哉「一姫、お前……!」  言葉を詰まらせると、彼女は涙を浮かべ、微笑んだ。 一姫「たっくん、いいよ……あたしに、全部預けて。あたしの愛で、たっくんを包みたいの」  一姫は俺の手を離し、ジャージの上着を脱ぐ。ブラウスのボタンを一つずつ外し、スポーツブラが露わ になる。柔らかく弾力のある胸が、部屋の薄暗さに淫靡に映える。スカートを下ろすと、スポーツショー ツに包まれたヒップが張りのある曲線を描き、俺の視線を絡め取る。 一姫「たっくん、ベッドで……あたしの全部、たっくんに捧げるから……」  彼女の声は甘く、愛と覚悟に満ち、俺を誘う。俺は抗えず、ぬこみちゃんが増設した寝室のベッドに一 姫に導かれる。彼女の瞳には、俺のどんな姿も受け入れる決意が宿っているように見えた。  ベッドに腰掛け、俺は一姫の肩に手を置く。彼女の肌は温かく、スポーツブラをずらすと、胸が柔らか く揺れる。 一姫「んっ、あぁっ……たっくんっ!」  一姫の嬌声が漏れ、身体がビクンと震える。指で胸を撫で、乳首を軽くつまむと、彼女の喉から甘い声 が迸る。 一姫「んぁ゛っ! やっ、んんぅっ♡」  ショーツを剥ぎ取り、秘部に指を這わせると、熱く濡れた感触が俺の理性を溶かす。 一姫「あぁ゛んっ! たっくん、んぁぁ゛っ♡」  彼女のヒップがシーツに擦れ、愛らしい震えが俺を煽る。だが、胸の奥には嫌悪感が渦巻く。一姫の純 粋な愛を貪るだけで、俺は何も返せていない。優奈を守るため、一樹を懲らしめるためなのに、俺は彼女 の優しさに溺れてるだけだ。 一姫「たっくん、感じて……あたしの愛、ちゃんと届いてる?」  一姫の声は切なげで、俺の心を締め付ける。彼女の胸は俺の手の中で淫らに形を変え、ヒップはシーツ に擦れるたびに小さな音を立てる。 一姫「んぁ゛ぁ゛っ! たっくん、好きっ、んんぅ゛っ♡♡」  愛と快楽が混じり合った嬌声が、部屋に響く。俺は彼女の太ももを撫で、秘部を優しく刺激する。 一姫「あぁ゛ぁ゛んっ! やぁ゛っ、んぁぁ゛ぁ゛っ♡♡」  彼女の声は熱狂的で、俺をさらに深く引きずり込む。だが、俺の心は罪悪感で軋む。こんな俺に、彼女 はなぜここまで――。  場の雰囲気に流され、俺の下半身はガチガチに反応してる。一姫は俺を仰向けに押し倒し、ショーツを 脱ぎ捨てる。 一姫「たっくん、いいよ……あたしの全部、たっくんのものだから……どんなたっくんでも、あたしはず    っと愛してる」  彼女の潤んだ瞳に、罪悪感が胸を突き刺す。正常位で彼女に覆い被さり、熱く締め付ける中に入る。 一姫「あぁ゛ぁ゛ぁ゛っ! んぁぁ゛んっ♡♡♡ たっくん、んんぅ゛ぅ゛っ♡♡♡」  一姫の嬌声が部屋に響き、胸が俺の動きに合わせて揺れる。彼女は俺の首に腕を回し、キスを重ねる。 唇が触れ合うたび、彼女の愛が俺を包む。 一姫「んっ、ちゅっ、たっくん……あたしの心、全部たっくんの……!」  彼女の囁きは、快楽の波に乗り、俺の心を揺さぶる。  俺は彼女の胸を揉み、腰を掴んで激しく突き上げる。 一姫「んぁ゛ぁ゛ぁ゛っ! やぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡♡ たっくん、んんぅ゛ぅ゛ぅ゛んっ♡♡♡♡」  一姫の嬌声は熱狂的で、淫らな響きが耳を貫く。彼女のヒップがシーツに擦れる音、汗で濡れた肌が俺 に絡む感触、全部が俺を飲み込む。 一姫「たっくん、もっと……あたしを、たっくんのものにして……!」  彼女の声は、愛と欲望が混じり合い、俺の罪悪感を押し流ていく。もう耐えきれず、俺は一姫の中で果 てた。 一姫「あぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡♡♡ たっくん、んぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ♡♡♡♡」  彼女の身体がビクンと跳ね、俺の迸りを受け止める。彼女の腕は俺を強く抱きしめ、まるで離したくな いように震えている。  行為が終わると、俺はハアハアと息を切らし、一姫の横に倒れ込む。彼女は汗で濡れた髪を乱し、潤ん だ目で俺を見つめる。 一姫「たっくん……もしかしたら、一樹って人、寂しいのかもね……」  彼女の呟きに、俺は目を瞬く。 拓哉「寂しい? あいつが?」  一樹のニヤけた顔が脳裏をよぎるが、一姫はただ優しく微笑む。 一姫「わかんないけど……なんか、そんな気がするの。あたしみたいに、たっくんを想ってるのかも」  その言葉が、胸の奥に小さな棘を残す。  お互い、黙って服を整える。一姫はジャージとスカートを直し、俺はブレザーを羽織る。と、突然、一 姫が呻いてよろめいた。 一姫「うっ……!」 拓哉「おい、一姫!?」  駆け寄る俺の前で、彼女の身体がピカッと光る。次の瞬間、そこにいたのは一樹だった。男の姿に戻っ て、意識を失って床に倒れ込む。 拓哉「またこれか……!」  俺は一樹の脈を確認する。よかった、また気絶してるだけだ。 拓哉「取り敢えず、寝かせとくか」  俺は一樹を担ぎ、ぬこみちゃんが増設した寝室じゃなく、元々の部屋のベッドにそっと寝かせる。一姫 の愛に満ちた微笑みが脳裏に蘇り、思わず布団を丁寧にかけ直す。 拓哉「お前……ほんと、わけわかんねえよ」  呟きながら、電気を消す。一姫の想い、優奈への決意、一樹への憎しみが、頭の中で絡み合う。  リビングに戻る俺の背中に、罪悪感と愛の重みがのしかかる。 ■第03週目D『ぐんにょり反省会』■  一樹が目を覚ましたのは、俺がリビングで頭を抱えてるときだった。 一樹「お、おい、拓哉……また俺、寝ちまったのか?」  ぼんやりした顔でベッドから這い出てくる一樹に、俺、稲垣拓哉は適当に答える。 拓哉「ああ、なんか急に倒れたんだよ。疲れてんじゃね?」 一樹「マジかよ……最近、変だな……」  頭を振って、フラフラしながら玄関へ向かう。 一樹「悪い、じゃ、帰るわ」  ドアが閉まる音が響き、俺は一人、部屋の静寂に沈む。胸の奥で、一姫の潤んだ瞳と嬌声が響き、罪悪 感が重くのしかかる。  風呂場に移動し、熱いシャワーを浴びる。湯気が立ち込める中、俺は壁に額を押し付ける。一姫の献身 的な愛、優奈を守る決意、一樹への憎しみ――全部がぐちゃぐちゃに絡み合っている。 拓哉「俺、なんでこんなことに……」  自己嫌悪が胸を抉る。一樹を懲らしめるはずが、一姫の愛に溺れ、優奈の笑顔を守るための戦いが、ど んどんわからなくなってる。  突然、バスルームのドアがガチャッと開き、黄色い光がチラつく。 ぬこみちゃん「拓哉さーん、大丈夫なんぬ!?」  ぬこみちゃんが、なんの躊躇もなく浴室に飛び込んできた。 拓哉「うわっ! お前、なんで入ってくんだよ! 出てけ!」  俺は慌ててタオルで身体を隠すが、ぬこみちゃんはリボンを揺らしてケラケラ笑う。 ぬこみちゃん「ふふ、気にしないでいいんぬ! ぬ、狸だもん! それより、拓哉さん、落ち込んでる顔        だよ? 話してみるんぬ!」  無邪気な声に、俺はため息をつき、シャワーを止める。 拓哉「お前、ほんと空気読まねえな……」  湯船に浸かりながら、俺はポツポツと吐露する。 拓哉「一樹の件、一姫の件、ビデオレターのあの事件……全部、よくわかんなくなってきた。一樹を許せ    ねえけど、一姫の愛が重すぎて、俺、ただそれに甘えてるだけじゃねえかって。優奈を守るためな    のに、なんでこんなぐちゃぐちゃなんだよ……」  声が震え、湯気に滲む。一姫の「たっくん、好き」という声が、頭から離れねえ。  ぬこみちゃんはメロンパンをかじりながら、ちょっと真面目な顔で尻尾を振った。 ぬこみちゃん「んー、拓哉さん、優奈さんばっかり見てると、視野が狭くなっちゃうんぬ。ちょっと、一        樹にも目を向けてみたら? アイツ、ほんとにただの裏切り者かな? 何か、別の気持ち        があるのかもなんぬ」  そのアドバイスに、俺はハッとする。一姫の呟き――「一樹って人、寂しいのかも」が脳裏をよぎる。 拓哉「お前……それ、一姫と同じようなこと言ってるな」  一樹に目を向ける? あのニヤけた裏切り者に? ぬこみちゃん「でもさ、拓哉さん。優奈さんの笑顔を守るなら、全部ちゃんと見なきゃだよね! 一樹の        ことも、一姫ちゃんのことも、ちゃんと向き合えば、答えが見つかるかもなんぬ!」  ぬこみちゃんの軽い声に、俺は小さく頷く。 拓哉「……そうだな。優奈の笑顔を守るためなら、どんなことでもやる。一樹のこと、ちゃんと見なきゃ    な」  一姫の想いが、胸の奥で静かに根を張っていくのを感じながら、俺は湯船から上がる。 ぬこみちゃん「ほら、拓哉さん! ぬ、ちょっと汚れちゃったから、洗ってなんぬ!」  ぬこみちゃんがふわっと湯船に飛び込み、黄色い毛を濡らす。俺は苦笑いしながら、シャンプーでその 背中をゴシゴシ洗ってやる。 