おいスゲーもんを見ちまった…いや今私は見ている…食堂で料理の山が足を生やして歩いてやがる
雑多に混み合う食堂の視線を独占しつつそいつはこのゴルシちゃんのテーブルの前で止まり喋り始めた！
「すまない、相席してもいいだろうか。」
なんてこった…料理がテーブルを食うのかそれともこのゴルシちゃんを食べるつもりなのか？いやまてこの声はどこかで聞いたような…
「オグリ先輩じゃねーか！？」
「…？ああ、そうだが…何か変だっただろうか。」
「いやいやオッケーだぜ先輩！どうぞ座ってくれよな！」
「ありがとう。助かった…今日はいつもより混んでいるようだな。いただきます。」
テーブルがドシンと悲鳴を上げたかと思えばそこに設置された料理の山が雪崩を起こすように消え始めた。
右手にフォーク左手にスプーン！その2つと食器の間に生じる空腹状態の圧倒的喫食空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙！
相変わらずこの先輩の食事風景は魔法めいてるぜ…マックちゃんが真似て面白いことにならねぇかな今度提案すっか。
徐々に見えてくる先輩の髪の毛、おでこ、幸せそうな目…っと、いけねぇゴルシちゃんの料理が冷めちまうぜ。

味はうまいが何となく一味足らない昼食をつつくの再開したがそこでヒヒーンと来た。
ゴルシちゃんソナーに感あり！この足音は間違いなくトレピッピの足音だ…一緒に誰か歩いてるな？
会議だかなんだか知らねぇがこのゴルシちゃんを差し置いてトレピッピとの時間を占領するたあふてえ野郎だぜ。
とっとと料理を平らげてトレピッピをサルベージ！そのままドックに入渠し根性をメンテナンスと洒落込もうか！
いざ行かんと残った昼食をロックオンしようとしたところで違和感。眼前の山の雪崩が止まっている。
「オグリ先輩…？どしたんすか…？」
「………ん、いや、トレーナーが見えたんだ。」
「…ほっほぅ？」
なんてこった。花より団子の一着大本命なオグリ先輩が団子より男子ってか？
幸せモンがいるもんだなと視線を追えばトレーを手に歩く野郎が二人。片方はパイセンのトレーナーでもう片方は…
「トレピッピと一緒だったのか！」
「あぁ…そういえば会議とか言っていたな…キミのトレーナーと一緒だったようだな。」
私達と一緒だなと微笑むパイセン。料理の山の隣で綺麗な花が咲いたもんだと私も釣られて笑う。


さてさて料理を片したらトレピッピとめくるめくゴルシスター☆ウォーズを再開せねばと思えば何やら会話が耳に入る
「先輩、今日はありがとうございました。先輩の資料はとても参考になりましたよ。」
アタシの耳を擽る旋律が一つ。トレピッピは箸を割りながらオグリパイセンのトレーナーに感謝してるようだ。
「いやいや、キミの参考になったのだろうか…うちのオグリとゴールドシップさんではかなり違うと思ったんだが。」
オグリという単語が出た途端に正面のパイセンの耳が俊敏に動く。いい反応だなパイセン。
アタシ達ウマ娘の耳は中々に器用だ。少し離れた席の会話も聞き分けるくらい訳ないってもんさ。
今トレピッピを連れて行っちまうのは無粋ってもんだろう。ゴルシちゃんも観戦させて貰うぜ。
「全く違うからこそ参考になりますよ。あいつ…ゴルシの脚質は追い込みだけどそれ意外も何でもアリなんで。」
「何でもアリね…ふふふ、彼女はとても個性的だからキミもかなり手を焼いているようだね。」
「全くですよ。いきなり専属トレーナーになっちまった上にやりたい放題。本当に困ったやつです。」

