ウマ娘とは適切な距離感を保つ事が大事だ、と、トレーナーさん達は教わるそうです。
どういうことなんだろうと思ったけれど、担当ウマ娘との距離感を誤って…恋人になったり、こ、寿退職するトレーナーさんもいるそうなんです。
私達みたいなウマ娘に理解を示して寄り添ったトレーナーさん達が、入れ込み過ぎて気が付いたら両想いになっていた、なんてことがあるんだとか。
両想いならいいんじゃないかな、素敵な事だなとは思うものの、確かに私達ウマ娘の人生の道を早期に狭めてしまうのは良くないこと…なのかも。
ただ、私のトレーナーさんは、そんな事全く関係の無い方でした。
彼はとにかく速いことが好きで、好きで、大好きで…私より速い。
今日も一緒にトレーニング。芝の上でアップを終え、ストレッチ。身体はぽかぽかしてきました。
「風力、温度、湿度、一気に確認！」
同じく芝の上、指を一本お空に向けてトレーナーさんは不思議なことを言っています。
お顔がこちらに向き、いつもの変な形のサングラスがきらっと光ります。
「ハーッハッハッハッハ！さあ今日も走るぞ！ライスシュワー！」
「ライスシャワーだよお兄様！ライス炭酸じゃないよ！？」


「お兄様、私達のトレーニングって少し変わってるの？」
お兄様とのトレーニングはとてもシンプルです。一緒に走るだけ。
お兄様はとっても疾くて、私を周回遅れにするくら速いんです。
そして隣でお兄様が時々アドバイスをくれるんです。とっても為になります。
周りからはあんなのトレーニングじゃないなんていう声もあったりもします。
「いい質問だなナイスシャワー！他者から疑問視される事など人生において幾多とあることだろうだがそれに靡いてはならない他人に運命を左右されるとは意思を譲ったということだ！意思なき者に文化なし！文化なくして俺はなし！俺をなくして俺じゃないのは当たり前！だから！俺は走るのさ！」
「ライスシャワーだよお兄様…ナイスなの？」
「あぁ！だからお前も走れそして速くなれ！」
「うん！」
よくわからないけど周りからの声は気にしないことにしました。速くなればそれでいいんですよね。



「…そいつが俺達のトレーニングを見たいってウマ娘か？サイスシャワー。」
「ライスだよお兄様鎌が降ったら危ないよ…うん。」
「エイシンフラッシュと申します。」
エイシンフラッシュさんが私のトレーニングを見たいと言ってきました。
図書室でお話したらそんな事になってしまい、お兄様の所に押しかけてきたんです。
「トレーナーと並走しているとお聞きしましたが…そんなトレーニングありえません…信じられません。」
本当だよって何回言っても信じてもらえなくて、それじゃあ見てみますって話になってしまいました。
「信じられない？サイスは確かに速くなりおれもまた日々加速し続けている。結果が全てだ。」
「理解できません。ウマ娘に人間が勝てるわけがない。」

「人間だから？ウマ娘だから？下らない…主語が大きければ言葉は大きくそして空虚になる。それはお前の言葉か？それとも教科書に乗ってる常識か？ならば俺は俺の言葉で言わせてもらう！お前が俺に勝てるわけがない！」
「…っ！でしたら…！」
「…試してみるか？エイシンフレッシュ。」
「エイシンフラッシュです！」
結果、エイシンフラッシュさんが横になってしまいました。だからライス本当だって言ったのに。


デビューしてから勝ったり負けたり。ただ分かるのはちゃんと私が速くなれているという事実。
色んな場所にあるレース場へ向かう時、お兄様はとても楽しそうにお話をしてくれた。
「アイス、俺はこう思ってるんだ。レースは素晴らしいものだと。各地のレース場にある名産！建築物！
　応援してくれる人々との触れ合い！新しい体験が人生の経験になり得難い知識へと昇華する！
　しかし目的地までの移動時間は正直面倒だ、その行程がこの俺なら破壊的なまでに短縮できる！」
「あのねお兄様、ライス…レース場には電車で行きたいな。」
「体調でも悪いのか？アイス。」
「ライスだよお兄様…私溶けちゃうよ。」
たずなさんがお兄様に車の運転させたらいけないって言ってたのは内緒だよ。警察が来ちゃうんだって。





レースで勝てる事が増え始めた頃、負ける子たちの気持ちを考えて私は少し落ち込んでしまいました。
「だから止まるのか？ライスショワー。」
お兄様はそう言います。
「ライスシャワーだよお兄様。あのね、ライスが勝つとね、代わりに負けた誰か悲しむんだって気づいたの…。」
「だからお前が悲しむのか？」
「それは…、」
「それがレースの世界だ。お前が踏み込んだ戦いの世界だ。だがな、俺はこう思う。いくら強かろうが速かろうが、ただ漫然と生きることは人生を巨視的に捉えると遅いという事！ありのままでいいという考えが未来の成長と己の思考を止める！それでは前に進まない。そんな頑張りは頑張っているという言葉でしか無い！そう！努力している人間は己の努力を美徳とは思わない！苦難や苦境を乗り越えその向こう側を目指す！…つまり人には道が必要だ。」