拓哉「お前、ほんと図々しいな」 ぬこみちゃん「ふふ、いい気持ちなんぬ!」  風呂から上がり、パジャマに着替えて歯を磨く。ぬこみちゃんが増設した寝室のベッドに潜り込むと、 シーツの柔らかい感触が疲れた身体を包む。 拓哉「優奈のため……一樹のこと、一姫のこと……」  呟きながら目を閉じる。一姫の愛に満ちた微笑みが、頭に焼き付いて離れねえ。彼女の想いは、俺の心 に深く根を張りつつある。どうすりゃいいんだ、俺は。  ぬこみちゃんの「ガンバレ、拓哉さんなんぬ!」って声が、遠くで響いてる気がした。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■黛一樹の日記3■  今日もなんか、頭がぐちゃぐちゃだぜ。  朝から拓哉の奴、なんか変だった。優奈と校門で会ったとき、いつもなら絡んでくるのに、なんかボー ッとして一人で校舎行っちまった。ハハ、恋愛って大変だな、なんて思ったけど、なんかアイツの目、め っちゃ暗かったんだよな。拓哉、優奈と付き合い始めてから、俺のことあんま見てくれなくなったよな。 昔はさ、小学生の頃とか、毎日バカみたいに笑い合ってたのに。今じゃ、俺のこと、ただの脇役みたいに 扱ってる気がする。ちょっと、胸がモヤモヤするぜ。  二限目の休憩で、拓哉が古典の小テストで落ち込んでたから、助けてやろうって声かけた。親友だろ、 こういうときくらい頼ってくれよ! 放課後、アイツん家で勉強会やったんだけど……また、記憶が飛ん でるんだよな。拓哉が変な機械持ってて、急に光った気がして、気づいたらアイツのベッドで寝てた。マ ジ、なんなんだよ、これ! 三日連続だぞ! 拓哉、なんか隠してんのか? でも、アイツの顔見ると、 なんか……すげえ傷ついてるみたいで、聞けなかった。  それに、今日の夢、ほんとヤバかった。女の視点で、拓哉とイチャイチャしてた。キスしたり、ベッド で……ハハ、めっちゃエロい感じ。なのに、なんか、すげえ切なかったんだよ。夢の中の俺、拓哉のこと めっちゃ愛してて、アイツの悲しみを全部抱きしめたいって必死だった。拓哉が「一樹を信じてた」って 泣きながら話してて、胸が締め付けられた。なんでこんな夢見るんだよ。しかも、なんか……その女、俺 自身みたいに感じたんだ。わけわかんねえけど、夢の中で、俺、拓哉のことすげえ大事に思ってた。  でもさ、起きたらまた俺だ。一樹だ。拓哉の親友で、アイツを裏切るような野郎じゃねえよな? なの に、なんでこんな夢ばっか見るんだ? 拓哉が俺を見てくれないから、なんか寂しくて、こんな変な夢で 埋めようとしてんのか? ハハ、んなわけねえか。拓哉は優奈とラブラブだし、俺はただの親友だろ。け ど、なんか……胸の奥が疼くんだよな。拓哉のあの暗い目、昔の笑顔、全部が頭にこびりついて離れねえ や。  明日、バスケの追い出し試合だ。拓哉、フォワードで頑張るんだろ。応援してやるよ、親友だからな。 シャワー浴びて寝るわ。なんか、今日もすげえ疲れてる。夢のせいか、拓哉のせいか、わかんねえけど。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■第04週目A『俺は友達なんかじゃねぇ!』■  朝、目が覚める前、俺、稲垣拓哉は夢を見ていた。小学生の頃、初めて一樹と出会った日のことだ。夏 の校庭、あの頃の俺は野球少年で、グラウンドの端でバットを振ってた。そこに、茶色い髪のガキ――一 樹が、ピッチング練習してたんだ。キレのあるボールに、俺は思わず声をかけた。 拓哉「お前、すげえな! そのピッチング、プロみてえ!」 一樹「ハハ、そりゃどうも! お前もバッティング、めっちゃ鋭いじゃん!」  一樹は照れ笑いして返してきた。それから、放課後ごとにグラウンドでバカみたいにキャッチボールし て、笑い合ってた。あの頃は、純粋な友情が確かにあったんだ。  目を開けると、ぬこみちゃんが増設した寝室の天井。懐かしい夢のせいで心が重い。 拓哉「一樹……あの頃は、ほんとただの親友だったのに……」  呟きながらベッドから這い出すと、テーブルに黄色い光がチラつき、ぬこみちゃんがポンと現れる。 ぬこみちゃん「おはよ、拓哉さん! なんか暗い顔だよ? ほら、朝ごはん! ホットサンド、作ったん        ぬ!」  リボンを揺らし、トレイに載ったチーズとハムの香ばしいサンドの匂いに、ちょっとだけ気分が軽くな る。 拓哉「お前、毎回勝手に飯作んなよ……」  ぼやきつつ、サンドをかじる。 ぬこみちゃん「今日も頑張れ、拓哉さん! バスケの追い出し試合、勝たなきゃだよね! 一樹にも、優        奈さんにも、かっこいいとこ見せるチャンスなんぬ!」  ぬこみちゃんはニコニコで、いつもの軽い煽り。 拓哉「ああ、そうだな……頑張るよ」  一樹の夢が頭に残るけど、優奈の笑顔を守るため、今日も戦わなきゃ。  ブレザーの制服に着替えてダッシュしていると、通学路で一樹とバッタリ。 一樹「よ、拓哉! 今日、追い出し試合だろ? フォワードのエース、気合い入れていけよ!」  普段通りニヤけた笑顔で絡んでくる。ビデオレターの嘲笑がチラつくけど、今日は夢の中の純粋な一樹 が重なって、なんか気まずい。 拓哉「お、おう、気合い入れるよ。てか、お前も見に来んだろ?」  俺は無理に笑って、並んで校舎へ向かう。 一樹「当たり前だろ! 親友の晴れ舞台、逃すかよ!」  お互いに肩を叩いて、昔みたいにダベりながら歩くけど、一姫の潤んだ瞳を思い出して、複雑な気分に なっちまう。  放課後、体育館はバスケ部の追い出し試合で熱気に包まれてる。三年生チーム対一二年生選抜チーム。 俺はフォワードとしてコートに立つ。タイムスリップ前の試合は覚えてるけど、なんか展開が違う。選抜 チームのディフェンスがキツく、俺の動きが読まれてる。 拓哉「くそっ、なんでこうなる!」  汗が額を伝い、シュートが外れるたび焦りが募る。一樹の声が客席から飛ぶ。 一樹「拓哉、落ち着け! お前のダンク、見せてやれ!」  その声に、夢の中のピッチングを褒めた俺の声が重なる。俺は深呼吸して、一樹のおかげでなんとかリ ズムを取り戻せた。  最終クォーター、残り数秒。スコアは同点。俺はボールを握り、ディフェンダーを振り切ってゴール下 へ飛び込む。全身の力を込め、ダンクを叩き込む! バスケットが揺れ、体育館が歓声に沸く。 チームメイト「やったぜ、拓哉!」  チームメイトが駆け寄り、三年生チームの勝利が決まる。息を切らし、コートに立つ俺に、優奈が客席 から飛び出してきた。 優奈「拓哉、すごいよ! かっこよかった!」  彼女の眩しい笑顔に、俺は思わず抱きしめる。柔らかな髪の香り、ベスト越しに感じる温もりに、胸が 温かくなるはずだった。  だが、ふと視線を逸らすと、客席の一角で一樹が立ってる。ニヤけた笑顔じゃなく、どこか寂しそうな 目で俺たちを見てる。 拓哉「……一樹?」  夢の中の純粋な友情、一姫の「寂しいのかも」って呟きが頭をよぎる。優奈の手を握りながら、俺は申 し訳なさそうに一樹に手を振る。一樹は小さく笑って、軽く手を振り返してきた。  その仕草に、なんか昔の一樹がチラついて、胸が苦しくなった。 ■第04週目B『告白系幼馴染』■  体育館の熱気が冷めやらぬ中、俺、稲垣拓哉は一樹と二人で下校することになった。優奈は友達と部活 の片付けで残ると言ったので、俺と一樹は並んで校門を出ることに。秋の夕暮れが街をオレンジに染め、 ブレザーの制服が少し肌寒い。一樹は手をポケットに突っ込み、チラッと俺を見る。 一樹「なあ、拓哉。優奈、いいのか? 試合後、めっちゃイチャついてたけど、なんか……お前、優奈の    こと見てるとき、目が複雑だったぞ」  その言葉で、一姫の潤んだ瞳、彼女の献身的な愛が脳裏をよぎり、優奈の眩しい笑顔と絡み合う。 拓哉「……なんとも言えねえよ」  俺は視線を逸らし、ぼそっと答えるしかなかった。一樹の寂しそうな目、夢の中の純粋な友情、全部が 頭でぐちゃぐちゃになって答えが出ない。一樹は少しムッとした顔で、俺の肩を軽く押す。 一樹「なんだよ、それ。親友だろ、はっきり言えよ!」  そしていきなり、俺のブレザーのポケットに手を突っ込んできた。 拓哉「お、おい!?」  慌てる俺を無視し、一樹は『同位体情報上書き機』を引っ張り出す。 一樹「これ! お前、これ使うようになってから、俺、変な夢ばっか見るんだよな!」  一樹は機械を手に、ニヤけた笑顔を浮かべるけど、目はどこか真剣だ。 拓哉「変な夢って……お前、まさか……!」  俺の声が震える。一樹は機械を弄ぶ。 一樹「なんか、女の視点で、お前とすげえイチャイチャする夢。気持ち悪いとかじゃねえけど、なんか…    …胸が苦しくなるんだよ」  彼の言葉に、俺の頭に一姫の嬌声と「たっくん、好き」という声が響く。