なんだとぉ？と思いつつもトレピッピの声は上機嫌。こっそり視線を向ければどう見ても笑ってやがる。
「困った…ねぇ…そういいながらもとても楽しそうじゃないか。顔はまるで困ってないように見える。」
「ははは…隠せませんね。その通りです。あのじゃじゃウマな姫君と一緒にいると退屈する暇もない。それが仕事だってんだから天職ですね私にとっては。」
姫君？今姫君っつったかあんにゃろう。普段はゴルシンゴルシン呼ぶ癖に…。
「仕事ねぇ…だからってトレーニング計画書に無人島でサバイバルとか書いて提出されるのは流石に困るぞ。何かの隠語かと最初は思われていたんだから。」
「あはは…すみません先輩。でもアイツはそういうので成長するタイプなんですよ…日常をぶち壊すのがトレーニングなんです。」
「なるほどね…面白い。オグリはなんというか…とても素直だからね。」
前の席でんむっと喉を詰まらせる先輩が見える。可愛らしい仕草だ。

「それにしても参りましたね。今後のトレーナーとしての進路計画ですか…先輩は何かお考えがあるので？」
会議の内容はそういうモンだったのか。私達も大人も進路進路って面倒なもんだなぁトレピッピどうすんだろうな。
「うーん…一生オグリ専属じゃあ駄目なのかな。」
さらっととんでもねぇこと言うなあのトレーナー。周りのウマ娘ちゃん達が滅茶苦茶驚いてるしオグリ先輩すら食事を止めて視線釘付けになっちまったぞ。
「一生…彼と…一生…？うん、それは…最高だな…！」
食の魔神モードから完全に乙女の表情になって食事を止めたオグリ先輩。サンタさんもプレゼント考えるの一人分手間が減っただろうなこれは。
「先輩…適切な距離感ってやつ覚えてます？」
トレピッピが半笑いでツッコミを入れる。そういやあったなそんな話…むしろよく覚えてたなトレピッピ。

「勿論覚えているよ。だが私の周りではそんなものは…ぶち壊してしまった方がうまく行ってる気がするんだ。」
「あぁ…あー…はい、ソウカモシレマセンネ…。」
脳裏に浮かぶのはターフで抱っこしたりなでなでしたりしながら無双する魔王の微笑。一番参考にならないタイプだと思うがいいのかオグリ先輩のトレーナーさんよ…。
「それに君の方こそどうなんだい？黄金の船の船頭さん？」
「え？私はもう決めてありますんで。軽く勉強してますが難しいですね。」
「おっと、ちゃんと考えているんだね。聞いてもいいかい？」
「今度説明会に行くんですよ、JAXAの。」
「「…は？」」
オグトレとアタシの声がダブった。何いってんだアイツ。
「今日の昼からエントリー開始らしいんですがね、一般教養から未知の分野まで色々と勉強せにゃならないんで大変そうです。」

「いや、ちょっと待ってくれ。キミは何を言ってるんだ？」
「何って…宇宙飛行士を目指す話ですけども。」
「会議の後に何か呼び出されてモメてたと思ったけどそんな話をしてたのか…。」
おいスゲー事になってんぞ。アタシのトレーナーが宇宙目指し始めた。
オグリ先輩のトレーナーもなんて言えばいいか困るって顔に書いてる感じだ。
「先輩と同じような感じの反応でしたね確かに。でもまぁ約束しちゃったんですよね。」
「約束…？」
「ゴルシがね、100年後暇だったら宇宙行こうぜって言うんですよ。」
は？
「いや…それは流石に冗談だと思うんだが…。」
「でしょうね。だからこそ面白いかなぁと。」
「面白い…？」

「アイツが私を専属に選んだ理由なんですけどね、すげえ退屈そうにしてるヤツがいたからって言われたんです。
そんで引っ張り回されて気づけば何年も経ちました。気づけば何年もです。その間全く退屈しなかった。
出来なかったんですよ。私は黄金の船の船頭なんて大仰な名誉を貰いましたが…実際に先導してたのはいつもアイツだったんです。
それが嬉しくて…でもまだ物足らないんです。URAが終わって次はどうするか。ウマ娘としてレースで勝ち続けるのもいい。
でもゴルシは…多分それだけじゃあ退屈しちまう。エデン探しなんて言いながらレースに付き合ってくれてたアイツの世界に地球のターフは狭すぎる。
だから今度は私がアイツを先導してやりたいんです。100年後なんて言われましたが待ちきれませんのでね…5年、10年かかるかはわかりませんが宇宙くらいは連れてってやりたいんですよ。」
一気に捲し立てるトレピッピ。あーもう、何言ってんのあのバカ。

