おかしい　トレーナー室に戻ったがなんだか様子がおかしい
以前購入したオグリキャップのぬいぐるみが無い
正確には無いというか置いてあった場所で巨大化している
胸の前に「ぬいぐるみ」と書かれたプラカードを持った…等身大のオグリが座っている
タマモクロスにでも何か吹き込まれたのだろうか…耳が動いたと思ったらこちらを見ている…どうしたんだオグリ
「トレーナー、私は知ってしまったんだ…君は私のぬいぐるみを大事にしているそうだな」
当然だろう。応援の証として一緒に買ったぬいぐるみだ。大切にトレーナー室に飾っているし家にも一個ある
「家にもっ…何ということだ…これは由々しき自体だ」
ぬいぐるみになにか不備があったのだろうか…人気のグッズとして大量に生産販売されているし不良品があってもおかしくはない
「クリークのトレーナーから聞いたんだ…トレーナーが私のぬいぐるみを抱っこしたまま仕事をしていたと」


ぬいぐるみとはそういうものだろう？仕事中に考えが纏まらない時や手持ち無沙汰なときには膝の上に載せていることもよくある
スーパークリークやタマモクロスのトレーナーとは良きライバルとしてお互いに話し合うことも多い、互いのトレーナー室に入ることも時々ある。クリークのトレーナー室は何故かいつも入れてくれないし厳重に施錠されているが
「…本当だったのか」
オグリの目が宙を泳ぐ。先日出禁になった店の隣の店に向かったらシャッターを閉められた時と同じ表情だ
「なあトレーナー、私は実はぬいぐるみなんだ」
そう言いながら先程から持っているプラカードを高々と掲げる。持ち上がった制服から腹が随分はみ出ているので明日からのトレーニングメニューを一部修正した
そのポーズのまま真剣な表情でこちらをみている。こういう時のオグリは梃子でも動かないので覚悟を決めた
「だから私を抱きながら仕事してくれ」ドアの外で「ぴぇ」と声がした


先々のトレーニングメニューを組み立てる。前のレースでの課題を列挙し、次までに改善したい点に優先順位を付け、ノートに纏めていく。膝から腹にかけて心地よい重さを感じる
「なるほど…次は中距離のレースだな…ほら、左手が空いているじゃないか」
ノートを抑えていた左手が持ち上げられ、オグリの頭に載せられた
「ふふ、さあ撫でてくれ。ぬいぐるみは撫でられるのが仕事なんだぞ」
優先事項として最初に思い浮かぶのスパートを駆けるタイミングだろうか。適当に左手を左右に動かすと彼女の香りが鼻孔をくすぐる。腹の前で尻尾が暴れ始めた。
「うん…あったかい…これは病みつきになりそうだ。そうだトレーナー、さっき売店で飴を買ってきたんだ」
そう言いながら今にも爆ぜそうな鞄を机の上に置き、オグリは飴を取り出し始めた。色とりどりの巨大な飴玉の包みが机を埋め尽くすのに時間は掛からなかった。ノートは飴群に沈んだ。


「トレーナーは何味がいいだろうか…私のオススメは全部だ」
オグリ、ぬいぐるみは飴を食べないぞ
「そうだったな…だが実は私はぬいぐるみじゃないんだ。む、手が止まっているぞ」
5つほど飴玉を頬張った元ぬいぐるみが頭を押し付けてくる。長い芦毛が首をくすぐって来て笑いが堪えられなかった
「どうしたんだトレーナー。なにかおかしなことがあったのか？」
お前といるとおかしなことばかりだ。それにああ、右手も空いてしまったな、どうしようか
「そうだな…両手が空いたなら抱っこが出来るぞトレーナー」
名案だなと、頭を撫で続けていた手を回してオグリを抱える。両手に彼女の両手が添えられた。
全体重をこちらに預け、彼女は深く息をつく。心地よい体温と優しい香りに全身が覆われていくが若干重い
「ふふ…なあトレーナー、ぬいぐるみより私の方がいいだろう」
鼻息をふんすとならす彼女に対し、腹を揉んで返事をした。飴玉の没収を考えたが恐らく誤差だろう
今後の予定をすべて脳裏から蹴り出し、今はこのぬいぐるみを掻き抱きたい衝動と戦おう


「タマ…この間はありがとう」
「ななななんのことやオグリ！ウチは何も知らんで！」
「お陰でトレーナーにずーっと抱いてもらえたんだ」
「そんな報告せんでええて！コラ！お腹を撫でるのをやめーや！」
「あぁ…トレーナーの（手）がとても暖かくてな…とても満たされたんだ」
「ああぁぁぁオグリが！オグリがおかしゅうなってしもたぁ！」
タマモクロスのやる気が下がった