一樹が何か言う前に、彼は突 然、機械を自分に向けた。 一樹「まあ、試してみりゃわかるか!」  ボタンを押すと、ピカッ! 眩い光が辺りを包む。  光が収まると、そこには一姫がいた。ショートボブの茶髪、ジャージの上着とプリーツスカートの女子 制服姿。爽やかな美少女の顔が、俺をじっと見つめる。 一姫「たっくん……やっぱり、こうなるんだね」  一姫の声は静かで、でも深い想いに満ちてる。彼女は一歩踏み出し、俺の手をそっと握る。 一姫「一樹の記憶、全部あたしの中にあるよ。たっくんと小学生の頃、グラウンドでボール投げ合った頃    のこと。親友だと思って、ずっとそばにいたかったこと。そして……たっくんが優奈と付き合い始    めて、どんどん遠くに行っちゃったこと」  彼女の寂しげな言葉に、俺の胸が締め付けられる。 拓哉「お前……一樹の想いまで……?」  一姫は小さく頷き、潤んだ瞳で俺を見つめる。 一姫「一樹は、たっくんのこと、ほんとに大事に思ってた。でも、たっくんが優奈に夢中になって、寂し    くて……それで、間違ったことしちゃったんだよね。ビデオレター、あれは一樹の弱さだった。で    も、たっくん……あたし、思うの。一樹がああなったの、たっくんにも原因があったんじゃないか    って」  その言葉が、俺の胸に突き刺さった。  タイムスリップ前の記憶がフラッシュバックする。優奈と付き合い始めて、俺は一樹との時間を後回し にしてた。放課後、昔みたいにダベって帰ったりすることも減り、俺は優奈のことばかり考えてた。一樹 の軽いからかいも、どこか寂しそうだったのに、俺は気づかなかった。 拓哉「俺が……最初に裏切ってたのか……」  身勝手な言葉が漏れ、喉が詰まる。それでも一姫は俺の手を強く握り、優しく微笑む。 一姫「たっくん、間違えたのは一樹だけじゃないよ。あたしは……一樹の想いも、全部引き継いで、たっ    くんを愛してる。この世界のたっくんを、ちゃんと愛してるの」  彼女の瞳には、コピー元の世界の拓哉への愛じゃなく、この世界の俺への明確な愛が宿ってる。一姫の 温かい手、彼女の真剣な声に、俺の心は揺さぶられる。ビデオレターの憎しみ、一樹への怒り、優奈への 決意、そして一姫の愛――全部が胸の中で絡み合い、俺を締め付ける。 拓哉「一姫……俺、なんて言えば……」  言葉が途切れる中、一姫はただ、俺の手を握りしめ、静かにそばにいてくれる。夕暮れの街に、俺たち の影が長く伸びる。 ■第04週目C『裏切り者は誰だ』■  夕暮れの街で、一姫の手を握りながら、俺、稲垣拓哉の胸はざわめき続けている。一樹の寂しさ、俺の 裏切りがビデオレターのあの事件に繋がったという一姫の言葉が、頭から離れない。彼女の潤んだ瞳が俺 を静かに見つめ、言葉を待っている。俺は拳を握り、声を絞り出す。 拓哉「一姫……俺、優奈を大切にしたい。あいつの笑顔を守るために、全部やってきた。でも、お前の想    い、一樹の寂しさを無視してまで、突き進みたくねえ。俺が一樹を置いてったせいで、こんなこと    になったなら……ただ復讐するだけじゃ、何も解決しねえ。優奈との関係、ちゃんと見つめ直さな    きゃいけない」  胸の奥で、優奈の笑顔と一姫の愛、一樹との過去がせめぎ合う。優奈を守るため戦ってきたけど、この ままじゃ誰も救えないって、どこかで気づいてた。  一姫は俺の手を強く握り、涙を浮かべながら真剣に言う。 一姫「たっくん……あたし、たっくんの苦しみ、全部一緒に背負いたい。この世界のたっくんがどんな選    択しても、あたしはそばにいる。一樹の想いも、たっくんの優奈への気持ちも、全部受け止めるか    ら……あたしに、任せて」  彼女の声は愛と覚悟に満ち、俺の心を突き動かした。彼女の瞳には、俺への純粋な愛が宿ってる。一樹 の寂しさを受け継ぎながら、俺自身を愛する彼女の強さ、それは俺にはない物だ。 拓哉「一姫……」  言葉が詰まる中、彼女がそっと近づき、俺の唇にキスをする。柔らかく、温かい感触が、俺の心を包み 込む。 一姫「たっくん、いいよ……あたし、たっくんの心、全部抱きしめるから」  彼女の囁きに、俺は抗えず、キスを受け入れる。夕暮れの街に、俺たちの影が重なる。  アパートに戻ると、言葉もなく、ぬこみちゃんが増設した寝室へ向かう。一姫はジャージの上着を脱ぎ 捨て、ブラウスのボタンを外す。スポーツブラに包まれた胸、ショーツに包まれたヒップが露わになり、 夕陽に映える。俺もブレザーを脱ぎ、彼女をベッドに押し倒す。 一姫「たっくん、きて……あたし、たっくんの心、全部感じたい……」  一姫の声は甘く、愛に満ち、俺の理性を溶かす。彼女の胸に触れると、柔らかく弾力のある膨らみが指 先に沈む。 一姫「んっ、あぁっ……たっくんっ!」  彼女の嬌声が漏れ、身体がビクンと震える。ショーツを剥ぎ取り、秘部を撫でると、熱く濡れた感触が 俺を煽る。 一姫「んぁ゛っ! たっくん、んんぅっ♡」  正常位で彼女に覆い被さり、熱く締め付ける中に入る。 一姫「あぁ゛ぁ゛っ! んぁぁ゛んっ♡♡ たっくん、んんぅ゛ぅ゛っ♡♡」  胸が俺の動きに合わせて揺れる。彼女の腕が俺の背中を抱き、キスを重ねる。 一姫「んっ、ちゅっ、たっくん……あたしの心、たっくんに届いてる? 全部、たっくんの……!」  彼女の囁きは、愛と欲望が混じり合い、俺の心を揺さぶる。胸を揉み、腰を掴んで激しく突き上げる。 一姫「んぁ゛ぁ゛ぁ゛っ! やぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡ たっくん、もっと、あたしをたっくんのものに……!」  彼女の声は熱狂的で、ヒップがシーツに擦れる音が淫らなリズムを刻む。 一姫「たっくん、どんな選択でも、あたしはたっくんを愛してる……たっくんの苦しみ、全部あたしにち    ょうだい……!」  一姫の言葉に、俺の胸は罪悪感と愛で引き裂かれる。優奈との関係を清算しなきゃいけない――その思 いが、彼女の愛に後押しされて、静かに固まっていく。俺はもう耐えきれず、彼女の中で果てた。 一姫「あぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡♡ たっくん、んぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ♡♡♡」  彼女の身体がビクンと跳ね、俺の迸りを受け止める。彼女の腕は俺を強く抱きしめ、まるで離したくな いように震えている。  行為後、一姫は汗で濡れた髪を乱し、俺を優しく抱きしめる。 一姫「たっくん……あたし、いつもそばにいるよ。たっくんの選ぶ道、全部応援する」  彼女の温もりに、俺は気づく。一姫の想いは、一樹の想いでもある。一樹が寂しさから優奈を奪ったよ うに、俺も一樹を置き去りにした。その連鎖を断つには、優奈との関係を清算し、ちゃんと向き合わなき ゃいけない。 拓哉「一姫……俺、優奈と話して、関係を終わらせる。じゃないと、俺も一樹も、お前も、誰も前に進め    ねえ」  俺の決意に、彼女は静かに頷き、微笑む。  お互い服を整え、一姫はジャージとスカートを直し、俺はブレザーを羽織る。彼女が『同位体情報上書 き機』を手に、俺に返そうとした瞬間、声が途切れる。 一姫「たっくん、これ……ほんと、ありが――」  身体がピカッと光り、次の瞬間、そこには一樹がいた。男の姿に戻り、機械を握りしめたまま、気まず そうに俺を見る。 拓哉「お、お前……!」  俺が声を上げると、ニヤけた笑顔を浮かべた。 一樹「悪い、拓哉……これ、ちょっと借りるぜ!」  そう言って、機械をポケットに突っ込んで走り去った。 拓哉「おい、待てよ!」  叫ぶが、一樹の背中は夕暮れの街に消える。気まずい空気と、一姫の温もりの余韻が胸に残る。優奈と の関係を清算する決意、一姫の愛、一樹の寂しさが、頭の中で絡み合う。  どうする、俺――。 ■第04週目D『選択反省会』■  一樹が『同位体情報上書き機』を握りしめて夕暮れの街に消えた後、俺、稲垣拓哉はアパートの前で放 心状態だった。頭の中は一姫の愛、優奈との清算、一樹の寂しさでぐちゃぐちゃだ。足が動かねえまま立 ち尽くしてると、突然、黄色い光がチラつき、ぬこみちゃんがポンと現れる。 ぬこみちゃん「拓哉さん! ボーッとしてる場合じゃないんぬ! ほら、部屋戻って反省会だよ!」  リボンを揺らし、俺の腕を引っ張る。 拓哉「お前、ほんとタイミングわかんねえな……」  俺はため息をつきながら、アパートに戻った。  リビングのソファにドサッと座ると、ぬこみちゃんはテーブルにメロンパンを置いて、珍しく真剣な顔 で話し始めた。 ぬこみちゃん「拓哉さん、ヤバいことになってるんぬ。一樹が自分で『同位体情報上書き機』使っちゃっ        たでしょ? あれ、安全圏の使用回数――三回を超えちゃったの。