押し付けるように仕立て上げた担当トレーナー…だというのに彼は私を何処までも支えてくれた。
中央の激戦区で戦い抜き、勝ちも負けも十二分に味わい、最後にはURAファイナルの栄冠を手にした私。
新人トレーナーとサボり癖ウマ娘とのちぐはぐなコンビはいつの間にか、若き天才と稀代の優駿とまで評される程になった。
だというのに彼は相変わらず私と一緒に釣り糸を垂らし、雲が流れるのを待つのに付き合ってくれる。
「ねえねえトレーナーさん。セイちゃんが言うのもなんだけどさ…こんなことしてていいの～？」
優秀な成績を叩き出した私はドリームレースへと歩を進めているが。暫くの猶予が出来た。
だが彼には次々と新たなウマ娘育成のオファーが届いている。チームトレーナーとしての職務の提案も来ているようだ。
「大丈夫大丈夫。今日はセイウンスカイのトレーニングって予定にしてあるから。」
「やれやれ、悪いトレーナーさんだにゃー…セイちゃん心配。」
口ではそう言いつつも、心の中では喜ぶ自分に苦笑する。彼と一緒にいる時間は何より愛おしい。
だがいつか、私と彼は離れる時が来るだろう。担当とはいつまで担当でいられるのだろうか？知らないし考えたくもなかった。
そうなる前に、彼との距離を縮めたい。二度と離れられないほどに。
だから彼の好意を確かめながら、彼との距離を縮めながら、彼が私のものになるよう策を練るのだ。
「こうして二人で釣りするのも何度目ですかねぇ～。」
「さぁねぇ…何回サボったかなんて覚えていたくはないなぁ私は。」
「んもー釣りはサボりじゃないって言ったじゃないですかぁ…大事なトレーニングですよトレーニングぅ。」
そう言いながら隣に座るトレーナーさんのお尻を尻尾でつつく。
このじゃれ合える時間がずっと続けばいいのに。私の隣にいる雲より大きな鯨さんはどうやれば釣れるんだろう。
「はぁ…釣れませんねぇ。」
「今日は下調べ無しで来たからなぁ…出たとこ勝負もたまにはいいもんさ。」
「セイちゃん的にはそろそろ別のポイントに行くのも手かなぁと思うんですよね。それに…」
「それに？」
「こうして釣りしてるより、トレーナーさんには行くべきポイントがあるんじゃないですかねぇ？」
「……」
「…えと…ほら！トレーナーさんもいろんなお話とか来てるんでしょう？私だけ見てちゃ駄目…なんですよ？」
釣り上げたいけど、自由に泳いで居て欲しい。
矛盾した気持ちが口から溢れてしまった私は、取り繕うように言葉を続けようとして、釣り竿を握りしめた。
「…なあスカイ、呼吸をするために使う胸の両側の器官って何だっけ？」
「…肺？」
急に何を仰いますかトレーナーさんは。
「もっとクエスチョンじゃなくエクスクラメーションな感じで頼む。」
「…はーい」
何となく覚えのあるやり取り。私がトレーナーさんを掻っ攫ったときのやり取り。
「もっともっと！」
何が狙いだろうかにゃーと考えるよりも早く、トレーナーさんは捲し立てる。
「はいはい！はーい！」
「一回でよろしい！」
「はい！」
「結婚しよう」
「は……ぃ…？」
いまなんと？その指輪は一体どこから？
「…声がちいさい…ぞ…？」
「…はいっ…はいっ！」
胸が苦しい。でも肺を絞り出すように私は返事を繰り返す。
よかったと呟くと彼は私を抱きしめる。彼の匂いに包まれた顔があつい。
景色が揺らぐのは胸が苦しいから。頬が温かいのは喜びが溢れているから。
暫くそのまま、彼の胸に抱かれて私は泣き続けた。

「今日は大物が釣れたなぁ…。」
空のクーラーボックスに脇に抱えながら彼は言う
「大物過ぎてこれには入りませんにゃー…でもいいんですかトレーナーさん。」
「いいっ！」
「うわぁ言い切った。これからのこととか考えてます？将来とか。」
「仕方ないだろう。コレ以上の大物なんてあるもんか。」
「やれやれ、セイちゃんより良い子なんていくらでもいると思いますけどねぇ。」
「まず良い子ってジャンルじゃないからなお前さんは。」
「あー！そういう事いいますー！？セイちゃんショックだなー！」
やれやれと肩を竦めるトレーナーさんの腕に飛びつき、指を絡める。
茜色に染まった雲を眺めながら、私達は歩き始めた。
…セイちゃん、釣られちゃった☆