昼のカフェテリア、厨房内はようやく一段落という空気になり、各々担当の作業をこなしていた。
「おう新入り。今日もなんとか乗り切れそうだな？」
「新入りはやめてくださいよ…そうですね、あともうひと勝負…ですかね？」
新入り何ヶ月目ですかと苦笑する彼に向けて呵呵と笑う先任の調理師。そうかもうそんなに経ったのか。
笑顔の為に頑張れると豪語した若造も、今ではこの職場の一端を担うようになっていた。
毎日毎日変わらず繰り返す鉄火場での戦い。安定している…しかし凝り固まっているとも言える毎日に彼は少しだけ変化をもたらしている。
現場で働き続けた自分と違い、新人…ほんの少し前まで学び舎にいたであろう彼の視点は、浅慮ではあるが斬新でもあった。
メニューの考案から材料の歩留まりの管理まで様々な意見まで、意見を出しては突っ込まれる。
打たれても懲りずに出続ける杭のような彼を嫌うものはいなかった。

「朝はパン派の子も、５人のけっぱれ四天王の皆ももう食べ終えましたね。」
「あぁ…今日は卵が沢山出たな…まだ在庫は十分か？」
「そうですね…今のペースだと次発注する量はこんなもんですかね？」
「用意がいいな…そうだなこれで…あー違うぞ。今からだと届くのが３日後だからもう少し見とけ。」
「そうでしたね。ありがとうございます。」
「それにまだどうなるかわからん。今日の嵐が済んでからだな。」
「…ですね。」
そう。今日はまだ訪れていないのだ。可愛らしい芦毛の怪物が。
「…なんか今日はいつもより遅いですね？」
「何かあったのかな…心配だ。」
「そうですね…解凍しちゃった食材、夕飯うまくで使い切れますかね？」
「そっちじゃねえよ！あの子の事だ…よ…？」
誰かが気づいたのか、厨房の空気が変わった。彼女が訪れたのだろう。

「今日は遅くなってしまった…まだご飯が残っているだろうか…。」
「すまないなオグリ…なにせ突然の事だったもんだからさ。」
「いいんだトレーナー。私も驚いたが…キミも芦毛だったんだな。」
「いやぁそれはどうだろう。女神様にでも聞いたほうがいいんだろうか…。」
談笑しつつ歩いてくる芦毛の怪物。そしてその隣には一回り大きな芦毛のウマ娘がもう一人。
初めて見るウマ娘だが、既に食を扱う者のソウルが警鐘を掻き鳴らしている。アレは同種だ。
「なにせ突然ウマ娘になってしまっただろう？驚いて朝飯も食べてなくてね。」
「なっ…それはいけないぞトレーナー。ご飯は毎日三食以上は食べないと人は生きていけないんだ。」
遠くで誰かの叫びが聞こえる。警告、対象は朝食を食べていない模様。繰り返す対象は―――
他人事のように感じつつも、厨房の火では無いなにかによって熱せられた肌に汗が滑る。
和気藹々とメニューを眺める二人の後ろ、見たこともない４本脚の怪物か嘶いていた。
「「あぁ…お腹が空いたなぁ」」

その日、厨房は過去最大の戦果を遂げた。そして後日、一枚の用紙が一人のトレーナーへ届けられた。
食堂より怪物トレーナーさんへ。『要予約』