存在の比重が、一樹か        ら一姫側に傾き始めてるんぬ」  彼女の言葉に、俺の胸が締め付けられる。 拓哉「存在の比重? ってことは……これ以上使ったら、一樹が消えるのか?」  声が震える。ぬこみちゃんは尻尾をピョコピョコ振って、頷いた。 ぬこみちゃん「そうなんぬ。このままだと、一樹の存在が一姫に上書きされちゃって、元に戻れなくなる        かも。復讐を捨てて、一樹との友情を取るなら、説得して機械を取り上げなきゃ。一樹、        消えちゃうんぬ。」  その言葉が、俺の心に突き刺さる。 拓哉「消える……一樹が……」  小学生の頃、グラウンドで笑い合った一樹の顔が脳裏に浮かぶ。ビデオレターの嘲笑、裏切り、全部憎 かったけど、俺が一樹を置いてったのが始まりだった。一姫の愛を受け入れ、優奈との関係を清算する決 意をした今、俺は一樹を失うわけにはいかねえ。 拓哉「お前……なんでこんな物、俺に渡したんだよ!」  思わず叫ぶが、すぐに自分の声が止まる。ぬこみちゃんの無邪気な目を見て、気づいてしまった。俺が 憎しみに駆られてたからだ。ビデオレターを見たあの瞬間、俺は一樹を許せなくて、復讐しか考えてなか った。  ぬこみちゃんはメロンパンをかじりながら、静かに語り出した。 ぬこみちゃん「ぬ、拓哉さんに復讐の手助けしたかったけど、歩み寄るチャンスもちゃんと与えてたつも        りなんぬ。一姫ちゃんの想い、一樹の寂しさ、全部見えるようにしてた。全部フイにした        のは、拓哉さんの決断だよ」  その言葉に、胸が痛む。確かに、俺は何度も一姫の愛に触れ、一樹の寂しさに気づく機会があった。な のに、俺は憎しみに囚われて、復讐を選び続けた。 拓哉「……全部、俺のせいか」  項垂れる俺に、ぬこみちゃんはニコッと笑った。 ぬこみちゃん「でも、拓哉さん、まだ間に合うよ! 一樹を救って、優奈さんとちゃんと向き合って、前        に進むんぬ! ほら、まずご飯!」  テーブルには、なぜかカツ丼が置いてある。香ばしい匂いに、俺は苦笑い。 拓哉「お前、ほんと勝手に飯作るなよ……」  渋々箸を動かし、カツ丼を咀嚼する。風呂に入り、汗と混乱を流し、パジャマに着替えて歯を磨き、ぬ こみちゃんが増設した寝室のベッドに潜り込む。シーツの柔らかい感触が、疲れた身体を包む。 拓哉「一樹……俺、お前を救う。友情を取り戻す」  一姫の愛、優奈との清算、全部を背負って、俺は一樹を選ぶしかない。  心の中でそう決断し、俺は目を閉じた。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■黛一樹の日記4■  今日、なんか心がぐちゃぐちゃだ。頭整理するために書くけど、ほんと、わけわかんねえことになって るぜ。  朝、拓哉と校門で会って、一緒に登校した。アイツ、なんか気まずそうだったけど、昔みたいにダベり ながら歩いた。バスケの追い出し試合の話して、ちょっとだけ小学生の頃のグラウンド思い出して、胸が 熱くなった。でも、拓哉の目、なんか俺のこと避けてるみたいでさ。優奈と付き合い始めてから、アイツ さ、俺のことほんと遠くに感じるんだよな。親友なのに、なんでこうなるんだよって、モヤモヤしてた。  放課後の追い出し試合、拓哉、すげえかっこよかった。最終クォーターのダンク、めっちゃ痺れたぜ! 客席から「拓哉、最高!」って叫んじまった。けど、試合後、優奈と抱き合ってるアイツ見て、なんか… …すげえ寂しくなった。拓哉が優奈に夢中で、俺のこと見てねえって、はっきりわかった瞬間だった。手 を振り返してくれたけど、なんか申し訳なさそうな目でさ。まったく、胸が締め付けられたよ。  下校のとき、二人で歩いた。俺、なんかイラついて、「優奈、いいのか?」って聞いたら、拓哉、めっ ちゃ複雑な顔して「なんとも言えねえ」だって。親友だろ、はっきり言えよ!って思って、ついアイツの ポケットから変な機械――なんか光るやつ、引っ張り出した。そしたら、拓哉、めっちゃ焦ってた。俺、 これ使うと変な夢見るって言ったら、アイツ、なんかビクッとしてた。で、なんか勢いで自分でボタン押 したら……また、記憶が飛んだ。気づいたら、走って家に帰ってた。手にはあの機械、握りしめてた。  夢、また見たんだ。女の視点で、拓哉とすげえイチャイチャしてる夢。キスしたり、ベッドで……ハハ ハ、めっちゃエロいんだけど、なんか、すげえ愛してた。拓哉のこと、どんな選択してもそばにいたいっ て、必死に抱きしめてた。なのに、夢の中で、俺、なんか知っちまったんだよ。ビデオレターの件。拓哉 が俺を憎む理由。俺が、優奈を……そんなことしたって、夢の中でわかった。マジかよ、俺、そんな奴だ ったのか? でも、なんか、夢の中の俺――女の俺は、拓哉のこと愛してて、アイツの苦しみを全部受け 止めようとしてた。  頭、ぐちゃぐちゃだ。俺、拓哉を裏切ったのか? でも、俺の記憶にはそんなことねえ。ただ、拓哉が 優奈とラブラブで、俺が置いてかれた寂しさだけがリアルなんだ。夢の中の女、俺自身みたいに感じるの に、なんでこんなことになるんだよ。拓哉のこと、親友だと思ってた。グラウンドで笑い合ったあの頃、 ほんと幸せだったのに。俺、どこで間違えたんだ? あの機械、握りしめてるけど、これ、使うとまた何 か変わるのか? 怖えけど、なんか、答えが欲しい気もする。 明日、どうすりゃいいんだ。拓哉に、機械返すか? でも、なんか、アイツと向き合うの、すげえ怖え。 シャワー浴びて寝るわ。胸のモヤモヤ、もう消えねえよな。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■第05週目A『恋人なんかじゃねぇ!』■  朝、いつもより早く目が覚めた。ぬこみちゃんが増設した寝室の窓から、薄暗い秋の朝が覗く。俺、稲 垣拓哉はベッドの上で拳を握り、昨夜の決意を反芻する。一樹を救い、優奈との関係を清算し、一姫の愛 を受け止める――もう後戻りできねえ。胸の奥で、一姫と優奈の笑顔がせめぎ合うが、俺は一樹との友情 を取り戻す道を選ぶと決めたんだ。  そこへ、黄色い光がチラつき、ぬこみちゃんがトレイを抱えてポンと現れる。 ぬこみちゃん「おはよ、拓哉さん! 今日はとても早起きだね! ほら、朝ごはん! 今日はオムライス        なんぬ!」  リボンを揺らし、ケチャップの香るふわふわのオムライスを差し出してくる。 拓哉「お前、ほんと毎回……まあ、ありがと」  俺は苦笑いし、気合を入れるようにオムライスをガツガツかっこむ。卵の柔らかい食感が腹にずっしり 収まる。 拓哉「よし、行くぞ!」  ブレザーの制服に着替えると、勢いよくアパートを飛び出し、Grok学園へダッシュする。秋の冷た い風が頬を切り、決意が身体を熱くする。  校門近くの通学路で、優奈とバッタリ会った。ベストが映える華奢な姿、軽く揺れる髪。これから話す 事を考えると心が痛むが、俺は深呼吸して切り出す。 拓哉「優奈、話がある。……俺たち、別れよう」  言葉を吐き出した瞬間、彼女の目が大きく見開かれる。 優奈「え、拓哉……何!? 急に、どうして!?」  動揺する優奈に、俺は一樹の寂しさ、一姫の愛、自分の過ちを説明しようとするが、言葉が詰まる。次 の瞬間、パンッ! 鋭い音が響き、頬に熱い痛みが走る。優奈のビンタだ。 優奈「最低……! 拓哉、最低よ!」  彼女は涙目で吐き捨て、走り去る。俺は頬を押さえ、立ち尽くす。痛みより、彼女の傷ついた顔が胸を 抉る。 一姫「たっくん……ほんとうに、よかったの?」  突然、背後から静かな声。振り返ると、一姫が立ってる。ショートボブの茶髪、ジャージの上着とプリ ーツスカートの女子制服姿。俺は慌てて彼女の肩を掴む。 拓哉「一姫!? お前、いつ……! 『同位体情報上書き機』を、使ったのか!?」  焦りが声に滲む。一姫は済まなそうに目を伏せる 一姫「あたし、使ってないよ……一樹の記憶の上では、たっくんと普通に下校して、たっくんのアパート    から走って帰っただけ。なのに、朝起きたら、こうだったの……」  彼女の言葉に、背筋が凍る。 拓哉「くそっ……存在の比重が偏ったんだ」  ぬこみちゃんの警告を思い出す。一樹が機械を自分で使ったせいで、安全圏の三回を超え、一姫の表層 化が進んでる。俺は項垂れるしかなかった。 拓哉「一樹が……このまま消えるのか……」  一姫はそんな俺の手をそっと握り、優しく微笑む。 一姫「たっくん、落ち込まないで。一緒に、考えよう?」  彼女の温もりに、俺は小さく頷く。一姫に手を引かれ、登校を再開するが、頭は一樹の消滅と優奈の涙 でいっぱいだ。  授業中も、俺は呆然と黒板を見つめるだけ。古典の助動詞も、数学の公式も、頭に入ってこねえ。昼休 み、購買のサンドイッチを握りつぶしそうになってると、聞き慣れた声が響く。 