ウマ娘とは適切な距離感を保つ事が大事だ、トレーナー達は教わるらしい。
何でも担当ウマ娘との距離感を誤りくっついちゃって結婚して辞めちゃうトレーナー結構いるらしい。
私達思春期のウマ娘達に理解を示し、トレーナー達が入れ込み過ぎて気が付いたらカップルになっていた、という事だとか。
でも仲良しなのはいいことだし別にいいんじゃないかなって思ってた。人生が長いって言ってもやっぱそういうタイミングは人それぞれだもん。
ただ少なくともわたしのトレーナーはそんなこととは関係なかった。
走る、はやく走る。わたしが一番大好きな『速さ』を、彼もまた追い求めていた。それだけではない。
トレーナーは私より速かった。いや、多分誰よりも速かった。人間はウマ娘に勝てないなんてそんなの嘘だもん。
いつものトレーニング。芝の上で最後のストレッチ、気合十分、ターボエンジン絶好調。
「風力、温度、湿度、一気に確認。」
私の隣で指を一本空に立てて、トレーナーはそんな事を言っている。
変な形のサングラスを目元へ運び、こちらへ振り返る。
「ハーッハッハ！さあ行くぞ！タンゴ！」
「ターボ！ツインダーボ！！」


模擬レース。結果は大逃げからの失速で9着。悔しい。
「負けたもん…。」
「負けたなあツインジェット。派手に負けた。どうして負けた？」
「ツインターボ！！…負けた理由？」
「そうだ。お前には何が足らなかった？」
サングラス越しにわたしの心を射抜くような視線を感じる。今日のレースでの敗因は何なのか。
コンディションは良かった。いつも通り全力で走った。最初は先頭だったのに途中からみんなに追いつかれた。
理由は分かっていた。途中からスピードが落ちていた。全力で走り続けられなかった。つまり足らなかったのは…

「スタミ」「そうだ！速さが足らなかった！」「…もん！？」
答えを言おうとしたら思い切り遮られた。足りなかったのは速さ？
「お前さんは途中からスピードが落ちていた。それは分かっているな？」
「…うん」
「スピードが落ちる前にゴールしたい。そのために必要なのは？」
「スピード？」
「そうだ！スタミナ切れで失速するのは自明の理すなわち失速する前にゴールしていれば何ら問題はないそのためにはさらなる速さが必要これは世界の常識！さあ走るぞタンゴもっと速くそしてついでにずっと速く！」
「わかったもん！」
こうしてトレーニングメニューに走り込みが追加された。
イクノがスタミナ強化してて偉いって褒めてくれたけど違うもん。ターボはスピードを鍛えてるんだもん。


初めてのGⅡレース。気合を入れて出走。結果は2着。すごく悔しい。
「惜しかったもん…。」
「惜しいが負けは負けだぞ二気筒！」
「…ターボだもん！くやしいー！」
「悔しいって事は速くなりたいって事だ。今回お前に足らなかったものは何だ？」
1着の子がインタビューで言っていた事を思い出す。今日のバ場状態を見て走るコース取りを工夫したのが大きかったって言ってた。
わたしはそんなこと考えていなかった。自分のことで精一杯で、状況判断のなんてまるで出来ていなかった。つまり足らなかったのは…

「賢ｓ」「そうだ速さだ！速さが足りない！」「…もん！？」
答えを言おうとしたらまた遮られた。速さが足らなかった？
「これを見ろ！お前に勝ったウマ娘の速さの原因を感じ取れ！」
レースの映像をトレーナーと一緒に観る。ターボを追い抜いた子の動きを観る。
「コイツはお前より速かった！正確には速く走れる道を見つけてそこを走った！」
「みち…？」
「そうだ！ゴールがあるならスタートがありそれを繋ぐ道があるその道を縮める事が出来れば世界は縮みお前は速くなる！さあ走るぞツインタワーもっと速く！そしてついでにスマートに速く！」
「わかったもん！」
こうしてトレーニングメニューに走りながらもっと速く走れるルートを見つけるクイズが追加された。本も読むようになった。
マチタンがお勉強してて偉いねぇって褒めてくれたけど違うもん。ターボはスピードを鍛えてるんだもん。


調整で出場したレース。丁寧に走って結果は1着。すごく嬉しい
「やった！やったよトレーナー！」
「やったなトリプル堤防！」
「つーいーんーたーぼー！！」
「ハッハッハ！喜んでるようだがまだまだ足りない！足りないぞ！」
「わかってるもん！ターボに足りないもの…そｒ」
「それはぁ！！」
「もん？！」
「体力パワーやる気根性持久力優雅さ勤勉さそして何よりもォ！」
「「速さが足りない！」もん！」
「ハッ！分かってるじゃないか！さあ振り返れそして学び走り刻め！お前の飢える魂に！」
「わかったもん！」
こうしてトレーニングとして久々にトレーナーと並走してバテバテにバテて疲れて次の日はトレーニングがお休みになった。
ネイチャが今日はおやすみなんだねとお菓子をくれたけど違うもん。ターボは頭の中でイメトレしてるんだもんお煎餅美味しい。

とうとう出場出来たG1レース。今まで培ってきたものを十全に発揮しても先頭を突っ走る。
走りに走ってもう後半。足が重いし息が苦しいし耳を引っ張る風が鬱陶しい。
さすがG1の精強なウマ娘たち。逃げの一手で走り続けても食らいついてくる。
ゴールまで逃げ切れるかそれともバ群に飲まれるか。前からゴールが迫り、後ろからの足音が徐々に大きくなる。
「どうしたツインターボ！」
唐突に聞き慣れた声が耳朶を打った
「ツインターボだもん！…ん？」
「あってるだろう？」
横を見ればトレーナーが並走していた。
「大勝負のG1！いつも通りの逃げ戦法！！お前の魂は今を叫んだ！？」
「…りない！」
「聞こえねぇなぁ！お前の声はまだ遅い！」
「足りないもん！」

「何が足らない？」
「ぜんぶ！全部！スタミナも！パワーも！根性も！賢さも！何もかも足らないもん！」
「そうだ足らない！だったらどうする？」
「速さで！全部速さでなんとかするもん！」
「そうだターボ！全ては速さで速さは全て！それが森羅万象万物の基本法則すなわち速い事こそが全ての答えであり頂きへと向かう最短経路！さあ走るぞターボ！どこまでも速く！」
「わかったもーん！」
無我夢中で走った結果は一着。インタビューではゴール前でトレーナーが横で応援してくれたって言ったら記者の人が凄い感動してたもん。
違うもん本当にターボの横でトレーナーは走ってたんだもん絆を感じさせるエピソードとかそういうのじゃないもん。

いつものトレーニング。芝の上で最後のストレッチ、気合十二分、ターボエンジン超絶好調。
「風力、温度、湿度、一気に確認。」
私の隣で指を一本空に立てて、トレーナーはそんな事をまた言っている。
変な形のサングラスを目元へ運び、こちらへ振り返る。
「…今日こそ勝つもん！！」
「確かにお前は昨日より速くなった…だが速くなれるのはお前だけじゃないんだぜ？アーボ！」
「ターボ！！」
互いに笑顔を交わし正面を向く。ターボの戦いは終わらない。明日はもっと速く。そしていつかは彼より速く。


俺は闇のトレーナー
昔鴨葱ネタを考えてたら兄貴がかっ飛んできたのを掘り起こして最後まで書きたかったから書いた
満足したのでこれで失礼する