「お疲れ様、フジキセキ」
「ありがとうトレーナー、段々暑くなってきたね」
クールダウンを終え、身体をほぐしながらトレーナーの元へ。
ひんやりとしたタオルを受け取り顔を包む。今日のメニューはここまで。
「そうだね…そろそろプール中心のメニューに切り替えて行きたいな」
「そうかい、じゃあプールの予約は早めにしておかないといけないね」
「そこは抜かり無く」
「それでこそ私のトレーナー」
他愛の無い普段のやり取り。受け取ったドリンクで軽く喉を潤し、トレーナー室へ。

「所でトレーナー何か私に隠していないかい？」
「…あー、あぁ」
「へぇ…駄目じゃないか、いつもどおり私を見ていてくれないと」
今日の彼の指導はいつもどおり的確だったが、その視線は何となく私から逸れていた。
悪戯心に火を灯した私は、微笑みながら彼の隣へと座る。
「すまないね、だが君のせいでもあるんだよ」
「ほう、では教えて貰いたいね。私が何をしたんだいトレーナー君？」
身に覚えが全く無い。今日も昨日も一昨日も、普段どおりの日々だったはずだ。
彼の耳元でほくそ笑む私を横目に、彼はカーテン越しの夕日を眺めながら続ける。
「私の夢にね、君が現れたのさ。」


「私が…夢の中の私が何かしたのかい？」
微笑みを崩さないまま、私は茜色に染まった横顔を見つめる。
「いつも通りの一日だった。トレーニングをして、ミーティングをして、また明日と学園を出る。」
「それはまた…夢の中の私も優等生だね」
思わず苦笑する。彼は目線を落とし、彼自身の手を見つめていた。
「目覚めて布団の中で、変わっていない日付を見るまで夢だと思わなかったくらいさ。だから…」
「だから…どうしたんだい？」
「夢と分かっていたら出来たことがあったんじゃないかなと、自分の夢を反省していたんだ。」
「なるほど。で、キミは夢の中の私に何をしたかったんだい？」

窓から差し込む夕日で照らされた彼の顔が、もう少し赤くなったように見えた。
「それは言えないな」
またしても私の悪戯心は擽られた。
「言えない…か、では、私がその夢の続きを見たいといったら？」
そっと彼の手に私の手を添える。指先で彼の手のひらを弄びながら、私は続きを所望する。
「それは…お断りだね。」
「どうしてだい？」

彼の指が私の指をそっと包む。見上げると、夕日で濡れた彼の瞳が私を射抜く。
「夢の私に、先を越される訳には行かないからね。」
私の悪戯心は焼き払われた。参った。今世界で一番赤いのは私の頬だろう。
絡まった指が私の手を、腕を、そして私全てを引き寄せ、彼との距離が無くなっていく。
茜色から濃紺に移りつつある部屋の中、夢の続きが始まる。