一樹「よ、拓哉! なんか顔死んでるぞ、飯一緒に食わねえ?」  一樹だ。普段通り、ニヤけた笑顔で近づいてくる。俺はハッとして、緊張が緩む。 拓哉「お、お前……! ああ、いいぜ」  一樹の姿に、一瞬でも安堵した自分に驚く。だが、彼はサンドイッチをかじりながら、急に真剣な目で 俺を見た。 一樹「なあ、拓哉。放課後、屋上に来いよ。話、したいんだ」  一樹の目には、いつもの軽薄さがなく、どこか寂しげな光があった。 拓哉「……おう、わかった」  俺は頷き、ポケットに『同位体情報上書き機』がないことを思い出す。一樹が持ち逃げしたまま――さ て、どうなるんだ、この話。  屋上での対峙を想像し、俺の心臓がバクバクと鳴り始める。 ■第05週目B『一人だけの幼馴染』■  放課後、俺、稲垣拓哉は一樹に呼ばれ、Grok学園の屋上へ向かった。コンクリートの床に夕陽が長 く影を落とし、冷たい秋風がブレザーを揺らす。一樹はフェンスにもたれかかり、俺を見た。 一樹「よ、拓哉。来てくれたな」  彼の声はいつもより低く、ニヤけた笑顔にはどこか無理がある。俺は拳を握り、静かに頷く。 拓哉「ああ。話って、なんだ?」  一樹はポケットから『同位体情報上書き機』を出し、弄びながら口を開く。 一樹「あのさ、俺、最近見る夢……女の視点で、お前とイチャイチャするやつ。あれ、幸せな夢なんだよ    な」  彼は軽く笑うが、目は真剣だ。 拓哉「お前、あれだけ思われてんだからさ、一姫って子、デートでもしてやれよ。ハハ、親友として応援    するぜ!」  その言葉に、俺の心は一瞬揺れる。一姫の愛に満ちた瞳が脳裏をよぎるが、すぐに現実が引き戻す。 拓哉「一樹、ふざけんな。それ、笑い事じゃねえんだぞ」  俺は一歩踏み出し、声を低くする。 拓哉「その機械をこれ以上使ったら、お前が消えるんだ。いつか一姫に存在を完全に上書きされて、元に    戻れなくなる。頼む、止めてくれ」  一樹の笑顔が消え、機械を握る手が止まる。彼はフェンスに背を預け、遠くの夕陽を見つめた。 一樹「……拓哉、俺、一姫の夢で、いろんなこと知ったよ。ビデオレターの件……俺がお前を裏切ったこ    と。優奈を巻き込んだ、あの最低なこと」  彼の声は震え、どこか苦しげだ。 一樹「正直、俺の記憶にはそんなことねえ。でも、夢の中の俺――一姫の記憶で、全部わかった。友情っ    て、こんな重いもんだとは思わなかったよ。拓哉、俺、お前を失いたくなかったのに、なんでこう    なったんだ……」  一樹の告白に、小学生の頃グラウンドで笑い合った一樹の顔が浮かぶ。俺が優奈に夢中になって、彼を 置き去りにした。あの寂しさが、ビデオレターに繋がったんだ。 拓哉「一樹……まだ何も起きてねえ。この世界じゃ、お前はまだ裏切ってねえんだ。俺に、やり直させて    くれ。俺とお前で、昔みたいな友達に戻ろう」  俺は必死に説得する。優奈との清算、一姫の愛、全部背負って、俺は一樹を救いたい。  だが、一樹は静かに首を振った。 一樹「拓哉……俺、たぶん、どこかで逃げたかったんだ。このまま一姫になれば、俺の罪も、寂しさも、    全部消えるんじゃねえかって」  彼は機械を手に、夕陽に向かってボタンを押した。ピカッ! 眩い光が屋上を包む。俺は目を細め、光 が収まるのを待つ。そこにいたのは、一姫だった。ショートボブの茶髪、ジャージの上着とプリーツスカ ートの女子制服姿。彼女の瞳は、俺を静かに見つめる。  一姫は一歩踏み出し、口を開きかけるが、言葉を出さない。俺も何も言えない。夕陽が彼女の髪を赤く 染め、屋上に重い沈黙が流れる。一姫の存在が一樹を上書きしつつある――その緊張感が、空気を張り詰 めさせる。彼女の瞳には、愛と寂しさ、決意が混じるが、俺はただ立ち尽く他なかった。  彼女の視線、一樹の想い、俺は――。 ■第05週目C『幸せは誰の物?』■  屋上の夕陽が一姫のショートボブを赤く染め、俺、稲垣拓哉は彼女と向き合って立っている。『同位体 情報上書き機』の光が消えた後の沈黙は、重く、張り詰めている。一姫の瞳は、愛と寂しさ、決意が混じ り合い、俺を静かに見つめる。彼女は一歩踏み出し、震える声で口を開いた。 一姫「たっくん……ごめんね。あたしのせいで、一樹が消えそうになってる。あたしが、たっくんをこん    なに愛さなければ、こんなことには……」  彼女の声は途切れ、潤んだ瞳が夕陽に揺れる。スポーツブラに包まれた胸が小さく上下し、プリーツス カートが風に揺れる。 拓哉「一姫、違う」  俺は拳を握り、声を低くして諭す。 拓哉「お前が謝る必要なんてねえ。もとはと言えば、俺の身勝手が招いたんだ。優奈に夢中になって、一    樹を置き去りにした。俺が一樹の寂しさに気づかなかったから、ビデオレターのあの裏切りが起き    た。お前は……ただ、一樹の想いを引き継いで、俺を愛してくれてるだけだ」  言葉を紡ぐたび、胸が苦しくなる。小学生の頃、グラウンドでボールを投げ合った一樹の笑顔。一姫の 「たっくん、愛してる」という声。優奈との清算。全部が頭の中で響き合う。でも俺は一樹を救いたい。  一姫は目を伏せ、唇を噛む。 一姫「たっくん……あたし、誰よりも一樹を選んでほしいって思う。でも、一樹自身が、あたしになるこ    とを選んだ。たっくんがどんなに一樹を救おうとしても、一樹がそれを望まなきゃ、意味がないよ    ね……」  俺は一樹との友情を取り戻したい。だが、一樹が自分で機械を使い、一姫に変わることを選んだ。あの 寂しそうな目、ビデオレターの裏切り、その全てが一樹の心の叫びだったんだ。俺はフェンスに手を握り 締め、夕陽を睨む。 拓哉「くそっ……俺、誰よりも、親友として、あいつと昔みたいに笑い合いたい。でも、お前の言う通り    だ。俺が勝手に選んだって、ただの押し付けだ。どうすりゃいいんだよ……」  声が震え、喉が詰まる。  一姫は静かに近づき、俺の手をそっと握る。彼女の温もりが、俺の震えを少しだけ落ち着かせる。 一姫「たっくん……ぬこみちゃんに頼んで、あたしを消すようにできないかな? そしたら、一樹が戻っ    て、たっくんとまた親友になれるよね……」  彼女の提案に、俺はハッと顔を上げる。 拓哉「お前、本気か!?」  彼女の瞳は涙で揺れ、でも決意に満ちている。 一姫「寂しいけど……たっくんのためだもの。一樹のためなら、あたし、消えてもいいよ。たっくんの心    が軽くなるなら、それで……」  彼女の声は切なげで、俺の心を抉る。  だが、一姫の足は動かない。彼女が一歩踏み出そうとするたび、身体が硬直し、まるで拒むように震え る。 拓哉「一姫……?」  彼女は困惑した顔で呟く。 一姫「あたし、動こうとしてるのに……足が、動かないの。まるで、一樹が……あたしを消すのを、望ん    でないみたいに……」  一樹の想いが、一姫を通じて、俺に届いてるのか。一樹は消えたくない。でも、一姫として、俺のそば にいたいのかもしれない。俺は拳を握り、夕陽に向かって呟く。 拓哉「バカ野郎……一樹、お前、ほんとバカだよ」  俺は一姫の肩をそっと掴み、彼女の瞳を見つめる。 拓哉「一姫、明日、デートしよう。俺とお前で、ちゃんと話したい。一樹のことも、お前のことも、全部    向き合いたい」  一姫の顔が複雑な表情に揺れる。愛と不安、寂しさが混じった瞳が、俺を捉える。それでも彼女は小さく 頷き囁く。 一姫「……うん、たっくん。約束だよ」  彼女の声は、どこか一樹の軽い口調を思わせた。  俺たちは屋上を後にし、それぞれ帰宅する。アパートに戻り、俺はソファに沈み込み項垂れた。一樹の 想い――寂しさ、裏切り、友情――、俺は一樹を救いたい。だが、彼の選択を尊重するなら、一姫として 生きる彼を受け入れるべきなのか? 俺は拳を握り、静かな部屋で呟く。 拓哉「一樹……俺、どうすりゃいいんだ」  一樹の寂しげな笑顔が、頭から離れない。 ■05週目D『断罪反省会』■  アパートに戻った俺、稲垣拓哉は、ソファに沈み込んで放心状態だった。一樹の想い、一姫の愛、優奈 との清算――全てが頭の中で響き合い、俺の思考を迷路に誘う。屋上での一姫の複雑な表情、一樹が消え るかもしれない現実、俺は何も出来ないのかと自問自答する。  と、突然、鼻先にピリッと刺激臭が押し付けられた。 ぬこみちゃん「拓哉さん! ボーッとしてる場合じゃないんぬ! ほら、シャキッとするんだから!」  黄色い光と共に、ぬこみちゃんがトウガラシを手にポンと現れ、リボンを揺らしながら俺を睨む。 拓哉「うわっ、なんだこれ! やめろって!」  俺は咳き込みながら目を覚ます。ぬこみちゃんはケラケラ笑い、テーブルにメロンパンをドンと置く。 ぬこみちゃん「反省会だよ! さあ、話すなんぬ!」  俺は鼻を押さえ、ソファに座り直す。 拓哉「一樹に、消えてほしくねえ……。アイツは親友だ。