「ライスの…道？」
「あぁそうだ。自分で決める自分の道、信念のロードだ。何にも縛られないへつらう必要もないだが甘えは許されない！自分で決めた道を欺くようなバ鹿には前すら進めない！」
「ライスは…もっと速くなりたいよ…？」
「それで誰かが泣いてもか？」
「…ライスだって泣きたくない。」
「周りが皆敵になったとしてもか？」
「ライスにはお兄様がいるもん！」
「俺が敵になったらどうする？」
「…お兄様より速くなったらまた味方になってくれる？」
「俺より速くなるつもりか？ハッ…気に入らねぇ！だったら俺は永遠に敵で味方だ！」

「ありがとう…ごめんねお兄様。ライスが弱気だから…。」
「そうだメイスお前は迷った立ち止まった！だが自分の迷いつまり遅さに気づき未知の道へ踏み出す一歩目の出し方に気づいた。後は簡単単純明快ただシンプルに速くなるだけでいい。走るぞ！」
「うん！でもライスだよお兄様ライス鈍器じゃないよ？」
ヒールとか阻止されたとか好き勝手に言われることもあった。でもライスが勝ったらお兄様やお友達が喜んでくれる。
ライスを応援してくれる人も少しずつだけど増えてきた。それでもインタビューでも誰かの何かを阻止しましたねって言われることもあった。
その度にライスは笑顔で言ってあげるの。でも勝ったのはライスだよって。そう言うと皆黙っちゃうみたい。
お兄様はお前を刻みつけてやれって笑ってた。


頑張ったおかげか、宝塚記念にライスも出させて貰うことが出来ました。
走り出して少しして足に違和感。それでもライスへの声援に応えようと頑張ります。
第３コーナーを迎え、ここからだと速さを上げて前へ出ようとしました。
左足先に違和感。少し遅れて痺れるような痛み。足が前に出なくて、それでもライスは進んでいて。
足の変わりに頭が地面に向かっていって。芝がどんどん近くなって。気付いたらライスは…
お兄様に抱きかかえられていました。少し遅れて聞こえる衝撃音、さっきまでの歓声が消えたターフ。
「無事か？ライスシャワー！」
「ライスだよお兄様…。」
「合ってるだろう？」
遅れて生じる観客のどよめきを笑い飛ばし、お兄様はそのまま医務室へと運んでくれました。

診断の結果、左足の指が脱臼していたようです。あのまま頭から転んでいたら大変だったと言われ、私はお兄様に感謝しました。
手当をしてもらい医務室の外へ出ると、お兄様が理事長さんとたずなさんに怒られていました。
「危険ッ！レース中のターフに飛び込むなど自殺行為ッ！」
「ハッハッハ！また世界を縮めてしまいましたなァ！」
「もう、トレーナーさんの乱入でレース場は大騒ぎになってますよ」
「すいませんねぇ！ですが速さは何よりも優先されます。つまり速さを求めるライスの脚を守る事！
　これは私の担当としての行動の基本原則そのために悩んでいる時間は無駄以外の何物でもない！
　だから即決即納即効即急即時即座即答！彼女を助けただけです！」
「トレーナーさん、ライスシャワーさんを守るのは結構ですが、やり方があまりにも強引すぎます…。」
「警告ッ！トレセン学園にも先程から問い合わせが殺到！」

「そいつぁ素敵ですね理事長！ですが俺はウマ娘ではありませんので入学式のスピーチは辞退させて頂きますよ！」
「我々とて庇うにも限度というものがある…全く、君は誰の味方なのだ！」
「愚問ですなぁ理事長！俺は俺の味方です！」
「トレーナーさん！もう…ライスシャワーさんも何か言ってあげて下さい！」
「…えへへ、ありがとうお兄様」
「おぉマイス！もう治ったのか！」
「無事ッ！それは何よりッ！」
「そんなわけないでしょう！」
レースや練習はしばらくお休みになりました。あの時お兄様がレース場にすごい速さで入ったので
レースもレース場も滅茶苦茶になったそうですが、お兄様がライスの為にやったことと報道されたそうです
結果お兄様はお咎め無し…どころか私を助けた事で表彰されることになったそうです。

しばらくたったある日、芝の上で私とお兄様は並んでいます。
「お兄様…今日は表彰式の日じゃないの？」
「式典なんて性に合わない時間の無駄だ。それより俺達はもっと早く速くなりたい。そうだろう？だから！」
そういってお兄様はいつものストップウォッチを取り出します。
「少しお休みしてたし、最初はペースを落として走る？」
「愚問だなイス。俺は誰より速く走れる男だぜ？」
「ライスだよお兄様…それじゃあ行くねっ！」
今日も楽しいトレーニングが始まる。いつか速さが足りる日まで。


俺は闇のトレーナー
最高の妹には最高のお兄様をぶつけてやりたい衝動を思うがまま刻んだらなんか出来たものの続きが書けたのでここに記す
満足したので失礼する




お兄様との出会いは、ある模擬レースでの事でした。
バ群から抜け出すかどうか決めあぐねているうちにレースが終わってしまい、半端な成績。
一番や二番だった子に何人かのトレーナーさんが声をかけていて、スカウトが決まりそうな雰囲気・
私はどうすればよかったかなと頭の中で反省していると、変なサングラスの人がこちらに来たんです。
「お前！遅いぞ！」
「ぴっ！？」
びしっと私に指を指してその人はいきなりそんな事をいいました。周りの子達は驚いて離れて行きます。
「あ、あの…ライス…」
「仕掛けるのが遅い決心が遅い判断が遅い迷うのが遅いだというのに好位置を維持するその脚！本当に遅いのか甚だ疑問だがレースでは必要なのは何だ！？」
「は、速さ…？」
「そう！速さだ！気に入った！」