彼がちゃんと付いてきているか振り返る。
夜空の下、雑踏の中、石畳の上で歩く私はどうしても目立たない。
軽く見上げれば目が合う。眦を動かし微笑み返して来る暑苦しい顔。
できるだけ面倒くさそうな顔をしてから前を向く。漏れ出た吐息はやれやれ半分嬉しさ半分。
昔の私ならここで逃げてやったかもしれないなとか考えながら、今の私の足運びにもう一度息を吐く。
通り過ぎた店から漏れた温かな風が耳をくすぐり、その後また冬風に冷やされてむず痒い。
雑音だらけの街の中、スイスイ進む私の後ろで、似たようにズンズンと進む彼の気配。
それが私の心の扉をノックもしないで、入り口で右往左往しているようで焦れったい。
なんでちょっと遠くにいるのさ。
振り返り一歩、彼も一歩。
互いの距離が0になったところでまた振り返り進み始める。
どうしたんだと書いてある優しい顔を鼻息で吹き飛ばし、私は二歩、彼は一歩進む。
互いの距離は0のまま、当初の目的地を忘れたまま、私は本当の目的地に辿り着いた。

俺は闇のトレーナー
タイトレの聖なる一歩半は二人で一歩ずつの距離なのではと思ったら妄想が止まらなくなった助けて欲しい