なのに、俺、優奈にのぼせて、アイツのこと忘    れてた。小学生の頃、グラウンドでバカみたいに笑い合ってたあの時間が、俺にとっても一番大事    だったのに……」  声が震え、自己嫌悪が胸を締め付ける。ビデオレターの裏切りは許せなかった。でも、俺が一樹を置き 去りにしたのが、全部の始まりだった。 拓哉「俺のせいで、アイツがこんな選択しちまった。どうすりゃ、一樹を救えるんだよ……」  拳を握り、テーブルを軽く叩く。  ふと、頭に浮かんだ疑問を口にする。 拓哉「なあ、ぬこみちゃん。お前がくれた『同位体情報上書き機』……あの復讐の道具、ほんとにただの    復讐のためだったのか? もしかして、別の世界の俺が、俺自身の罪を裁くために、お前に託した    んじゃねえか? 一樹の裏切りも、俺の身勝手も、全部見つめ直させるために……」  俺の言葉に、ぬこみちゃんはメロンパンをかじり、ちょっと真面目な顔で尻尾を振る。 ぬこみちゃん「んー、拓哉さん、難しく考えすぎなんぬ! ぬ、ただ、拓哉さんが前に進めるようにって        思ってただけ。過去とか別の世界とか、ぐるぐる考えなくていいよ。今、拓哉さんができ        ることだけ、ちゃんと見てればいいんぬ!」  彼女の軽い声に、俺は苦笑いする。確かに、俺が今すべきことは、一樹と一姫と向き合うことだ。 拓哉「そうだな……明日、午後に一姫とデートする。そこで、ちゃんと結論出す。一樹のことも、お前の    想いも、全部受け止めて、俺の答えを決める」 ぬこみちゃん「それでいいよ! ガンバレ、拓哉さんなんぬ!」  俺は決意に、ぬこみちゃんは嬉しそうに跳ね回る。彼女はテーブルに夕食――カレーパンをドンと置き 笑う。 ぬこみちゃん「ほら、食べて元気出すんだから!」  俺はため息をつき、カレーパンをかじる。スパイシーな具が腹に収まり、疲れた身体に少し力が戻る。 ぬこみちゃん「じゃ、お風呂入るよ! 拓哉さん、一緒にどうなんぬ?」  ぬこみちゃんがニヤリと笑い、俺は慌てて手を振る。 拓哉「いや、さすがにそれは……!」 ぬこみちゃん「ふふ、狸だもん! 気にしないんぬ!」  と強引に俺の手を引きバスルームへ飛び込む。仕方なく、俺はぬこみちゃんの黄色い毛をシャンプーで 洗ってやりながら、苦笑する。 ぬこみちゃん「お前、ほんと図々しいな」  風呂から上がり、パジャマに着替えて歯を磨く。ぬこみちゃんが増設した寝室のベッドに潜り込むと、 シーツの柔らかい感触が俺を包む。 拓哉「自分の罪と向き合うなら……一樹の決断を尊重するべきなのかもしれねえ」  心の中で呟き、目を閉じる。一姫の愛に満ちた瞳、一樹の寂しそうな笑顔が胸に浮かぶ。俺は一樹を救 いたい。でも、彼が一姫として生きることを選んだなら、それを否定するのは、俺のエゴなのか?  頭の中で答えを探りながら、眠りに落ちた。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■黛一樹の日記5■  今日、なんか心がめっちゃ重い。頭整理したくて書くけど、ほんと、全部がぐちゃぐちゃだ。  朝、目が覚めたら、なんか身体が変だった。昨日、屋上で自分で『同位体情報上書き機』使って、一姫 に変わったこと、全部覚えてる。夢じゃなくて、リアルに俺が一姫として拓哉と話してた。拓哉の苦しそ うな顔、一姫としての俺がアイツの手握って、「ごめんね」って謝ったこと、全部頭に焼き付いてる。ビ デオレターの件、俺が優奈を巻き込んで拓哉を裏切ったこと、一姫の記憶を通じてハッキリわかった。俺 さ、そんな最低なことしたんだな。拓哉が俺を憎む理由、痛いくらいわかるよ。  学校行く途中、拓哉が優奈と別れ話してるの、遠くから見た。優奈がビンタして走り去るの見て、胸が 苦しくなった。拓哉、俺のせいでこんな目に……。でも、一姫として現れた俺が、拓哉に「ほんとうに、 よかったの?」って声かけた。あの瞬間、俺、一姫の心と一緒に、拓哉のことめっちゃ愛してるって感じ た。アイツの苦しみを全部抱きしめたかった。一姫の記憶と俺の記憶、どんどん混ざってきて、なんか… …俺が俺じゃなくなる気がする。怖えよ。消えるの、めっちゃ怖え。  でもさ、一姫の心、すげえ温かいんだ。拓哉のこと、どんな選択してもそばにいたいって、純粋に思っ てる。俺が裏切ったせいで拓哉を傷つけたなら、一姫としてアイツを愛して、救ってやれるんじゃないか って、どこかで期待してる自分もいる。昼休み、拓哉に声かけて一緒に飯食った。アイツ、なんかボーッ としてたけど、俺の顔見てちょっとホッとしたみたいで、胸がチクッとしたんだ。  放課後、屋上に呼び出した。自分で機械使って一姫になったとき、拓哉が必死に「消えるな」って言っ てくれた。アイツ、俺のこと、まだ親友だって思ってくれてるんだな。  でも、俺、決めたんだ。一姫に変わることを。俺が消えても、一姫なら拓哉を幸せにできる。ビデオレ ターの罪、俺の寂しさ、全部背負って、拓哉のそばにいられるなら、それでいいって。屋上で一姫として 拓哉と話したとき、アイツに「デートしよう」って言われた。あの瞬間、めっちゃ嬉しかったけど、すげ え複雑だった。俺、一姫として拓哉とデートする事になるけど、俺自身はもうすぐ消えるかもしれない。 怖えけど、拓哉を一姫に託したいって、心のどこかで思ってる。  家に帰って、この日記書いてるけど、手が震える。消える恐怖と、一姫として拓哉を愛せる期待が、頭 の中でぐるぐるする。小学生の頃、拓哉とグラウンドで笑い合ったこと、忘れねえよ。拓哉よお、俺の分 まで、一姫と幸せになってくれ。シャワー浴びて寝るわ。明日、どんな日になるんだろうな。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■第06週目A『消えるんじゃねぇ!』■  朝、目が覚めたとき、部屋はまだまだ暗かった。ぬこみちゃんが増設した寝室の時計は午前4時を指し てる。俺、稲垣拓哉はほとんど眠れず、ベッドの上で天井を睨む。  今日は午後のデート。一姫と向き合い、一樹の決断を受け止める日だ。仕方なくベッドから這い出し、 ソファに座ってデートコースを考える。一樹が野球好きだったことを思い出し、呟く 拓哉「バッティングセンター、確定だな」  だが、すぐに頭に浮かぶ。 拓哉「ピッチャーがバッティングって、肘にいいのか? 一樹、昔、肩痛めてたっけ……」  小学生の頃、グラウンドでボールを投げ合った記憶が蘇り、胸が苦しくなる。こんなこと忘れてるなん て、俺、ほんとバカだよ。  しばらく唸ってると、黄色い光がチラつき、ぬこみちゃんがトレイを抱えてポンと現れる。 ぬこみちゃん「おはよ、拓哉さん! 今日は早いね! ほら、朝ごはん! フレンチトーストなんぬ!」  リボンを揺らし、メープルシロップの甘い香りが漂うトーストを差し出す。 拓哉「お前、毎回よく飽きねえな……ありがと」  俺は苦笑いし、フォークでトーストを切り、気合を入れるように完食する。歯を磨い、顔を洗い、鏡の 中の自分を睨む。 拓哉「今日、ひょっとしたら一樹との最後の対話になるかもしれない。しっかりしろ、俺」  胸に決意を刻み、ブレザーの制服に着替える。  外はまだ薄暗い。一樹の家まで走り、彼の家の前で出待ちする。しばらくすると、ドアが開き、一姫が 出てきた。ショートボブの茶髪、ジャージの上着とプリーツスカートの女子制服姿。彼女は俺を見て、ほ のかに微笑む。 一姫「たっくん……待っててくれたの?」  俺は一瞬言葉に詰まり、彼女の手をそっと握る。 拓哉「ああ、行こう」  一姫の手は暖かった。  通学路で優奈とすれ違うが、彼女は冷たく目を逸らし、無視して通り過ぎる。昨日、ビンタされた頬が 疼くが、俺は一姫の手を握り直し、校舎へ向かう。  今日は土曜で午前授業なんだが、授業は頭に入らず、ただ一樹と一姫のことを考えていた。  放課後、校門で待ってると、一樹が現れた。茶色いショートヘアを揺らし、ニヤけた笑顔で俺に絡んで くる。 一樹「よ、拓哉! 今日、午後のデートだろ? あの子、頼んだぜ! 駅前に二時集合な!」  軽い口調だが、目にはどこか寂しさが滲む。彼の手には『同位体情報上書き機』が握られている。 拓哉「一樹、お前……!」  俺が声を上げると、彼は笑って走り去る。その寂しげな背中に、もう離別は避けられないと確信する他 なかった。一樹は自分で一姫を選び、俺にその決断を託そうとしてる。  校門に立ち尽くし、俺は拳を握る。  駅前、二時。俺は一姫と向き合い、一樹の想いを受け止める。だが、それが一樹との最後の時間になる かもしれない。  俺は静かに歩き出す――。 第06週目B『恋人で幼馴染』  昼前、俺、稲垣拓哉はアパートに一時帰宅した。胸には一樹の想いと一姫の愛が渦巻いている。キッチ ンで、ぬこみちゃんが残してたサラダラップを手に取る。デート前に臭いがキツい料理は避けたかった。 