「……なるほどね。じゃあもう私は応援する事くらいしか出来ないな。」
「ありがとうございます。でもまだ先の事ですから…ゴルシにも内緒ですし。」
「そうか…約束かぁ…そういえば私も約束してた事があってね。」
「先輩もですか。」
「あぁ。私の場合は100年後じゃなくて昔なんだがね…昔近所で年下のウマ娘とよく遊んでいてね。」
前の席からプレッシャーを感じる。なんだろう振り向かねぇ方がいい気がするぜ。
「…トレーナーになる前ですか？」
「そうだね。丁度進路に迷ってる頃だった。彼女は走るのが好きな子でね。もっと早く走りたいとよく言っていて私もその手伝いをしたんだ。」
「それがトレーナーを目指したきっかけだったりするんですか？」
「結果的にそうなった…という感じかな。お互いまだ幼かったが中央のトレセンで再会の約束をしたのを覚えているよ。」
プレッシャーが強まった。いやこれはオグリ先輩の領域か？近くを通ったウマ娘ちゃんが悲鳴あげて逃げてったぞ。

「実はそれがオグリキャップだった…何てことは…出来すぎですかね？」
「…ふふ、どうだろうね。ただ彼女は鹿毛か栗毛だったような…それに名前も覚えているんだ…ハツラツと名乗っていたよ。だからはっちゃんって呼んでたな。」
プレッシャーが一瞬で消えた。どうしたパイセンと思えば彼女は食器をテーブルに置いて口を開けたり閉じたりしている。
小さく漏れるうそ…そんなまさかと言う声。紅潮した頬の上で揺れる瞳からは涙が溢れかけている。
アタシ達芦毛のウマ娘は小さい頃は毛色が違うことがある。人によっては栗毛や鹿毛っぽい事もあるがまさか…。
「オグリ先輩…もしかして？」
「ん…うん…うん……。」
ハンカチを渡すと頷きながら顔を覆うパイセン。なんてこったマジかよ。

「ハツラツ…聞き覚えは無いですね。ここの生徒だとしたら調べてみたりしたんですか？」
「いや…結果を知るのが怖くてね。それにウマ娘達は幼名を付ける子もいるから名前が変わっているかもしれないからね。」
「そうですか…いつか会えるといいですね。」
先輩が居ても立っても居られないって顔で飛び出そうとしてるがチョイとタンマだ。
「オグリ先輩。お代わりの用意はいいか？」

トレーナー二人が周りを気にせず周りが気にしまくる雑談をしつつ食事を続ける。
食器が空になり、一息ついた次の瞬間。ゴールドシップが駆け寄ってくる。
「よーうトレピッピ！会議は倒したか？次はアタシを倒す番だぜ？」
そう言うと彼女は自分の担当トレーナーを抱え、相席していたもう一人のトレーナーにウインクする。
「ってことでトレピッピは今からアタシとダートで潮干狩りだ！悪いな！借りてくぜ！」
「ということですので、失礼しますね、先輩。」
「あぁ、お幸せに。」
「っ…のぉ！そっちこそお幸せにな！あばよぅ！」
彼の食器を返却口に返しつつ、宝船は宝を抱えて去っていった。
二人が消えていった先を見ながら微笑んでいると、空いた席へと料理の山が歩み寄る。
「すまない…その…相席してもいいだろうか………お兄さん。」
「……どうぞ、はっちゃん。」
黄色い悲鳴が食堂を木霊する中。料理の山はゆっくりと崩れ始めた。