キングと共に歩み始めて結構な時間が経った
同期と競い合い、URAではセンターを勝ち取り、その後も邁進を続けている
王は戦場を選ばない、戦場が王を選ぶのだとあらゆるレースに挑み続け、勝つ時もあれば負ける時もあった
その全てのレースに置いてキングは注目を集め、結果を出してファンを沸かせ続けた
今日はオフの日で、彼女と一緒にテレビを見ている。キングの母が出るので見るようにと電話があったのだ
題目はキングヘイローの母への密着取材というもので、一流ファッションデザイナーとして戦う彼女の母親を追うドキュメンタリーだった
「お母様はやはり一流ね…」
彼女は自慢げに母親の手際、デザインの素晴らしさを私に解説してくれていた。
番組の後半に、キングヘイローの母親としてキングについてあれこれと質問をいくつか聞かれていた
当たり障りのない昔話、それでも彼女は何を言われるのかとハラハラしているようだった
最後に娘さんへメッセージはありますか。ときかれると
「悔しいですね」
彼女によく似た美しい顔にから不似合いな言葉が飛び出て、私とキングは目を見合わせた。
「昔は私の娘として注目され、あなた方に追っかけられていたあの子を見ていたのに。」
インタビュワーのバツの悪そうな顔が映る。キングは瞬きを忘れて画面を見ている。
「私があの子の母親としてあなた方に追っかけられる日が来るなんて。太陽と月が入れ替わってしまったようで。」
キングがレースで負けた時の表情と同じだった。敗北を認めた上で次は勝つと宣言し高笑いする彼女と同じ目だった。
「困ったものね、娘のお陰で最近は色んな方とお話するのだけど、皆あの子のことばかりで…。私を見てほしいって思ってしまう。私だって一人のウマ娘なんだぞって。ターフに戻って証明したくなってしまうわ。血は争えませんね。」
画面下に番組のスタッフグロールが流れ始め、音楽が切り替わる。横でキングが変な声を出している。
「それに連絡も中々寄越さないで…あなたはまだまだ若い。レースが全てではありませんよ。いいですね。たまには帰ってきなさい。それから…」
急に険しい表情に切り替わり、カメラを睨みつける。キングが変な声で驚く。
「私を娘のダシにするのは結構ですが、娘について変なことを報道したら承知しませんよ。いいですね。」
カメラとスタッフたちが同時に頷き、画面は暗転しエンディングに切り替わった。

「おﾞかﾞっﾞ…ﾞおﾞかﾞあﾞさﾞまﾞがﾞっﾞ…ﾞ」
キングが顔をくしゃくしゃにしてこちらに抱きついてくる。何も言わずに抱き返し、頭を撫でる。
認めて貰えたのだろう。この親子らしい随分と面倒なやり方で。
キングの電話が鳴り始めた。彼女は画面を見てまた泣いた。
「むﾞりﾞぃﾞ…ﾞおﾞねﾞがﾞいﾞでﾞてﾞぇﾞ…」
相手は…母親だった。もしもし？
「あら、手間が省けたわね」
嫌な予感がする。
「見ていただけたようですね。大人気なくてすみませんね…いつも娘がお世話になっております。」
いえいえこちらこそ…娘さんもとても喜んでいますよ
「まだまだ手が掛かっているようですね。でもあなたに託したのですから、信じていますからね。」
電話越しでも十二分にプレッシャーを感じさせつつ、彼女は続けた。
「ところであなた、この間の優勝インタビューの時のネクタイ、あの子が選んだものでしょう？」
どうして分かったんだろうか…答えを濁すのも無駄だろうと素直に肯定する
「昔からあの子は変わらないのよね…選ぶ目はあるのだけど周りが見えていないの。それで今度のお休みはいつかしら？予定を開けておいて下さる？」
わかりましたが…何かご用件があるのでしょうか。キングと一緒に一度ご挨拶に伺いましょうか
「あなたのスーツを一つ仕立てさせて頂戴。あのネクタイに合うスーツをね。」
衝撃で返事もままならない。それよりキングの方をお願いしたいのですがと伝えたが
「それはあの子が作って下さいと言ってきた時と決めていますから。」
似たような文言をあなたの娘が言ってましたとは言えず、生返事で承諾した。
「詳しい予定は…また追って伝えますから。それとあの子に代わって下さる？」
そのままだいぶ落ち着いたキングに電話を渡す。彼女はおずおずと受け取りスピーカーフォンに切り替える。
「もしもし？お母様…？」
『あなたのトレーナーさんを今度お借りするわね』
「は？」
『それではまた。ちゃんと睡眠はとりなさい。私もトレーニングをしようかしらね。』
通話が切られた。すぐにキングは電話を掛け返すが繋がらない。また涙目に戻った彼女はこちらに詰め寄ってくる。
「ちょっとあなた！私のトレーナーでしょう！お母様と何を話したの！どういうことなのかしら！」
答えていいものか迷いつつ。次の休みの予定を二人で考えることにした。

キングヘイローは彼女の娘だった
彼女はキングヘイローの母だった
私のイチオシは後者です