シャキッとした野菜とチキンの味を噛み締めながら、俺はクローゼットへ。カジュアルなデニムジャケッ ト、黒のTシャツ、チノパンに着替え、鏡で髪を整える。 拓哉「一樹との最後の時間になるかもしれない……いや、一姫と向き合う時間だ」  決意を呟き、駅前へ向けてアパートを飛び出す。  駅前に着いたのは一時十五分。秋の陽射しがアスファルトを照らし、俺はベンチに腰掛けて待つ。一時 四十五分、ショートボブの茶髪とジャージ姿の一姫が現れた。カジュアルなスニーカーとプリーツスカー トが、彼女の爽やかな雰囲気を引き立てる。 一姫「たっくん、待った? ごめんね、ちょっと遅れちゃった」  彼女の微笑みに、胸が締め付けられる。俺は立ち上がり、彼女の隣に並ぶ。 拓哉「いや、大丈夫だ。けど……一樹、どうした? また『同位体情報上書き機』使ったのか?」  一姫の瞳が一瞬曇り、静かに頷く。 一姫「うん……昼前、一樹がまた使ったの。六回目。たっくん、一樹の思い出、ほとんどあたしの記憶と    混ざり始めてる。一樹の心、どんどんあたしの中に溶けてく……」  彼女の声は落ち着いているが、どこか寂しげだ。俺は拳を握り、一樹の笑顔を思い出す。小学生の頃、 グラウンドでのあの大切な時間、バカな俺が自分の手で手放しかけていた思い出。だが、一樹が自分で 一姫を選んだ。 拓哉「……一樹の意思だな。俺は、それを尊重する。一姫、今日は、ちゃんとデートしよう。俺とお前    で、向き合うんだ」  俺の言葉に、彼女は小さく微笑む。 一姫「うん、たっくん。ありがとう」  デートはバッティングセンターからスタート。俺はバットを握り、ピッチングマシンに挑むが、球が 当たらねえ。 拓哉「くそっ、なんでだ!」  一方、一姫は軽快にバットを振り、快音を連発。 一姫「たっくん、フォームが固いよ! もっとリラックス!」  彼女の笑顔に、俺は負け惜しみを吐く。 拓哉「バスケ部だからブランク長いんだよ! 野球は一樹の得意分野だろ!」  彼女に大敗した事で、胸が少し軽くなるが、一樹のピッチングを褒めたあの日の記憶が蘇り、すぐに苦 しくなった。  次に、スポーツ用品店へ。ラケットやグローブが並ぶ中、俺は一樹が好きだった野球グッズじゃなく、 一姫に似合うランニングシューズやヘアバンドを手に取る。 拓哉「これ、似合うんじゃね?」  俺が差し出すと、彼女は喜びと苦悩が入り混じった複雑な表情を浮かべる。 一姫「たっくん……あたしのために、選んでくれるんだね」  彼女の声に、一樹の面影が重なり、胸が締め付けられる。でも、この苦しみは一樹の存在が消えつつあ る現実を、俺が受け止めている証拠だ。逃げるわけにはいかない。  夕方、カフェで夕食。俺はアスリート向けの高タンパクメニューを注文しようとするが、一姫が苦笑い で止める。 一姫「たっくん、ちょっと空気読もうよ。デートなんだから、もっと軽いのでいいよね?」  彼女の指摘に、俺は笑い、結局パスタとサラダをシェアすることに。彼女の笑顔、一樹の軽い口調を思 い出す仕草、テーブル越しに笑い合いながら、俺は決意を固める。  一樹の想いと一姫の気持ち、両方を大切にしたい。一姫を受け入れ、一樹の選択を尊重する。それが、 俺の答えだ。  カフェを出て、夜の街を一緒に歩く。一姫の手は温かく、俺の心を落ち着かせてくれた。アパートの前 で立ち止まり、俺は彼女の瞳を見つめる。 拓哉「一姫……俺、決めた。お前を受け入れる。一樹の想いも、お前の愛も、全部背負って、俺は前に進    む。一樹が選んだ道を、俺も信じる」  俺の言葉に、彼女の瞳が潤む。 一姫「たっくん……ありがとう。あたし、たっくんのそばに、ずっと居るよ」  彼女は小さく微笑み、俺の手を強く握る。一樹の笑顔が、彼女の瞳に重なる。  俺は一姫の手を握り返す――これが、俺の選んだ道だ。 第06週目C『一姫の心』  アパートの前で一姫の瞳を見つめ、俺、稲垣拓哉は彼女の手を握りしめた。彼女の温もりが、俺の決意 を固める。一樹の想い、一姫の愛、全部を受け入れる――それが俺の答えだ。 拓哉「一姫……俺、お前と一緒に前に進む」  言葉を紡ぐと、彼女の潤んだ瞳が揺れる。俺は彼女を強く抱きしめ、自らの意思で唇を重ねる。柔らか く、温かいキス。彼女の吐息が俺の頬をくすぐり、一樹の笑顔と重なる感覚に心が揺さぶられる。一姫は 小さく微笑み、俺の背中に腕を回す。 一姫「たっくん……あたし、嬉しい」  アパートの自室、ぬこみちゃんが増設した寝室に二人で入る。言葉はいらない。俺たちは互いの服を脱 ぎ捨て、全裸でベッドに腰掛け、互いの熱を感じ合う。対面座位で一姫を抱き、彼女の熱く締め付ける中 に入る。 一姫「んぁ゛ぁ゛っ! たっくん、んんぅ゛ぅ゛っ♡♡」  彼女の嬌声が部屋に響き、胸が俺の胸に押し付けられる。汗で濡れたショートボブが揺れ、彼女の腕が 俺の首に絡みつく。彼女の瞳は潤み、俺を真っ直ぐ見つめる。 一姫「たっくん……あたしの心、全部たっくんに捧げる。あたしの愛、たっくんの心に刻んで……!」  彼女の声は切なげで、愛と覚悟が織り交ざり、俺の心を深く突き動かす。彼女の吐息が俺の耳に触れ、 一樹の寂しさと一姫の愛が交錯するように伝わる。  俺は彼女の腰を両手で掴み、ゆっくり、深く突き上げる。 一姫「んぁ゛ぁ゛ぁ゛っ! やぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡ たっくん、んんぅ゛ぅ゛ぅ゛んっ♡♡♡」  彼女の嬌声は熱狂的で、ヒップが俺の腿に擦れる音が淫らなリズムを刻む。彼女の胸が俺の動きに合わ せて揺れ、汗で濡れた肌が俺に絡みつく。俺は彼女の背中に手を回し、彼女を強く抱きしめる。 拓哉「一姫……俺、お前の想いに答える。一樹の想いも、お前の愛も、全部背負って生きていく」  声が震え、俺の決意が言葉になる。一樹の裏切り、俺の身勝手、優奈との清算――全てを乗り越え、俺 は一姫を受け入れる。彼女の涙が頬を伝い、俺の肩に落ちる。 一姫「たっくん……あたし、たっくんとこうやって繋がれて、こんな幸せ、初めて……どんな未来でも、    たっくんのそばにいるよ……!」  彼女の言葉は、愛と切なさが溶け合い、俺の心を揺さぶる。俺は彼女の首に顔を埋め、彼女の肌の香り を吸い込む。彼女の体温、柔らかな胸の感触、一樹の笑顔を宿した瞳が、俺の心を満たす。 一姫「んぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ! たっくん、んぁぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡ もっと、もっと、あたしをたっくんの    心に……!」  彼女の声は熱を帯び、俺は彼女を抱きしめる。激しく動き、彼女のキスを受け入れる。唇が触れ合うた び、彼女の愛が俺を包み込む。 一姫「たっくん、あたしのたっくんに……愛してる、ずっと、ずっと……!」  彼女の囁きが、快楽の波に乗り、俺の心を満たす。彼女の指が俺の背中に食い込み、まるでこの瞬間を 永遠に留めたいように震える。彼女は俺の首に腕を強く絡め、涙と笑顔で語り掛ける。 一姫「たっくん、あたしも、たっくんとこうやって……生きて、一緒に背負って……!」  俺はもう耐えきれず、彼女の中で果てる。 一姫「あぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛んっ♡♡♡♡ たっくん、んぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ♡♡♡♡」  彼女の身体がビクンと跳ね、俺の迸りを受け止める。彼女の腕は俺を離さず、汗と涙が混じった彼女の 吐息が、俺の心に深く刻まれる。  行為後、俺は一姫を優しく抱きしめる。彼女の汗と温もりが、俺の疲れた身体を包む。 一姫「たっくん……ありがとう」  彼女の囁きが耳に残り、俺は彼女の髪を撫でながら眠りに落ちる。  目が覚めると、朝の薄光が寝室を照らしていた。だが、隣に一姫の姿はない。ベッドは冷たく、彼女の 温もりの痕跡すらない。 拓哉「一姫……?」  俺は慌てて身を起こす。枕元に、殴り書きのメモが置いてある。一樹の字だ。「拓哉、明日の早朝、小 学校のグラウンドで会おう。」短いメッセージに、俺の心は揺さぶられた。  一樹なのか、一姫なのか――どっちが書いたのか、わからねえ。だが、グラウンド。あの小学生の頃、 俺たちが笑い合った場所。俺はメモを握りしめる。  ――明日、何が待ってるんだ。 ■第06週目D『ひたすら反省会』■  一姫との行為の後、俺、稲垣拓哉はぬこみちゃんが増設した寝室で目を覚ました。彼女の姿はなく、枕 元にはメモ――一樹の殴り書き「明日の早朝、小学校のグラウンドで会おう。」それは一樹なのか、一姫 なのか、わからねえ。  