夜ふかしをし過ぎたようで瞼が重たい。
トレーナー室で一人で書類作業を行っていたが、どうにも集中力が途切れた。
担当ウマ娘と遅くまで下らないやり取りをスマホで行っていたからだろう。
もう寝るぞと送る度に引き止めてくるのでやめ時が中々見つからず、最後には寝落ちしていた。
朝目覚めた時にスマホの通知には『寝ちゃったかな？おやすみ☆』と書かれたメッセージが残されていた。
いっそ軽く寝てしまおうかと、シャツを緩めて普段は愛バの昼寝用ベッドと化しているソファへと転がった。
程よい柔らかさ座面と、枕として丁度よい高さの肘置きが身体を夢の世界へと誘惑する。
すぐにも瞼が重くなり、自分の吐息が寝息に変わりつつある時、扉が開き、セイウンスカイが入ってきた。
「やあやあトレーナーさ…あり？」
珍しく自分からトレーナー室に来たスカイ。だが今日は私がサボる番だ。目を閉じたまま惰眠を貪らせて貰う。

「とれーなーさーん？セイちゃんですよー？昨日はお楽しみでしたねー？」
囁くようにそんなことを言いながら、小さな足音がこちらへと近付いてくる。
「んーむ。私はもうお昼寝しちゃったしなぁ…はてさて…？」
そう言いつつも彼女は私を軽く揺り動かす。だが眠い。だから今日は私が逃げる番だ。
「寝てる…寝てるねぇ…よぅし☆」
ソファで転がっている私の前面に、柔らかくて温かい何かが潜り込んでくる。彼女だ。
「ほーれほーれ…セイちゃん抱き枕ですよーぅ」
私を起こさないように注意しているのだろう。小さな声でそう言いながらも彼女は私の腕を取り、自分の身体に巻きつける。
「んしょ…ふぅ…極楽極楽☆」
彼女の耳と髪とが私の顔の前で踊り、柔らかな香りが鼻腔をくすぐる。当の本人はお構いなしに身体を私に擦り寄せる。
鼻歌を歌いながら私の両手をほぐし、指と指とを絡ませて遊ぶセイウンスカイ。流石にこの状況で眠れはしない。

「とれーなーさーん…んふふぅ～☆」
ご機嫌で私の手を握りしめながら、ソファで身体を揺さぶるセイウンスカイ。だが狭いソファに二人も寝ていては動くにも限度がある。
「んふ、んふふぅ～…あっ」
身体を揺らし、半回転した先に座面は無く、転がり落ちそうになった彼女を、私は咄嗟に抱き戻した。
「大丈夫か、セイ。」
「ぇ…？とれーにゃーしゃん…いつから…？」
目と鼻の先に彼女の目と鼻がある。危なかった。落ち方によってはケガに繋がりかねない。
「………最初から。」
「…だいじょばない…です…。」
夕日より真っ赤になった彼女は、そのままプシューと音を立てて動かなくなった。どうしよう。


「全部…忘れて下さい…。」
人の胸に顔をうずめてそんな事を言う。無茶を言うな。
「私が昼寝しようとしたら君が来たんだよ、セイ。」
「なんで寝た振りなんてするのさぁ…あぁぁー何処！？トレーナーさんのリセットボタンはどこー！？」
「やかましいっ」「むごぅっ」
暴れるセイウンスカイをキツく抱きしめて黙らせる。彼女の鼻息が胸元をくすぐって心地よい。
「全く…私は昼寝したかったんだ…丁度いいか。」
「ぅえ…？」
「枕なんだろう…セイちゃん抱き枕。」
「あー！あー！きこえませーん！…んん？」

こちらを見上げる彼女と目が合う。少ししてニタリと笑う。
「んふふ…おや？おやおやぁ？トレーナーさんのお顔が赤いですねぇ？」
「…うっさい」
「むふ～☆さぁさぁトレーナーさんっセイちゃんをどうぞ堪能して下さいねぇ～？」
調子にのってこちらの胸に頬ずりしてくる愛バ。本当に可愛らしい奴。
腕の中で暴れる彼女の背中をそっと撫でる。
「セイ。」「ひぅ！？」
「抱き枕なら抱き枕らしく大人しくしなさい。」
「…は、い……。」
また動かなくなった彼女を抱きしめながら。いなくなった眠気を探す。どうしよう。

「あの…トレーナーさん。」
「どうしたセイ。」
胸元から聞こえる愛バの声。
「このままお昼寝…するんですか？」
「…出来るわけ無いだろう。」
「でもトレーナーさんは…眠いんですよね？」
「誰かさんのお陰でね…。」
「もう、トレーナーさんだって楽しくお喋りしてたじゃないですか…うし！」
身じろぎする彼女を開放すると、起き上がったかと思えば私の顔めがけて座ろうとする。

上体を起こして彼女の尻を避けると、頭に手が置かれ、そのまま下へと戻され、彼女の太腿に着地した。
「ささ、トレーナーさん、セイちゃん枕マークツーですよっ！」
「…手すりのほうが柔らかむごぁぅ」
首を変な方向に曲げかけられて戻されて、視界には天井と愛バの微笑が独占する。
「聞こえませんねぇ？さぁ、どうぞおやすみなさいなトレーナーさん」
そっと頭を撫でられる。逃げたはずの眠気が彼女の香りと一緒に戻ってきた。
「…あぁ、おやすみ、セイ。」
「はい、おやすみない。」
瞼を閉じると、意識はすぐに溶けていった。
「また夜ふかし、しましょうね。」