古文の授業は正直苦手だった。同じ日本語だっていうのに普段全く触れないジャンルだし、同じ日本語だけど別の国の言葉みたいな作りだし。
でも古文の先生は結構若い女の人で、大人しいけど丁寧な授業で好評である。私も分かりやすいと思う。
幸い勉強にはついていけているし、難しい所は大体チケゾーが泣いてハヤヒデが教えての流れで私も便乗して理解できたりする。
チャイムが鳴り教室のドアが開いた。そろそろいつもの丁寧な挨拶が聞こえる。
「みんな！こんにちわ！」
違った。全然違った。コブン？筋肉の種類か？って感じの野郎が入ってきた。
っていうか私のトレーナーだった。何やってんだアイツ。
「あの…トレーナーさん…ですよね？」
「あぁ！いつもの先生がお休みなんでな！今日は私が臨時で先生だ！免許もちゃんとあるぞ！よろしくね！」
「これから古文の授業ですけど…。」
そうだクラスメイトよハッキリ言ってやれ。アンタ体育教師だろ帰れって。
「そうだね！それじゃあみんな席についてくれ！」
当の本人はスルーして授業を始めようとしてる。いや察しろよ。
クラスメイト達も何が始まるのかとざわめいていたが静かになった。

授業は普通に進んだ。本当に普通に古文の授業だった。嘘ぉ…。
普段の先生以上に楽しそうに文章を諳んじてるアイツは割りと好評なようで、
小声で素敵かもとかさわやかとか聞こえて来て何となく気分がいい。やるじゃん。
私の席は後ろの方で、特に目も合うこともなかった。一応先生として授業だしマジメにやってるんだろう。
いつも通り騒がれても困るし。それでいいと思う。普段からこれくらい空気読んで欲しい。
「よし、今日の分はここまでだな！…思ったより早く進んだようだ。質問があれば受け付けるぞ！」
本の背表紙を愛おしそうに撫でながら教卓の上へ置くと、アイツは気軽にそんな事を言い放った。
多数の手が上がる。ここからは私達のターンだろう。どんな反応するんだろうと思いつつ頬杖をついた。
「先生は古文好きなんですか？すごい楽しそうでしたけど。」
「あぁ。大学で勉強しててね。今日の授業でやった所も懐かしかったなあ。」
フツーに質問に答えちゃってるじゃん。そこは授業で分からなかった所聞けとか言う所じゃん。
というか大学でそういうの勉強してたんだ。聞いたこともなかった。

「…古文って楽しいんですか？」
「あぁ！楽しいぞ！ただ授業用の古文は正直微妙だな！」
即答だった。そんでもって軽くディスった。
「もっと面白い…それこそ今で言うラノベみたいなやつも一杯あるんだ。ただ文章の形式と書き手の時代が昔なだけでさ。」
「へぇ…。」
「ただ最初はその古文を読めるようにならなきゃいけないからね…そういう意味では授業は外国語の勉強に近いかな。」
単語に熟語に文法に定型文に…と、教科書の先の所を指し示しながら説明を始めたが、急にそれが止まった。
「おっといかん、勝手に進めたら怒られてしまう。今のは内緒にしてくれ！すまない他に質問はあるかな？」
「先生って普段はトレーナーなんですよね？担当チームとかいるんですかー？」
「チームトレーナーじゃあないな！私は専属が一人だけだ！」
（先客いるのか）（絶対担当も熱血だよ）（羨ましい…）とかいろんな声が教室で囁かれる。
当のアイツはこっちに気づいてないのか質問した子にニコニコしてるし。もしかして私に気づいてない？

「トレーナーになるのに古文って必要なんですか？」
「うーん…試験のときの一般教養で選択するからそこはキミ次第かな！私はオススメするぞ！」
記述形式での回答の場合、ある程度回答に余裕があるとかなんとか。多分好きだからってのもあるんだろう。
「いつもの先生も古文が好きそうでしたけど…古文って先生とかにならないと将来使わなくなりませんか？」
勉強嫌いな子からの質問だった。教室が少し静かになった。かと思えばアイツは笑ってる。
「おー！いい質問だな！その通りかもしれないな！そうだな…」
笑って肯定した。それでいいのか教師。かと思えば黒板を見て少し悩んで何か書いている。
「これは何だろう？」
6/10と書いた板書を指差し、さっきの子へ問いかける。
「6分の10…ですか？」
「正解！つまりこれは分数だね！」
そう言うと6/10＝3/5＝0.6と書き足していく。

「今のは数学だね。他になにかここから連想できる事はあるかな？」
そう言うと再度6/10の所を丸で囲む。すると一人の子が手を上げて言った
「6/10…6月10日はイタリアがイギリスとフランスに宣戦布告した日です。」
「なるほどそうなのか！あ、いや、すまない。」
頭をかきながら黒板に追加でそれを書き足す。知らなかったんかい。私もだけど。
「さて…歴史を知ってる人が見たらこういう答えが出てくる。皆も他に何か思いつくものがあったら言ってくれ！」
数人が挙手して思いついたことを言ってはそれをアイツが板書に書き足す。
時の記念日だのミルクキャラメルの日だの6割だの60％だのと書き終えてアイツは笑う。
「こんな所かな…色んな答えが出たぞ！ありがとう！つまりこれが皆の勉強の成果なんだ。」
書き出された一つ一つの答えに丸をつけながら続ける。
「さっきのは私が大学で教授に言われた事なんだけどね…同じものでもいろんな見方がある。その視点を増やすのが勉強なんだ。さっきの6/10では古文の出番は無かったけどね！ひとまず学園の試験対策程度の勉強でも将来の知識の一つにはなるからさ…でもできれば好きになって欲しいな！」
「…はい。」

何の授業だっけコレ。アイツ古文の事になると早口になるのちょっとキモい。
「せんせー！それじゃあ！6/10ってなんで書いたんですか？」
他の子が元気そうに質問してる。そういやなんであの数字なんだろうちょっと待った。
「あぁ！私の担当ウマ娘の誕生日だ！最初にそれが思いついたんだ！」
即答しやがった。そうだった。皆が黄色い声を上げる。今だけは背が低くて助かった。顔があつい。
アイツにもバレてないみたいだし。早く授業終われチャイム鳴れ鳴ったぞよし。
「おっと時間だな。今日は楽しかったよ！皆勉強も頑張るんだぞ！それじゃあタイシン！また後でな！」
「……はぇ？」
空気が凍る。
授業が終わってからも質問攻めを行おうとしていたのだろう。
アイツに向かっていったクラスメイトたちが全員止まりこちらに振り返る。
当のアイツは笑顔で手を振りながら去っていった。気付いてたのか。
「………やば」
クラスメイト達の標的が切り替わった。どうしよう。とりあえず後で絶対蹴るから…！

俺は闇のトレーナー
タイトレいいよね…いい…したいのでこういうの誰か書いて書いた
満足したので失礼する