リビングに戻ると、黄色い光がチラつき、ぬこみちゃんがトレイを抱えて現れる。 ぬこみちゃん「拓哉さん! おかえりなんぬ! ほら、夕飯だよ! 今日はタコライス!」  リボンを揺らし、テーブルにスパイシーな香りの皿を置く。 拓哉「お前、ほんと毎回……まあ、いいや。反省会すっか」  俺はソファに沈み、ぬこみちゃんと夕飯を食べながら、今日を振り返る。  ぬこみちゃんはメロンパンをかじり、真剣な顔で切り出した。 ぬこみちゃん「拓哉さん、悪い知らせなんぬ。一樹、今日で『同位体情報上書き機』を六回使ったよね?        存在の比重が完全に一姫に傾いちゃって、一樹はもう、一姫の意識が途絶えてる間しか表        層化できなくなった。ほとんど消滅したも同然なんぬ」  その言葉に、俺のフォークが止まる。小学生の頃、グラウンドで笑い合った一樹の顔が脳裏に浮かぶ。 拓哉「消滅……一樹が、そんな簡単に……」  声が震える。ぬこみちゃんは尻尾を振って続ける。 ぬこみちゃん「でもさ、一樹、最後のメッセージ残したよね。あのメモ、グラウンドで会おうって。消え        かけてるのに、なんでそんなこと書いたと思う? 拓哉さん、考えてみてなんぬ。」  俺は黙ってタコライスを食べる。一樹の意図――グラウンドは、俺たちが親友として笑い合った思い出 の場所だ。一樹は、最後に俺と向き合いたいのか? それとも、一姫として生きる決意を伝えたいのか? 拓哉「一樹……お前、俺に何を伝えたいんだ……」  呟くが、答えは出ない。一姫を受け入れると決めた俺にとって、一樹の消滅は避けられない現実だ。だ が、そのメモは、俺に最後の選択を突きつけている。夕飯を黙って食べ終え、俺は皿を流しに運ぶ。  風呂に入り、熱いシャワーで汗と混乱を流す。パジャマに着替えて歯を磨き、スマホの目覚まし4時に セットする。ベッドに潜り込むと、頭の中で一樹との思い出が渦巻く。小学生の頃、ピッチングを褒めた 日。バスケの試合で応援してくれた一樹。ビデオレターの裏切り。そして、一姫の愛。全部、俺の選択の 結果だ。 拓哉「自業自得だ。俺が一樹を置いてったから、こうなった。一姫を選んだのも、俺の決断だ」  感傷を振り切り、俺は目を閉じる。  明日、グラウンドで一樹と――いや、一姫と向き合う。それが、俺の選んだ道だ。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■黛一樹の日記6■  今日、なんかもう、頭も心も限界だ。書くの、たぶんこれが最後になるかもしれない。  朝、目が覚めたとき、なんか身体が重かった。昨日、屋上で自分で『同位体情報上書き機』使って一姫 になったこと、全部覚えてる。拓哉とデートする約束したこと、アイツの必死な顔、全部リアルだ。一姫 としての俺、拓哉のことめっちゃ愛してて、アイツの苦しみを抱きしめたかった。でも、俺自身の意識、 なんかどんどん薄れてく。六回目使ったせいだ。一姫の記憶と俺の記憶、ほとんど混ざっちゃって、俺、 一樹としての自分が消えかけてる。怖えよ。マジで、消えるの、めっちゃ怖え。  学校行く前、拓哉が家の前で待っててくれた。一姫として、アイツの手握って登校した。優奈が冷たく 無視してったけど、拓哉の手、すげえ温かくて、なんか安心した。放課後、俺、一瞬だけ表層化できた。 拓哉に「駅前に二時集合な!」って軽口叩いて、機械握って走り去った。あの瞬間、昔みたいに親友とし て笑いたかった。でも、すぐに一姫の意識に押し戻されて、俺、ほとんど自分じゃいられなかった。  デート、めっちゃ楽しかったよ。バッティングセンターで拓哉に大勝ちして、アイツの負け惜しみ聞い て笑った。スポーツ用品店で、拓哉が一姫に似合うシューズ選んでくれて、すげえ嬉しかったけど、なん か切なかった。一樹の俺なら、野球グッズガンガン見てただろうな。カフェでパスタ食いながら、拓哉と バカみたいに笑い合った。あの時間、ほんと幸せだった。でも、俺、一樹としての俺、ほとんど出てこれ なかった。一姫の心が強すぎて、俺、ただ見てるだけみたいだった。  アパート戻って、拓哉と……すげえ愛し合った。一姫として、拓哉のこと、全部受け止めたかった。ア イツの決意、俺のこと信じてくれる気持ち、全部感じた。ビデオレターの罪、俺の寂しさ、全部置いて、 一姫として拓哉を愛せるなら、俺、消えてもいいって、どこかで納得してる。怖えけど、一姫なら、拓哉 を幸せにできる。俺が裏切ったアイツを、ちゃんと守れる。  でもさ、最後に、親友として、拓哉ともう一回ちゃんと話したい。グラウンドで、昔みたいに笑い合い たい。だから、メモ書いた。明日の早朝、小学校のグラウンドで会おうって。あの場所、俺と拓哉が初め て出会って、親友になった場所だ。俺、一樹として表層化できるか、わかんねえけど、せめて、拓哉の顔 見て、ちゃんとさよならしたい。拓哉、俺の分まで、一姫と幸せになってくれよ。  手、震える。消える恐怖と、納得が、頭ん中でぐちゃぐちゃだ。シャワー浴びて、寝るわ。明日、拓哉 に会えるといいな。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■第07週目『さよなら』■  朝、スマホのアラームが鳴り響き、俺、稲垣拓哉は目を覚ました。ぬこみちゃんが増設した寝室は薄暗 く、時計は4時を指してる。寝ぼけた頭を叩き起こすため、洗面所で冷たい水で顔を洗う。鏡の中の自分 は、どこか疲れた顔だ。一樹のメモ――「明日の早朝、小学校のグラウンドで会おう」――が頭に焼き付 いて離れねえ。  キッチンに向かうと、黄色い光がチラつき、ぬこみちゃんがフライパンを振ってる。 ぬこみちゃん「おはよ、拓哉さん! ほら、朝ごはんだよ! 今日はスクランブルエッグとベーコンなん        ぬ!」  リボンを揺らし、香ばしい匂いの皿をテーブルに置く。 拓哉「お前、いつも悪いな……ありがと」  俺は感謝を伝え、フォークで卵を口に運ぶ。シンプルな味が腹に収まり、今日への決意を静かに固めて いくる。  歯を磨き、私服に着替える。デニムジャケット、黒のTシャツ、チノパン。思い出の小学校へ向かうた め、アパートを飛び出す。外はまだ暗く、秋の冷たい空気が頬を刺す。  こんな時になって、二人の思い出が溢れ出してくる。  小学生の頃、一樹と初めて会ったグラウンド。俺が彼のピッチングを褒め、笑い合ったあの夏。バスケ の試合で応援してくれた一樹。ビデオレターの裏切り。そして、一姫の愛。足が止まりそうになるが、俺 は自分に言い聞かせる。 拓哉「ここで足を止めれば、俺はまた一樹を裏切る。一姫を、裏切る」  拳を握り、グラウンドへ急ぐ。  小学校のグラウンドに着いたのは5時前。誰もいない土のフィールドに、朝霧が薄く漂う。俺はフェン スにもたれ、三十分待つ。5時半過ぎ、遠くから足音が聞こえ、茶色いショートヘアの一樹が現れた。カ ジュアルなパーカーとジーンズ姿。ニヤけた笑顔はなく、どこか寂しげな目で俺を見る。 一樹「よ、拓哉。来てくれたな」  彼の声に、俺は一瞬、一姫の柔らかな口調を思い出す。 拓哉「そういえば、一姫もこんな感じで現れたっけ……」  内心で、一樹と一姫の繋がりを実感する。彼は俺の親友であり、一姫でもある。  一樹はポケットから『同位体情報上書き機』を出し、静かに言う。 一樹「拓哉……俺、消えるよ。一姫として生きることを、俺自身が選んだ。お前との友情、グラウンドで    の思い出、全部宝物だった。でも、俺の罪、寂しさ、全部置いて、一姫ならお前を幸せにできる」  彼の声は震え、目に涙が滲む。俺は拳を握り、止めたい衝動を抑える。 拓哉「一樹……お前がそう決めたなら、俺は受け入れる。親友として、お前の選択を信じる」  声が詰まる。一樹は小さく笑い、彼は機械を手に、ボタンを押した。 一樹「拓哉、ありがとな。じゃあ……さよなら」  ピカッ! 眩い光がグラウンドを包む。  光が収まると、そこには一姫がいた。ショートボブの茶髪、カジュアルなTシャツとスカート。彼女は 突然泣き出し、声を詰まらせる。 一姫「たっくん……一樹、ほんとに、いなくなっちゃった……」  彼女の涙が地面に落ち、俺は黙って彼女を抱きしめる。彼女の震える肩、温かい体温が、俺の心に一樹 の最後の笑顔を刻み付ける。友情の終焉、俺は一樹を永遠に失った。だが、一姫の愛がここにある。 拓哉「一姫……俺、お前を愛していく。一樹の分まで、俺と一緒に生きてくれ」  俺は彼女の髪を撫で、誓う。  彼女は俺の胸に顔を埋め、小さく頷く。 一姫「たっくん……あたし、たっくんと、ずっと……」  朝霧の中、俺たちは抱き合ったまま立ち尽くす。一樹との思い出は終わった。でも、一姫との未来が、 ここから始まる。  もう決めた――一姫と、前に進む。 ■■END & TO BE SADNESS DAYS■■