「やあやあトレーナーさん、お早いお着きですね～」
待ち合わせの約束の時間の３０分前、駅前で横合いからセイウンスカイはやってきた。
「おっといけない…こほん。…ごめん、待った？」
仕切り直すように上目遣いにわざとらしく首をかしげる。はいはい待った待った。
「んもートレーナーさんはテンプレというものを理解していませんなぁ！そんなんじゃ駄目だよ～？」
いつもどおりの可愛らしい反応。はいはい今来た所ねと言い直す。彼女のを待つのは慣れっこだ。
「うんうんよろしいっ！さて、まだ時間あるけどどうしよっか？ここは一つ釣りでもどう？」
何処に行くつもりなんだと苦笑し、見ていたスマートフォンで時刻表を確認する。予定より早い便に間に合いそうだ。
出発を早めてもいいだろうと、予め買っておいた切符を渡した。
「おやおや？用意がいいですなぁトレーナーさん。ではその働きに免じて今日はセイちゃんとデートする権利をあげるわっ！」
はい喜んでと返事をし、普段以上にテンションの高い彼女と一緒に駅のなかへと足を進めた。

「トレーナーさんはこっちとこっち、どっちが行きたい？私？いやぁ決められないんだよねぇ」
目的地へ向かう電車の中、パンフレットを広げ、行き先を相談していた。
肩を寄せ合い紙面を睨んでいるが中々決められなかった。そうしているとセイウンスカイは大きく欠伸をした。
「ふぁ～。やや、これは失礼トレーナーさん。実は昨日中々寝付けなかったんだよねぇ」
昼寝ばかりしてるからだぞとからかうと、彼女は少し怒った顔で続ける。
「ちーがーいーまーすー。トレーナーさんとのデートが楽しみだったんですぅー。セイちゃんだって乙女なんですよー？」
はいはい光栄ですよと微笑む自分もまた、欠伸をしてしまう。それを見た彼女はにたりと笑う。
「…おやおや？トレーナーさんも？いやー参りましたねぇ！セイちゃんも光栄ですよっ」
むぅと黙って目を反らす。確かに私も楽しみで、中々寝付けなかった上に目覚ましより早く目が冷めたのだ。

「…ふふっ、どこにいっても楽しめそうですねぇこれは…ふあぁ…」
目的地は郊外だし、まだまだ電車に揺られる必要がある。到着まで昼寝したらどうだと伝える。
「それは素晴らしい提案ですねぇトレーナーさん…ではではセイちゃんは一足先に夢の国に行ってきます…」
そうするといい。着いたら起こすさと言うと、彼女はまるでいたずらをするように微笑んだ。
「…寝てるセイちゃんに変なことしちゃあ駄目ですよ？」
はいはいしませんよと軽く受け流し、窓の外を見遣る。都市から郊外へと景色が移り始めている。
到着したら少し早いが何か食べて、それから彼女が好きな魚でも見に行こうか。楽しみだなと思い耽っていた。

「…様、お客様、どうぞ起きて下さい。終点ですよ。」
乗務員のウマ娘の方に揺り起こされ、居眠りしていた事に気付く。
幸い目的地は終点だったので礼を言い、そこで気付いた。右腕が動かない。
「いえいえ、お連れ様も起こしてあげてくださいね。良い一日を。」
そう言って乗務員は笑顔で去って行き、停車した電車の中、私と右腕に抱きついたまま寝息をたてる愛バが残された。
「んー…んぅー…Zzz…」
着いたぞ、起きろと右腕を揺らし、左手で彼女の頭を軽く撫でる。
「んふ…んふぅ…Zzz…」
すると彼女はより強く右腕に抱きつき、体重をこちらへ預けてくる。

「んんー…もう食べられないよ…Zzz」
…起きてるだろセイ
「ん゛ん゛っ」
寝息のリズムが派手に狂った。正面の窓に反射する彼女の口元は引きつり、頬が紅潮していく。
「ん゛っ…こほん…セイちゃんは…ネテマスヨ…？」
駅の方々のご迷惑になるだろうと言いながら無理やり立ち上がり、右腕ごと彼女を引き起こす。
「わぁーっ、おっはようございますトレーナーさん起こし方が派手ですねぇ！」
白々しく挨拶をするセイウンスカイに苦笑し、そのまま一緒に電車を降りる。
「いやぁお互い出発前の準備睡眠は完了ですねぇ。ではでは～、セイちゃんと一緒に大漁目指してしゅっぱーつ！」
右腕に張り付き気合を入れるまだ赤い愛バに引っ張られ、少し残った瞼の重みを取り払った。
改札を通り抜け、私達は結局決まらなかった行き先を二人で相談し始めた。

ファウストは、メフィストフェレスに心を売って明日を得た
マクベスは、3人の魔女の予言に乗って、地獄に堕ちた
スカイは逢瀬に、己の運命を占う
ここメジロシティで一心同体を得るのに必要なのは、アシゲニウムと少々の覚悟
次回「うまぴょい」
メジロの商売には春の匂い



